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2019年01月31日
1 濁水対策など求め要望
 熊野川流域対策連合会が臨時総会  

 熊野川流域対策連合会(会長=田岡実千年・新宮市長)は29日、同市井の沢の新宮商工会議所で臨時総会を開いた。池原発電所(奈良県下北山村)の水利権更新(期限は2020年3月末まで)を前に、濁水対策などを求める要望書を本年度中に国、県、電源開発へ提出することを確認した。

 田岡市長は「熊野川流域は、紀伊半島大水害以降も毎年のように河川の氾濫、濁水被害が発生している。濁水の長期化、ダム湖内の堆砂、海岸浸食など、ダムに起因した環境被害は住民の生活を脅かすだけでなく、観光、上水道、製紙業、沿岸・内水面漁業など多方面に大きな影響を与え続けている。地域全体の課題として諸問題に取り組んでいきたい」と協力を呼び掛けた。

 「川の参詣道」として世界遺産に登録され、今年7月で15周年を迎える熊野川。世界遺産にふさわしい文化的景観として後世に引き継ぐことが求められているが、2011(平成23)年9月の紀伊半島大水害に伴う河川の氾濫や大規模な山腹崩壊などで濁水が長期化し、漁業や観光に影響が出ている。

 今回、国と県に提出する要望書では、人命を最優先としたダム運営、防災対策、環境対策、海岸侵食対策など8項目を訴える。事務局は、電源開発に対しては毎年要望書を提出しているが、定例的な回答に終始し動きが見えないとして、要望事項への対応可否や時期、理由を明確にするなどを求めるとともに、関係市町村との協議による解決に向けた適切な対応を強く要望するとした。

 副会長の山口賢二・北山村長は「今日は熊野川も十津川も大変澄んでいた。これが本来の熊野川の姿だと感じた。県、国、電源開発に広く要望活動をしていきたい」と話した。

 同会は和歌山、三重、奈良3県の熊野川流域14市町村の首長や議長ら60人で組織。熊野川水系の汚濁防止などを目的に活動している。

(2019年1月31日付紙面より)

会員らが出席して開かれた臨時総会の様子=29日、新宮市井の沢の新宮商工会議所
2019年01月31日
2 漁法発祥の地、紀伊半島で
 日本カツオ学会がフォーラム開催  

 日本カツオ学会が主催する「平成30年度カツオフォーラムin南紀」が26日、那智勝浦町体育文化会館で開かれた。同学会の川島秀一会長ら5人が登壇し、カツオひき縄漁を中心に、さまざまな発表があった。同町の堀順一郎町長、新宮市の田岡実千年市長や町内外から漁業関係者ら約100人が来場した。

 同会はカツオに縁のある地方で、資源問題を中心に毎年フォーラムを開いている。川島会長は冒頭で、「あらゆる漁法の発祥の地である紀伊半島での開催にあたり、今回は歴史的な広がりの中での地域間交流などテーマを広げようと考えた。昨年末の漁業法改正、日本のIWC(国際捕鯨委員会)脱退など、水産行政の動きは目まぐるしい。今回のフォーラムを、今後の学会の立ち位置や情報発信などの足掛かりとしたい」と話した。

 基調講演では、新宮市議会議長・屋敷満雄さんが「新宮市と気仙沼市の地域間交流事業」をテーマに話した。研究発表では、川島会長が「ケンケン漁の始まりと伝播」と題し、ひき縄漁(=ケンケン漁)の発祥から漁法の伝承、同漁法の特徴でもある「疑似餌」の文化的側面について言及。ハワイや千葉などでのフィールドワークの結果を発表した。

 続いて、50年以上にわたるカツオ漁の経験を持ち、カツオ資源問題に取り組む和歌山東漁業協同組合古座支所の杉本武雄支所長が、回復傾向の見えない日本沿岸のカツオの不漁について現状を訴えた。漁業法改正による沿岸漁業者の不利益も懸念した。

 和歌山県水産試験場の資源海洋部でカツオを専門に研究する小林慧一さんが、カツオの移動回遊などの生態調査結果を報告し、資源の減少について裏付けとなる根拠を示した。茨城大学客員研究員で全国沿岸漁民連絡協議会(JCFU)の二平章事務局長は、太平洋クロマグロの資源や漁獲規制問題について国際的な背景をひもといた。

 発表内容の詳細については後日掲載する。

(2019年1月31日付紙面より)

漁業問題について熱心に耳を傾ける=26日、那智勝浦町体育文化会館
川島秀一会長
杉本武雄支所長
小林慧一さん
2019年01月31日
3 仕組み踏まえて対策促す
 睡眠についての公開講座  (串本町 )

 串本町地域保健福祉センターで28日、睡眠についての公開講座があり、約50人が適度な睡眠の大切さなどを考える機会を得た。

 この講座は、同町保健センターが主催。町民の健康増進を目的とし有識者を招く形で定期的に開いていて、今回は睡眠をテーマにし和歌山県立医科大学名誉教授でもある浅香山病院臨床研究研修センター長の篠崎和弘さんを講師に迎えた。

 開講に当たり役場福祉課の吉村眞也課長は「健康な日常生活を送るためには食事や運動と並んで、睡眠による休養が大切。毎日の睡眠をより良いものにするため、睡眠の役割や睡眠不足、睡眠の異常を放置しない正しい知識を習得してほしい。篠崎先生の講演が皆さんや家族の睡眠の問題を見直す機会になることを祈念する」とあいさつ。篠崎さんは「睡眠の重要性と睡眠障害について」と題して登壇し、適度な睡眠を実践するための知識や日常生活における実践のポイントを紹介した。

 睡眠をつかさどる仕組みには睡眠ホルモンと生物時計の二つがあり、前者の睡眠要求と後者の睡眠覚醒が重なったときに人は眠りにつく。円滑に眠りにつくための数あるポイントの中でも特に大切にしたいのが、起床時の日光浴と就寝前の十分な入浴。これらが睡眠ホルモンの分泌と就寝時の放熱を良好にする、として意識するよう促した。

 睡眠不足がもたらすさまざまなリスクも生活習慣病や脳の衰えとの対比で紹介。アルツハイマー病原因物質(アミロイドβ)は睡眠時でないと減らせないことや、不足でも過剰でもない適度な睡眠時間を保てばうつ気分はそうそう出てこないことを伝えた。

 睡眠薬に頼る前にまず生物時計を正すことを試み、加齢により中途覚醒や早期覚醒の傾向があるときは運動を取り入れるなど生活改善でアプローチする。生活改善で解決できない睡眠関係の病気(睡眠時無呼吸症候群など)もあり、治療を試みてなお睡眠障害が出る場合に睡眠薬の処方がある。篠崎さんはそのように睡眠障害の診療の流れを説明した。まとめとして①睡眠時間が短くても起床時間を守る②眠くなってから床に就き、寝付けなければ床を離れる③昼間は日光を十分に浴びる④30分程度の昼寝を15時までに取り、夕食後の居眠りは避ける⑤適度の運動(夕方)と入浴(就寝1~2時間前)⑥アルコール、カフェイン、ニコチンを避ける―を不眠対応時の生活習慣改善事項として掲げ、良い睡眠は健康の上にあり、健康は身体的・社会的・認知的活動の上にあるとして適度な睡眠がとれる日常生活の実践を求めた。

 受講者は事前アンケートで現在の睡眠状況や悩みを報告し、その集計結果を篠崎さんが分析してアドバイスを寄せた他、質疑にも答えて睡眠障害の不安解消に努めた。

(2019年1月31日付紙面より)

睡眠の学術研究の起点から話を始める篠崎和弘さん=28日、串本町串本
2019年01月31日
4 ヒドリガモに冬の風情
 ゆかし潟へ冬鳥の飛来少なく  (那智勝浦町 )

 那智勝浦町湯川の汽水湖「ゆかし潟」で昨年末から、ヒドリガモの群れが水草や藻をついばむ姿が観察されている。

 ヒドリガモは全国に分布するカモ科の冬鳥。ゆかし潟には毎年11月中下旬に飛来し、越冬後の3月下旬には飛び立つそうで、おなじみの風景となっている。30~40羽の群れが毎日、平たく短いくちばしで、湖の浅瀬やここに流れ込む湯川川で緑の藻や水草を食べる様子が随時見られ、隣接の「喫茶&軽食きよもん」を訪れる客などの目を和ませている。

 ゆかし潟にはマガモやカルガモが生息するほか、例年なら同じくカモ科のホシハジロなど、毎年数種類の冬鳥が越冬してにぎわうが、「きよもん」で尋ねると「今年は種類、数ともに非常に少ない」という。湖面では、褐色のヒドリガモが冬の風情を醸し出していた。

(2019年1月31日付紙面より)

藻をついばむヒドリガモの群れ=24日、那智勝浦町のゆかし潟
2019年01月31日
5 U―9は新宮、U―8は宇久井が優勝
 JA杯少年サッカー大会  
2019年01月31日
6 2部門10クラスで熱戦
 第7回卓球大会「ツナ・カップ」  
2019年01月31日
7 速水、中西、寺地の3選手
 風間杯全国高校選抜への出場決める  (レスリング近畿B予選 )
2019年01月31日
8 大逆事件通し人権学習 和歌山県職員労働組合 (新宮市)
2019年01月31日
9 県立図書館に本贈呈 「くまの地域絵本つくりの会」 
2019年01月31日
10 気に入った本を紹介して  絵本よみきかせボラ養成講座  (鵜殿図書館 )
2019年01月31日
11 驚きの連続に大はしゃぎ  うどの幼稚園でプログラミング教室  (紀宝町 )
2019年01月31日
12 日本の授業を見学  中国福建省の教職員ら22人  (紀宝町 )
2019年01月31日
13 親子で太鼓に親しむ  あったカフェでイベント  (串本町 )
2019年01月31日
14 北大ゲート前まで通行可に  国道371号平井の規制変更  (古座川町 )
2019年01月31日
15 少林寺のワビスケが開花  関西で最大級の巨木  
2019年01月31日
16 お悔やみ情報
  
2019年01月18日
17 救助能力の向上図る
 ヘリによるホイスト訓練実施  (新宮警察署 )

 新宮警察署(大髙圭司署長)と県警航空隊は16日、新宮市新宮の同署南側空き地で災害警備訓練を実施した。同署の第二機動隊員ら15人が大規模災害発生時を見据え、県警ヘリコプターBK117B―2型「きのくに」による被災者救助訓練を行った。

 署員の防災意識高揚と迅速な体制の確立、対処能力、救助能力の向上などが目的。阪神・淡路大震災(1995年)が発生した1月17日に合わせて毎年実施している。

 この日の訓練では、南海トラフ地震や水害などの大規模災害の際に道路が途絶したり、中州に人が取り残された状況を想定した。急病人やけが人に救助用具を装着させ、ヘリに搭載されているホイストクレーンでつり上げて搬送する一連の動きを確認し合った。

 県警航空隊は「きのくに」に関して「時速は200㌔。3000㍍まで上昇する。天候などにもよるが、和歌山市から新宮市まで早ければ30分で到着できる」などと説明。災害時には搭載さ

れた「ヘリコプターテレビシステム」で地上の状況を中継し、被害状況を把握する。遭難者などに呼び掛けを行うためのスピーカーも搭載している。

 訓練後、同署の木村光太郎警備課長は「災害時にはヘリが一番力を発揮するのでは。今日のようなホイスト訓練を重ねることで、署員の救助能力の向上に努めたい」と話していた。

(2019年1月18日付紙面より)

ホイストクレーンを使った救出訓練の様子=16日、新宮市
救助用具の取り付け方法を確認した
2019年01月18日
18 ジャンボたいまつが登場
 「御燈祭り」を前に仲之町で  (新宮市 )

 新宮市の神倉神社で2月6日(水)に営まれる「御燈祭(おとうまつ)り」を前に、同市の仲之町アーケードに長さ1・8㍍のジャンボたいまつが登場した=写真

 仲之町商店街振興組合(福田一郎理事長)の組合員たちが祭りを盛り上げようと20年以上前から毎年この時期にリフトを使って長さ約370㍍のアーケードに取り付けている。組合員たちが傷みを補修しながらつるしており、たいまつの側面には「世界平和」「商売繁盛」「天下泰平」などの文字を入れている。今後はのぼりも設置する予定。

 熊野地方に春の訪れを告げる「御燈祭り」は1400年前から続くといわれる全国でも珍しい女人禁制の火祭り。白装束に荒縄を胴に巻き、わらじを履いた「上がり子」と呼ばれる祈願者たちが、御神火がついたたいまつを手に538段の石段を下る。

(2019年1月18日付紙面より)


2019年01月18日
19 前回に比べて1割強の伸び
 年末年始の観光動態まとまる  (串本町 )

 串本町の年末年始(昨年12月30日~今年1月3日)の観光動態が15日にまとまった。宿泊、日帰り合わせて推計延べ4万483人が来町。前回の年末年始と比較して11・5%の伸びになったという。

 同町の昨年の大きな環境変化として宿泊施設「大江戸温泉物語南紀串本」の開業があり、他方では同施設や市販車のロケなどCM効果、国指定天然記念物・橋杭岩で相次いだ観光面での高評価、日本ロマンチスト協会による恋する灯台のまち認定など町外における話題性も例年に増して充実していた。

 そのような状況の中で迎えた年末年始の繁忙。推計の内訳は宿泊が8162人(前回より71・1%増)、日帰りが3万2321人(同2・4%増)で、濵地弘貴産業課長は、宿泊の大幅増は大江戸温泉物語南紀串本だけでなくホテル&リゾーツ和歌山串本の伸びも含まれるとし、対して日帰りが微増にとどまった要因の一つに宿泊環境の充実に伴う日帰りから宿泊への移行も見据えている。

  □     □

許容量超える見物客集まる 初日の出対応



 繁忙の中でも特に際立ったのが、元日の初日の出観望。昨今の繁忙傾向を踏まえて昨年末、臨時駐車場として▽橋杭漁港内約40台分▽橋杭園地内約112台分▽潮岬望楼の芝内約400台分―を指定し看板設置や警備員配置などによる誘導を行うとともに、国や県にも協力を得ながら初日の出の位置が紀伊大島に隠れる橋杭岩から観望できる望楼の芝への誘導にも力を入れた。

 橋杭岩周辺は元日未明にキャンピングカーなどで道の駅くしもと橋杭岩と同漁港内の各駐車場が満車になり、日の出時刻直前には橋杭海水浴場駐車場や準備した臨時駐車場など全て満車になった。望楼の芝は午前5時ごろに満車に達したとみられ、役場産業課職員が元日返上で駐車場をでき得る限り拡張して誘導するなど現場対応に当たったが結果的に誘導しきれない勢いで見物客が集まり、直前の駆け込みに伴う事故防止のため満車の看板を掲げて駐車を断る対応を取った。警備に当たった事業者から550台以上の駐車があったと報告を受けているという。

 今回の状況を踏まえて同課は、有効だった手立てと今後取り組むべき手立てを取りまとめて次回に引き継ぐとしている。

(2019年1月18日付紙面より)

初日の出直前、臨時駐車場に集まる見物客の車両の列=1日、串本町潮岬(読者提供)
2019年01月18日
20 春祭りにぎわう
 井関青彦神社で例大祭  (那智勝浦町 )

 那智勝浦町にある井関青彦神社で13日、春の例大祭が営まれた。午前の神事では五穀豊穣(ほうじょう)と厄払いを祈願し、宮総代や獅子舞を奉納する神楽会、子どもみこし会などが参列した。

 お弓行事では最初に神主役の中村悠寿君(13)が弓を引き的を射抜いた。続いて兄弓、中弓、弟弓の6人の弓子が矢を放った。的に当たるとどよめきが起こり、拍手喝采。中村君は「真ん中の的近くに当たってよかった。安心した」と話していた。

 的を射た弓子の親族が胴上げされ、集まった区民や関係者に大きな笑い声と笑顔があふれた。同時間帯には子どもたちのみこしがにぎやかに区内を練り歩いた。

 午後は井関宝寿寺近くの弁財天に神楽を奉納し、同寺境内では「幣の舞」「乱の舞」「神明の舞」「剣の舞」の獅子神楽が奉納された。その後の餅まきは多くの住民で大変なにぎわいだった。

(2019年1月18日付紙面より)

中弓の桑木野徳太郎さん(左)と中村寿夫さん=13日、那智勝浦町井関
2019年01月18日
21 市野・杉本組が優勝
 県ソフトテニスインドア選手権大会  
2019年01月18日
22 全国・近畿への出場懸け熱戦展開
 県高校剣道新人大会  
2019年01月18日
23 新宮SSSブルーが2位
 優勝は敦賀FC、3位は斑鳩FC  (新宮SSS招待兼ヤタガラスカップ )
2019年01月18日
24 タバコや薬物の危険学ぶ  町更生保護女性会主催で講話  (太地小学校 )
2019年01月18日
25 海翁禅寺で穏やかな一年祈る  火盗守護秋葉大権現祈祷  (那智勝浦町 )
2019年01月18日
26 ヤブシンと立木早絵さんが出演  いさなの宿白鯨でライブ  (太地町 )
2019年01月18日
27 消防署の仕事学ぼう  王子幼、たづはら保が消防署見学  (新宮市 )
2019年01月18日
28 思いやりの心を育む  王子幼稚園、バリアフリー教室  (新宮市 )
2019年01月18日
29 串本沖に帆船などが停泊  練習船「海王丸」「青雲丸」  (串本町 )
2019年01月18日
30 使える英語を楽しく学ぶ  文化セで英会話講座開講  (南紀国際交流協会 )
2019年01月18日
31 紀宝町、熊野市で閉鎖措置  インフルエンザが流行  
2019年01月18日
32 振り込め詐欺防止を啓発  高齢者地域見守り隊  (紀宝町 )
2019年01月18日
33 全校児童が運動場に避難  相野谷小学校で避難訓練  (紀宝町 )
2019年01月18日
34 竹田真子さんが全国へ  高校卓球三重予選で優勝  (紀南高校 )
2019年01月18日
35 町議選に向け準備進む  事前審査に現職、新人ら13人  (紀宝町 )
2019年01月18日
36 お悔やみ情報
  
2019年01月11日
37 サ市訪問を前に市長表敬
 17日から約2カ月のホームステイ  (新宮市 )

 17日(木)から新宮市の姉妹都市アメリカ・カリフォルニア州サンタクルーズ市(サ市)を訪問する岩本桃永子(もえこ)さん(25)は9日、同市役所で田岡実千年市長を表敬訪問した。田岡市長は「サ市でいろいろと学んでもらい、新宮の発展に貢献してもらえれば」と呼び掛けた。

 新宮市とサ市とは1974年に姉妹都市縁組を締結した。今回の訪問は「サ市へのインターン派遣プログラム事業」で初めての実施となった。

 体験を通じてグローバルな視点を身に付け、サ市の「活力があり、先進的なまちづくり」の成功例から仕掛けを学び、両地域のさらなる交流の促進と新宮の発展に貢献できる人材を育成することを目的としている。

 市教育委員会の職員も同行し、サ市役所パークスアンドレクリエーション課での研修や地域との交流活動を行う。

 岩本さんは3月20日(水)までの約2カ月間、ホームステイなどをし、現地での生活を通じてさまざまなアクティビティを体験する予定になっている。

 新宮市姉妹都市親善協会の岩澤卓会長は岩本さんが派遣対象者に決定したことについて、今後、新宮でどんなことをしていきたいかなどの具体的な夢が強くあったとし、「今年は姉妹都市提携を結び45周年。取り組みを通じて実際に肌で感じてもらい、いろんな人に伝えてもらえれば」。

 田岡市長は「サ市は先進的な取り組みを実施している町。もちろん勉強も大事ですが、楽しみながら頑張ってください」と激励した。

 岩本さんは「中学3年生の時に訪れて以来のサ市。テーマパークや交友など、いろんな視点で理解を深めたい。お年寄りから子どもまで幅広くコミュニティーを形成させ、集まれる場所があるが、新宮にはまだ少ないと思うので交流の場づくりを中心に学んでいければ」と話していた。

(2019年1月11日付紙面より)

田岡実千年市長を表敬訪問した岩本桃永子さん(右)=9日、新宮市役所
2019年01月11日
38 一年の無事など祈願
 天御中主神社で例大祭など  (新宮市 )

 新宮市佐野の天御中主(あめのみなかぬし)神社(髙橋正樹宮司)で9日、例大祭と厄除け祈願祭、寿祭が営まれた。今年厄年に当たる人などが参列し、今年一年の無事などを祈った。

 午前の式典では、髙橋宮司の祝詞奏上に続き、同神社氏子会の石垣倍生総代長、当家(とうや)当主の湊口弟三さん、前田道春佐野区長らが玉串を供えた。午後には同神社氏子らが作った餅や厄年の出席者らが持参した餅がまかれ、たくさんの地域住民らでにぎわった。

 同神社の例大祭は佐野区の上地、中地、下地、永田の4地区の持ち回りでしめ縄付け、餅作りなどの準備をする当家を務めている。今年は永田地区が当家を務めた。石垣総代長は「参拝客の皆さまのご健勝や郷土繁栄などを祈願しました。準備期間も含め、天候に恵まれて良かった。永田地区の方々も協力的で大変助かりました」と話していた。

(2019年1月11日付紙面より)

厄除けなどを祈願し玉串を供えた=9日、新宮市佐野の天御中主神社
2019年01月11日
39 池畑保代さん100歳に
 西前町長赴き長寿を祝う  (古座川町 )

 古座川町の西前啓市町長が9日、間もなく100歳になる池畑保代さんを訪ねて長寿を祝った。

 この訪問は町民の100歳の誕生日に合わせて行っていて、本年度は昨年11月に奥地ノブヱさんを祝って以来2回目となる。

 池畑さんは1919(大正8)年1月13日生まれ。高池出身で、一時期ふるさとを離れ大手企業に務めていたが、後に戻り平成24年から高瀬会の高齢者グループホームもみの樹に入所してスタッフに支えられながら過ごしているという。

 西前町長は同ホームで池畑さんと面会し、他の入所者も立ち会う中で花束を受け取った池畑さんは「先生(=医師)や皆さんに本当によくしてもらい、大変うれしくもったいない」と歓喜。西前町長によると池畑さんは気品豊かな人柄で知られ、今も100歳とは思えないほどしっかりとされているそう。はつらつとした長寿健勝ぶりを見て喜び「これからも元気で」と励ました。

 役場健康福祉課によると、今月9日現在で100歳以上の町民は4人で、いずれも女性、最高齢は102歳。間もなく池畑さんが加わり、5人になるという。

(2019年1月11日付紙面より)

西前啓市町長から花束を受け取る池畑保代さん=9日、古座川町高瀬
2019年01月11日
40 世界遺産15周年を記念 ポスト上部の八咫烏が緑色に (熊野本宮大社)

 田辺市本宮町の熊野本宮大社(九鬼家隆宮司)境内に設置している八咫烏(やたがらす)ポスト上部の八咫烏が緑色に塗り替えられた。熊野の深い自然を表現しており、同大社の世界遺産登録15周年を記念して今年一年間変更される。

 ポストは八咫烏や全ての色が混ざった原点の色という意味の黒色で、はがきの語源にもなった同大社のご神木多羅葉(たらよう)の下に2009年に設置された。

 通信手段の発達した現代に、あえて自分の思いを手書きすることで、自分自身を見つめ直し、人と人とのつながりの原点に立ち返ってほしいとの願いが込められている。

(2019年1月11日付紙面より)

緑色に塗り替えられた八咫烏=7日、田辺市本宮町の熊野本宮大社
2019年01月11日
41 春祭りに向け練習に熱  13日、市野々と井関で  (那智勝浦町 )
2019年01月11日
42 有酸素運動で汗流す  まちかどエクササイズ  (紀宝町 )
2019年01月11日
43 炭焼き文化復活に向け  桐原地区で三重大生ら調査  (紀宝町 )
2019年01月11日
44 冬休み中の大会で好成績  2クラブの部員が健闘  (串本古座高校 )
2019年01月11日
45 一斉放水や分列行進  新宮市出初め式  
2019年01月11日
46 園児や団員が参加  太地町出初め式  
2019年01月11日
47 お悔やみ情報
  
2019年01月05日
48 新たな一年がスタート
 官公庁で仕事始め式  

 和歌山県庁や各市町村など官公庁で4日、仕事始め式があった。6日間の休業を終えた職員たちは首長らの訓示の下、気を引き締めて新しい一年のスタートを切った。

■新宮市



 新宮市の仕事始め式は市福祉センターであり、職員約100人が出席した。全員で市歌を斉唱した後、田岡実千年市長が「市政は市民のため」を基本理念に犠牲者ゼロのまちづくり、文化複合施設の平成32年度までの完成などに取り組むと述べ、「市民の誰もが元気で心豊かに暮らせるまちの実現のため今年も渾身(こんしん)の力を込めて頑張ってまいります」とあいさつした。

 来賓として出席した屋敷満雄市議会議長が「課題は山積していますが、諦めず、縦と横の連携を密にして公務に励んでもらいたい」と祝辞。向井雅男副市長が「創意工夫による事業展開を実施し、市政発展のために取り組んでもらいたい」と乾杯の音頭を取り、速水盛康教育長が「猪突(ちょとつ)猛進、迷わず、ブレずに着実に市が発展し続けることを願って」と述べ、万歳三唱で閉式した。

  □     □

■那智勝浦町



 那智勝浦町は4日、庁舎2階の大会議室で仕事始め式を開いた。出席した職員ら約70人は新たな気持ちで今年の業務に取り組むべく、気を引き締めた。

 全員で町歌を斉唱後、堀順一郎町長が「職員の皆さまには今まで以上に奮起していただきたい」と訓示。「懸案・課題を早く解決できるように、私も先頭に立ち、那智勝浦町や役場が元気に明るくなったといわれるように皆さまと一緒にまちづくりをしていきたい。ご協力をお願いします」と呼び掛けた。

(2019年1月5日付紙面より)

田岡実千年市長のあいさつを聴く職員ら=4日、新宮市福祉センター
職員らに訓示する堀順一郎町長=4日、那智勝浦町役場
2019年01月05日
49 建築業界の発展を願い
 新宮建築組合が釿始式  (熊野速玉大社 )

 建築業界の発展を願い新宮建築組合(広里嘉一組合長)は4日、新宮市の熊野速玉大社(上野顯宮司)で鎌倉時代から伝わる「釿始式(ちょんなはじめしき)」を営んだ。

 この神事はもともと同大社の宮大工、小野家に伝わる仕事始めの儀式で、現在は、同組合が継承している。

 この日は組合員ら18人が参列。白装束にえぼし姿の森田稔さん(54)がヒノキの原木(樹齢約60~70年、長さ約4㍍、直径約20㌢)をお神酒で清め、西下悟さん(41)と清岡尚寿さん(39)が墨を打った後、森田さんが鎌倉時代から同大社に伝わるカギ型の大工道具「釿」を「エイ、エイ」と3カ所に打ち付けた。

 神事のあと上野宮司が参列した組合員らを前に釿始めの歴史を紹介し、「どうか今年一年も皆さんお元気で、新宮のみならず熊野地域の業界の発展のために尽力いただきたい。本当に今日は素晴らしい釿始めをありがとうございました」とあいさつ。広里組合長は「昨年は材料が入りにくかったり、自然災害が発生したりと、いろいろなことでお客さまにも迷惑をかけてしまったが、皆さん頑張っていたと思う。いま、釿始式を終え、今年一年頑張ろうという気持ちが湧いてきました」と話した。

(2019年1月5日付紙面より)

鎌倉時代から伝わる宮大工の仕事始めの儀式「釿始式」=4日、熊野速玉大社
釿始式に参加した皆さん
2019年01月05日
50 弓頭3人思い込めて放つ
 有田神社祭礼「お的祭り」  (串本町 )

 串本町有田上にある有田神社(深美芳治宮司)の祭礼「お的祭り」が3日にあり、弓頭3人が同神社近くの的場で思いを込めて矢を放った。

 この祭礼は氏子区域である有田、有田上、吐生の新春に弾みをつける例祭で、今年の弓頭は昨年に引き続いて有田~有田上区域の寒川広夢さん(19)、吐生区域の水本小夏さん(16)と長谷川莉杏さん(16)が務めた。

 午前9時に本殿前で式典が営まれ、弓頭3人は中山眞作区長や世話役の神社総代と共に神前奉告。鳥居そばで古式の修祓(しゅばつ)「湯立ての儀」で身を清めた後に同神社前の耕地に設けた的場へ入り、深美宮司の仕切りによる弓行事に臨んだ。

 弓頭は1人につき1巡目と2巡目に6本を放ち、3巡目は3本を放った後に一度同神社へ戻って白衣から黒衣へと着替え、魚の切り身を口にして的場へ入り残り3本を放った。その様子は家族ら住民も見守り、的中するたびに拍手を注いで喜んだ。

 湯立ての儀の釜湯の上にサンマなど28匹をかざし、弓頭は魚の切り身を口にして素人(白衣)から玄人(黒衣)に変わるなど、独特の慣習を宿す同神社の「お的祭り」。弓頭を務めた水本さんと長谷川さんは学力の向上、寒川さんは仕事の上達を個々の願いとして奉仕に込めたそうで、区域の代表として寒川さんは「自分は地元で就職したが、そうしたいほど有田はいい環境。同じように若い皆さんにも興味を持ってほしい」、水本さんは「このような行事を通して有田は素晴らしいところだということを、地元だけでなく観光客の皆さんにも見てもらえるようになれば」、長谷川さんは「有田は自然も豊かなところだということを、このお祭りをきっかけにしていろんな人に見てもらいたい」、深美宮司は「昨年の台風で有田地区も被害を受けた。人災、天災(=台風や豪雨の災害)、自然災(=地震や津波の災害)。今年は諸々の災いが氏子に降りかからないことを願いたい」と思うところを語った。

(2019年1月5日付紙面より)

有田神社前の的場で営まれた弓行事=3日、串本町有田上
魚の切り身の振る舞いを受ける弓頭ら
2019年01月05日
51 魚価は上昇傾向
 勝浦市場で初競り  (那智勝浦町 )

 はえ縄漁法による生鮮マグロ水揚げ高で日本一を誇る那智勝浦町築地の勝浦地方卸売市場で4日に初市があった。近海で操業していた高知の漁船3隻がメバチ、キハダ、ビンチョウなど約20㌧、2257万円を水揚げ。前年に比べると水揚げ量は7割近く減ったものの、平均単価は1112円とほぼ倍増。4月からの年度集計では平均価格に上昇が見られている。

 勝浦漁協によると昨年の1月1日から12月31日までの水揚げは約922㌧・1億7911万円の減。4月1日から12月31日では約6749㌧(前年比476㌧減)、金額は49億3568万円(同約1億4816万円増)となっている。

 勝浦魚商協同組合の木下勝之組合長は「漁獲高の減少、漁価の上昇はわれわれにとって厳しくはあるが、組合で協力し合い販路を広げていく。外来船が安心して入港できる港に」とあいさつし、3月完成予定の冷凍冷蔵施設の整備に感謝の言葉を述べた。県漁連勝浦市場の太田直久参事は「年末はビンチョウマグロが少なかったが、今日は多く揚がった。近海のシーズンはスタートしたばかり。これからに期待したい」と話した。

(2019年1月5日付紙面より)

マグロの品質を見る仲買人ら=4日、那智勝浦町築地
2019年01月05日
52 新成人の華やかな門出祝福  熊野地方で成人式  
2019年01月05日
53 「ファムツアー」記事が人気  宿泊客数増とプロモーションが効果  (新宮市 )
2019年01月05日
54 厳かな音色響き渡る 大みそか、各地で除夜の鐘 
2019年01月05日
55 気仙沼からの大漁旗展示  新宮市  
2019年01月05日
56 獅子舞や餅つきで新年祝う  太地町飛鳥神社  
2019年01月05日
57 舟謡、神楽で新年を祝う  那智勝浦町勝浦八幡神社  
2019年01月05日
58 竹灯籠で参拝客迎え  那智勝浦町宇久井神社  
2019年01月05日
59 世界平和や国の安寧祈り  新宮市王子神社  
2019年01月05日
60 皇室や国家の繁栄祈る  熊野三山で歳旦祭  
2019年01月05日
61 行政効率高め仕事全うを  仕事始め式営み業務再開  (串本町 )
2019年01月05日
62 誓い掲げ大人の仲間入り  文化セで平成31年成人式  (串本町 )
2019年01月05日
63 初詣客の幸運を願い  烏止野神社で新春奉納太鼓  (熊野水軍太鼓 )
2019年01月05日
64 町民目線に立って仕事を  西田健町長が年頭訓示  (紀宝町 )
2019年01月05日
65 大人への決意と自覚胸に  成人式で136人が門出  (紀宝町 )
2019年01月05日
66 初日の出に大勢の人  熊野地方  
2019年01月05日
67 お悔やみ情報
  
2019年01月01日
68 水野家入部400年と新宮城
 「歴史の故郷」から「心の故郷」へ  (モニカ・水野・ベロイターさん )

 2019年は新宮領主として紀州徳川家を補佐した水野家の入部400年を迎える。新宮市では11月に記念行事などを企画しており祝賀ムードが高まる中、紀州藩新宮領主水野家の子孫であるモニカ・水野・ベロイターさんにインタビューし、「新宮」と「水野家」について、自身のルーツへの思いを語っていただいた。

 また、昨年11月には新宮城の復元を目指す資料収集懸賞事業が始まり、城郭再建に向けた動きも活発になっている。

 新宮城は関ケ原の戦いで戦功をたてた浅野幸長の一族の家老・忠吉が1601年に着工した。一国一城令で廃城になるも、幕府の許しを得て水野重仲(しげなか)が築城を継続。33年、2代目・重良(しげよし)の時代に完成した。改修は続き、今の新宮城になったのは3代目・重上(しげたか)の69年。1873年の廃城令で取り壊された。2003年に国史跡に指定。17年には「続日本100名城」に選ばれた。

 新宮城に詳しい日本城郭史学会和歌山支部長の水島大二さんから引き継ぎ、田辺市の小学生のふるさと学習で講師を務める小渕伸二さん(新宮城復元対策委員)に特徴や見どころを教わった。

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新宮市との関わり



 幼い頃に祖父母から先祖はお城に住んでいたという話を聞きましたが、どこかおとぎ話のような感覚。成人し、独日交流に携わる中で自分のルーツに興味を抱きました。

 新宮は複数の世界遺産に囲まれ、豊かな自然の恵みに育まれた「伝統のまち」という印象が強く、さまざまな文化的影響が分かる、神秘的で魅力的なところ。2010年に息子と新宮を訪れて以来、さまざまな出会いがあり、励みになる言葉を頂きました。

 新宮市の歓迎会で「お帰りなさい」と声を掛けていただいたことは感動でした。また、城に関わっていた子孫の方が、その歴史をご存じでその場に見えられていたことが印象的でした。

 関係者から頂いた「あなたにはあなたにしかできないことがある。ぜひそのことを考えてください」という言葉を受け、私は自分のルーツを再確認し、新宮との交流に関しても、ドイツと日本、言葉と文化の違いを超えて懸け橋になれればと思いました。多くの人に新宮の自然と伝統を知ってもらいたい。水野家入部400年祭に関しても公益法人独日フォーラム・エルベとの協力プロジェクトを推進中で、これをきっかけに国内、国外の交流もさらに広まれば。関係者の皆様のご尽力に心より感謝するとともに、今後の展開に期待が寄せられます。

 これまで「歴史の故郷」と紹介していた新宮は、2010年の来新をきっかけに始まった体験と、人と人との結び付きから今や「心の故郷」になりつつあります。

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墓所と城跡の重み



 末裔(まつえい)として墓所と城を見たいという思いが達成できたことは感激でした。緑豊かな歴代墓所の高台に一歩一歩足を運ぶほどにご先祖様のありし日が想われ、歴史の尊さを感じました。皆さんに大切に守ってきていただいた郷土の歴史を感じるひとときに、自然と手が合わされました。

 新宮城は立地が良く、城郭が残っていればどんなに素晴らしかっただろうとうかがわせられます。歴史・文化遺産は年を重ねれば重ねるほど貴重なもの。お城の復元事業は実現すれば素晴らしい。国外で新宮城に関する資料が得られる可能性もあるとのこと、海外に向けた取り組みにも役に立てればうれしい。

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◆モニカ・水野・ベロイターさんプロフィル

 新宮水野家14代水野誠氏の娘、慈子(やすこ)さんとドイツ人の父との間に、東京都で生まれた。12歳でドイツに移り住み、現在はハンブルクにて公益法人独日フォーラム・エルベを立ち上げ、独日交流に力を注いでいる

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■新宮城

 平安時代には源頼朝と義経の叔母、丹鶴姫が住み、戦国時代には豪族の堀内氏が築城する計画があったという場所に立つ。「北山一揆などから、藩主の力を見せ『こんな城は攻められない』と思わせられるような立派な城を築く必要があった」と小渕さん。城の中には舟入(船着き場)があり、海の物流の重要な拠点の役割も果たした。

 主な見どころは▽総石垣▽水ノ手曲輪(みずのてくるわ)▽出丸。

 石垣にはあらかじめ成形した石材を積み上げる「切り込み接ぎ」の中でも「亀甲積み」や「算木積み」という高度な方法を用いている。技術を持った職人をアピールし力を誇示することにつながった。石垣の上には白壁が巡らされていたとも。石垣の美しさは今も見る人が感嘆するほどだ。

 また、水ノ手曲輪には舟入がある。城中核の舟入を守るように囲んでいるのは「倭城(わじょう)」と呼ばれ、日本では非常に珍しい。秀吉の朝鮮出兵に随行した浅野氏が技術を持ち帰り築城したともいわれている。洪水などの被害に備えた石垣造りの港が築かれ、炭納屋があった。

 独立した出丸は橋で本丸とつながっていた。水ノ手、新宮津、熊野川のそれぞれの様子を見ることができる位置にあった。天守台からの眺めから「沖見城」とも。「沖からも城が美しく見られたでしょう」と小渕さん。

 「心のふるさと、シンボルとして見る人や復元を夢見る人もいる。多くの市民が『心のよりどころ』と言うのを聞きました。僕にとっても幼い頃から親しんできた愛着のある場所で、国指定史跡、続日本100名城に選ばれたことはうれしい限り」と話す。

 「来年の初夢には復元された新宮城天守閣が見たい。資料の発見や調査で正夢になってほしいです。丹鶴山に威厳を持った美しい城郭の復元を心待ちにしています」とほほ笑んだ。

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■水野家

 新宮領3万5000石を領したが、熊野の木材、木炭などを支配しその実力は10万石以上であったといわれている。初代の水野重仲は徳川家康の母方のいとこ。1606年に家康の十男、頼宣(よりのぶ)の後見となる。16年に「附家老(つけがろう)」として家臣となり、19年に頼宣が紀州藩に移ったことから同じく新宮に入った。

 9代目城主、水野家10代忠央(ただなか)は優れて賢く、35年に4人の兄を差し置いて家督を継いだ。熊野材や備長炭、和紙や瓦の製造などで領内の経済力を高めた。幕政にも深く関わり、彦根藩主・井伊直弼(いい・なおすけ)や大奥と手を結んで第14代将軍・家茂(いえもち)を擁立することに成功した。

 進歩的かつ開明的な思想の持ち主で、外国の原書を多く翻訳させた。いち早く洋式軍隊を編成し、騎馬調練の「丹鶴流」は江戸に広く宣伝された。洋式船「丹鶴丸」の製造、北海道開拓や小笠原での捕鯨などさまざまな試みをした。

 江戸新宮藩邸に「育栄館」、赤坂邸に紀州藩校「文武館」を設けた他、徳川時代の三大名著の一つといわれる『丹鶴叢書(そうしょ)』を編さんするなど多方面で活躍した。直弼が暗殺されるとともに失脚。家督を嫡男・忠幹(ただもと)に譲り、新宮で隠居生活を送った。忠央や多くの家臣が新宮に滞在したことで江戸風の文化を新宮に伝えることになった。(新宮市協力)

(2019年1月1日付紙面より)

新宮城跡
モニカ・水野・ベロイターさん
独立した出丸
2019年01月01日
69 仏画に見る動物たち
 十二支から神獣まで  

 仏画の中の動物をはじめ、眷属(けんぞく)神の十二神将に施された干支(えと)の動物(写真①)、仏像の台座や欄間(らんま)の獅子や象など、寺社には動物が意外と多い(写真②・摩利支天=まりしてん=像)。中でも「涅槃図(ねはんず)」は、龍(りゅう)などの想像上の神獣も含め、大小さまざまな動物、鳥や昆虫、爬虫(はちゅう)類、甲殻類などを1枚の絵で見ることができる。

 万物全てが釈迦(しゃか)の入滅を悲しみ、集まっているように見えるが、一般的な涅槃図にはネコが描かれないという。正体不明の生き物(写真③)までもがいるのに、なぜ身近な存在のネコがいないのか―。西昭嘉(しょうか)住職(那智勝浦町宇久井・延命寺)にお願いし、涅槃図について話を聞かせてもらった。不思議なことに、ここの涅槃図には「ネコらしきもの」がいるのだ。

 寺により図像が異なる涅槃図を見ると、曼荼羅(まんだら)絵解きのような興味が湧いてくる。見せてもらえる機会があれば、動物好きの人にもお勧めする。さまざまな説があるようだが、正体の分からない存在、顔の表情や振る舞い、描いた絵師の意図などを、あれこれ推測するのも一興ではないだろうか。

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 ―延命寺の涅槃図はいつの時代のもの?

 はっきりとは分かっていませんが、ご本尊や大般若経、紺紙金泥法華経(こんしこんでいほけきょう)10巻などの他の寺宝が鎌倉時代(1185~1333年)初期のものと考えられていますので、同時期のものだと思われます。元々、一間(約1・8㍍)あったといわれていますが、修復を続けているうちに少し小さくなってしまいました。

 ―涅槃図とは?

 お釈迦様がお亡くなりなった瞬間の様子を描いているものです。場所は北インドのクシナガラで、一説には当時の栄えていた都から自分の生まれ故郷に帰る途中にお亡くなりになったとされています。

 インドやスリランカの石窟寺院にも石像の涅槃仏と共に壁画で描かれており、それらはマハーパリニッバーナ経(漢訳名は遊行経)に基づき描かれたものといわれています。日本では平安時代から紙に描かれるようになりました。

 ―お釈迦様の存在は?

 お釈迦様は、仏教の開祖。涅槃図に描かれている神々は、完全に悟りを開いた最高神ではありません。仏教の考え方では、この世の中には、六つの世界があり、天上界に住む神々さえも、輪廻(りんね)転生から抜け出すために必ず生まれ変わらなければならないといわれています。輪廻から抜け出した覚者に教えを聞きに来たのだといわれています。

 ―周囲の人物たちの様子は?

 集まったお弟子さんや仏様、神々の中には平然とした顔している者もいれば、悲しんでいる者もいます。平然としている人は悟りを開いており、嘆き悲しんでいる人はまだ悟りを開いていないことになります。

 象徴的なのは一番悲しんでいる付き人のアーナンダです。彼は仏教史上、最もお釈迦様から教えを聞いている人物でしたが、お釈迦様が生きている間は悟りを開くことができませんでした。一説にはお釈迦さまのまたいとこや義理の弟であったともいわれています。

 ―延命寺の涅槃図に描かれている人物や動物は?

 多くのお弟子さんや神々、阿修羅(あしゅら)、龍神などが描かれています。他にも人面鳥と呼ばれ、インドの神であり、日本では秋葉三尺坊大権現(あきばさんじゃくぼうだいごんげん)と呼ばれているガルーダの姿もあります。干支の動物もおり、鳥やシカ、ゾウ、チョウ、トンボ、クジャク、ツルもいます。日本に伝わった際に描かれる動物が変わりました。

 ―ネコがいる、いないは?

 一説にはネズミがお釈迦様の使いであるという話から涅槃図にはネコが描かれないようになったといわれています。

 しかし、絵の具を運んできてくれたネコを描いてあげたという絵師の話もあり、臨済宗の東福寺の涅槃図のようにあえて、ネコを猫いた涅槃図も存在します。

(2019年1月1日付紙面より)

那智勝浦町宇久井・延命寺の涅槃図と西昭嘉住職
ネコやイノシシが描かれている(延命寺所蔵)
〈写真①〉薬師如来を守る十二神将。表情や体形、ポーズなど一体ずつの違いが見どころ。安底羅(あんてら)大将は、武神にしては優しげな顔立ち(那智勝浦町下和田・大泰寺所蔵)
頭上には十二支の寅(とら)
〈写真②〉今年の干支・イノシシにまたがる摩利支天。かげろうを神としてあがめたもの。実体がないので、捉えられず、焼けず、傷つかず。自在の神通力を持つ
〈写真③〉正体不明の裃(かみしも)を着たような生き物(大泰寺所蔵)
2019年01月01日
70 準備期間経て4月本稼働
 中堅世代主導の観光協会  (古座川町 )

 昨年9月に発足した新生・古座川町観光協会は、約半年となる初年度を準備・整備期間と位置付け、来年度の本稼働に向けた体制構築に努めている。「年長が将来を担う世代の振興を後押しする」という共通認識の下、30~40代の会長と副会長、事務局職員が軸になっている点が同協会の持ち味。その主導で着々と歩み始めている。

 同町には過去、旧・古座川町観光協会があったが2013(平成25)年9月に解散。後に玉川大学観光学部の協力を得て観光振興計画(15~19年度)、次いで観光実施計画が策定され、これら計画に基づいて町域にある観光関係諸事業のブラッシュアップが図られている。それらを束ねる核となるプラットフォームとして設置が目指されたのが、現在の古座川町観光協会にあたる。

 17(平成29)年度にプラットフォーム立ち上げ検討会議が開かれ、その結論をもって昨年5月に同協会設立発起人会が発足。会合を重ね、9月27日に任意団体・古座川町観光協会の設立総会を開くに至った。

 その展開を見据えていた役場は予算補助に加え、地域おこし協力隊制度を活用して木下昂さんを起用し、設立と同時に同協会付事務職員に充てている。設立総会で選出された理事は、これから地域の中核になる人材による主導を策として思い描き、会員の中では中堅世代となる須川陽介会長、森武志、深海政也の両副会長を選出。さらに年長の会員は3人の将来構築を後押しするという認識を共有して初動を固めた。

 設立目的は「町内の文化や自然資源を用い、持続可能な発展を図ること」。団体名を観光協会としたのはすでに広く認知された呼称であり将来的に相応の機能を町外に向けて発揮するためだが、町内に向けては少し工夫がされていて、観光事業に関わる法人や団体に加えて観光振興に関心のある個人の入会にも力を入れている。その背景には、古座川町を愛好する人々の思いや意欲を観光振興の素地として取り入れたいという思いがある。

 年会費は法人・団体が1万円、個人が2000円。入会案内チラシを作って周知を図り、古座川秋まつりにおいてコーナーを設けアピールにも努めた。入会は随時受け付けていて、役場地域振興課内にある事務局に尋ねてほしいという。

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愛好を束ねた観光目指す チーム古座川の意識醸成



 目下、振興に力を入れているのはクマノザクラ。町の花にもなっている地域資源の振興を通してまずはノウハウをつかみ、これを他の地域資源の振興へと広げていく考えだ。情報発信の主力はインターネット上の公式サイト。訪れる人々のリサーチに応える仕組みで、関心を着実につかみ誘客へとつなげる筋道をつけるため、要となる公式サイトの制作を進めている。

 古座川町が好きなみんなでこの地域を振興する機運を高める―。3人が将来に思い描くのは、誰もがもてなしの心で訪れる人々を歓迎するところから始まる観光。この発想は今に始まったものではなく、2014(平成26)年度末に開かれた観光振興計画策定委員会の時点で強く意識された挑戦課題「チーム古座川の意識醸成」に基づく。もう一つの挑戦課題「観光地域プラットフォームの具現化」は同協会設立により達成されたため、今後は一点集中で残る挑戦課題の達成を目指すことになる。

 設立から3カ月。須川会長(35)は4月の本稼働に向け「設立したばかりでまだこれといった会員特典もないのに入会していただけているのは、まさにこの協会に対する期待そのものだと思っています。これに応えられるよう皆さんの意見を吸い上げながら努めたい」と意気込む。すでにSNS(Facebook)の公式アカウントを取得し情報発信を始めているが、クマノザクラの開花に間に合わせるため1月中には主力の公式サイトを開設するとしている。並行してクマノザクラなど町域の桜の開花シーズンに合わせたキャンペーンの展開、各種研修機会の創出も本年度中の達成課題として意識。役場内にある事務局も来年度には今まで以上に観光客の来訪利便に応える別の場所へ移す準備も進めている。

(2019年1月1日付紙面より)

古座川町観光振興基本計画策定委員会(2014年度)。この時点で「チーム古座川の意識醸成」と「観光地域プラットフォームの具体化」が意識された
古座川町観光協会設立総会。今後地域の中核になる中堅世代に主導権を託す形で観光地域プラットフォームが動き始めた
古座川秋まつりの会場で設立の周知や会員勧誘に努める(左から)深海政也副会長、木下昂さん、森武志副会長
「期待に応えられるよう努める」と意気込みを語る須川陽介・初代会長
2019年01月01日
71 夏休み前の開館を目指す
 南紀熊野ジオパークセンター  (串本町 )

 日本ジオパークの再認定が待たれる南紀熊野ジオパーク。その新たな拠点施設「南紀熊野ジオパークセンター」が7月、串本町潮岬で開館する。昨年春に始まった工事は11月末現在で進捗(しんちょく)率50%を突破。県自然環境室は「今年の夏休みに(開館を)間に合わせたい」とし、開館後は同パークを訪ねる人流が本州最南端に向けて新たに宿る変化が見込まれる。

 南紀熊野ジオパークは、県南部の特色ある地形や地質を包括振興する枠組み構想。県知事を筆頭に関係する9市町村(新宮市、白浜町、上富田町、すさみ町、那智勝浦町、太地町、古座川町、串本町、北山村)と市町村内主要団体で推進協議会を立ち上げ、105人の登録ガイドが結成するガイドの会と両輪で世界ジオパーク認定まで見据えた振興に挑戦している。

 平成26年8月に日本ジオパークとして認定され、昨年11月には4年ごとに迎える再認定の現地審査を受けた。そのような局面をまたぐ形で進んでいるのが、同センターの建設。立地は同パーク沿岸エリアのほぼ中央、本州最南端にある潮岬観光タワー施設の西隣で、年の瀬には木造2階建ての建物の形が見て取れる段階まで建設が進んでいる。

 建物の延べ床面積は約978平方㍍で、5月末には完成する予定。以降は各種展示物の配置などを進めて開館を目指す。館内には展示室、映像室、セミナー室、作業室、事務室などがあり、これらを活用し▽展示と学習▽情報発信▽調査研究▽地域活動支援―などの機能を発揮する。2478平方㍍の敷地整備も含めた総事業費は約7億円。

 現在は環境省施設「宇久井ビジターセンター」を拠点としているが、推進協議会の事務機能は和歌山市の県庁(県自然環境室内)にあり、現地で活躍する登録ガイドとの連携には大きな移動負担が余儀なくされている。同センター開館時に県自然環境室が有する事務機能を移すことも計画に含まれていて、センター長以下5人程度の規模で人員配置の調整を進めている。うち2人は地形・地質の専門員(正職員待遇)で、昨秋に公募し人選を進めている段階。別途、登録ガイド2人が館内案内のため常駐する仕組みも調整している。

 推進協議会の事務機能を有する県自然環境室は「同センターは、現在の拠点をさらに上質にした感じの拠点になる。開館により訪れる皆さんにいっそう南紀熊野ジオパークを知ってもらうことができ、登録ガイドの皆さんと現地で連携する体制もようやく整う形になる」と話し、開館が今後の振興のいっそうの弾みになることを期待している。

 開館時間は午前9時~午後5時と想定しているが、休館日など具体的な運営手法は年の瀬の時点で未定。那智勝浦町にある宇久井ビジターセンターと望楼の芝にある環境省施設「潮風の休憩所」機能は、南紀熊野ジオパークセンターが開館した後も吉野熊野国立公園の一端を物語る要素として継続する方向にあるという。

(2019年1月1日付紙面より)

本州最南端で建設中の南紀熊野ジオパークセンター(左)
完成時のイメージ図(県自然環境室提供)
潮風の休憩所にある南紀熊野ジオパークコーナー

2019年01月01日
72 くじらの博物館50年の歩み
  

 今年50周年を迎える「太地町立くじらの博物館」は、1969(昭和44)年4月2日にオープンした。同4日付の熊野新聞に、喜びに沸く開館式の様子が大きく取り上げられている。

 くじら浜公園などの埋め立てや土地開発費を含めると総工費10億1500万円(注1)もの巨費が投じられた。「長年の夢を実現させ、クジラの伝統を生かし観光の町として第一歩をふみ出した」故・庄司五郎町長のあいさつが記されている。

 開館準備に始まり、いつも「くじらの博物館」と共にいた林克紀館長から巨大模型をはじめ、同館の展示品や鯨類の飼育にまつわる数々のエピソードを聞いた。その一部を紹介する。

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■クジラのヒゲ磨き

 1967年にオホーツク海で捕獲された体長約15㍍のセミクジラ。現地で取り出された内臓は、貨車1台を丸ごと借り切って積み込まれ、下里駅に到着した。町役場に勤務していた18歳の林さんは、トラックで太地町へ運び、オープンに向けて標本作りに取り掛かった。油分が出なくなるまで、何度もホルマリン液を交換する作業に追われたという。

 セミクジラの特徴でもある長い「クジラヒゲ」【写真①】も磨いた。食べ物の残りかすなどが隙間にたまっていたので、除去してからワックスをかけ、さらに磨いてきれいにした。

 そうこうしているうちに土に埋めていたセミクジラの骨が届いた。大ホールにつられたセミクジラである。セミクジラの実物大全身模型は、生体の頭部、尾びれ、胸びれの型を取って作成されたもの【写真②】。その後もホッキョククジラ、コククジラ、シャチなどの骨格が次々と追加され、林さんは骨磨きでも忙しかった。

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■龍涎香(りゅうぜんこう)見つける

 15㍍くらいの大きなマッコウクジラが水揚げされたので、他の職員らと解体を見学に市場へ。林さんらが見ていると、「腸からポロッと塊が出てきましてね。何だろうと思ってバケツに入れて持ち帰りました。西脇先生(注2)に見せたらびっくり。希少な龍涎香(注3)でした。お香のような良い香りがしましたよ」。

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■イルカを待つこと3カ月

 オープン前年の秋から生け捕りを計画してきたが、まだイルカは捕獲できておらず、ショープールはしばらく空のままだった。「7月に漁師さんらの協力でコビレゴンドウ29頭の生け捕りに成功し、小プールで4頭、自然プールで25頭の飼育が始まりました。ところが、餌(イカ)を食べなくて困った。真夜中に与えてみたり、はえ縄を使ってぶら下げてみたり、いろいろ試したが食べてくれない。最初の食事は強制給餌(喉の奥まで手でイカを押し込む)が必要だったのです」。

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■難しい飼育に挑戦中

 追い込み漁の対象となっている9種類のイルカ全ての飼育展示に挑戦している。2013年には初めてスジイルカが入館。17年にはシワハイルカとカズハイルカの飼育を始めた。スジイルカ、マダライルカは飼育が難しく、国内でのスジイルカの飼育は同館のみとなっている。

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■腹びれイルカ「はるか」の思い出

 2006年に発見された腹びれを持つバンドウイルカ「はるか」。各水族館担当者が集まる選別会場での順番はくじ引きで決めるルールがあり、体長250㌢前後の若い雌から順に選ばれていった。はるかは雌だが272㌢と大きく、雌雄選別の時に腹びれに気付かれることもなく残った。「(はるかを)ひっくり返したら、なんだこれは?となりまして大騒ぎでしたよ」。

 選別に立ち会った林館長は「和田頼元が太地で組織捕鯨を始めたのが1606年ですから、ちょうど400年の節目に見つかった。先祖からの贈り物のように思えました」と振り返る。

 鯨類の進化における後ろ足の消失過程は明らかになっていない。はるかは「5000万年をタイムスリップしたイルカ」と称され、さまざまな研究に貢献した。「2013年に残念ながら息を引き取りましたが、不思議なことに翌年の1月に白いバンドウイルカのスピカ、同じ年の11月には白いハナゴンドウのハマタと珍しい個体が続けて見つかりました」。

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■庄司町長、先見の明

 『田畑のない土地でクジラしか頼るところが無かった町。しかし、いずれ捕鯨は厳しいことになる。』―庄司町長の言葉を今もかみしめる。「南氷洋(なんぴょうよう)の捕鯨がまだまだ盛んな頃に、捕鯨を続けることができなくなる先を見越して博物館を作った。観光とクジラを結び付けたのです」。

 庄司町長が残したくじらの博物館は、その遺志と共に、三軒一高町長が掲げる「太地町30年構想」へとつながり、捕鯨の歴史、文化、伝統と共に後世に受け継がれていくことだろう。

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▼注1 現在の価格に換算/国内企業物価指数1・8倍、消費者物価指数3・1倍

▼注2 博物館建設の指導に当たった日本海洋研究所長、西脇昌治東大教授

▼注3 マッコウクジラだけにできる腸の結石。天然香料として、古来より珍重される。

(2019年1月1日付紙面より)

【写真①】ヒゲクジラの中でも「畝(うね)」を持たないセミクジラは長いクジラヒゲ(ヒゲ板)を持つのが特徴。ヒゲ板の展示の前で、林克紀館長
クロミンククジラの模型。オキアミなどを海水と共に口に含み、ヒゲ板でこし取って食べる。風船のように膨らむ「畝」を持つ。ヒゲは短い
【写真②】背びれのない「美しい背中」を名前の由来とする背美(せみ)クジラ。大ホールの骨格標本と模型
古来より金と同等の取引がされたという龍涎香
腹びれを持つ「はるか」(提供写真)
紙面に躍る見出しから、オープンの喜びが伝わる=1969(昭和44)年4月4日付の「熊野新聞」
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