那智勝浦町体育文化会館で8日、まちの賑(にぎ)わい空間創出プロジェクトのセミナーが開かれた。「官民連携でまちづくりをどう進めるか」をテーマに、町内外の観光事業者や役場職員ら約30人が参加して学んだ。
県地域振興部地域政策局地域振興課主催。講師に、官民連携で和歌山市の北ぶらくり丁商店街再生などに携わる中村英人さん(和歌山市空家対策課班長)、まちづくり会社「サスカッチ」代表取締役の小川貴央さんを招いた。
中村さんは米オレゴン州ポートランドなどで公道にカフェのテーブルや商店がはみ出し、自由に空間を活用している様子をヒントに、北ぶらくり丁商店街の路上にベンチやソファを設置し、映画祭やヨガ、カルチャーイベントなどの社会実験をしたと紹介。「民間の方々にいきなり『自由に使っていい』と言っても、どこまで、何をやっていいのか分からないため、最初は公共空間の活用法セミナーからスタートした」と経緯も述べた。
まちづくりの姿勢について「行政は『前例がない』『クレームが出たら』、民間は『どうせ成功しない』『うちにとっては迷惑』と言いがちだが、まずはやってみること。やって失敗したら謝る、成功したらみんなで喜ぶのが基本。官と民は『いいものを作りたい』という総論が一致していても、動き方やスピード感が違う。互いに理解し合うことが大切」。日本一空き家率が高い県の状況を鑑み「これまでいろいろやってきて現状があるのだから、逆に新しいことを何でもやっていい」と呼びかけた。
小川さんは「イベントはあくまできっかけづくりや広報。本質はまちの日常の風景をつくっていくこと」と述べ、北ぶらくり丁商店街を「若者がデートで訪れる、ちょっといい服を着て行く場所」にしようと、アーケード撤去やにぎわい創出へ企画を進めていると言及。2020年以降、新規で16店舗がオープンするなど、ポップカルチャーが生まれる場所になっていると自信を持って語っていた。
(2024年11月10日付紙面より)