那智勝浦町の那智山青岸渡寺(髙木亮英住職)の行者堂で13日、熊野市出身の染色作家・奥田祐斎さんら作の仏画「青岸不動明王」の奉納式があった。奥田さんは自身の母校・三重県立紀南高校の卒業生で組織される同窓会のメンバーらと行者堂を訪れた。奉納した仏画は縦2㍍、横1㍍。線描画は象山さんが務めた。作品は直射日光によって、色が変化する特殊な技法で染められている。
奥田さんは、1980年に祐斎染色研究所を創業。天皇の第一礼服「黄櫨染(こうろぜん)」を調査・研究し再現に成功した。その後、光によって染め色が変化する独自の染色技法「夢こうろ染」を創出した。
国内のみならず、ヨーロッパやアジア諸国でも活躍。2008年には、ルーブル宮内パリ装飾美術館で作品展示を行い、高い評価を得ている。
これまでに、熊野速玉大社と熊野本宮大社に作品を奉納しており、同窓会の紹介で今回に至った。「青岸不動明王」は、先月開催された母校の文化祭にも展示し、生徒らの目を楽しませた。
奉納式では、関係者ら約30人が参列。髙木住職と髙木智英副住職らが読経し護摩供を執り行った。
同窓会の田尾友児会長は「母校は2年後に統合され、名前もなくなる。祐斎さんの提供で、行者堂に紀南高校同窓会として仏画を奉納できた。名前が残りありがたい」。
奥田さんは「作品は悪いことをしてはいけない、良い行いをするようにと、天から雷が落ちるような思いで制作した。那智山とのご縁を結んでいただき、ありがたい。今後も日本の歴史の原点がある熊野の良さを世界に広めたいです」と話した。
髙木住職は「祐斎先生との出会いは約40年前。現在ではルーブルで個展をされるほど有名になられた。ご奉納いただき感慨無量。これからも、那智山における信仰の礎としてお祭りしたい」と語った。
(2023年11月16日付紙面より)
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