先日お子さんの食事マナーについて、「どこまで厳しくしつけるべきか」という質問を受けました。食事のマナーは、挙げ始めるとキリがないくらいたくさんありますし、どこまで教えるべきか、迷いますよね。今日は、そんな食事マナーのしつけについて、お伝えしたいと思います。
まず、大前提としてお伝えしておきたいのが、「厳しく叱らない方がいい」ということです。どの研究結果からも、これは明らかなので、必ず守ってください。子どもにとって、一番大切なのは「楽しい食卓」であることです。食事の時間を「嫌な時間」にしないことを心がけてください。それを踏まえた上で、幼い頃から教えた方がいいと思うマナーをお知らせしたいと思います。
最初の私のお薦めは、「お箸の持ち方」です。3歳ぐらいから始める方が多いと思いますが、これはマナーのみならず、発達にとてもいい影響を及ぼします。日本人の手先の器用さは、お箸を持つことからきているといわれているほどです。お箸を正しく持つことは、手指の発達にも、脳にもいい影響があるといわれています。また、お箸を正しく持つ子の方が、姿勢が良く、眼精疲労を軽減できて、視力にもいいといわれています。もちろん、食事の時の所作も美しいですよね。そしてお箸は、間違った持ち方をしてしまうと、後から矯正するのが難しいともいわれています。幼い頃から教えてあげたい、大切なマナーの一つだと思います。
次にぜひ教えてあげてほしいのが、「食事中に肘を突かない」ということです。姿勢が悪くなる、お行儀が悪く見える、というマナーの観点でもありますが、これも発達に影響します。肘を突くと姿勢が悪くなるので、消化に悪影響を及ぼします。背筋がゆがみ、背中が丸くなることで、胃が圧迫されるからです。また姿勢は、歯並びにも影響します。かんで食事をするようになると、子どもは食べ物を口に入れたら口を閉じ、舌や歯の動きによって食べ物を動かし、歯茎や歯の上に乗せる必要があります。そしてかみ砕いた食べ物を、唾液と混ぜて舌の上に乗せて、上顎(口蓋〈こうがい〉)に押し付けるようにして飲み込むわけです。
この時、猫背だったり、何かにもたれてだらしない姿勢になっていたりすると、体が安定せず、舌がうまく使えなくなってしまいます。こうしたゆがんだ動きに合わせて歯が生えてくると、ここで歯並びがいびつになる可能性があるんです。
私がお薦めするマナーは、まずはこの二つです。一度にいろんなマナーを教えようとすると、親もイライラして叱りがちになりますよね。食事のマナーを教えようと思ったら、幼い頃から癖付けとして教えたいこの二つから、始めてみてはいかがでしょうか? 子どもの成長に合わせて、焦らず、しつこく、教えることがポイントです。そして、正しくできたら、全力で褒めてあげてください! そうすれば自然に身に付きます。次回は、今日ご紹介した以外のマナーについてもお伝えしたいと思います。
(2025年4月19日付紙面より)
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