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初公開の秘仏・秘宝を解説する髙木智英住職=8月31日、那智勝浦町の補陀洛山寺
秘仏・秘宝を初公開
世界遺産登録20周年に
那智勝浦町の補陀洛山寺

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熊野三所大神社
 那智勝浦町浜ノ宮の世界遺産・白華山補陀洛山寺(髙木智英住職)で1日から、秘仏「三面大黒天像」など3点を初公開している。通常は年3回のみの本尊「三貌十一面千手千眼観世音菩薩(ぼさつ)」(国重要文化財)も特別に開帳しており、期間は11月30日(土)まで。

 同寺は仁徳天皇の治世にインドから熊野の海岸に漂着した裸形上人によって開山されたと伝わる古刹(こさつ)。平安時代から江戸時代にかけて、海のかなたの観音浄土を目指して船出する「補陀落渡海」が行われていたことでも知られている。

 「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年に合わせて公開しているのは「三面大黒天像」、「日本第一補陀洛山寺」の勅額、補陀洛山寺御寶印(ほういん)の3点。蔵に納められていたものを修繕し、いずれも公開は初。

 三面大黒天像は、正面に大黒天、右面に毘沙門天、左面に弁財天の三つの顔を併せ持った三天合体の尊像。天下人となった豊臣秀吉の出世守り本尊として知られ、強力な勝負運、良縁、大金運の三尊天の御利益をもたらしたとされる。高さは約30㌢。同寺への来歴は不明だが、安土桃山~江戸時代ごろの作と推定されている。

 「日本第一補陀洛山寺」の勅額は古文書などで飛鳥時代の文武天皇(683~707年)の宸筆(しんぴつ)と伝わっており、寺の歴史を物語る。木製の御寶印には本尊「三貌十一面千手千眼観世音菩薩」を象徴する梵字(ぼんじ)が彫られ、かつては本尊と縁を結ぶ際に授者の額に押されていたという。

 髙木住職は「まずは補陀洛山寺を知るきっかけになればうれしい。補陀洛山寺は裸形上人が開かれた由緒ある寺で、熊野三所大神社(くまのさんしょおおみわやしろ)(浜の宮王子)と合わせて神仏習合の形が残る場でもある。世界遺産の一部でもあり、地域の方々はもちろん、海外の方にも足を運んでいただきたい」と話していた。

(2024年9月3日付紙面より)


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本年度の「伝統文化子ども体験教室」に参加した子どもら=1日、新宮市福祉センター
文化 帯結びや民舞など披露
伝統文化子ども体験教室発表会
新宮市
 本年度「伝統文化子ども体験教室」の発表会が1日、新宮市福祉センターであった。市内外の幼児~小学6年生の15人が、これまで学んできた着付けや民舞などを披露した。

 文化庁の伝統文化親子教室事業の一つ。日本の伝統と文化の体験を通して感謝の心、和の心、思いやりの心を育み、豊かな感性と人間性を養うとともに、日本の心を学んでもらうことを目的に、伝統文化をつなぐ雅の会(萩原眞理会長)が毎年実施している。

 本年度は20人が参加。同市の萩原きもの総合学院で、6~8月に12回の稽古を重ねてきた。各分野の先生から、浴衣の着付け、立ち居振る舞い、礼儀作法、茶道、華道、香道、民舞とさまざまな伝統文化を学んだ。

 発表会で萩原会長が全員に修了証書を授与。「よく頑張りましたね」とたたえた。来賓の田岡実千年市長は「着付けだけでなく、日本の伝統を勉強してくれた。大人になっても役に立ちます。来年もぜひ体験してほしい」と祝辞を述べた。

 みやびな音楽が流れる中、再入場した子どもたちは「よろしくお願いします」とあいさつ。保護者らが見守る中、半幅帯を結び、若吉会の先生と一緒に列を作り「おまつり新宮節」を踊った。

 若吉会による舞の後、子どもたちは平安衣装に身を包んで登場し、保護者らと一緒に記念撮影した。会場には子どもたちの生け花作品も展示。来場者が見入っていた。

(2024年9月3日付紙面より)

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教職員約80人が聴講=8月28日、那智勝浦町の体育文化会館
教育 愛着障害と発達障害
特別支援教育研究会が夏季研修
新宮・東牟婁
 新宮東牟婁特別支援教育研究会(河田恵美会長)が8月28日、那智勝浦町の体育文化会館で夏季研修会を開催した。和歌山大学教育学部の米澤好史教授が臨床経験を基に「愛着障害と発達障害の理解と支援」と題して講話し、教職員約80人が学びを深めた。

 特別支援学級を利用する児童生徒が年々増加する中、教職員の理解を促進し、障害や特性のある子どもへの教育の充実や環境整備につなげようと開催した。

 米澤教授は最初に「これまで『愛着』は赤ちゃんの問題に矮小(わいしょう)化されていたが、愛着障害は子どもから高齢者まで全て年齢に表れる」と言及。愛着を「特定の人と結ぶ、情緒的な心の絆」と定義し「愛着障害は、愛着の形成不全と捉えることができ、誰とも情緒的な絆を結べていない状態。先天的な脳機能障害である発達障害とは異なる」と述べた。

 「愛着形成には臨界期があり、3歳以降は手遅れ」との言説について「これは誤り。何歳からでも修復でき、親でない立ち位置の方とでも絆を結べる」。「発達障害と愛着障害は併存しない」との従来の精神医学会の捉え方にも異を唱え「併存するのは当然」と持論を述べた。

 愛着の機能について▽安全基地(ネガティブな感情から守る)▽安心基地(ポジティブな感情を生じさせる)▽探索基地(報告によりポジティブな感情を増加させ、ネガティブな感情を減少させる)―の三つを提唱。

 愛着障害・発達障害に表れる「困った行動」について「どんなに訳が分からないように見える子どもの行動にも、必ず理由・原因がある。それだけをやめさせようとしてもうまくいかない」とし、具体例や支援の在り方を解説した。

 教育現場に立つ教職員らに「愛着障害と発達障害は見分けが難しく、専門家でも間違うことがあるからこそ、子どもたちを近くで見ている先生方の立場が重要。愛着の視点からの支援の充実に生かして」と呼びかけた。

(2024年9月3日付紙面より)

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