熊野新聞記事アーカイブ
熊野新聞社 The Kumano Shimbun
〒647-0045 和歌山県新宮市井の沢3-6
営業部 TEL 0735-22-8080 FAX 0735-23-2246
記者室 TEL 0735-22-8325 FAX 0735-28-1125

書簡について説明する(左から)佐藤悟所長、辻本雄一館長、河野龍也准教授=21日、新宮市役所
春夫、家族宛ての手紙など
新発見書簡について共同会見
春夫記念館・実践女子大
 新宮市立佐藤春夫記念館の辻本雄一館長と、同記念館と連携協定を結ぶ実践女子大学の佐藤悟・文芸資料研究所長、客員研究員で佐藤春夫研究者の河野龍也・東京大学文学部准教授は21日、市役所で佐藤春夫の新発見書簡などについて共同会見を開いた。

 市名誉市民・佐藤春夫(1892~1964年)の生誕から130年を迎えた昨年8月、両者は互いの持つ資源を有効に活用し、相互の発展とともに文化振興に寄与することを目的に包括的連携協定を締結。同年は相互連携の下、生誕130年事業などを共催した。

 昨年秋、春夫の孫・髙橋百百子さんが同記念館に寄贈した数多くの資料のうち、髙橋さんの父・竹田龍児さん(春夫のおいに当たる)旧蔵の春夫書簡は141通あり、その中の118通が新発見のものとなっている。

 一方、実践女子大学の佐藤家寄託資料には、同時期の父・豊太郎の書簡もあり、双方の書簡を読み解くことにより、これまで知られていなかった春夫の動向が解明されることになる。

 このたび、竹田さん旧蔵の書簡の解読を終えたことから、内容の発表に至った。書簡は竹田さんの死去(1994年)後に髙橋さん宅に残されたものと思われる。

 会見に当たり、佐藤所長は記念館と協定締結に至った経緯などを説明し「豊太郎の書簡については全てを解読するのはもう少し時間がかかるが、両者連携して解読を進めている。創作活動の背景だけではなく、文学史などに関する新しい事実が分かってくるのではないかと期待している」と述べた。

 新発見の書簡には、1930(昭和5)年に谷崎潤一郎の妻・千代を譲り受けた「細君譲渡事件」前後のものも含まれており、豊太郎に宛てた書簡では千代との生活や、脳溢血(のういっけつ)で倒れた後のリハビリ生活などに触れられているほか、豊太郎に金の無心をしている様子も見て取れる。

 また、今回の解読によって脳溢血で倒れた時期がある程度分かったほか、春夫の病に対する千代の心情、谷崎の実娘で千代の連れ子である鮎子(竹田さんの妻)の動向が新婚生活に及ぼした影響などについても読み解くことができる。

 当時の書簡について河野准教授は「春夫は手紙では父親に心配をかけさせないようにしている。家族間でお互い気を使い合ったりかばい合ったりしており、必要な時期に結束している家族の様子が分かる」「昭和5年を境に文学への向き合い方が変わったのは確か」などと説明。

 事件については「2人の男(春夫と谷崎)と1人の女(千代)だけでの問題ではなく、家族の問題として捉え直す足掛かりとなった。謎の事件に新しい光が当たり、納得できるような実情が見えてきた。今まで報道されていない細部が見えてきた。手紙は再評価のきっかけになると思う」と話した。

 なお、同大学では今後、書簡集の出版も視野に入れながら引き続き解読を進めていくとしている。

(2023年9月22日付紙面より)



別窓で見る
記事一覧

実験で流れる水の働き学ぶ=21日、那智勝浦町の和歌山県土砂災害啓発センター
学校 身近に起こる自然災害
勝浦小学校4年生が学習
那智勝浦町
 那智勝浦町立勝浦小学校(山下真司校長)の4年生41人が21日、和歌山県土砂災害啓発センター(稲田健二所長)を訪れ、土砂災害が起こる仕組みを学んだ。

 社会科「自然災害から人々を守る活動」の一環。児童は▽土石流▽崖崩れ▽地滑り―の土砂災害の種類を学習。2011年の紀伊半島水害について、当時の報道映像や写真で振り返り「え、これが那智勝浦町?」「土石流で石だらけ」「校舎に木が刺さることってあるんだ」と衝撃を受けていた。

 勝浦小学校近くの勝浦八幡神社周辺が土砂災害特別警戒区域(急傾斜地崩壊)になっていることや、登校坂横の斜面がコンクリートと鉄筋で保護されていることにも触れ、土砂災害が身近に起こり得ることを体感した。

 流水と砂を使った実験では▽浸食▽運搬▽堆積―という流れる水の働きが大雨によって激しくなったときに災害が起こることを学習。土石流を食い止める砂防えん堤や雨量計の仕組みについても学習した。

 片原結乃さん(9)は「学校の周りに崖崩れになりやすい所があるのは聞いたことがあったけれど、家の周りでは意識したことがなかった。調べてみようと思う」と話していた。

 学んだ内容は校内の避難訓練に合わせ、他学年のクラスで発表する予定にしている。

(2023年9月22日付紙面より)

もっと見る
折たたむ
別窓で見る

約1・7㌔のマダイを梱包(こんぽう)する高校生=15日、那智勝浦町の浦神実験場
学校 近大マダイ・アマゴ販売
水産ゼミの高校生が出荷作業
近大新宮
 近畿大学附属新宮高校の「水産ゼミ」に所属している高校2年希望生29人が15、16の両日、那智勝浦町の浦神実験場と新宮市の新宮実験場でマダイとアマゴの出荷作業に汗を流した。魚は16日に同校で販売され、事前に予約注文していた保護者らが買い求めた。

 近大新宮では、クロマグロの完全養殖で知られる近畿大学水産研究所と連携し、高校生に最先端の水産養殖学研究に触れる機会を提供。卵のふ化から稚魚の成長、成魚の出荷に至るまでの過程を体験することで、同大学の建学の精神である「実学教育」を体感し、生命の尊厳や食糧生産、産業や流通などについて考える場としている。

 販売したマダイは現在の高校3年生が実習で飼育していた2歳魚で、重さは1・7㌔。出荷作業では、ゼミ生たちが氷締めしたマダイ90匹の水気を拭き取って袋詰めし、氷や保冷剤と発泡スチロールの箱に詰めていった。アマゴは16日朝に約300匹を電気締めした。

 購入した保護者たちは「マダイは刺し身、塩焼き、あら炊きにするつもり。アマゴはぜひ食べたいと言っていた祖父に贈る」「子どもが水産ゼミにおり、今年初めてアマゴを購入した。母親にすしの作り方を教わって家族で食べる」と笑顔。

 1年間の実習でマダイやアマゴの成長を記録してきた中筋俊輔さんは「毎月実験場に行って魚の重さを量り、成長が感じられてうれしかった。近畿大学のすごさも改めて感じて、進路選択を考えるきっかけにもなった」。松下凌大さんは「これまであまり生き物に触れてこなかったけれど、クロマグロの卵のふ化を見て、生命の神秘を感じた。マダイの出荷では、自分たちが育ててきた魚が来年にはこんなに大きくなるのかと楽しみになった」と話していた。

 収益は次のゼミ生が飼育する稚魚の購入に充てられる。

(2023年9月22日付紙面より)

もっと見る
折たたむ
別窓で見る

学生ら手作りの肝試しが開催された=15日、那智勝浦町の定光山大泰寺
地域 学生企画の肝試し大盛況
大泰寺初の催しで交流
那智勝浦町
 大阪大学の学生らが起業した「Connect.Works株式会社」は15日夜、那智勝浦町の定光山大泰寺(西山十海住職)で「大泰寺きもだめし」を初開催した。学生ら手作りの肝試しに町内外から訪れた家族連れなどの56組165人が、肝が冷えるような涼しいひとときを過ごした。

 肝試しは、地域の子どもたちや住民らと、都市部や海外からの旅行者との橋渡しや交流、地域創生などが目的。西山住職と親交のある観光宿泊事業で地域創生を盛り上げる株式会社NICOの井手隆一郎さんが提案し、井手さん主宰の地域創生を研究する同大学生サークル「地域×エンタメサークルConnect」が企画した。

 主催の「Connect.Works株式会社」は、卒業後も地域創生に関われるよう同サークルOBらで、学生起業した会社。企業や自治体との連携や事業展開を行っている。

 大学を休学して同寺で働きながら地域を学ぶ井本琉太さん(4年)が、ウェブでメンバーと協議し準備を進めてきた。メンバーらは13日に現地入りし、同町下里の海岸で清掃活動を実施。

 回収したごみを小道具として再利用するなど、持続可能な開発目標(SDGs)にも取り組んだ。各メンバーの得意分野を生かし、チラシや動画も作成。コースを照らす竹灯籠も作り、雰囲気づくりにもこだわった。

 同サークル代表の白波瀬優音さん(2年)は「学生の力で地域を盛り上げたい。継続的なイベントになれば」と意気込みを語った。

 15日午後7時からスタート。同寺の座禅堂に集まった参加者は整理券順に、懐中電灯などの明かりを頼りに出発した。

 コースは座禅堂を出発し、境内を回り本堂に進み、お札を入手してスタート地点に戻るというもの(墓などの供養の場は含まない)。各所で突然鳴り出す音やお化けなどの盛りだくさんの恐怖演出に、参加者の驚く声が夜の同寺に響いた。

 友人らと参加した同町在住の古田萌さん(23)は「お寺での肝試しは珍しいし、怖かった。同じ機会があれば、地域のにぎわいにもつながるので、ぜひ足を運びたい」と笑顔で話した。

 各地で地域創生に取り組む井手さんは「地域を次につなげるために、Z世代の学生に日本と向き合ってほしかった。地域と都市部の学生の交流は、第二のふるさと創出にも広がる。若い世代が中心となり、町の活性化や集客につなげたい」。

 西山住職は「地域を盛り上げてくれるのはありがたい。寺の維持は檀家(だんか)や地域だけでは難しくなった。催しを継続して、寺の活気づくりのお手伝いをいただければ」と語った。

(2023年9月22日付紙面より)

もっと見る
折たたむ
別窓で見る
主な記事 *記事詳細は熊野新聞紙面をご覧下さい*
  • 学校 入賞作品14点を発表し展示 小中学生ポップコンクール (串本町)
  • 【この記事のキーワード】
    連絡協議会
    潮岬中
    西向小
  • 地域 ネットの使い方など学ぶ 紀宝町でスマホ講習会
  • 地域 奉納刀と烏牛王 熊野那智大社で特別展
  • 【この記事のキーワード】
    熊野那智大社
  • 地域 かき氷で地域が交流 丹鶴福祉委員会サロン (新宮市)
  • 地域 町の景観保ちきれいに 老ク連300人が奉仕活動 (新宮市)
  • 【この記事のキーワード】
    新宮高
    連合会
  • 地域 胸骨圧迫やAED使用法 新宮赤十字奉仕団が研修 (新宮市)
  • 【この記事のキーワード】
    防災意識
    災害
    防災
ご購読・試読のお申し込み