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認知症当事者から郷土料理や知恵を学ぶ=10日、那智勝浦町下里のデイサービスセンターつつじ園
講師は認知症当事者
郷土料理を学ぶ体験教室
那智勝浦町

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串本古座高
 トントントン。包丁で素早く丁寧に食材が切り分けられる。次から次へと手際良く作業をこなし、料理について丁寧に説明する―。それらを行うのは、那智勝浦町下里にあるデイサービスセンターつつじ園とグループホームつつじ園を利用する認知症当事者たちだ。町福祉課は10日、同所で「郷土料理を学ぶ体験教室」を初開催した。中学生から大人までの12人が参加し、講師を務める8人の利用者たちから郷土料理を教わった。

 催しは、当事者が地域の中で役割を担い「生きがい」を持った生活を送ることができるように社会参加の形を模索するとともに、機会の創出を図り、町民が認知症当事者から学び触れ合うことで、認知症への偏見をなくすことなどが目的。共に作業を行い、学ぶ協働型の催しだ。

 メニューは、マグロとサバのおまぜ2種類と、野菜のかき揚げ、なます、みそ汁、アユの天ぷら。利用者は器用な手つきで、アユの内臓処理をし、野菜や魚を切るなどして、調理を進めた。一方で、使用済みの調理器具を率先して洗い、片付ける姿も見られた。

 「だしは先に入れて」「砂糖は多いめやの」「やらかなってから、調味料入れるんやで」と利用者が参加者にアドバイス。両者間で会話も弾み、料理を完成させた。最後は全員で、和気あいあいと食事を楽しんだ。

 参加した和歌山県立串本古座高校2年の道尻颯乃さんは「認知症の方は、覚えていることが少ないという認識だったが、多くのことを考え、何でもできると知り印象が変わった。周囲で認知症を患った人がいた際は態度を変えずに、今まで通りできることはやってもらい、できないことをサポートしたい」。

 同施設看護師で認知症介護指導者の川口利恵さんは、認知症の主な原因は加齢で、食事を中心とした活動や人間関係で、自分自身を取り戻すことができる例もあるとし「技術や知識をお持ちの方が多い。認知症の方からできることを奪ってはいけない。失敗しても良い。自分らしく生きられることが大事」と話した。

 町福祉課の桝本佳貴さんは「多くの人が持つ認知症のイメージは、実は違うということを知ってほしい。認知症になっても、この町で安心して暮らしていけるということにつながれば。今後は、ほかの地区でも同様の取り組みをしたいと思う」と語った。

(2023年9月13日付紙面より)


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最優秀賞に選ばれた高池小学校の作品(県人権啓発活動ネットワーク協議会提供)
学校 高池小が最優秀賞を獲得
第41回写真コンテストで
県小学校人権の花運動
 「第41回和歌山県小学校人権の花運動」写真コンテストの審査結果が発表され、古座川町立高池小学校(中井清校長)が最優秀賞に選ばれたことが明らかになった。同校は第39、40回も最優秀賞に選ばれていて、3年続けての獲得となる。

 このコンテストは、県人権啓発活動ネットワーク協議会(代表=夏見聡・和歌山地方法務局長)が主催。同協議会は例年、博愛や思いやりの象徴として親しまれるチューリップの球根やプランターを県内の全小学校(義務教育学校と特別支援学校を含む)に配り、児童に協力して育ててもらって生命の尊さを感じる形で将来を担う子どもたちの情操や人権尊重思想を育んでいる。その成果を確かめるために豊かに咲き誇る花と児童の記念写真をこのコンテストで募集している。

 同協議会事務局によると今回は110校から応募があり、後の審査で最優秀賞10校、優秀賞40校、奨励賞60校を決め応募した全校の取り組みをたたえるとしている。

 高池小は6年生10人が卒業した上級生(現中学1年生)から引き継ぎ、新1年生歓迎の思いも込め園芸委員が中心となりみんなで育ててきた。最優秀賞に選ばれた写真は、正門周囲のソメイヨシノや花壇に植えられた春の植物と一緒に花盛りを迎えた3月30日に撮影。6年生は歴代児童の合言葉「あいさつ日本一の高池小」と「花いっぱい笑顔もいっぱい」の横断幕を掲げて、今年の花盛りを誇っている。

  □     □

新宮・東牟婁地方では9校受賞

 同協議会事務局によると、賞状や副賞(額装した作品)は後日、各受賞校を訪問する形で届ける予定。新宮・東牟婁地方では高池小のほか、王子ケ浜小と三輪崎小、宇久井小、太地小の4校が優秀賞、神倉小と勝浦小、明神小、三尾川(みとがわ)小の4校が奨励賞に選ばれていて、最優秀賞と優秀賞の作品は12月9日(土)に新宮市の市文化複合施設「丹鶴ホール」で開く啓発行事「人権の集い」の会場内で展示紹介する予定という。

(2023年9月13日付紙面より)

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演劇を通して新宮市の歴史や文化を紹介=10日、新宮市の「丹鶴ホール」
文化 演劇通して新宮の歴史知って
「新宮城物語」に600人
熊野新宮ミュージアム
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熊野速玉大社
例大祭
新宮高
祭事
大祭
 新宮市下本町の市文化複合施設「丹鶴ホール」で10日、一般社団法人「熊野新宮ミュージアム」(池上順一代表理事)による公演「新宮城物語~丹鶴姫語り~」があった。約600人の観客らは、ミュージカルを通して新宮市の歴史に触れる機会とした。

 同法人は、熊野新宮の歴史文化を継承、発信し、郷土愛を育むとともに次世代への橋渡しを行う目的で2019年7月に設立された。ミュージカルなどの文化活動の他、熊野新宮の歴史、文化に関する調査および研究、広報活動、意見の表明などの活動を行っている。

 このたびの演目は、熊野速玉大社大祭や新宮城、水野家、丹鶴姫など、新宮のまちを形成してきた祭事や人物にスポットを当て、ミュージカルを通していま一度新宮の歴史を知ってもらおうと企画。

 本来は法人設立後の旗揚げ公演として2020年に県立新宮高校での公演を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて無期延期となっていた。

 コロナの5類移行を受け再挑戦の運びとなった今回は、当初より一部内容を変更しつつも、紀伊新宮藩初代藩主・水野重仲が、現在NHK大河ドラマで注目度が高まっている徳川家康のいとこであることや、源頼朝・義経のおばで、平安~鎌倉時代にかけて実在した丹鶴姫、約1カ月後に控える熊野速玉大社大祭など、新宮の魅力を余すところなく紹介する内容に仕上がった。

 丹鶴城と、大祭でにぎわいを見せる新宮のまちを背景に重仲の入部を描いた物語。下岡有希さん演じる丹鶴姫の語りや歌声、人足たちのコーラス、正調新宮節・お祭り新宮節の演奏や舞がストーリーを彩り、観客らは圧巻のステージに大きな拍手を送った。

 池上代表理事は「多くの人に来ていただき、喜んでいただいて感無量。コロナ禍の3年間を経て、ようやく公演することができた。物語を通じて、新宮の歴史にいま一度興味を持っていただけたら。私たちも次に向けて頑張っていきたいと思う」と話していた。

(2023年9月13日付紙面より)

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大学生が事業案を発表して助言をもらった=8日、東牟婁振興局
地域 大学生が事業案示す
世界遺産20周年記念
熊野三山観光協会
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熊野三山
 「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年記念事業案の発表会が8日、新宮市緑ヶ丘の東牟婁振興局であった。大学生18人が、新宮市、那智勝浦町、田辺市本宮町を巡って考えた若年層向け7プランを提案。3市町の観光協会(機構)の代表者に意見を聞いた。今後、案は三つに絞られ練り直されて再提案され、最終的に一つが選ばれて来年度に実施される。

 新宮市観光協会、那智勝浦観光機構、熊野本宮観光協会、東牟婁振興局企画産業課で構成する、熊野三山観光協会(会長=名渕敬・熊野本宮観光協会長)の主催。大学生に3泊4日で3市町に滞在してもらい、魅力や課題を調査してもらった上で、事業を提案してもらう取り組みとなる。和歌山大学観光学部から11人、京都産業大学経営学部から7人が参加、5日から体験や取材を行っていた。

 学生らは、和大1班、和大2班、京産大班に分かれて、3案、2案、2案を発表。「スマートフォンでスタンプを集めるデジタルスタンプラリーを。スタンプ数に応じ、地域店で使えるクーポンを配布し、全部ためると景品がもらえるように」「ヤタガラスや20周年の文字を刻印したおさい銭メダルの販売を。熊野三山の全てで使えて、余ったメダルは記念に持ち帰れるように」「自撮り用スタンドを設置し、自分を入れた風景の写真をカレンダーに」などと伝えた。

 これらを受け、3市町の観光協会(機構)の代表者が助言。「新宮の歴史は魅力的だが、伝えるのが難しい。スタンプラリーに合わせQRコードで歴史を学べるようにして突破口にできれば」「さい銭メダルはコストがかかるので、熊野杉などの木を使っても良いかも」「自撮り台は良いヒントをもらった」などと語った。

 なお、案の発表に先立ち学生らは、体験や取材で感じた3市町の魅力を紹介した。

 今後、各班は案を一つ選び、助言も参考に再度練り直して、11月下旬までに資料を作成。最終発表会が12月の上旬から中旬に行われる予定となっている。主催する熊野三山観光協会は最終の3案から一つを採用し、準備期間を経て来年度に実施することになる。

(2023年9月13日付紙面より)

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