那智勝浦町立勝浦小学校(草下博昭校長)で20日、食育授業「命について~食に感謝~」があった。有田川町で養鶏業を営む有限会社御坊チキン常務取締役の古田雄也さん(33)が来校し、6年生37人に講話した。
古田さんは串本町出身で、看護師として働いた後、県内一の生産量を誇る「御坊チキン」を義父から継いで養鶏農家に。2019年に生産を停止していたブランド鶏「紀州うめどり」を23年に復活させ、現在はインスタグラムの情報発信や執筆・教育活動にも取り組んでいる。
古田さんは年間60万羽のニワトリを出荷していると語り、鶏舎の清掃やおがくず搬入、餌やり、水替え、出荷といった現場の様子を映像で紹介。梅干しの生産過程で作られる梅酢を飼料に活用し、ニワトリ飼育で排出される鶏ふんを肥料として還元するなど、循環型農業を目指していると述べた。
命について「食肉用ニワトリの生存率は97~99%で、100匹ヒヨコがいたら1~3匹は飼育途中で死んでしまったり、人間が処分したりする。養鶏農家として最初にやったのが処分の仕事で、それまで人の命を救う仕事をしていたので、やっぱりショックだった」と自身の経験を語った。
交流サイト(SNS)を通じて「そんな狭い所で飼うなんて」「外に出してあげて」と批判メッセージが来ることにも言及し「実際に真冬の屋外に出すと、寒さや野生動物に狩られてほとんどが死んでしまう。ニワトリを食べないという選択も、命に感謝をしていただくのも、両方が思いやり。動物の気持ちを完全に理解することはできないけれど、常に思いやる優しさが大切なのでは」と語りかけた。
この日の給食は「紀州うめどり」を使った唐揚げと梅のおかかあえ、和風煮、ご飯。亀山彩葉さん(12)は「ニワトリを育てているところを初めて見た。みんなが食べられるよう、きちんと大きく育てているのがすごいと思った。おいしく食べたい」と話していた。
(2025年1月22日付紙面より)