一般財団法人日本鯨類研究所と太地町立くじらの博物館(稲森大樹館長)による企画展「鯨と人の営み展」第2期がこのほど、同館で始まった。クジラと人が営んできた歴史の一部を紹介するもので、両者が所蔵するクジラのひげや歯、骨などで作られる道具や工芸品を3期にわたり展示する催し。第2期は「鯨歯・骨・革・郷土玩具など」と題し、アクセサリーや工芸品の数々が並ぶ。来年2月18日(日)まで。入館料が必要。
昔から日本人にとって身近な生物であったクジラとのつながりを周知することが目的。共催での企画展の計画が上がり、来年4月に鯨研の太地事務所設置も踏まえて、実施に至った。
第1期「鯨ヒゲ」は今年8月から開始され、11月12日に終了した。第3期は、第1、第2期で評判が良かった展示品や学芸員が選んだ品々を展示する「ベスト・セレクション」を行う予定。
展示では、マッコウクジラを主とした鯨類の歯や骨などを使用したアクセサリー、留め具である根付け、鯨船などの郷土玩具に加え、同館の4代前の館長の父に当たる彫金師・北市三郎氏の高い技術力が結集された印材やブローチなどのコレクションも並ぶ。
また、ソフトテニスで使用するラケットのガットは以前、クジラの繊維の束を加工していたことが分かる資料や、現在も販売中の鯨油を用いたペット用サプリメントなども展示されている。
中江環副館長は資料の寄贈や協力を得た町民らに感謝を述べ「加工に必要なマッコウクジラが現在は手に入りにくく、職人の高齢化もあって貴重な技術がなくなっていくことは不安」と吐露。
展示については「伝統文化を後世に伝えていかなくてはならない。品々を見て技術の高さを感じてもらい、クジラと人の関わりを考えるきっかけにしてほしい。その関わりは過去のものではなく、現在も恩恵を受けていることを知っていただけたら」と語った。
大阪府から訪れた40代女性は「クジラの歯などで作られていることに驚いた。すごい技術。クジラと人の関係が知れて良かった」と話していた。
(2023年12月1日付紙面より)