広角でこんにゃく作り (新宮市 )
新宮市新宮(広角)で「蒟竹笑(こんちくしょう)」を営む田中倫通さん宅で昔ながらの製法にこだわったこんにゃく作りが行われている。手作りのこんにゃくは同所玄関横の無人市場に並んだ途端に売り切れるほどの盛況ぶりだ。
倫通さんが体調を壊し仕事を辞め、家の倉庫を改修し「蒟竹笑」を開設したのは約10年前のこと。無人市場で手作りのこんにゃくや山や畑で採れたタケノコや野菜、自家製の梅干しなどを販売しつつ、近隣住民の寄り合いの場としても同所を提供している。
こんにゃくは、こんにゃく作りで有名な熊野川町篠尾(ささび)地区から山一つ隔てた場所に位置する九重地区出身の妻・みちよさんの父・栗須武一さんから製法を受け継いだ。熊野川町の家庭ではかつて、正月に向けて年末にこんにゃくを製作。篠尾地区でも各家庭でイモを栽培しこんにゃくを生産していたが、過疎化・高齢化の影響で作る家庭は減少している。
「年末、妻の実家に行ったらこんにゃく作りを手伝わされた。(栗須さんから)わしら、もうようせんからお前らが覚えーよ、と言われた」と倫通さん。
取材に訪れた14日は午前9時ごろからこんにゃく作りを開始。コンニャクイモをゆでてミキサーで細かくし、あくを入れてこねて成型し釜で長時間ゆがく。3時間以上かけて40個が完成した。成型用の型も倫通さんの手作りだ。
倫通さんは「少しの水加減、あくの入れ方で出来上がりが変わってくる」と継承の難しさを話しながらも「手間暇かけた分おいしい」と笑顔を見せる。みちよさん手作りのゆずみそをたっぷりのせていただくと、大地の恵みが口いっぱいに広がる。
こんにゃくは基本的に注文販売だが、倫通さんの気まぐれで作った日は販売を知らせる旗とともに無人市場に並ぶとのこと。
(2022年2月16日付紙面より)
地域活性化起業人が活躍 (那智勝浦町 )
昨年4月から那智勝浦町へ赴任した「地域活性化起業人」の島田匡平さんが現在、町内の6小学校の体育指導や社会人向けのスポーツプログラムを通じ、町の健康づくりや健康課題改善に向けて奮闘している。
地域活性化起業人とは、三大都市圏にある民間企業の人材を地方公共団体が一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を生かして業務に従事してもらうことで地域活性化を図る取り組み。総務省が推進し、県内の受け入れは那智勝浦町が初となる。
島田さんは、全国でフィットネススタジオや介護リハビリ施設などを展開する株式会社ルネサンスのトレーナー。本年度の上半期は未就学児とその親を対象とした「すくすくワークショップ」や保育所、中学校、下半期は小学校の放課後スポーツ教室や社会人向けの「ルネサンスプログラム教室」で活動している。高齢者向けのウオーキング教室にも協力し、全年齢の町民と関わりながら健康増進に努めている。
10日には町立太田小学校で月1回の全校体育があり、1~6年生20人を相手にバスケットボールを指導。児童は「片足立ちでバランスを取る」「両手を挙げて前にジャンプで進む」などのウオーミングアップの後、ボールさばきやシュートの練習で汗を流した。
大下泰河君(6年)は「シュートの練習が楽しくて、上達していると思う」。同校の体育主任の塚貴記教諭は「1年生でも参加できる難易度にしつつ、6年生も飽きさせない授業づくりは学ぶことが多い。10月の『速くなる走り方』では、実際に子どもたちの走るフォームが変わり、タイムも速くなった。運動会前などに実施すれば、子どもたちに目標ができ、さらに楽しめるのでは」と期待を寄せる。
島田さんは「小学生向けの教室はバランス感覚を伸ばすことを重視しつつ、スポーツを好きになってもらいたいという思いでやっている。社会人向けには、肩こり解消などの機能改善プログラムが人気です」と本年度の取り組み振り返る。今後について「スポーツに苦手意識を持っている層にもアプローチしていきたい。新型コロナウイルス感染拡大で難しいこともあるが、地域のサロンや運動教室にも、依頼があればぜひ協力したい」と意欲を見せていた。
(2022年2月16日付紙面より)
水門神社で例大祭「水門祭」 (串本町 )
串本町大島にある水門(みなと)神社で12日、例大祭「水門祭」があった。新型コロナウイルスの情勢により今年も大前の儀のみで奉仕。大島区の稲田賢区長ら神社関係要職16人が代表参列して主祭神・誉田別命(ほんだわけのみこと=応神天皇)への礼を尽くした。
この例大祭は近年、祭員確保の事情で2月11日に近い土曜日を本祭日として執り行っている。当日は大前の儀で始まりお的の儀や大座の儀、祭神の渡御、櫂伝馬競漕(かいでんまきょうそう)や還暦者などの餅まき、お山倒しやお鏡取り、獅子舞の奉納などさまざまな行事を営み、その見どころは東牟婁地方でも屈指の多彩さを誇る。
今年は「獅子舞だけでも」と青年団体の大同会が発起したものの、にわかな感染拡大の勢いにより断念を余儀なくされ、水門神社祭典保存会(木下正己会長)は昨年同様大前の儀のみとすることを決した。
この日の大前の儀は町長や航空自衛隊串本分屯基地司令など来賓を迎えず、区内の神社関係要職のみで奉仕。本殿を開扉して神饌(しんせん)をささげ、祝詞奏上に続いて一同で玉串をささげるなどして礼を尽くした。神事後は直会(なおらい)も営み、神酒と生米を口にして神徳にあやかった。
2年続きの神事のみという状況を受けて稲田区長は「若い人が獅子舞やお的で頑張ろうとしたのにオミクロン株で中止となってしまったことが残念だが、この状況もじきにワクチンや飲み薬が広まって落ち着くと思う。若い人には来年も頑張ってほしいし、(担い手の)高齢化で祭りを続けるのは大変だが自衛隊の協力もいただいて次こそ元の形でできれば」と先々に願うところを語った。
この日は先だって祈年祭の神事、例大祭後は初午(はつうま)の神事(厄払いなど)も執り行った。
(2022年2月16日付紙面より)