孔島鈴島で例大祭 (新宮市 )
新宮市三輪崎の孔島(くしま)嚴島(いつくしま)神社と鈴島蛭子(えびす)神社で18日、例大祭が営まれた。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から関係者のみが参列し斎行。孔島・鈴島保護委員会の井上元和委員長や中村武・三輪崎八幡神社氏子総代会長、屋敷満雄三輪崎区長らが航海の安全や大漁、新型コロナ早期収束などを願い玉串をささげた。
孔島嚴島神社の主祭神は海路を守護する神として信仰を集める市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)。鈴島蛭子神社の祭神は漁港を見守る大漁の神である蛭子命(ひるこのみこと)とされている。孔島と鈴島は南紀熊野ジオパークを構成するジオサイトに認定されており、孔島嚴島神社の石造物は、2017年に日本遺産「鯨とともに生きる」に追加登録されている。
毎年、大勢の地域住民が参加している餅まきは、新型コロナ情勢を踏まえおととし、昨年に引き続き今年も中止に。熊野速玉大社の佐藤仁迪(ひとふみ)権禰宜(ごんねぎ)が斎主を務め、しめやかに神事が営まれた。
井上委員長は「今日は風が強いが雨も降らず、天候に恵まれて良かった。本来なら多くの地域住民にご参列いただき、美しい三輪崎の海を見てもらいたいが仕方ない。大漁と新型コロナの一日も早い収束を祈りました」。
孔島・鈴島や周辺の自然保護を主たる目標に定めて活動を展開する同委員会。井上委員長は「漁協組合職員が美化活動に協力してくれておりありがたい限り。しかし、同所に流れ着くプラスチックごみは後を絶たない。一人一人の意識が大事。ポイ捨てはやめてほしい」と話していた。
例大祭は毎年、旧暦の3月18日に営まれている。
(2022年4月19日付紙面より)
古座小前で取り締まり (新宮警察署 )
串本町中湊、串本町立古座小学校正門前で18日早朝、新宮警察署による可搬式速度違反自動取締装置(通称・可搬式オービス)を用いた速度違反の取り締まりがあった。
通学路における通行車両の交通法令順守意識の向上、ひいては通学する児童を保護することが目的。同署は管内にある学校の第1学期始業に合わせてこの取り締まりを始め、ほぼ連日の実施で目的の推進を図っているという。
古座小正門前の県道は法定速度(自動車の場合は毎時60㌔)が適用されていて、利用者相互の配慮が交通事故の抑止に大きな役割を果たしている。同装置による取り締まりを要する状況はほぼないと判断し、この日は車両通行を妨げずかつドライバーから目に付きやすい位置に同装置を配置し警察官3人も同装置横やその周囲で姿を見せるなど、ドライバーの意識喚起に重点を置き登校時間帯に合わせて活動した。同時に日々の交通状況をじかに見届け、交通安全面での課題を探ることにも努めていた。
(2022年4月19日付紙面より)
目覚山水底神社で明神祭 (那智勝浦町 )
大漁と海上安全を祈願する明神祭が17日、那智勝浦町宇久井の目覚山(めさめやま)水底(みそこ)神社で営まれた。参列者は海上安全や地域の発展などを祈願した。
同神社の御神体は獅子頭、社殿横の大きな岩、蛇など複数の説がある。このうち蛇については、1286(弘安9)年5月に伊勢方面から入港する船に乗り込み、目覚山に鎮座したと伝えられる。社殿は1961(昭和36)年に造営されたが、90(平成2)年の9月から11月にかけて上陸した4回の台風で全壊。今の社殿は92(平成4)年4月に竣工(しゅんこう)した。
祭りは旧暦3月14日の前の日曜日に開かれるという。かつては船主が祭主となり、後には宇久井神社宮司に受け継がれてきたが、95(平成7)年度からは区が実施している。神社には中路進総区長をはじめ、宇久井漁業協同組合、宇久井青年会、区の役員や漁業関係者など、合わせて約20人が参拝に訪れた。
神事は熊野那智大社から出仕した神職によって営まれた。今年は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、宇久井青年会による獅子神楽の奉納はなかった。参拝者一人一人には「目覚山神符」と餅が配られ、それぞれが安全操業の誓いを新たにした。
中路総区長は「海上安全や大漁祈願、地域の発展に加えて、新型コロナウイルス終息も祈願しました。近年は一般参拝者が減っていることを懸念している。目覚山は素晴らしい場所なので、ぜひ区民の皆さまにも知っていただけたら幸いです」と話した。
(2022年4月19日付紙面より)
ラ・フェスタ・プリマベラ (新宮・東牟婁 )
クラシックスポーツカーの公道ラリー「ラ・フェスタ・プリマベラ2022」が15~18日に開催された。16日には56台が出走し、那智勝浦町のブルービーチ那智、太地町立くじらの博物館、串本町の潮岬観光タワーを通過。ランボルギーニ(イタリア)やジャガー(英国)、ポルシェ(ドイツ)などの名車を一目見ようと集まった地域住民らが、沿道から旗を振って歓迎した。
「古いものに敬意を」「いくつになっても心・少年」「イベントに関わる全ての人と友情の輪を広げる」の精神の下、2009年に始まったイベント。毎年春に開催されることから、イタリア語で春を意味する「プリマベラ」の名を冠している。株式会社フォルツァ主催。
今年のラリーは愛知県名古屋市の熱田神宮をスタートし、2府5県の約1250㌔を走ってゴールの京都府京都市の岡崎公園へ向かう。
16日は好天に恵まれ、ルーフ(屋根)をオープンにしたクラシックカーが潮風を受けて沿岸部を疾走。ブルービーチ那智のチェックポイントでは、地元の観光パンフレットや那智黒あめなどの土産を受け取った。
普段は目にすることのないクラシックカーの姿に、地元の子どもたちも大喜び。武内弥那人(みなと)君(勝浦小2)は「車が大好き。5番や33番の車がかっこよかった」と笑顔で話していた。
(2022年4月19日付紙面より)
JR西日本は11日、利用者が少ない在来線17路線30区間の収支を初めて公表した。2017~19年度の営業損益の赤字額の平均は、紀勢線の新宮―白浜間が、山陰線の出雲市―益田間の34億5000万円に続く28億6000万円。JR西日本は、経営状況の厳しさを示すデータを共有することで、沿線自治体と存廃を含めた運営の在り方の協議を加速させたい考えだ。
今回の開示対象は19年度の1㌔当たりの1日の輸送密度2000人未満だった区間。在来線総距離の約3割に及び、全ての線区で赤字だった。30区間の合計赤字額は約247億円となった。JR西日本では「地域の皆さまと課題を共有し、地域のまちづくりや線区の特性・移動ニーズを踏まえて、鉄道の上下分離などを含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたい」と見解を示している。
情報開示を受け、和歌山県の仁坂吉伸知事は「路線ごとに採算を合わせる必要はなく、黒字路線の収益を赤字路線に配分するなど、全ネットワーク維持の方向で考え、また、輸送密度などの一律の基準を用いて地方路線の切り捨てありきで見直しを進めるのではなく、地域資源を活用した利用促進などの柔軟な対応を行うべき」などとコメント。
新宮市の田岡実千年市長は「新宮―紀伊田辺間で実施していた『サイクルトレイン』が、この4月から御坊までに拡大し、これまでJRを利用していなかった人も利用する機会が増えた。周辺自治体と共に観光を盛り上げ利用促進につなげたい」。
市観光協会の里中陽互会長は「道も良くなり、また人口減少などの影響で鉄道を利用する人も少なくなったのでJRの公表はショックだが予想はしていた。住民や関係自治体も真剣に考えていかないといけない問題では」と話している。
(2022年4月13日付紙面より)
小林ちひろさんが奉納 (熊野那智大社 )
那智勝浦町那智山の熊野那智大社で10日、東京都世田谷区在住の演奏家の小林ちひろさんによる、クリスタルボウル演奏の奉納があった。五つのクリスタルボウルを使い、幻想的な音色を響かせた。
小林さんは、太地町に友人がおり、その友人の仲介で、初の同大社での奉納演奏が実現した。もともと神社仏閣が好きで、2年ほど前から、聖地の一つである熊野三山でも奉納演奏がしたいと思っていたが、コロナ禍の影響で、ずっと来ることができなかったという。
空路で9日に南紀白浜空港に到着、本宮、速玉の両大社も参拝し、この日に那智での奉納演奏となった。クリスタルボウルは、水晶でできた円筒形のボウルで、専用のバチでたたいたり、開口部の縁をなぞったりして音を出す。
小林さんは、奉納演奏前に、熊野那智大社で正式に参拝。祈りをささげた上で、境内にあるあずまやの長生殿に移動し、演奏を行った。
サイズや模様の違う五つのボウルを並べ、バチで鳴らして、空気が静かに揺らぐような、ゆったりとした音の空間を生み出した。たまたま居合わせた参拝客は、小林さんの前に用意された椅子に腰かけて耳を傾け、その音色を堪能していた。
小林さんは「奉納演奏の夢がかない、感慨深い。やっとかなったとの思いがある。素晴らしい所だと思った」と感想。
同大社の男成洋三宮司は「素晴らしい、癒やされるような音色だった」と話した。
(2022年4月13日付紙面より)
中田、阪本さん招き平和学習 (矢渕中 )
紀宝町立矢渕中学校(立嶋信雄校長)で8日、平和学習があった。修学旅行の事前学習として、3年生72人が太平洋戦争で唯一の地上戦があった沖縄の歴史を学んだ。
作家の中田重顕さん(79)が講師を務め、元有線放送アナウンサーの阪本浩子さん(80)が朗読。2人は20年ほど前から各中学校で平和学習を続け、沖縄に修学旅行する意味を伝えてきた。
中田さんは「77年前、沖縄の中学生と先生たちは何を見たのか。沖縄で学ぶべきことは、命が何より大切だと言えなかった時代の悲しみ。それを象徴するのが沖縄学徒隊である。女子学徒隊の悲劇を中心に考えてみよう」と切り出した。
「戦争は人類が考え出した最悪の政策」と断じ、ロシアによるウクライナ侵攻を交えながら「戦争は軍服を着た兵士たちが戦うものだった。子ども、お年寄り、障害者など軍服を着ない人たちを非戦闘員と呼び、戦争中でも保護されるべきとされていた」とハーグ陸戦条約を説明。
1941(昭和16)年12月8日、太平洋戦争が勃発。日本国中が戦争一色になり、女性たちも軍事教練を強いられた。沖縄は日本でただ一つ地上戦が行われ、子どもを含む県民50万人中、10万人が亡くなった。
沖縄を守っていた日本の第32軍の主力部隊「第62師団」は三重県や愛知県出身の兵隊を中心に構成され、熊野市出身者は71人、御浜町は23人が沖縄で戦死したとし「紀宝町は何人だろう。君たちで調べてほしい」と求めた。沖縄では中学3年生から軍に協力し、女学校の生徒594人が動員され361人が戦死した。男子生徒は800人が死亡した。
「『殺せ、殺しなさい、皇国の女性は捕虜になどならない、撃ちなさい、なぜ撃たない』。17歳の少女のこの世のものとも思えぬ声だった。しばらくのためらいの後、自動小銃の響きわたる音がした」。阪本さんは、女学生の手記などを朗読した。
中田さんは「第三外科壕(ひめゆりの壕)で戦死した少女たちは、親やきょうだいにかわいがられてきた。青春もなく恋も知らず、大人が始めた戦争の犠牲になって死んだ」と伝えた。最後は「再び、こんな戦争をする世にするのか、しないのかは、これからの社会を築く君たちの手にかかっている。よく歴史を学び、自分の頭で、自分の心で考えられる人になってほしい」と語った。
3年生は5月16~21日に、沖縄県のひめゆりの塔、平和の礎(いしじ)、ガマなどを訪れる予定。生徒会長の中野悠君は「沖縄では歴史をしっかり勉強したい。ウクライナの人たちなど民間の人が被害に遭わないでほしい」と話していた。
(2022年4月13日付紙面より)
海難救助貢献し表彰 (串本海上保安署 )
新宮市三輪崎の三輪崎漁業協同組合で11日、串本海上保安署長表彰授賞式があった。海難救助に貢献したとして、内海浩一署長が熊野灘救難所三輪崎支所の救助員、谷奥孝信さん、井上元和さん、川上清雄さん、堀内秀訓さんに対し表彰状を手渡した。
串本町で最大時間雨量50㍉、累積雨量193㍉を記録(和歌山県危機管理局発表)した3月18日。新宮・東牟婁地方でも強風、高潮注意報が発表され大荒れの天候となった。
三輪崎漁港港口においてミニボートが転覆し、乗員3人が海中転落したとして、海上保安庁緊急通報用電話番号「118番」に通報が入ったのが午後3時30分。
同署からの救助協力要請を受けた谷奥さんら4人は、救助員として漁船考良丸(船長=谷奥さん)と井上丸(船長=井上さん)で現場に急行し、午後4時ごろに転覆したミニボートにつかまって救助を求める男性3人を考良丸に引き上げ、迅速かつ安全に要救助者を救助した。3人は体力を消耗していたものの、命に別条はなかった。
表彰状を手渡した内海署長は「管内が串本から新宮と非常に長く、リアス式海岸で巡視船も近づけないことが多いが、いつも連絡したときには気持ちよく引き受けてくれてありがたい。今後とも協力を」と呼びかけた。
谷奥さんや井上さんは、当時は大しけで自分たちの身にも危険を感じたと振り返りつつ「もう少し時間がたっていたら危なかったかもしれない。助けることができて良かった。これからもできることがあれば協力したい」と話していた。
なお、同署によれば救助された3人は、全員救命胴衣を着用していた。海上保安庁では、海難事故防止のため、救命胴衣の常時着用を呼びかけている。
(2022年4月13日付紙面より)