新宮市下本町の市文化複合施設「丹鶴ホール」で3日、「大阪交響楽団 with 山口ちなみ~子どもたちのためのクラシックコンサート~」があった。市内の中学生ら約840人が、迫力あるオーケストラの生演奏に触れる機会とした。
同施設開館2周年記念として、市内と北山村の中学校全生徒、市内高校吹奏楽部に所属する希望者などを対象に実施。質の高い文化芸術を鑑賞・体験する機会を提供することで、子どもたちの豊かな想像力などを養い、将来の芸術家や観客層を育成し、優れた文化芸術の創造につなげることを目的に、出演料などを国が負担する文化庁の「文化芸術による子供育成推進事業」を活用し開催にこぎ着けた。
同楽団の出演は、おととしの「丹鶴ホール開館記念公演」以来2回目。指揮を山下一史さんが、コンサートマスターを新宮市出身のバイオリニスト・森下幸路さんが務めた。
コンサートは「歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲」(グリンカ)で華々しく幕開け。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク第2楽章」(モーツァルト)では、弦楽器が優美な音色を響かせた。
地元出身のピアニスト・山口ちなみさんはラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番第1楽章」で同楽団と共演。高度な演奏技巧で会場を魅了した。山口さんは今年2月、同施設オープニングイヤー事業の一環として、市内の中学や高校でアウトリーチ事業を展開。音楽教室を通して生徒らと交流を図っている。
コンサートの最後を飾ったのは「スペイン奇想曲」(リムスキー=コルサコフ)で、森下さんはバイオリン・ソロを披露。生のオーケストラに触れた生徒らは、感動した表情で大きな拍手を送っていた。
2度目の凱旋(がいせん)演奏を終え、森下さんは「新宮市は遠いイメージがあるが、自然豊かな立地を逆手にとってじっくりと好きなことを見つけてまい進してほしい。人間的な生活もできるし都会に比べて人とのつながりもある。その素晴らしさは大人になって分かること。私も新宮出身者として誇りを持ってバイオリンを弾いているので、その姿も見ていただければ」。
山口さんは「素晴らしい演奏を聴ける機会は大事だけど、そういった機会を通して自分のやりたいことを見つめ直すきっかけになれば。私も大阪交響楽団さんと共演できる機会を頂けたことに感謝したい。今日は恩師も来てくれていたのでうれしかったです。これからも音楽を通して、地域に貢献したい」と話していた。
(2023年10月5日付紙面より)