県産品を小学校へ提供 (和歌山県 )
和歌山県は10日から、県内の小学校および特別支援学校228校に、主要農水産物の一つであるウメの提供をスタートさせた。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、3年ぶりの取り組み。新宮・東牟婁地方の小学校にも届いており、各校で児童の梅ジュース作り体験が始まっている。
県産の農水産物を身近な食材と認識してもらい、学校給食でのさらなる定着を図るため、2012年度から家庭科学習や給食にウメ、モモ、カキ、ミカン、魚などの提供を開始。17年度からは鯨肉、ジビエを追加し、中学校へも提供を拡大するなど、食を通じて郷土の自然や文化、産業活動への理解を図っている。
ウメはクエン酸が豊富な食材で、疲労回復や風邪予防に効果があるといわれる。1日には、みなべ町から委託を受けた東海大学医学部の教授を中心とする研究グループが、梅干し抽出物が新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス(SARS―CoV―2)の武漢株や変異株への抗ウイルス効果を持つと発表。特許も出願中で、全国から注目が集まっている。
太地町立太地小学校(海野文宏校長)でも10日、5、6年生19人の家庭科学習で梅ジュースの漬け込みが行われた。児童は竹串でウメのへたを取り、穴を開けて、砂糖と交互に瓶に詰めていった。
花村瑛斗君(6年)は「梅ジュースは飲んだことがないので、2週間後の完成が楽しみ。ウメの汁が目に染みた」。西昇成君(同)は「普段からご飯やおにぎりで梅干しを食べています」。雑賀大陽君(同)は「和歌山県でウメやミカンが有名なのは知っていたけれど、梅干しはちょっと苦手。でも、梅ジュースは楽しみ」と笑顔で話していた。
(2022年6月14日付紙面より)
マイナンバーカード普及率
国は健康保険証について、マイナンバーカードにその機能を持たせた上で、将来は原則廃止を目指す方針を示している。しかしマイナンバーカードの普及率(交付枚数率)は全国的に伸び悩み、新宮市と東牟婁郡の市町も全国や和歌山県より低い数値にとどまる。ただ北山村だけは、全国や県を上回っている。
全国の普及率は5月1日現在で、44・0%。対して和歌山県は39・7%となっている。全国以下の普及率であることに加え、47都道府県中39位の数字となっている。
本紙エリアはさらに▽新宮市は35・1%▽那智勝浦町は37・1%▽太地町は31・1%▽古座川町は33・8%▽串本町は31・4%―と低迷。その一方で北山村だけは48・0%となっており、全国の普及率を超えている。
北山村は好調の理由について「シニアエクササイズの会場で呼びかけたり、保健師と一緒に啓発したり、70歳代の方のイベントなどで出張の申請支援をした」と話している。もともとの人口が少ないのもあり、一人が申請すれば多くがそれに倣うという部分もあるとのこと。「特にどの年齢層が突出するということもなく、全年齢で満遍なく申請してくれている」という。
新宮市は低調ではあるものの、これまでに大型スーパーや確定申告時期の税務署などで、出張申請支援を実施。選挙時は期日前投票所の前に臨時窓口を開設するなど、普及促進に尽くしてきた。企業・団体を対象とした、予約制の出張申請支援も実施中。「今後も何か良い方法があれば、いろいろとやっていきたい」と意欲を見せる。
同じく那智勝浦町も、2020年12月から月1回、休日の申請支援を実施。大型スーパーでの出張申請支援も行ったが、普及率は伸び悩んでいる。マイナンバーカード取得者にキャッシュレス決済のポイントを付与する、マイナポイント事業の第2弾が30日(木)から予定されているため「これに合わせて申請が増えれば」と期待を寄せる。
(2022年6月14日付紙面より)
串本地区警察官友の会総会 (新宮警察署串本分庁舎 )
串本地区警察官友の会(小森正剛会長、会員98人)の本年度総会が10日、新宮警察署串本分庁舎であった。新型コロナウイルスの情勢により3年ぶりの実施。冒頭で警察官への感謝状贈呈をし、引き続き小森会長を筆頭とする役員体制を承認するなどして目的達成への気持ちを高めた。
この会は、強く正しく親切な警察官育成のために協力するとともに警察に対する県民の理解を深める活動を推進、ひいては地域の治安安定を図り地域の発展に貢献することを目的として活動している。県警察本部の4月1日付警察署など再編に伴い、地区内の串本町と古座川町は新宮署、すさみ町は白浜署の管内となったが、同会は県警―地区の関係を保ち新宮署串本分庁舎に事務局を置いてこれまでの枠組みを続けるとしている。
総会冒頭、地区内で功労があったとして同署の船代剛司(たけし)巡査部長、木村渉巡査部長、吉村勇輝巡査長、井上健教(たけのり)巡査長に感謝状を贈呈。4人を代表して佐田駐在所に勤務する船代巡査部長が謝辞を述べ、一層の精励を出席した会員らに誓った。
開会に当たり小森会長は、「(再編の)全てにおいて承服とはしかねるが、第一線で勤務する警察官が私たちの治安維持のためまい進しているのも事実。本会を存続し警察活動への理解者を増やすことが住民の安全安心や事件事故の未然防止につながると確信している」と述べて引き続きの協力を会員に呼びかけ。新宮署の田原正士署長は「(再編後の)課題は随時検討し必要に応じて改善している。今後とも初動捜査において限りあるマンパワーを集中投入し、各事案を迅速に解決へと導きたい」と応えた。
来賓の田嶋勝正串本町長、西前啓市古座川町長もそれぞれに同会の活動に期待を寄せて総会の始終を後見。以降は事業関連書議案を審議し、役員改選では前役員全員再任の体制案を承認したという。
(2022年6月14日付紙面より)
「木の薫る店」で野菜市 (新宮市高田 )
新宮市高田の雲取温泉高田グリーンランド敷地内にある「木の薫る店」で11日、「野菜市」が開かれた。地域の生産者が手がけた、新鮮な野菜や花、米などが所狭しと並び、多くの買い物客などでにぎわった。
和歌山県のモデル整備事業として県の補助を受けて2002年度に紀州材を使用し建設された「木の薫る店」。これまで無人市場などとして開所していたこともあるが、高田地域ではさらなる建物の有効利用方法を模索していた。
そんな中、おととしに五十数年ぶりのUターンを果たした石田千代さんが、これまで近隣住民らで分け合うなどしていた野菜などを地域に広く循環させようと同施設の活用を提案。昨年12月に1回目の「野菜市」を開催し、午前中で完売するほどの盛況を博した。
以降、月に1、2回の頻度で開催し、この日で8回目。回を追うごとに出品者も増え、地域外からの来場者も増えたという。この日も開始30分前から新鮮な野菜などを求める買い物客が列を作って楽しげにおしゃべり。開店と同時に、フキやラッキョウ、タマネギ、ジャガイモなど、多くの野菜が品薄となった。
同施設を訪れる一人一人に「おおきにね」「元気にしてる?」などと声をかける石田さん。手作りのチラシには「遊びに来てくださーい」「お話に来るだけでも大歓迎でーす」などの文言が躍る。
石田さんは「天候も悪い中、開店前から多くの人が来てくれた。地域のコミュニティーの場になることが一番の目的。季節や野菜の収穫量にもよるけど、今後は月2回の開催も検討していきたい」と話していた。
次回の「野菜市」は7月9日(土)午前9時30分からを予定している。
(2022年6月14日付紙面より)
新宮市伊佐田町の新宮税務署(山端克明署長)で9日、感謝状授与式があり、同署職員の日頃の健康管理に貢献したとして医療法人米良医院(同市池田)の米良孝志院長に感謝状と記念品が贈られた。
署長感謝状は、適正な申告納税の推進、納税道義の高揚、職員の健康管理などについて多大な貢献があるなど、功績が顕著であった者に対して感謝の意を表するもの。
米良院長は、2014年から毎月1回血圧測定や健康相談を受けるなど同署の嘱託医として職員の健康管理に協力。新型コロナウイルス対策の助言やワクチンの早期接種に対応するなど、納税者対応を行う職員の心身に寄り添ってきた。
また、今年1月には県内の医師会を代表して県医師会長と県病院協会長が、電子申告・電子納税推進を宣言。県民に対して確定申告会場の密を避ける呼びかけを行ったが、米良院長は新宮市医師会長として旗振り役を担うなど、感染拡大防止に向けた取り組みに力を尽くしている。
感謝状を手渡した山端署長は「職員の健康管理はもとより、安心安全な税務行政が求められる中、ワクチンの早期接種に協力いただいた。管内外と出入りする職員も多い中、おかげさまで1人も罹患(りかん)することなく市民や納税者の方に対応することができた」と感謝を伝えた。
米良院長は「新型コロナが出始めた2年半ほど前、医師として新型コロナを担当していたこともあり、大阪などと行き来することがある職員も多いということから周りの目から見た対応や助言をさせていただいた」。
「最近、ようやく感染状況も収まりかけ、重症化も減っている。新たな変異株も出ていない。今後、収まっていくのか、それとも厳しくなっていくのかを判断していく必要がある。引き続き、気を抜かずにマスク着用や手指消毒など基本的な感染対策を心がけて」と話していた。
(2022年6月11日付紙面より)
熊自連がふれあい観察会 (那智勝浦町 )
熊野自然保護連絡協議会(瀧野秀二会長)は4日、那智勝浦町の環境省宇久井ビジターセンターで「宇久井半島ふれあい観察会」を開いた。参加や同会の専門家ら10人が宇久井半島の遊歩道や海岸部を巡り、さまざまな生物を観察した。
熊自連は、植物や昆虫・野鳥・地質などの専門家が、熊野の自然環境保全を趣旨に一つにまとまり、1985年に結成された団体。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、観察会を開くのは3年ぶり。感染症対策のため、参加人数を絞って開催した。
瀧野会長は開会に当たり「今日はさまざまな分野の専門家が参加しているので、気になることがあれば何でも質問してください」とあいさつ。
参加者たちはササユリや菌従属栄養植物のハルザキヤツシロランの果実、シダのコヒロハハナヤスリなどを観察しながら遊歩道を歩き、紀伊半島東岸を見渡す駒ヶ崎灯台へ。南方系のチョウであるイシガケチョウなどの昆虫や野鳥の解説もあった。地玉(じごく)の浜では海浜植物のハマカンゾウがオレンジ色の花を咲かせており、参加者たちの目を楽しませていた。
(2022年6月11日付紙面より)
新宮市旧チャップマン邸
新宮市丹鶴の旧チャップマン邸で、ワーケーションが利用できるようになった。利用は無料(貸館料金別途必要)で利用可能時間は午前9時~午後9時。
旧チャップマン邸は、アメリカの宣教師・チャップマンの住宅として、「文化学院」創始者で市名誉市民の西村伊作(1884~1963年)が設計し、1926年に建築。伊作が手掛けた住宅は県内に2軒しか残っておらず、大変希少価値の高い建物として2020年8月に国の登録有形文化財に登録された。
ワーケーションは「ワーク」(労働)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた造語。観光地やリゾート地でテレワーク(リモートワーク)を活用し、働きながら休暇を取る過ごし方で、働き方改革やコロナ禍において「新しい働き方」として全国的に注目されている。
同邸で利用できるのは、2階学習室と主寝室の2部屋。椅子、机の他、ワーケーション専用Wi―Fi(ワイファイ)が完備されている。事務所内にはドリンクの自動販売機も設置されているので、仕事や観光の合間に一息を。
利用には予約が必要。休館日は毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)と年末年始。貸館料は1部屋当たり〈午前9時~午後1時、午後1時~5時〉各1010円、〈午後5時~9時〉1520円。観覧は無料。
貸館予約、問い合わせは同邸事務所(電話0735・23・2311)まで。
(2022年6月11日付紙面より)
新型コロナワクチン (那智勝浦町 )
那智勝浦町はこのほど、4回目の新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を7月中旬から開始することを発表した。60歳以上および18~59歳で基礎疾患を有する人が対象で、接種時期は9月末までを予定している。
同町はワクチン接種状況について、5日現在で3回目の接種を終えた町民は9779人(接種率72%)と報告した。5~11歳の子どもの1、2回目接種は3月20日から集団接種を開始して5月末に終了。12歳以上の3回目接種は今月8日に終了した。今後も接種を希望する町民に対しては、接種を継続していく方針だ。
4回目接種では6600人の対象者を見込んでおり、同町の体育文化会館で集団接種を行う。
3回目から5カ月が経過した60歳以上には、6月中旬から接種券が送付される。18~59歳で基礎疾患のある人は申込制となっている。各戸配布された接種を知らせる用紙のQRコードをスマートフォンで読み取るか、町ホームページからも申し込みが可能。また、新型コロナウイルスワクチン接種相談窓口でも申し込める。
同町では「ワクチン接種が終了しても、感染、発症する場合もある。ご自身や大切な方を守るため、改めて人と触れ合う際のマスク着用や3密の回避など、基本的な感染予防対策の徹底をお願いします」と話している。
ワクチン接種に関する問い合わせは新型コロナウイルスワクチン接種相談窓口(電話0735・29・6137)まで。
(2022年6月11日付紙面より)
新宮グラウンドゴルフ同好会「あじさい大会」
有田中央、貴志川と共に (高校野球和歌山大会 )
認知症高齢者の輝く姿 (那智勝浦町 )
「この喫茶店では、とボケた出来事が起こるかもしれません。なぜならホールスタッフは、この町で生まれ年を重ねた認知症のおじいちゃんおばあちゃんだからです」―。5月29日に那智勝浦町朝日の民宿わかたけ1階で開かれた「とボケた喫茶店」を紹介する一文だ。1日限りの喫茶店は予約制で午前と午後の4部で行われた。同町下里にあるグループホームつつじ園の利用者7人がホールスタッフとして従事し、訪れた30人の来店客と交流を深めた。
この催しは医療と福祉、飲食業などの関係者で構成される「とボケた実行委員会」(近松健太委員長)が企画・開催したもの。高齢者の暮らしの在り方や社会参加の可能性を考え、地域においての認知症への理解や周知を行うことが目的。
看護師の近松委員長がデイサービスを利用する自身の祖父の様子を見ていた際に「短時間でも、生き生きできる機会や場があれば」と2年前から考えるようになったという。ある時、同民宿を経営する花井清州さんに相談したところ、人脈が広がっていった。
その後、つつじ園の看護師で認知症介護指導者である川口利恵さんや、大阪でスペイン料理のオーナーシェフを務めるなどの経験を持ち、現在は新宮市で飲食のプロデュース業を行う金子清人さんと妻の摩耶さん、同町朝日のケアプランサービスつなぎの管理者で、主任ケアマネジャーである南香帆里さんが今回の企画に賛同し加わった。
6人は実行委員会を立ち上げて会議を重ねた。当初は3月に予定していたが、コロナ禍で延期が続いて今回に至った。
当日は午前のブランチタイムと、午後のカフェタイムに分けて実施。来店客は、あらかじめ用意された各テーブルを担当するスタッフ(利用者)の情報が記された自己紹介カードに目を通した。
スタッフが料理を運び、注文分の飲み物を届けた時点で席に着く。両者の交流を図るためのトークタイムが設けられており、共に笑顔を浮かべ、和気あいあいと会話に花を咲かせていた。
料理を担当した金子清人さん、摩耶さん夫妻は「必要なことを伝えると、それに応えてくれる。認知症の方々とのコミュニケーションや関係性はイメージとは違い、とてもシンプルで楽しかった。多くの気付きや収穫がありました」。
南さんは「人は外へ出て活動すると輝く。ご自宅に訪問する仕事をしているが、目にする機会がなかった。地域に溶け込み過ごす姿はとてもきらきらしていた。今後も多くの人に、同じように輝いてほしい」。
川口さんは「専門の資格を持ち、専門の仕事をすることは大事だが、それだけではないことに気付いた。他業種の方々が集まり、連携することで広がった。人と人との関係性はもっとシンプル。こういった機会があれば、みんながハッピーになれる」と話した。
花井さんはイベントを振り返り「イベントではスタッフの皆さんがスムーズに会話して、お客さまと共感し合い、盛り上がっていた。高齢者や若者など年齢は関係なく、互いに興味が持ち合える入り口やきっかけになったのでは」。
福祉の学びを深めるために、今後数年間は国内外に赴いて勉強を検討しているという近松さんは「常に良い雰囲気。スタッフの皆さまが生き生きとしていて、感動した。イベントは継続していきたい。その際は多くの皆さまにもご参加していただけたら」と語った。
イベント終了後は4部とも、スタッフが来店客を見送った。新たな福祉の在り方に感銘を受けた来店客がスタッフに感謝を述べ、握手を交わす姿なども見られた。
(2022年6月5日付紙面より)
那智勝浦RCの記念例会 (那智勝浦町 )
那智勝浦ロータリークラブ(那智勝浦RC、後誠介会長)は2日、那智勝浦町天満のホテルサンライズ勝浦でクラブ創立60周年記念例会を開いた。記念ゲストとして細密鉛筆画家の篠田教夫さんが招かれ、卓話「細密鉛筆画家 篠田教夫展―神仏宿る細密画の世界 那智瀧図にはじまる―」を講演。会員らは篠田さんの作品に懸ける思いや制作過程など説明に耳を傾けていた。
神奈川県出身の篠田さんは鉛筆による細密描写、迫真表現で自然の造形の社寺などをテーマに作品を発表している作家。「高野山・熊野を愛する百人の会」メンバーで、2017年に那智勝浦RCの招きから、熊野那智大社(男成洋三宮司)に「那智瀧図」を奉納した。
昨年11月には那智勝浦RCの創立60周年記念事業で、「紀の国わかやま文化祭2021(第36回国民文化祭・わかやま2021、第21回全国障害者芸術・文化祭わかやま大会)」応援事業の一環として、今回の卓話と同タイトルの展覧会を町内で開催し、多くの来場者でにぎわった。
また、2日朝には後会長と共に同大社を訪れ、「那智瀧図Ⅱ―夜―」「那智瀧図Ⅲ―霧―」2作品を奉納した。
卓話では、友人に串本町の河内祭(こうちまつり)に誘われ熊野地域に足を運んだとし、その際に偶然にも後会長と出会ったエピソードなどを紹介した。
那智瀧図については、「初めて那智の滝を見た時は圧巻で、刺激を受けた。絵描きの習性で、どう表現すれば、描くことができるのかいろいろ考えた」と振り返る。
これまで自然の風景を描くことがなかったという篠田さんは、日本一の落差を誇る滝を描くために観察に徹した。ある時、左側から吹く強い風で滝の形が変わることに気付いたという。
過去に那智の滝を題材としてきた作家たちの作品は全て滝筋が真っすぐのものばかりだったが、篠田さんは自然現象によって起こる曲がった滝を描くことを決意。「あえて曲げて描く。アイデアではなく、自然現象を受け止めて描きたかった」と話した。
夜間の取材時の苦労や、絵画として成立させるための工夫なども説明。これまでに取り組んだ作品についても解説した。
今後の構想として「那智の滝展」を検討しているとし、「著名な作家と共にやりたい。詳細は未定だが、この地で実施できればと思い、かすかな希望として、お伝えさせていただきたい」と語った。
その後、後会長から篠田さんに記念品が贈呈された。
(2022年6月5日付紙面より)
城山田サロンが瀞峡めぐり
新宮市熊野川町の能城(のき)・山本・田長地区合同の城山田ふれあいいきいきサロンが2日に開かれ、地域住民ら12人が今年3月に運航開始した「瀞峡めぐり」へ出かけた。
瀞峡(瀞八丁)は和歌山、三重、奈良の3県にまたがる大渓谷で、国の特別名勝・天然記念物に指定されている。多数の要因が重なって昨年からウオータージェット船の運航が休止となったが、(一財)熊野川町ふれあい公社が川舟を利用して運航をスタートさせた。
熊野川町玉置口から乗船した参加者たちは、往復約6㌔、約40分のルートで、切り立った渓谷や巨岩・奇岩が織り成す風景を巡った。途中、奥まった谷の隙間へ入る趣向もあり、約7000万年前に堆積した地層がマグマの熱変性や水の浸食を受けて形作られた雄大な自然を堪能した。
仲岡久子さん(89)は「以前に瀞峡へ行ったのはもう10年以上前。近くの有名な場所というのは意外と行かないもので、いい機会になりました」と話す。参加者からは「乗るまでは少し不安もあったが、川の上は気持ちが良かった」「また来たい」などの声があった。
船頭によれば、これまでにサロンで団体参加があったのは熊野川町の2件のみで「ぜひご乗船を」と呼びかけている。料金、運航に関する問い合わせは熊野川川舟センター(電話0735・44・0987)で受け付けているという。
(2022年6月5日付紙面より)
地元出身者らで会発足
御浜町下市木で明治時代から織られてきた「市木木綿」の魅力を発信し、次世代につないでいこうと「市木木綿を未来へ紡ぐ会」が発足した。唯一の織元、向井浩高さん(53)=熊野市木本町=の活動を支えるため御浜町出身・在住者ら約15人が力を合わせる。
市木木綿は旧市木村で農業の副業として発展し、最盛期の明治中期には45軒ほどの織元があった。1本だけの単糸で織るため、通気性が良く、柔らかな風合いに仕上がる。レトロでカラフルなしま模様も特徴の一つだ。
向井さんは友人の父親で最後の職人の大畑弘さんから技術を継ぎ、2004年から布団店を営む家業の傍ら、生地を織り続けている。当時から大畑さんの工場を借りていたが、明け渡すことになり、和菓子屋だった木造2階建ての空き家に移転することに。布団店と自宅のある熊野市に移せば便利になるが、発祥の地である市木で織るからこそ意義があると考え、8カ月ほどかけて移転先を探した。
作業場だけでなく、展示やワークショップのためのスペースも設け、市木木綿の魅力を伝えながら次の世代に残していける場所をつくりたいと考えている。将来、後継者候補が現れた際には無償で譲渡したいという。機械の移動などを始めたが、一部改装を行うため、引っ越しの完了時期は決まっていない。
紡ぐ会ではメンバーの提案を受け6月1日から7月20日(水)まで、土地建物の購入費の一部などに充てるためのクラウドファンディング(ネットを通して賛同者から少額ずつ資金の支援を受けること)を始めた。
向井さんは「市木木綿に出会ったとき、大正にタイムスリップしたかのような衝撃があった。文化も含めてこの技術を残していきたい」と語る。会に参加する一般社団法人ツーリズムみはま(御浜町阿田和)の辻本安芸さんは「資金を集めるだけのクラウドファンディングでなく、地元の人に知ってもらいたいという意味もある。たくさんの人に市木木綿の魅力に触れてもらいたい」と熱意を込める。
支援について詳しくは「市木木綿 レディーフォー」でネット検索かサイト(https://readyfor.jp/projects/ichigimomen2022)まで。
(2022年6月5日付紙面より)
健康週間、磨いて啓発 (くじらの博物館 )
国と日本歯科医師会が定めた「歯と口の健康週間」を間近に控えた1日、太地町立くじらの博物館(稲森大樹館長)は「クジラの歯磨き」の一般公開を始めた。10日(金)まで。クジラショー後に歯磨きを行って見せることで、歯と口の衛生の普及啓発を目指す。
歯磨きを行うのは、コビレゴンドウ、オキゴンドウ、ハナゴンドウの3種類。磨く様子を観客に見せながら、種類ごとの食性の違いや、歯の数、大きさが異なることを説明する。同週間に合わせて行う、同館の恒例行事となっている。
初日の1回目の一般公開では、太地町立太地こども園(森尾扶佐子園長)の5歳児16人が招待されていた。コロナ禍の影響でおととしのみ招待を中止していたが、例年は同様に招待している。
園児らは、クジラのショーに興じた後、歯磨きを見学した。クジラに関するスタッフの説明を聞きながら、口の中をのぞき込み、歯を磨く様子を観察した。代表園児が歯ブラシを持ち、クジラの歯を磨く一幕もあった。最後に同館から園児に、歯ブラシがプレゼントされた。
岡田李琉(りる)ちゃん(6)は「楽しかった。私も歯磨きは朝や晩にする。クジラの歯磨きを見て、私も歯磨きを頑張ろうと思った」と話した。
「クジラの歯磨き」は、午前10時30分、午後0時30分、午後2時30分からのクジラショー後に、10分程度を予定している。問い合わせは同館(電話0735・59・2400)まで。
(2022年6月2日付紙面より)
天満保育園で「花の日」 (那智勝浦町 )
那智勝浦町天満の日本基督教団紀南教会の天満保育園(小宮一文園長)で5月31日、「花の日」の行事があり、園児たちが町役場や病院、日頃お世話になっている商店などへ花束と色紙を届けた。
花の日は1866年にアメリカの教会で始まった行事。子どもたちが季節の花を持ち寄り、地域の人々や福祉施設に届けたり、病気の人を見舞って励ましたりする。
礼拝を終えた園児たちは花を持って町内へ出発。町役場へは5歳児7人が訪れ、花束と「いつもありがとう」のメッセージが書かれた色紙を手渡した。園の給食に魚などを届ける北郡商店へは4歳児10人が訪れ、賛美歌「この花のように」も歌った。
花と色紙を受け取った役場職員は「町長室と福祉課窓口へ飾ります。コロナ禍で思いっきり遊べない日々が続いていると思いますが、元気な姿を見せてくれ、とてもうれしいです」と語る。
小宮園長は「『この花が生まれたように、あなたは決して神様から忘れられてなどいない』というメッセージを込めた行事です。人生には苦しい時期もありますが、誰かに慰めを届けたという経験は、苦しいとき、自分にもきっとどこからか慰めが来るという希望につながるのではないでしょうか」と話していた。
(2022年6月2日付紙面より)
大阪国税局ら迎えて宣言式 (和歌山東漁協 )
県内最大規模の組合員数を誇る和歌山東漁業協同組合(𠮷田俊久代表理事組合長)が5月31日、同組合串本本所で適正申告・キャッシュレス納付推進を宣言した。その象徴として津波避難デッキの階段に懸垂幕を掲出。𠮷田組合長は時代相応の納税利便として利用の裾野拡大に意気込んでいる。
キャッシュレス納付は▽ダイレクト納付▽振替納税▽インターネットバンキング等▽クレジットカード納付―といった税務署や金融機関に赴かず納税ができる仕組みの総称で、国税庁が時代に即した適正申告の先鋭手法として目下推進を目指すさなかにある。
同組合は2009年に消費税完納推進と併せてダイレクト納付の受け皿となっている仕組み「e―Tax」の普及定着を宣言。その進展としてキャッシュレス納付を捉え、いち早く推進を宣言することを決めたという。同組合の組合員数は現在約1700人。宣言がもたらす影響力の大きさは、各方面から注目されるところともなっている。
この日は同本所研修室を会場にして、新宮納税貯蓄組合連合会(森川起安会長)と両輪で宣言式を挙行。森川会長は「当連合会の運動趣旨に賛同して宣言をしていただけることは膨大な喜び。当連合会としては本日の貴重な宣言を背に、管内の納税者に対し適正申告・キャッシュレス納付推進を広く啓発していきたい」とあいさつし、𠮷田組合長は「地場産業を担う漁業者の代表である組合が率先して適正申告・キャッシュレス納付を実践し利用推進に取り組むことは、活力ある地域社会の実現に貢献すると考えている」など宣言し組合内で集めた73通の振替納税の依頼書とともに宣言文を新宮税務署の山端克明(やまばな・よしあき)署長へ託した。
来賓を代表して大阪国税局の馬場則行徴収部長、山端署長、紀南県税事務所の清水真己所長、串本町の田嶋勝正町長が祝辞を述べ、同町商工会の須賀節夫会長、近畿税理士会の瀧岡俊太・新宮支部長、同町税務課の島野和昭副課長も列席して今後を期待。以降主催2人、来賓代表4人と後見した新宮納税協会の横手章郎会長、新優会の小森正剛会長の計8人で懸垂幕を除幕し、宣言の象徴として掲げた。
(2022年6月2日付紙面より)
高田川などで太公望
熊野地方の熊野川流域で1日、アユ漁が解禁された。この日を待ちわびていた太公望が夜明けとともに釣り糸を垂らした。
熊野川漁業協同組合は4月に四村川350㌔、赤木川上流250㌔、同川下流200㌔、大塔川350㌔、三越川100㌔、本宮と敷屋で各50㌔の稚アユを放流した。組合は「今年の天然遡上(そじょう)は例年に比べていいようです」と話している。
新宮市の高田川を訪れた40代男性=同市三輪崎=は「ようやく、この日を迎えられて喜んでいます。1年が始まったような気持ち。午前5時半ごろから2時間半で15~16㌢のアユが約20匹釣れた。近年の新型コロナウイルスの影響で行動を制限せざるを得ない状況ですが、しっかり感染対策をして釣りを満喫できれば」と笑顔を見せていた。
(2022年6月2日付紙面より)