熊野新聞記事アーカイブ
熊野新聞社 The Kumano Shimbun
〒647-0045 和歌山県新宮市井の沢3-6
営業部 TEL 0735-22-8080 FAX 0735-23-2246
記者室 TEL 0735-22-8325 FAX 0735-28-1125

静かに手を合わせる遺族ら=4日、那智勝浦町井関
紀伊半島大水害から13年
キャンドルともし故人しのぶ
那智谷大水害遺族会

 紀伊半島水害(2011年)から13年が経過し、今年も各地で犠牲者を追悼する慰霊祭や式典が営まれた。本紙エリアでも、遺族や関係者らが故人をしのび、災害から命を守ると誓いを新たにした。

 同時多発的な土石流で甚大な被害を受けた那智勝浦町の那智谷にある紀伊半島水害記念公園では、4日未明に遺族や関係者ら約10人が参列。土石流の発生が始まったとされる午前1時に、死者・行方不明者数と同じ29個のキャンドル型ライトをともし、静かに手を合わせた。

 那智谷水害遺族会の岩渕三千生代表は「毎年お盆を過ぎると、当時の事がフラッシュバックする。現在は携帯電話で災害情報が得られる時代。自分の命は自分で守ることが大切。29の御霊(みたま)が、いつまでもこの那智谷を見守ってくれるように」と心情を語る。

 水害の犠牲となった中平景都君(当時小2)の同級生ら3人も参列。楠本小太朗さん(21)は、中平君と山や川で遊び、一緒に芋掘りやゲームをした思い出を振り返り「元気な僕らを見守っていてほしい」。現在は通信制の大学で空間デザインを学び、建築分野にも興味を広げている。「地震に強く、迅速に建て替えができる建物を造りたい。知識を身に付け、将来は地元で建築に携わりたい」と語った。

 水害当時町長を務め、妻と娘を亡くした寺本眞一さん(71)も参列。「毎年異常気象により、各地で水害災害が起こり、犠牲になる方がいる。当時と比べれば、線状降水帯の被害予測もできるようになるなど格段に技術が進歩している。一人一人が命を大切に、早めの避難を。防災教育で子どもの頃から知識を身に付けることも大切だと思う」と話していた。

(2024年9月5日付紙面より)


別窓で見る
記事一覧

参列者が献花して手を合わせた=4日、新宮市熊野川町田長の道の駅「瀞峡街道 熊野川」
地域 安心安全なまち築く
慰霊碑前で誓い新たに
新宮市
 新宮市は4日、同市熊野川町田長の道の駅「瀞峡街道 熊野川」の紀伊半島水害慰霊碑前で犠牲者追悼献花を営んだ。田岡実千年市長をはじめとした市の三役や幹部職員、三栗章史議長をはじめとした市議会議員など30人が参列。犠牲者の冥福を祈るとともに、災害に強いまちづくりを誓った。

 2011年の紀伊半島水害で、新宮市では13人の尊い命が失われ、1人が行方不明となった。参列者たちは、犠牲者の名前が刻まれた慰霊碑の前で黙とうをささげ、白い菊を献花。故人をしのび、静かに手を合わせた。

 田岡市長は「災害でお亡くなりになられた方々の無念の思いと、ご遺族の皆さまの深い悲しみを思うと今も哀惜の念に堪えない」と追悼。

 市では災害後、国、県、市民からの多大な支援と励ましを得て復旧復興を進めるとともに、防災対策を見直し、災害に強いまちづくりに努めてきたと述べ「これからも紀伊半島水害を片時も忘れることなく、市民の皆さまが安心安全に暮らすことができるまちを築いていく」と決意を新たにした。

 水害で熊野川町日足在住の自宅が被災した竹田和博秘書課長は「あの時から市の職員がだいぶ入れ替わっている。復興に尽力した活動の教訓を生かし、忘れることなく後世につなげていきたい」と話した。

(2024年9月5日付紙面より)

もっと見る
折たたむ
別窓で見る

高台目指して来館者を誘導=2日、太地町立くじらの博物館
防災 地震・津波を想定し訓練
太地町立くじらの博物館
 太地町立くじらの博物館は2日、地震と津波を想定した避難訓練を実施した。職員25人が参加。8月8~15日に南海トラフ地震臨時情報(巨地震注意)が発令されていたこともあり、緊張感を持って高台の浅間山(標高58㍍)まで逃げた。

 「防災の日」(9月1日)に合わせて実施しており、今年で4回目。防火や水難救助訓練も合わせ防災意識を高めている。

 地震を知らせる放送が鳴ると、誘導スタッフたちが自然プールやイルカショープール、博物館、海洋水族館から来館者役を誘導。8分40秒で浅間山山頂まで待避した。町の救急隊員協力の下、救急救命講習もあった。

 町役場総務課の森本直樹副課長は「落ち着いて避難できていた。最も津波のリスクが高いのは自然プールと水族館周辺で、津波到達時間の想定は3分49秒。駐車場の高さまで来れば想定上は安全だが、さらに厳しい条件での訓練も検討を。地震によって土砂災害が発生する可能性もあり、複数の避難経路を想定しておく必要もある」と講評。稲森大樹館長は「南海トラフ地震臨時情報発令後も落ち着いてお客さまを迎えられたのも、日頃の備えがあってこそ。いつ何時有事になっても、しかるべき対応が取れるように」と話していた。

(2024年9月5日付紙面より)

もっと見る
折たたむ
別窓で見る
主な記事 *記事詳細は熊野新聞紙面をご覧下さい*
  • 行政 補正予算など11議案審議 9月定例会が開会 (御浜町)
  • 【この記事のキーワード】
    地震
    防災
  • 行政 出馬意思の2陣営が出席 立候補予定者説明会 (北山村議補選)
  • 地域 三栖オトヨさん満百歳に 課長ら訪問して長寿祝う (古座川町)
  • 地域 「幸喜はずっとギャランに乗っていた」 親友と愛車との思い出 (佐田一誠さん)
  • 【この記事のキーワード】
    紀伊半島大水害
    大水害
    水害
  • 医療 北野陽二院長に県知事表彰 救急医療功労たたえる (和歌山県)
ご購読・試読のお申し込み