愛知県犬山市の博物館明治村内に立地する「博物館明治村簡易郵便局」(重要文化財)は1909(明治42)年、三重県宇治山田市(当時)に建築。69(昭和44)年に現在地に移築されており、明治時代の木造郵便局舎として現存する唯一のものとされている。しかし、ここ新宮市にさらに古い木造郵便局舎があったとしたら?
新宮市丹鶴にある「丹鶴ダンス教室」は、郵便局として1905(明治38)年、現在の仲之町アーケード入り口(国道側)付近に建設。29(昭和4)年、丹鶴商店街にある「ホテルニューパレス」付近に郵便局が新設されたことに伴い現在地に移築され民間に払い下げられた。
「移築されたからこそ46(昭和21)年の昭和南海地震による火災焼失を免れた。近代の新宮のまちを語る上で貴重な明治建築では」と、熊野学研究委員会や市文化財保護審議会の委員を務める中瀬古友夫さんは話す。戦後、そして震災後、同市では住宅が不足。同建物も一時アパートとして使用されていたという。
故・湯川運(はこぶ)さんが同建物を管理するようになったのは53(昭和28)年。建物の裏手部分はダンスホールとして増改築され、昭和30、40年代は多くのダンス愛好家や若者などでにぎわいを見せた。市出身の芥川賞作家・中上健次の小説にも度々登場する、いわばまちの「名所」だった。
現在、同建物に一人で居住する和子さん(87)は高知県出身。ダンスを通して運さんと出会い、結ばれた。「主人は1年ほど大工の仕事をしていたので建物の修繕はよくしていました」。今は手付かずで…と和子さんは言うが、ホールには運さんとの思い出や昭和のエッセンスが色あせることなくあふれている。
ホールの広さは約20坪。照明や運さん手書きのダンスのリズム表などもそのままだ。「当時は70人もの人がここでダンスを楽しみました」。
中瀬古さんは「近くには旧チャップマン邸や旧西村家住宅、新宮城の『日本一短いケーブルカー跡』などがあり、城の地下に鉄道があるのもここだけ。建物は明治期の建設を経て戦後の市民の生活を残している。増築部分は『昭和レトロ』も感じさせてくれる貴重な建物」と保存を訴える。
増築や修繕がなされてきた「丹鶴ダンスホール」。「明治時代の木造郵便局舎として現存する」の定義に当てはまるのかどうかは専門家が判断するところではあるが、例えば玄関ドアが「〒」モチーフになっているなど、建築当時の姿を色濃く残す「文化財」であり、近代新宮の歴史が凝縮された歴史的価値の高い建物であることに疑いの余地はない。
(2021年8月13日付紙面より)
コロナウイルス感染症緊急対策 (新宮市 )
新宮市が、新型コロナウイルス感染症緊急対策としての飲食店などに対する「休業協力のお願い」の事前登録期間が11日に終了し、市内312店が申請した。本来なら帰省客や観光客でにぎわい、繁忙期を迎える時季。今年はさみしいお盆休みとなりそうだ。
「休業協力のお願い」は、新宮保健所管内における感染拡大状況を鑑み、人流抑制やクラスター防止など、新型コロナウイルス感染拡大防止として市が打ち出した緊急対策。飲食店や喫茶店、居酒屋、カラオケボックスやバーなど、市内約500店舗を対象に、12日から16日(月)までの5日間の休業協力を呼び掛け(休業の実施は事業者判断)、協力店舗に10万円の協力金を支給する。
事前登録および協力金の支給には感染防止対策に取り組んでいることや、市が配布する「休業のお知らせ」チラシを店舗に掲示することなどが条件で、11、12日にはすでに店舗入り口などにチラシを掲示している飲食店が多く見受けられた。
休業を決めた居酒屋を経営する男性は「管内では飲食店から(新型コロナが)広がった。多くの飲食店が不安を抱えているのでは」。
休業に関しては「赤字は赤字でも多少なりとも補償があるなら。うちみたいに小さい店はいいが大きな店舗は本当に大変だと思う」。
一方、ほかの飲食店経営者は「お盆は前々から予約を頂いていたため協力はできなかった。しかしお盆休みがくることは誰でも分かっていたこと。協力したいが急すぎて対応できなかった店もたくさんあるのでは」と実情を語る。
「テークアウトといった売り方もある。個人的な意見だが、テークアウトのみ営業としてもらえる店は新聞紙面で特集を組んでもらい、協力金として費用を市が負担するなどの方法もあったのでは。スナックやバーなど仕方なく休もうと決断した店に、しっかりとした協力金を出すといった形も考えられたのではないかと思う」と話していた。
市は休業の実態確認のため、協力お願い期間中に見回り調査を実施。休業していないことが確認された場合には協力金の給付対象外となる場合もあるという。
(2021年8月13日付紙面より)
現庁舎完成後初の本会議で (串本町議会 )
串本町議会(鈴木幸夫議長、13人)の第2回臨時会が12日、役場議場であった。現庁舎完成後初となる本会議の実施で、くしもとこども園新園舎建設工事と菌床製造栽培大型共同作業場空調設備等改修工事の各工事請負契約案を承認した。
同園舎はJR串本駅の西にある海抜51・5㍍の高台に用地を確保し、許容園児数150人を想定した木造平屋建ての設計で建設を目指している。事業費は本年度と次年度に振り分けて予算計上する形としていて、6月実施の第2回定例会でまず4億2724万円が承認された状況にある。
入札は今月3日に実施し、16社による指名競争入札で町内の株式会社小森組が7億7860万円(税抜き)で落札。当局は税込みの8億5646万円で工事請負契約を結びたい旨を議案として上程し、議員は入札結果の分析状況、ウッドショックなど資材調達難や設計変更の見通しを質疑で探りつつ可決承認した。
工期は13日から2022年10月31日(月)まで。当局は23年1月の開園を予定していて、完成後の機能移転も含め余裕を持って目指せる状況となっている。
同作業場の空調設備等改修工事は老朽化に伴う更新整備で、第1回定例会で事業費3億2333万4千円を承認している。入札は今月3日に実施し、12社による指名競争入札で田辺市の株式会社第一テックが2億3400万円(税抜き)で落札。当局は税込みの2億5740万円で工事請負契約を結びたい旨を議案として上程し、議員は質疑、討論なく可決承認した。
同町産業課によると、資材調達難の影響が見込まれるが契約上は13日から来年3月25日(金)までを工期としているという。
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田嶋勝正町長は開会に先だって、新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした関係施設の臨時休業について、一部を除き今月31日(火)まで延長する考えを議員に説明した。
延長の対象は▽串本温泉浴場「サンゴの湯」▽串本町B&G海洋センターのトレーニングルーム(スポーツジム)▽大島プール▽トルコ記念館▽日米修交記念館▽樫野埼灯台旧官舎▽潮風の休憩所。同センターのプール(スクールを除く一般利用のみ)と串本町総合運動公園は運営委託するNAS株式会社との協議を経て、17日(火)から営業を再開するとした。
説明後、同町は12日付で前述した内容を公式ホームページなどで公表し、延長を確定した。
(2021年8月13日付紙面より)
土石流防ぎ、安全安心の確保を (紀宝町神内 )
熊野建設事務所は、紀宝町神内の2級水系神内川水系里地谷で通常砂防工事に取り組んでいる。2011年度から災害関連緊急砂防事業として着手し、本年度は3号えん堤の工事を進めており、9月末の完成を目指している。これまでにえん堤2基と渓流保全工195㍍が整備済みとなっている。
11年9月の紀伊半島大水害の際、渓流の浸食や土石流により家屋などに被害が発生するとともに、渓流の荒廃が進み、河床には不安定土砂が堆積した。下流の氾濫想定区域には人家19戸と町道があり、土石流による被害が懸念されるため、砂防えん堤と渓流保全工により土砂災害を防ぎ、地域住民の安全、安心の確保を図るための事業。
静岡県熱海市で発生したような土石流を防ぐために、砂防えん堤を築造しており、土石流が発生した際、一度に大量の土砂が下流に流れ出て、災害を起こさないよう土砂の流出をコントロールする役目を担う。
情報通信技術(ICT)を活用して、起工測量ではドローン撮影による3次元起工測量、設計データを3次元化した上で、衛星による位置情報を取得し、マシンコントロール機能を有した建設機械(バックホウ)で工事を進めている。
バックホウには3次元の設計データが入力されており、運転席では液晶モニターで設計データを確認しながら操作を行っている。
同事務所によると、県内のICT活用工事では土木工事にかかる延べ作業時間は全体で約3割削減されており、このような建設機械を使用することで、機械周辺の作業員との錯綜(さくそう)作業が大幅に短縮されていることから、作業の安全性が高まったとの意見が多数寄せられているという。
(2021年8月13日付紙面より)