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2022年01月25日
1 貴重な文化財を守れ 自衛消防団が防火訓練 (熊野本宮大社)

 文化財愛護思想の高揚を目的に制定された「文化財防火デー」(1月26日)を前に、田辺市本宮町の熊野本宮大社(九鬼家隆宮司)で24日、同大社自衛消防団による防火訓練があった。神職や大社役員、消防関係者ら25人ほどが参加。訓練を通して防火意識の高揚を図った。

 文化財防火デーの1月26日は1949(昭和24)年に法隆寺金堂壁画が焼損した日。55(昭和30)年からこの日を中心として全国的に防火運動が展開されており、今年で68回を数える。

 今年の訓練は、新型コロナウイルス感染予防の観点から、昨年に引き続き規模を縮小し、同大社神職らからなる自衛消防団が中心となり実施。宝物殿奥の山林から出火し、境内を巡回中の神職が火事を発見したとの想定で行われた。参加者らは消火活動や119番通報など、それぞれ担当する活動に取り組み、最後に延焼防止のため社殿に向けて放水銃で一斉に放水した。

 消防訓練に先立ち田辺消防署本宮分署による立ち入り検査や、神職らを対象にした消火器訓練も行われた。

 訓練後、集合した参加者らを前に、田野直・田辺消防署本宮分署長が「昨年は初期消火に少し遅れが見られたことを指摘させていただいたが、今回はすぐに駆け付けていただきその他の活動も良好だった」と講評。

 夜間や職員がそろっていない場合なども想定することが大事とし「被害を最小限にとどめられるよう、誰でも通報することができる、誰でも初期消火することができるといった、ワンランク上の体制を」と呼び掛けた。

 九鬼宮司は「参拝者の方や地元の人が火災を発見する場合もある。いろんな状況でも対応できるよう、職員ともども意識を高めていきたい」と誓いを新たにした。

(2022年1月25日付紙面より)

延焼を防ぐため社殿に向け放水=24日、田辺市本宮町の熊野本宮大社
神職らが消火訓練を実施した
2022年01月25日
2 ギュンゲン大使ら樫野崎へ
 武官や総領事らと共に視察  (駐日トルコ大使館 )

 駐日トルコ共和国大使館のコルクット・ギュンゲン特命全権大使(53)ら一行が21日午後、串本町の樫野崎を訪ねた。

 同館の歴代大使が着任序盤に取り組んでいる公務の一環。樫野崎は日本とトルコ共和国の友好発祥地という特別な場所で、ギュンゲン大使も昨年3月の着任以降早期訪問を目指してきたが新型コロナウイルスの情勢ですぐに時期が見いだせず、今回のタイミングでの遂行となった。

 一行の内訳はギュンゲン大使、ハビブ・イゼット・ゾールオール武官、在名古屋トルコ共和国総領事館のウムット・リュトフィ・オズテュルク総領事と参事官2人らで、在大阪トルコ共和国名誉総領事館の梶山龍誠総領事らも同行。20日は和歌山市にある県立博物館でトルコ共和国の贈呈品も含まれる特別展「和歌山と皇室」を鑑賞し、来年のトルコ共和国建国100年、再来年の日本―トルコ国交樹立100年に向けた協力を仁坂吉伸知事に求めたという。

 翌21日午後に樫野崎へ赴き、真っ先にトルコ軍艦遭難慰霊碑に眠る将士を訪ねて礼拝しゾールオール武官と共に献花。同碑の霊廟(れいびょう)へ入り、イスラム教に基づきこの場所で眠る将士をしのんだ。

 以降はムスタファ・ケマル・アタテュルク像や樫野埼灯台、トルコ記念館などを順次視察し、同館の記名簿に来館の足跡を書き記した。ギュンゲン大使は人文社会学〈歴史専攻〉の修士で、同館そばにある日本赤十字社の平時国際活動発祥の地記念碑にも強い関心を示し、エルトゥールル号遭難事件の3年前に旧オスマン帝国を訪問した小松宮彰仁親王も設立に関わった同社にとってこの事件は初の国際救助だったと語って当時の人道援護に感謝と敬意を掲げた。

 「エルトゥールル号の遭難は悲しい出来事だが、われわれにとっては誇れる事実でもある」と受け止めるギュンゲン大使は、その現地で改めて串本や日本への感謝を言葉にし「来年、再来年の節目に皆さんとも手を携えて何かができれば」と自身が築くこととなる両国友好への意欲を語った。

  □     □

コロナ禍の影響で町長表敬かなわず



 樫野崎訪問と併せて田嶋勝正町長との面会も希望していたが、急拡大する同ウイルスの情勢により田嶋町長は直前で遠慮の要請をした。

 ギュンゲン大使はいつもお世話になっている大切な方のコロナ禍を見据えた判断の心中を察して受け止め、田嶋町長は「町まで来ていただいたのに応対できず、本当に申し訳なく思う。感染の拡大が落ち着いたら必ずや、こちらから大使館へ赴いて大使に公式のごあいさつをさせていただきたい」とコメントした。

(2022年1月25日付紙面より)

トルコ軍艦遭難慰霊碑前で礼を尽くすコルクット・ギュンゲン大使(前列左から3人目)ら=21日、串本町樫野
2022年01月25日
3 3回目集団接種始まる
 まなびの郷を会場に  (紀宝町 )

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、紀宝町は22日、町生涯学習センター「まなびの郷」で3回目の新型コロナワクチンの集団接種を開始した。

 新たな変異株「オミクロン株」の発生状況を踏まえ、国の方針に沿って前倒しで実施。この日は、医療、高齢者施設、通所サービス事業所の各従事者と通所サービス事業所の利用者合わせて約180人が接種した。

 集団接種は2月5日(土)以降、昨年6月末までに2回接種した65歳以上の高齢者を対象に行う。ワクチンはファイザー社製がなくなり次第、モデルナ社製に切り替える。

 今月13日には、昨年7月末までに2回接種を終えた約4000人に接種券を送付。集団接種、個別接種ともに、6月末までの接種者は24日から受け付けを始めた。7月末までの人は31日(月)から開始する。

 集団接種はインターネットとワクチン接種専用ダイヤル(電話0735・33・0363)で受け付ける。専用ダイヤルは午前9時からで、平日は午後7時まで、土日・祝日は午後4時まで。個別接種は各医療機関で受け付けている。

 昨年末現在、町内で2回目接種が完了した人は8327人で対象者の接種率は85%。町では「ワクチン接種は自分のためだけでなく、家族や友人など自分の大切な人を守ることにつながります。ワクチン接種が可能な方は、接種していただきますようお願いします」と呼び掛けている。

(2022年1月25日付紙面より)

町生涯学習センターまなびの郷で始まった集団接種=22日、紀宝町鵜殿
2022年01月25日
4 自然災害や地震に備え
 佐野区で防災用品配布  (新宮市 )

 新宮市の佐野区(前田道春区長)は22日、同区加入の1150世帯を対象に、防災用袋やグッズを配布した。佐野会館に集まった代議員たちが世帯数の物資を仕分けし、各地区の班長へと届けた。

 同区では、紀伊半島大水害から10年が経過したことを振り返り、昨今、頻発している自然災害や地震に備え防災意識を高めてもらおうと「本年度の区計画事業中止による予算」「市防災補助金」などを活用し配布を決定。新型コロナウイルス感染症第6波とされるオミクロン株などの拡大に対して区民への注意喚起の思いも込められている。昨年5月にはマスクと消毒液を配布した。

 この日は代議員15人ほどが集合。前田区長をはじめ役員らが協力して作業に取り組み、災害時避難用に使用する区の名前が記されたリュック式「非常持出袋」(1世帯1袋)と「非常用給水バッグ」(3㍑入り1世帯2袋)を班ごとに用意された段ボールへ詰めていった。

 前田区長は「代議員や多くの人の協力のおかげで今回の配布を迎えることができて安心し、感謝しています。コロナの状況はもちろんだが近年、頻繁に発生している地震などの災害に備えて改めて意識を高めてもらいたい。今後も住民のみんなが『佐野区に住んでいてよかった』と思ってもらえるよう、取り組んでいければ」と話していた。

(2022年1月25日付紙面より)

配布物資を箱に詰める代議員ら=22日、新宮市の佐野会館
佐野区加入の1150世帯に防災用品が配られた
2022年01月25日
5 駐日トルコ大使に作品贈る  潮岬の作家・杉本紘子さん  (串本町 )
2022年01月25日
6 献血への協力に感謝  勝浦LCが奉仕活動  
2022年01月25日
7 「公正・公平な町政の推進を」  堀順一郎氏が事務所開き  (那智勝浦町長選 )
2022年01月25日
8 榎本一輝君が3連覇  中央児童館「こままわし大会」  (新宮市 )
2022年01月25日
9 トラブルを未然に防ぐ  太田小でスマホ安全教室  (那智勝浦町 )
2022年01月25日
10 時代超え、闇を光へ紡ぐ㊤  「大逆事件」から111年  (新宮市 )
2022年01月25日
11 ミカンをイメージした看板  パーク七里御浜などに設置  (御浜町 )
2022年01月25日
12 木製ベンチ2台を寄贈  環境ファースト連合会、山地地区企業会  (御浜町 )
2022年01月25日
13 町の振興発展、福祉向上へ  5選の西田健氏に当選証書  (紀宝町 )
2022年01月25日
14 お悔やみ情報
  
2022年01月23日
15 原木市場で「初市」
 スギやヒノキ次々と落札  (新宮市 )

 新宮原木市場(谷口泰仁社長)は22日、新宮市あけぼのの同市場貯木場で「新春初市」を開いた。新宮周辺地域を中心に買い方が集まり、開始の合図とともにスギやヒノキが次々と競り落とされた。

 同市で木材の市売(いちうり)販売が始まったのは1956(昭和31)年。当地の有力原木生産業者が共同事業体として「新宮電柱木材協同組合木材市売部」を創設した。その後、利用度の増大に伴い公共性が重視され、新宮木材協同組合が中核となり66(昭和41)年、現在の原木市場が設立した。

 77(昭和52)年には全国植樹祭の一環行事として「第1回熊野木まつり」展示即売会を開催。以降、毎年4月の恒例記念行事となっており、熊野材のPRや需要開拓などに取り組むきっかけとしている。

 今年の初市は、新宮紀宝道路事業に伴う道路拡幅工事のため昨年に引き続き上貯木場で開催。熊野川町や那智勝浦町、古座川町などから樹齢60年以上のスギやヒノキ約1200立方㍍(約7800本)が出荷された。

 開催に当たり、谷口社長は「新型コロナウイルスの感染者数が毎日のように更新されており、あらゆる業種が大変厳しい状況に直面していると思う。皆さんも健康に留意し、この局面を乗り切ってほしい」とあいさつ。

 「今年、新宮原木市場はお客さまに喜んでいただけるように基本に立ち返り、昨年以上に材の安定した出荷に努めてまいりたい。役職員一同、市場の運営にまい進していく所存」と誓いを新たにした。

(2022年1月23日付紙面より)

木材が次々と競り落とされた=22日、新宮市あけぼのの新宮原木市場貯木場
2022年01月23日
16 孤立させない環境を 下里中で薬物乱用防止講座 (那智勝浦町)

 那智勝浦町立下里中学校(布引伸幸校長)で18日、薬物乱用防止講座があった。3年生32人が同町にある、なごみ薬局の薬剤師で産業カウンセラーの小林仁さんから薬物の危険性などを教わった。

 小林さんは日本と国外の大麻所持などについて、合法な国でも日本国籍者には罰則になると述べ「国外でも大麻をみだりに輸出や栽培、譲渡、所持の行為を行った者は大麻取締法による処罰の対象となる」と説明。「覚醒剤」「コカイン」「大麻」「危険ドラッグ」の特徴や実害などもスライドを使用して紹介した。

 違法薬物では中学生の逮捕事例を取り上げ「薬物は皆さんのすぐそばまで来ています。インターネットではあたかも大麻は害が少ないなど、日本の法律が遅れているかのように書かれているサイトがある。実際は依存症に苦しんでいる人がたくさんいます」と語った。

 薬物の使用や再犯防止の方法として▽薬物を使わなくてもいられる社会▽再犯しない立ち直れる社会▽依存しなくても生きていける自信―を挙げ「誰にでも失敗はあります。いつでも何度でもやり直すことができる。周囲が差別や偏見を決して持たず、それを認めチャンスをあげることが大事」と伝えた。

 山本華子さん(14)は「小学校の時に受けた授業では分からなかったけど、薬物に手を出すと抜け出すことが難しいという恐怖を改めて感じました。若い女性が想像以上に使用していたことにも驚いた。少しでも薬に手を出さないきっかけにするためにも自分自身はもちろん、他の人たちを孤立させないような環境を意識していければ」と話していた。

(2022年1月23日付紙面より)

講座に耳を傾ける生徒たち=18日、那智勝浦町立下里中学校
小林仁さん
2022年01月23日
17 感謝胸にそれぞれの道へ 近大新宮高校で卒業式 (新宮市)

 新宮・東牟婁地域のトップを切って22日、新宮市の近畿大学附属新宮高校(池上博基校長)で令和3年度(第57回)卒業証書授与式が挙行された。卒業生108人が感謝を胸に学びやを巣立ち、それぞれの道へ一歩を踏み出した。

 本年度は新型コロナウイルス感染対策のため保護者・在校生の出席は取りやめ、オンラインで式の様子を中継した。

 池上校長が4クラスの代表者に卒業証書、各賞受賞者に表彰状を授与。式辞では「人に愛される人、人に信頼される人、人に尊敬される人になろう」の校訓の下で喜びを分かち合い、人間関係を築いてきた生徒たちの学校生活に触れ、「愛し愛される、信じ信じられる、敬い敬われる。この表裏一体の関係を大切にすることで、自らの充実した素晴らしい人生につながり、社会に貢献できる人に成長することができる」とはなむけの言葉を贈った。

 在校生を代表して濱田青葉君(2年)が送辞。卒業生を代表して岡地優希君が、個性豊かな同級生に囲まれた3年間の思い出を振り返り「この学校に入学して、みんなに出会えたことをうれしく思う」と語り、教職員、保護者、在校生へ感謝の気持ちを伝えた。

(2022年1月23日付紙面より)

拍手を受け学びやを後にする卒業生たち=22日、新宮市の近畿大学附属新宮高校
2022年01月23日
18 新好が優勝 第174回職場対抗ボウリング大会 
2022年01月23日
19 小川羊子さんが優勝
 なちかつGGCクラブ大会  
2022年01月23日
20 近大新宮が全国大会へ
 近畿高校空手道大会で好成績  
2022年01月23日
21 そのままの自分を受け入れて  高田小中で人権学習会  (新宮市 )
2022年01月23日
22 過去10年で最少の63件  21年和歌山県企業倒産状況  
2022年01月23日
23 黒いコウノトリ発見?  さらに珍しい鳥が飛来  (那智勝浦町 )
2022年01月23日
24 クチナシの実が色づく  新宮市・浮島の森  
2022年01月23日
25 交流図り学び深める  パステルアート教室に10人  (新宮市 )
2022年01月23日
26 収集ボラで社会貢献を  ペットボトルキャップ、古切手など  (紀宝町社協 )
2022年01月23日
27 時短要請に協力する飲食店に  1店舗1日2万円を支給  (紀宝町 )
2022年01月13日
28 岡さんと市村さんが受賞
 「ふるさとの田んぼと水」子ども絵画展  (北山小 )

 全国水土里(みどり)ネットが主催する「ふるさとの田んぼと水」子ども絵画展2021の審査結果がこのほど発表され、北山村立北山小学校(松本広明校長)の岡こころさん(6年)が文部科学大臣賞、市村亜莉朱(ありす)さん(同)が日本政策金融公庫農林水産事業本部長賞を受賞した。11日には同村大沼の村民会館で表彰式が行われ、山口賢二村長から表彰状を受け取った。

 絵画展は子どもたちに田んぼや農村に関心を持ってもらい、田んぼやため池、農業用水路などの風景、大切な水路を守っている人たちの姿を通して水の循環や環境保全への理解を促し、大人たちへのメッセージとして子どもたちのまなざしを届けることを目的に毎年開催している。

 今年のテーマは「新発見!わたしたちのふるさと自慢」。全国4120点の中から入賞6点、企業賞27点、入選150点、地域団体賞45点が選出された。同校では初めての応募となり、2部門で受賞。2人の作品は昨年12月4日から11日まで東京都美術館に展示され、今後は今月末まで村民会館に飾られる。

 表彰式では、松本校長が受賞までの経緯を説明し「北山小、中学校のみんなにとっても誇りであり、自信につながります」とあいさつ。山口村長が「報告を受け驚いたと同時に、大変うれしくなった。今後も応募を続け、再び素晴らしい賞が得られるよう頑張ってください」とたたえ、岡さんと市村さんに表彰状を伝達した。

 岡さんは「こんなにいい賞を頂けてうれしいです。地域の特産物であるじゃばらを懸命に収穫している姿を伝えたいと思った。これからもいろんな作品で村のことを知ってもらいたい」。

 市村さんは「まさか自分が受賞できるとは思っていなかったのでうれしい。私が大好きな牛を育てている牧場の人を考えました。この先も絵など、たくさん描いていければ」と話していた。

(2022年1月13日付紙面より)

文部科学大臣賞を受賞した岡こころさん(左から2人目)と日本政策金融公庫農林水産事業本部長賞受賞の市村亜莉朱さん(同3人目)=11日、北山村大沼の村民会館(一時的にマスクを外して撮影)
山口賢二村長(右)から表彰状が手渡された
2022年01月13日
29 それぞれの視点で研究発表
 南紀熊野ジオパーク探偵団  

 南紀熊野ジオパークをフィールドに中高生が自然や環境について調査研究をする「南紀熊野ジオパーク探偵団」(団長=東垣(あずま・わたる)・南紀熊野ジオパークセンター長)の活動発表会が8日、オンラインで開かれた。漂着海洋ごみの調査に参加した県立新宮高校、海南高校、田辺高校の生徒や研究者ら約20人がそれぞれの視点で意見を交わした。

 昨年発足した同探偵団は「think locally, act globally(地域で考え、地球規模で行動)」をモットーに、地元が抱える問題解決に向けて生徒たちが自立的に考え、世界に情報発信していくことを目指している。本年度の研究テーマは「海洋環境を考える」で、昨年10月に有志の生徒らが新宮市の三輪崎海岸および白浜町の志原海岸で漂着海洋ごみの収集、分類、計量調査を実施した。

 新宮高校の坂本美波さん(2年)は社会科学の視点から、リデュース(ごみの発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)に向けて個人・企業が取り組むべきことを発表。「身近にある海のことですら知らないことが多かった。今後、国際交流の場で研究成果を発表する予定で、自分の視点を大事にしながら結果を伝えていきたい」と語った。

 寺地航琉君(同)と深瀬孔一朗君(同)は「生物に有害な環境ホルモンへの対策」と題し、両海岸で収集した環境ホルモンを含むと思われるごみの単位面積当たりの重さを算出して比較。「三輪崎海岸ではペットボトルが多かった」と言い、地域と協力してごみ収集に取り組む重要性を述べた。

 調査をサポートした京都大学学際融合教育研究推進センターの島村道代さん(地球環境科学博士)は、最新の研究にも触れつつ「昔は瓶などのリユースできる容器が一般的だったが、なぜプラスチックに置き換わったのか。経済合理性や歴史的背景を考えることも重要。環境ホルモンは、プラスチックへの添加物と、環境中に排出された殺虫剤成分DDTなどの汚染物質をプラスチックが吸着する作用の両面から考える必要がある」と言及。

 東団長は「とてもレベルが高かった。海洋ごみは漂着するものもあれば、太平洋で浮遊するもの、海底に沈降するものもある。世界規模の視野でも、ミクロの視点でも考える必要がある非常に面白い問題。皆さんの可能性は無限に広がっている。それぞれの視点を生かして研究を続けて」と講評した。

(2022年1月13日付紙面より)

生徒たちの研究発表の様子=8日
2022年01月13日
30 宇宙探究コース新設目指す
 串本古座高校で来年度から  (和歌山県 )

 和歌山県が12日、県立串本古座高校における普通科宇宙探究コース新設に向けた取り組みを来年度から始めることを発表した。

 小型ロケットの打ち上げ開始をきっかけとした県南部活性化のための取り組み。県教育委員会県立学校教育課と要する関係先との接点を複数有する県産業技術政策課が両輪となり、宇宙に関心を持つ生徒を県内外から呼び込んで生徒数確保を図りつつ同校魅力化プロジェクトを通して培っている地域との連携も生かして目的の達成を目指す。

 両課は2024年度に同コースを新設する着地点を見据えてロードマップを描いていて、22年度以降の全入学生を対象に総合的な探究の時間の単元として「宇宙関連学習」を導入し、併せて部活動における宇宙との接点の充実や関連イベントなどへの生徒参加を積極推進する。23年度普通科グローカルコース入学生を対象に選択科目「宇宙科目」〈2年生より選択可〉を暫定的に導入(コース新設に伴う再編の検討が今後あるため)し、24年度から普通科宇宙探究コースを選択できる筋書きとなっている。

 これら段階的に進む同マップの実現に向け、受け入れ側は22年度から2カ年計画でカリキュラムや広報戦略の検討を始め▽宇宙教育の専門的知見を有する者を教員として採用▽有識者や企業などによる検討委員会運営▽受け入れ環境の整備―など要する素地の構築を進めるという。宇宙専門のコース設置は公立高校では全国初の事例という。

(2022年1月13日付紙面より)

24年度の普通科宇宙探究コース新設が目指される県立串本古座高校=12日、串本町串本
2022年01月13日
31 正月の縁起木を展示中
 宇久井ビジターセンターで  (那智勝浦町 )

 正月に飾る赤い実といえばセンリョウ・マンリョウ・アリドオシ。「千両万両有り通し」の語呂合わせで、三つを並べて金運アップや商売繁盛の願掛けをする縁起物だ。

 アリドオシはとげのある見た目から別名「オニノメツキ」ともいい、一両に相当するのだが、実はその間の十両と百両に当たる植物もある。

 十両はヤブコウジ、百両はカラタチバナという植物で、いずれも冬につややかな赤い実を付ける常緑低木である。より大きな赤い実を付けるミヤマシキミを「億両」と呼ぶ人もいる。豪華な名前は、色味の少ない冬の森で、枝いっぱいに付いた実を大金になぞらえたからだそう。

 那智勝浦町の環境省宇久井ビジターセンターでは現在、一両、十両、百両、千両、万両の五つの縁起木を並べて展示している。カラタチバナ以外は全て園地内で採取したもので、同センターは「それぞれの植物の違いなどを見比べてもらえれば」と呼び掛けている。

 開館時間は午前9時~午後5時で、水曜日休館。

(2022年1月13日付紙面より)

赤い実を付けた縁起木=11日、那智勝浦町の環境省宇久井ビジターセンター
2022年01月13日
32 自分で考えてから行動しよう  キッズ〝輝け〟スクール  (相野谷小 )
2022年01月13日
33 紀和警察官駐在所が完成  老朽化で建て替え  (熊野市紀和町 )
2022年01月13日
34 今年一年の平穏を祈願  初薬師の法要営む  (紀宝町 )
2022年01月13日
35 見守り兼ねて会員宅を訪問  すみれ町内会がマスク配布  (新宮市 )
2022年01月13日
36 「来年こそは盛大に」  青彦神社で春の例大祭  (那智勝浦町 )
2022年01月13日
37 規模縮小し神事と獅子舞斎行  市野々王子神社例大祭  (那智勝浦町 )
2022年01月13日
38 感謝忘れず大人への一歩  新成人を祝う会に18人  (田辺市本宮町 )
2022年01月13日
39 愛好者180人プレーに臨む グラウンドゴルフ「新年初打ち大会」 (串本町)
2022年01月13日
40 110番の適正利用求む  道の駅橋杭岩で街頭啓発  (串本警察署 )
2022年01月13日
41 稽古の成果いち早く披露  田並で創作中の作品公演  (串本町 )
2022年01月13日
42 お悔やみ情報
  
2022年01月01日
43 絆つなぎ、次世代へ
 手を取り合い、里山守る「くまの里山」  (那智勝浦町 )

 「鍋のふたはまだ開けたらあかんで」「うどんは何味にするん」「みんなで食べるとおいしいよ」「残りは家に持って帰ったらええよ」「今日は忘年会やね」—。和気あいあいと屋外で昼食を作り、広大な自然をさかなに食事を楽しみ、会話に花を咲かせる人々。古き良き日本の原風景が今もここには残っている。この里山を守るべく活動する那智勝浦町高津気(こうづけ)の「くまの里山」を取材した。

 「くまの里山」は2007年に高津気地区の清源寺(せいげんじ)に覆いかぶさろうとする竹から寺を守るために組織された「高津気竹灯りの会」が母体。その後、農業を身近なものとし、里山に残る食文化や先人の教えを次世代につなぐとともに、耕作放棄地の再生と里山の保存のために新たな組織の存在が必要となった。

 しかし、会員で協議した結果、里山を守るには人口が少なく、高齢化率の高い同地区だけでは難しいと判断。町内外の人々の力を借りながら活動していきたいという思いから「くまの里山」と名付け、新組織が発足した。

 91歳を迎える最高齢の東阪景子さんを含む、各地域から21人の会員が集まった。

 その後は和歌山県の「農業農村活性化支援モデル事業」などを活用し▽オーナー制トウモロコシ栽培▽加工を目的としたラベンダー栽培▽食品加工を目的としたタカナやサトイモ、ニンニクなどの農作物栽培▽オーナー制タマネギ栽培▽サトイモを使用した茎漬け講習会▽たくあん漬け講習会▽子ども参加型めはり寿司教室▽生け花やミニ門松、しめ縄教室▽ジャガイモ収穫イベント▽しめ縄制作と販売▽サツマイモ収穫体験▽落花生収穫体験—など多岐にわたる活動を展開。

 オーナー制タマネギ栽培や落花生の収穫体験では多くの親子が参加する人気の催しとなっており、参加者が自然と触れ合い、農業や耕作放棄地への理解を深める機会につながっている。

 また、総延長が150㌔あるといわれ、保存状態が良い同地区の熊野列石(通称・しし垣)も有名。各地からの見物者も多く、会員らは保全活動にも尽力している。

 2020年には橋本市の学校法人きのくに子どもの村学園のきのくに子どもの村中学校の生徒を迎え、会員らが案内。しし垣の歴史や役割、里山の素晴らしさを伝えた。

  □     □

■数ある課題と向き合う



 力を合わせ日々奮闘している「くまの里山」だが、増え続ける耕作放棄地や組織の運営資金、押し寄せる高齢化の波などを課題に挙げる。それらの解決には屋台骨である組織の拡充が必要となり、一定の収益を見込まなくてはならないという。

 代表を務める西美恵子さんは「まずは会員のお弁当代だけでもなんとかしたい。お年寄りから子どもたちへ文化や歴史を継承していくためにも組織づくりが重要になる。皆さまが楽しみながらできる手仕事や新たな事業にも力を入れたい」と抱負を述べる。

 西さんら中心メンバーは、乾燥した麦わらを糸でつないで作るフィンランド伝統の装飾品「ヒンメリ」にも目を向けている。国内でも人気が高まっていることから、里山の耕作放棄地を生かして麦を育て、その麦をヒンメリの作り手に提供することも模索していると話す。

 高齢化については、活動の原点である農業をけん引してきた高齢メンバーが、年齢や肉体的な問題から作業に加わることができない現状もある。「くまの里山」ではその高齢メンバーに各体験の際に提供する振る舞い作りや受付係など、これまでとは違った役割で活動に参加してもらっている。

 互いにさまざまな形で支え合って里山を守り、生きがいを創出する姿は新たな「農業と福祉の連携」につながるのかもしれない。

  □     □

■今後の挑戦について



 今後は西さん所有の空き家を拠点とし、「先進地への視察」「地域住民の居場所づくり」「アサギマダラの休憩所整備」「防災と郷土食づくりを掛け合わせた体験」「会員制交流サイト(SNS)の活用による里山の発信」などにも取り組んでいく方針だ。

 西さんは「里山が元気でないと産業廃棄物の捨て場になる可能性が高い。そうなると海へとつながる水源が汚染されてしまう。山村と漁村は水の絆でつながっている」と語った。

 会合の際は屋外で火をたいて調理し、自然の中で食卓を囲むのが「くまの里山」流。会員同士もおかずを持ち寄り、食べきれないほどの料理がテーブルに並ぶ。

 それらの料理に彩りを添え、味を向上させるのがあふれる笑顔と会話の数々。まばゆいほどの明るさは希望となって、太陽とともに里山を照らし続けていくことだろう。山でつないだ手と絆が清流とともに海に流れ込み、里山と地域をつなぐ懸け橋となるはずだ。

(2022年1月1日付紙面より)

環境や文化を次世代へつなぐため奮闘する「くまの里山」の皆さん
町内外から多くの人々が参加する体験会
会合の際は屋外で調理
日本の原風景がここにある
2022年01月01日
44 孤立させない 今、必要な場
 寄り添い奮闘する現場「ママが元気でいて」  (コロナ禍の子育て支援 )

 コロナ禍の今、親と子を孤立させないために必要な子育て支援は何か―。核家族化と女性の社会進出で子育て家庭の孤立化が叫ばれる中、コロナ禍はそれに拍車を掛けた。初めての育児に周囲の手が差し伸べられず、同じ立場の母親たちと悩みを共有できないのは苦しい。再び感染拡大しても、親子の駆け込み寺的役割を果たす、子育て支援の場は守らなければならない。母親たちに寄り添いながら奮闘する現場の声を聞いた。

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◇他愛もない話を

 よく晴れた昨年11月の午前、紀宝町子育て支援センターには10組ほどの親子が訪れ、0歳から2歳までの子どもたちが思い思いに遊んでいた。そばでは母親とベテラン保育士が日々の成長を語り合ったり、母親同士で会話を楽しんだりしている。見守るセンター長の保育士・淡海順子(たんかい・のりこ)さんは「他愛もない話をして、笑って遊んで、子どもと共感し合える場所。お母さんが元気であってほしい」と目を細める。

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◇悩み解決することも

 センターは町立図書館との複合施設「紀宝はぐくみの森」2階で平日に開設されている。遊び場には2~3人の保育士が常駐し、子どもにさまざまな遊びを提供したり、保護者の話を聞いたりしている。

 育児の悩みが話題になることはよくあるが、その場にいる母親も会話に加わって「うちもそうだったよ」と解決することも。淡海さんはそんな様子を何度も見てきた。「悩みを抱えて悶々(もんもん)としていたのが、『あ、そうだったのか』と気持ちが軽くなる。一人で抱え込まないで、ここで一緒に子育てをしたい」。

 相談を受けたときは悩みに寄り添うように心掛け、初めて訪れた保護者には「よくここまで育てましたね。頑張りましたね」とねぎらうという。

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◇多くの母親が支持

 2020年度は延べ4655人の利用にとどまったが、コロナ禍前は1万人前後が訪れていた。「明るい雰囲気」「居心地が良く、安心感がある」との声が多く、近隣の市町からわざわざ足を運ぶ人も多い。講習を受けた地域の人が子どもを一時的に預かるファミリーサポートセンターは、同年度で1039件の利用があった。町が1時間当たり300円を補助しており、1時間当たり400円(平日午前9時~午後5時の場合)の負担で利用できる。

 かづこ助産院(那智勝浦町)の本舘千子(もとだて・かづこ)さんは「紀宝町は近隣に比べて支援センター、ファミサポの利用がとても多く、子育て環境が整っている」と注目。「長くセンター長を務める淡海先生の人柄もある。お母さんたちのために、という思いが反映されている」と支持される理由を語る。

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◇2カ月の閉所、そして再開

 昨年夏、町内で新型コロナウイルス感染症患者が初めて確認され、緊急事態宣言も出たことでセンターは2カ月間、町内の他の公共施設とともに閉所された。ただ、ファミサポは子育て家庭への重要な支援と捉え、継続した。

 全国的に感染拡大していく中、町内で予定されていた子育て関連の集まりも全てなくなり、普段利用している母親たちの間には「どこにも行き場がない」と不安が広がった。

 閉所中は、12年から毎年度引き継がれてきた母親たちのグループ「ママサークルさくらんぼ」が、無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループ機能を使い、利用する母親に向けて情報発信をしてくれたという。

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◇母親に寄り添う活動

 子育て家庭の孤立化を不安に思った助産院の本舘さんは、民間である強みを生かし、行政がカバーできない部分に目を向けた。ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」による「子育て女子会」をしたり、普段は各市町で行っているベビーマッサージを院内で少人数開催したりと柔軟に対応し、LINEでの気軽な相談も呼び掛けるなど母親たちに寄り添う活動を続けている。

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◇新しい生活様式で

 宣言解除に伴って10月に再開したセンターでは今、滅菌器によるおもちゃの消毒、室内の定期的な換気、検温と消毒などの対策を取りながら、新しい生活様式で運営している。再開直後は多くの親子が訪れ、再会を喜んでいたという。第6波も懸念されているが、必要な感染対策を続けていくしかないと考えている。

 月に1度開催されている「ママサークルさくらんぼ」の行事も10月から再開。センターには子どもたちのにぎやかな声が響き、母親たちは表情を和らげている。淡海さんは「お母さんが元気で明るく楽しく。そして、笑うのっていいなと感じてもらいたい。気軽に話ができる場であればいいと思う」と語る。

(2022年1月1日付紙面より)

母親たちと語り合うセンター長の淡海順子さん(右から4人目)=紀宝町神内の町子育て支援センター
ママサークルの行事を楽しむ子どもたち
2022年01月01日
45 誘客幅拡大目指して動く
 南紀月の瀬温泉ぼたん荘  (古座川町 )

 古座川町が地域振興拠点として設け、古座川ふるさと振興公社に運営委託する「南紀月の瀬温泉ぼたん荘」。滞在機能を備えた交流施設として近年、時代相応の変化が進んでいる。今後の展望を探ってみた。

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滞在機能備えた多目的施設



 南紀月の瀬温泉ぼたん荘は1996年開業。本館2階に滞在前提の和室(8帖)10室があり、1階には宴会・会議場やレストラン、開放的で木のぬくもりに満ちたオープンスペース「ロビーカフェ」や土産物ショップなどを集約。渡り廊下でつながる別棟の温泉館はpH9・7のアルカリ単純泉を引き込んだ入浴環境があり、本館向かいには宿泊や会議、個展、講演、コンサートなど多目的に活用される「いろり館」がある。その横にはゲートボール(GB)場用途の芝地があり、50台分の駐車場を含めた全体が一施設となっている。

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RVパーク認定目指して



 建設当時の需要を見据えた形を今も宿すぼたん荘だが、25年を経て需要が変遷。とりわけGB場の活用が見込めない状況となり、町は用途変更へと動き出している。そのキーワードが「RVパーク構想(※)」。昨年に関係予算を計上し、本年度中にGB場を13台分の駐車区画と給電設備、ならびにコインランドリーの新設を完了し次年度に同パーク認定を目指す。

 町地域振興課は旅行を含めた時代変遷に加え、長引くコロナ禍により旧来の形で収益の回復を目指すのは難しいと認識。町内近隣はもとより遠方からも利用を引き込む必要性を重視し、その足掛かりとして前述した認定を目指すという。

 他方、最近はコロナ禍で低迷しているが平年は新成人のつどいなど行事利用の多いいろり館は、外周ウッドデッキに続いて屋根部分の改修が新年から本格化する。これも今年進む変化の一つとなっている。

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利便高めつつ体制を強化



 運営委託を受ける公社は町と連携し、町内の65歳以上を対象にした入浴回数券の申請受け付けを前年度から開始。本年度は175件の申請を受けているが、地理的な課題が町民を優遇から遠ざけてしまう状況に直面している。できることから緩和を。本年度はリフレッシュ目的で親しまれるグループ対象の送迎付き食事プランに温泉入浴や買い物支援を付与する工夫を始めた。昨年10月に最初の利用があり、今年はどう軌道に乗せるかが注目される年。同公社も今が完成形ではなく、さらに使いやすい形を目指すと意気込んでいる。

 ハード、ソフトの両面で時代相応の変遷に動き出しているが、これら新たな方向性の担い手確保と人材体制の確立を今後に重視するのが関口隆男理事長。即回復の策はいまだ見えないがスタッフ一丸で直面する過渡期を支え、中期的な視野で新たな方向性への適応を目指したいと思いを語る。

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※RVパークとは…キャンピングカーなどで快適に安心して車中泊ができる施設。

(2022年1月1日付紙面より)

誘客幅拡大を目指して動き出している南紀月の瀬温泉ぼたん荘の本館
気軽に立ち寄れる環境を目指して力を入れているオープンスペース「ロビーカフェ」
温泉館内にある浴場。古座川弧上岩脈由来の湯に親しめる(古座川ふるさと振興公社提供)
多目的スペースのいろり館など。手前のゲートボール場は今年、RVパーク環境に切り替わる
本年度から始めた送迎付き食事プラン付帯の買い物支援の様子(古座川ふるさと振興公社提供)
2022年01月01日
46 向井兵輔氏をご存じですか?
 水産共同支えた立役者  (太地町 )

 「向井氏は郷土愛に満ちた人だったと推測する。水産共同組合の一時期を支えた立役者です」と太地町歴史資料室研究員の江﨑隆司・同町公民館長は話す。大正7年にはコメの価格の急騰による米騒動が起きるなどして、国内が不景気となっていた時代。経営が困難となっていた当時の太地水産共同組合(以降、共同組合)を支えるため、太地漁業株式会社を立ち上げた向井兵輔(ひょうすけ)氏をひもといてみる。

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■カナダで会社起こす



 明治4年に太地村に生まれた向井氏。数年後には長崎県の永野万蔵氏が日本人で初めてカナダ西部のブリティッシュコロンビア州へ渡っている。明治28年、向井氏が24歳の時に、親類の太田音市氏と共にカナダへ渡る。二人はフレーザー川の河口でサケ漁に従事した。

 この時すでに紀南地方からも多くの移民者が海を渡っており、太地や下里の郷友会も結成されていた。二人はサケ漁をやめ、バンクーバー島中部にあるナナイモに移った。根来勝之助氏、松本鉄蔵氏と共にニシンの肥料製造業を始めたが2年後、放火によって工場は全焼した。

 モレスビー島では新潟県出身の池田有親氏が立ち上げた銅鉱山の会社で働いた。明治42年に二人はサケ・ニシンの塩蔵加工や輸出業に取り組み、アワビやハマグリの缶詰業も営むこととなった。

 二人は渡航以来、さまざまな事業に挑み続け、日本人排斥にも負けることなく、ようやくこの地で成果を上げることができた。向井氏は商用で度々、帰国して東京や神戸の輸出入業者や海産物業者との取り引きを行うとともに、帰郷の際には呼び寄せ人との折衝に当たっていたという。

 父たちの背中を追い、海を渡った向井氏の長男・政太郎氏や太田氏の長男・琴太郎氏も事業を助けた。大正9年に帰国した政太郎氏は新宮中学校で事業の様子や見聞などを講演したとされる。

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■太地水産共同組合を助ける



 組合員共同の利益を図るとともに村の経済を援助することを目的とした共同組合が大正5年に発足。しかし、不漁続きで経営的に困窮を極めていたという。

 共同組合は鰤(ぶり)敷網の契約期間が満期になった際に営業権を太地漁業組合に返還するか、新会社を設立し運営するかで揺れ動いていた。

 そんな中、大正11年に帰国後の向井氏と太田氏に資本協力を依頼。二人は快諾し、同年に向井氏を社長とした太地漁業株式会社が発足した。同社は共同組合から船や網など、多くの資材を買い取った。その際に得た金を元に共同組合は同社の株を購入。組合員に1株ずつ分配して生活をつなぐこととなった。

 同社は新しい船を建造し、漁獲高の向上に努め、好成績を挙げた。昭和6年の営業権の契約終了時、共同組合は臨時総会を開き、再び鰤敷網を操業することを決定。その旨を向井氏は承諾し、同社は解散。再び、共同組合が鰤敷網を操業することとなった。

 移民であった向井氏と太田氏の二人の郷土愛や経験が共同組合の危機を救い、その結果、町民への恩恵にもつながった。

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■息子たちは



 父二人が帰国し、その後を託された政太郎氏らは事業を引き継ぎ、キルドナンで「グリーンコーブ鹽魚(えんぎょ)製造所」を開業。事業は発展を遂げたが、太平洋戦争勃発で中断。工場や船舶など全財産が強制的に処分となった。

 開戦の翌年、日系人に「夜間禁足令」が出され、バンクーバー島にいた3300人余りの日系人が収容所に送られてしまう。

 政太郎氏らが一時帰国中に開戦となり、カナダへの渡航はかなわなかった。戦後、カナダ政府と政太郎氏らは財産の返還交渉を行うも、返還や補償には至らなかった。

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■向井氏をご存じですか?



 江﨑館長は「経営が大変だった水産共同組合が鰤敷部門を頼んだ際、向井氏は快くそれを引き受けた。太地と共同組合は切っても切れない存在。組合の経営が持ち直した後に、快くそれを返している。組合が維持できたのも太地漁業株式会社と向井氏がいたからこそ。今後は向井氏を知る方が増え、顕彰されることを望んでいる」と語る。

 向井氏を曽祖父に持つ、向井マリトさんは「築100年となる立派な家屋も残していただいた。大変な時代を生き抜かれたのだと思う。誇らしい存在です」と祖先を思った。

 昭和7年に同社は鰤敷網や海を見下ろすことができる燈明崎(とうみょうざき、町立太地中学校体育館裏近く)に「向井翁遺徳碑」を建立した。郷土の海も世界中の海につながっている。

 59歳で生涯を終え故郷の地に立つ向井氏は、どのような思いでこの景色を見つめているのだろうか。多くの人々が彼を知ることで、その心の中に、彼の郷土への思いや魂が生き続けるはずだ。

(2022年1月1日付紙面より)

(左から)太田音市氏、向井兵輔氏、太田琴太郎氏(太地町歴史資料室提供)
グリーンコーブ鹽魚製造所のラベル(同提供)
当時の作業の様子(同提供)
貯蔵庫にサケが並ぶ(同提供)
長年海と共に生きた向井氏の遺徳碑(同提供)
2022年01月01日
47 多彩さ見せるロケット振興
 年末ごろの打ち上げ期待し  (串本町 )

 串本町田原などでほぼ完成したとされる民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」。地元内外が注目する小型ロケット「カイロス」初号機の打ち上げについてスペースワン株式会社は昨年末、当初予定から1年遅れて今年年末ごろを目指して取り組む考えをスペースポート紀伊周辺地域協議会に伝えた。その瞬間を期待して、射点がある串本町ではロケット振興が日に日に多彩さを増している。

 「ロケットといえば串本」を印象づけるため県と町が両輪で始めた振興企画「宇宙シンポジウムin串本」。本州最南端から最先端情報を発信するという趣旨で年1回、回を重ねている。

 第2回以降、感染症予防のため県に主導権を委ねている町だが、おととしの秋に町独自の振興を始動。町民対象ワークショップ(WS)で基本情報の普及を図り、昨年2月にキックオフ企画「宇宙ウイーク」を展開して振興の一歩を踏み出した。その一端が射点近くからのサーチライト投光で、天候に恵まれなかったが、田原海水浴場が望める町域東側広範で見物できることを予見させた。

 この時に発表されたスペースタウン串本ロゴは、町企画課ロケット推進室を窓口にして7月から使用許諾申請の受け付けを始め、活用商材の開発が進んでいる。南紀串本観光協会は先導的にロケットサイダーやロゴ入りシャツなどを商品化。町もピンバッジなどさまざまなグッズ開発を進め、宇宙産業のまちづくりに取り組む串本町の応援サポーター『宇宙兄弟』とのコラボレーションによる盛り上げにも力を入れている。

 紀の国わかやま文化祭2021の一環で日本初民間ロケット射場開始プレイベントも実施。宇宙飛行士講演やそのダイジェストの期間限定オンライン配信、模型などの展示で「宇宙ウイーク」に続く接点をつくった。

 年末には新年にもかかる町民対象WSの第2弾をスタート。同室は「いざ打ち上がるとなると、今の町職員規模では見学の受け入れだけで手いっぱいになってしまう。その前後でできることを考えて、今後とも盛り上げていきたい」と思いを語る。

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官民それぞれに振興の歩み



 3カ年計画でリノベーションが始まった旧役場古座分庁舎は本年度末に3階8Kシアターと1階玄関が先んじて仕上がり、別事業で2階サテライトオフィスも完成予定となっている。コミュニティバス佐部・上田原線でロケットの絵でラッピングされたノンステップ車両を導入。教育面で県宇宙教育研究会がモデルロケット製作、打ち上げ体験を重ねていて、昨年は学校教育領域での試行にも取り組んだ。県立串本古座高校のCGS部が小型ロケット「カイロス」にちなんだ独自キャラクターを生み出して盛り上げを意識し、生徒有志による缶サット甲子園への挑戦も始まっている。

 ロケットにちなんだ飲食メニューの開発と発表、ロケットが描かれた大型観光バスの運行、小型ロケット模型の寄贈など、盛り上がりも一段と多彩になった昨年。田嶋勝正町長は、2016年にスタートした発射場進出が今こうして盛り上がっているのは用地を提供してくれた地権者をはじめ各関係者の協力あればこそだと喜び以上に感謝を掲げ、「ロケットが放つ光は必ず串本を明るく照らしてくれる。打ち上げ時には県とも調整して混雑の緩和に努め、ロケットから得られる学びの裾野の広さを生かして学力レベルが上がったといわれるよう教育にもつなげていきたい」と今年の挑戦への意気込みを語る。

(2022年1月1日付紙面より)

スペースポート紀伊の総合司令塔一帯。昨年末時点でほぼ完成に達している
振興企画「宇宙シンポジウムin串本」(上)や「宇宙ウイーク」(下)の様子
スペースポート紀伊射点付近からのサーチライトによる投光
実物大「カイロス」懸垂幕
宇宙ウイーク以降、数を増しているロケット関係グッズ類
ロケットの絵を背負って地元を盛り上げているコミュニティバス(上)や大型観光バス
県宇宙教育研究会による学校教育領域でのモデルロケット製作・打ち上げ体験の試行の様子
美術造形工房「BAS Fronti」寄贈の「カイロス」模型(現在は役場に常設)
2022年01月01日
48 新年度から統合、運用開始へ
 新宮警察署・串本警察署  

 新宮警察署と串本警察署は今年4月1日(金)に統合し、串本警察署は「新宮警察署串本分庁舎」として運用を開始する。串本署が管轄する串本町と古座川町は新宮警察署に、すさみ町は白浜警察署の管轄となる。統合は1968年以降半世紀ぶりとなる。

 県内の警察署ごとの警察官1人当たりの年間処理件数(刑法犯認知件数)は平均2・7件。しかし、串本警察署は1・2件と、他の警察署に比べて少なくなっている。また、交通事故発生件数についても0・5件(平均1・1件)、110番通報の受理件数も14・9件(平均35・2件)と少なくなっている。

 現在地で2005年に供用開始となった串本警察署は津波浸水域に位置しており、南海トラフ巨大地震発生時には車両や装備資機材の流失や浸水などで警察機能が失われてしまう可能性も指摘されている。

 統合はそういった現状に対応するためのもので「警察官の負担の平準」「警察機能の喪失回避」を図るとともに、「マンパワーの集中的運用」を目指す目的もある。

 統合により新宮署の管轄エリアは新宮市、田辺市本宮町、那智勝浦町、太地町、北山村、古座川町、串本町となり、面積は1・62倍、人口は1・37倍となる。

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■何が、どう変わる?



 統合により、約100人から約140人体制へと、人員が増員される新宮警察署。主に事件事故を担当する課の体制を強化するほか、夜間休日の当直体制も強化される。

 うち、一定数の警察官は串本分庁舎に配置され、刑事事件や交通事故の初動対応に当たる捜査員2人も配置(24時間常勤)。パトカー1台の増強も予定されている。発災時に初動対応に当たる災害対策要員2人を代替指揮所に配置する予定だ。

 また、運転免許関係(更新、記載事項変更など)の手続き、交通許認可関係(自動車保管場所証明、道路使用許可など)、生活安全許認可関係(銃砲、風俗営業、古物営業、警備業など)の申請、落とし物(遺失物、拾得物)、警察安全相談の届け出などの行政サービスは継続となる。新宮市、田辺市本宮町、那智勝浦町、太地町、北山村、古座川町、串本町の各交番・駐在所も引き続き存続される。

 しかしながら、串本、古座川両町に存在する交番や駐在所、分庁舎配属の警察官を合わせると現状の約半数となる予定。津波による浸水被害が想定されている古座交番、和深、田並、大島の3駐在所については、当面の間、夜間の勤務員を引き上げるとのこと。夜間パトロールを強化するなど、新宮警察署を挙げて治安維持に努めていく計画だが、住民には治安の低下や初動対応などについて不安視する声もある。

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■デメリットも周知が必要



 前述したように、統合の目的は▽負担平準化▽警察機能の喪失回避▽マンパワーの集中的運用—とされているが、新宮警察署の山田守孝署長は「住民の不安を払拭(ふっしょく)するためには、統合のデメリットもしっかりと周知していく必要がある」と口にする。

 昨年3月下旬から4月下旬にかけて実施されたパブリックコメントでは「大規模地震・津波で国道42号が寸断された場合、新宮警察署員は串本町に来ることができないので、串本警察署がなくなったときは、初動対応に当たる警察官が少なくなってしまうのではないか」「津波被害に遭うのであれば、なぜ現在の場所に警察署を建てたのか」「いつ発生するか分からない津波被害に備えるよりも、日々の生活の不安解消を優先すべきではないか」「高速道路が開通すれば(新宮警察署から串本町などの)現場への時間短縮にもなるが、それまで(統合を)待てないのか」「令和3年度に串本町においてロケットの打ち上げが予定されており、多くの観光客などの来町が予想される。そのような時期に串本警察署がなくなると、交通渋滞、交通事故、防犯面において不安がある」などの意見が寄せられた。

 山田署長は「初動対応や災害対応など、とにかく『頑張る』としか言いようがない。しかし、いくら『頑張る』『大丈夫だ』と言ったところで近くに警察署がなくなるといった住民の不安を払拭することは簡単ではない」と話す。

 今年、串本町田原で民間ロケットの打ち上げが予定されており、紀伊半島一周高速道路の全線事業化も決定している。ロケット打ち上げや道路の開通により人流が増加し、交通事情や治安情勢が変化することが考えられる。

 「住民に寄り添った警察行政」とは。警察署の再編がもたらす弊害とは、利点とは。今、4月1日の新宮警察署、串本分庁舎の運用開始に向けて準備が進められている。

(2022年1月1日付紙面より)

新宮警察署
串本警察署
2022年01月01日
49 走り出す、「わがら広角」  広がる、支え合いの地域づくり  (新宮市 )
2022年01月01日
50 いつまで待たすんや!  寅年の今年こそ優勝を!猛虎魂!!  (三佐木虎の会 )
2022年01月01日
51 熊野の匠を訪ねて  ②今日もシロアリと向き合う  (那智勝浦町・尾屋勝夫さん(オヤシロアリ技研) )
2022年01月01日
52 M地記者の冒険  八十八カ所、お遍路へ。  
2022年01月01日
53 佐藤春夫から中上健次へ その100年の系譜 (春夫生誕130年、中上没後30年)
2022年01月01日
54 「虎図」に隠された奇想  長沢蘆雪の生涯と熊野  
2022年01月01日
55 アフターコロナ。動くか、熊野。  熊野地方9市町村のリーダーが語る、「熊野の2022年」  (Kumano Summit K10 )
2022年01月01日
56 翁が愛した「飛鳥山」 渋沢栄一ゆかりの地と熊野信仰 (新宮市)
2022年01月01日
57 積み上げる実績で継続目指す  今年はJGCの再認定審査年  (南紀熊野ジオパーク )
2022年01月01日
58 10市町村から大集合!  キャラクターズサミット「C10」  
2022年01月01日
59 熊野の匠を訪ねて  ①もんちゃんとみっちん  (新宮市・浅井もと実さん、髙橋美智子さん )
2022年01月01日
60 先輩の思いを胸に日々精進  新宮高校サッカー部100周年  
2022年01月01日
61 移住×観光  きらりと光る地域の魅力  
2022年01月01日
62 「M地十景」ご堪能あれ  独断と偏見で選ぶ地域の景色  
2022年01月01日
63 地元の魅力を配信したい  紀宝町出身・向井雅喜さん  (オンラインゲーム「Apex Legends」アジアチャンピオン )