新宮東牟婁特別支援教育研究会(河田恵美会長)が8月28日、那智勝浦町の体育文化会館で夏季研修会を開催した。和歌山大学教育学部の米澤好史教授が臨床経験を基に「愛着障害と発達障害の理解と支援」と題して講話し、教職員約80人が学びを深めた。
特別支援学級を利用する児童生徒が年々増加する中、教職員の理解を促進し、障害や特性のある子どもへの教育の充実や環境整備につなげようと開催した。
米澤教授は最初に「これまで『愛着』は赤ちゃんの問題に矮小(わいしょう)化されていたが、愛着障害は子どもから高齢者まで全て年齢に表れる」と言及。愛着を「特定の人と結ぶ、情緒的な心の絆」と定義し「愛着障害は、愛着の形成不全と捉えることができ、誰とも情緒的な絆を結べていない状態。先天的な脳機能障害である発達障害とは異なる」と述べた。
「愛着形成には臨界期があり、3歳以降は手遅れ」との言説について「これは誤り。何歳からでも修復でき、親でない立ち位置の方とでも絆を結べる」。「発達障害と愛着障害は併存しない」との従来の精神医学会の捉え方にも異を唱え「併存するのは当然」と持論を述べた。
愛着の機能について▽安全基地(ネガティブな感情から守る)▽安心基地(ポジティブな感情を生じさせる)▽探索基地(報告によりポジティブな感情を増加させ、ネガティブな感情を減少させる)―の三つを提唱。
愛着障害・発達障害に表れる「困った行動」について「どんなに訳が分からないように見える子どもの行動にも、必ず理由・原因がある。それだけをやめさせようとしてもうまくいかない」とし、具体例や支援の在り方を解説した。
教育現場に立つ教職員らに「愛着障害と発達障害は見分けが難しく、専門家でも間違うことがあるからこそ、子どもたちを近くで見ている先生方の立場が重要。愛着の視点からの支援の充実に生かして」と呼びかけた。
(2024年9月3日付紙面より)
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