那智勝浦町各地は16、17の両日、
秋祭り一色に包まれた。同町下里の高芝区では16日に県無形民俗文化財「高芝の獅子舞」が奉納され、17日には
下里神社と
下里天満天神社で
秋の例大祭が営まれた。新型コロナウイルスの影響で通常の形での斎行は4年ぶり。古く伝わる伝統の各
祭礼は、多くの地域住民らでにぎわった。
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勇壮に舞う鼻黒の雄獅子 高芝区旧住吉神社
同町下里の高芝区、旧
住吉神社の
例祭が16日、同区民会館で営まれた。280年余りの伝統を誇り、受け継がれてきた県の無形民俗文化財「高芝の獅子舞」を奉納し、大勢の見物人を楽しませた。
この祭りは1910(明治43)年に
住吉神社が
下里神社へ合祀(ごうし)された後も続けられてきた。約50人の会員で組織される「高芝の獅子舞保存会」(西清隆会長)が、勇壮な鼻黒の伊勢流雄獅子を伝えている。国内外の交流イベントにも参加し、来年2月には、千葉県で開催される「千葉県誕生150周年記念郷土芸能交流
祭事業」にも出演が決定している。
勇ましい笛や太鼓に合わせて、「幣の舞」「乱獅子」「剣の舞」「扇の舞」「神供(しんぐ)の舞」「牡丹(ぼたん)獅子」「神明賛」「寝獅子」「天狗(てんぐ)獅子」の9頭を奉納。多くの地域住民らが4年ぶりの獅子舞を喜び、最後は菓子まきや餅まきで締めくくった。
伊藤善之区長は「無形文化財の獅子舞を伝えるべく努めている。今後も地域を盛り上げたい」。
西会長は「4年ぶりに実施できて感無量。体調不良で本番に出られない会員もいる中、協力して終えることができた。来年はさらに盛大に行いたい」と笑顔で語った。
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若い人に継承していきたい 下里神社
建御名方神(たけみなかたのかみ)を
主祭神とする
下里神社(山本貞夫宮司)では16日に宵宮、17日に本宮が斎行された。本宮の宮上り行列は午後、屋台が下里青年研修所を出発し「えーんや、のったい、のったい」のかけ声とともに区内を練り歩いた。道中では「めはり音頭」「下里音頭」の手踊りを披露して沿道で見守る人たちから大きな拍手を受けた。一行は子どもたちの笛や太鼓の祭りばやしでにぎやかに巡行し神社に到着した。
境内では同神社
祭典部(楠谷彰部長)による「幣の舞」「乱獅子」「剣の舞」など、9演目の勇壮な獅子舞を奉納。天狗役の世古蓮翔(れんと)君(
下里小3年)は華やかな舞を披露した。
奉納前、世古君は「これまで教えてもらいながら練習を重ねたので、しっかり集中してやるだけ。落ち着いて舞に臨みたい」。楠谷部長は「地区の方々から温かい言葉を頂いて『祭りをやってよかった』と改めて思いました。今後の祭りのためにも、若い人に継承していきたい」と語った。
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伝統誇る舞が観客を魅了 下里天満天神社
学問の神様・菅原道真を主神として古くから信仰を集めている
天満天神社(山本貞夫宮司)では16日の宵宮に続き、翌17日に本宮が営まれた。
天満祭典会(宮部陸会長)が継承し、280年余りの伝統を誇る舞を披露し、優雅かつ華麗な姿で区民をはじめ多くの見学者を魅了した。
午後の本宮道中は、会員や子どもたちが神輿(みこし)を担いで同神社を出発。にぎやかな笛と太鼓の音を響かせ地区内を練り歩いた。境内では「玉獅子」や「扇の舞」「神宮の舞」など、7頭の獅子舞を奉納した。
寝獅子天狗役を務めた峯山英心君(
下里小3年)は「少し間違えてしまったが満足しています。練習した成果は出せた」。玉獅子天狗役の岡田和睦君(下里こども園)は「初めての天狗役で緊張したけど楽しかった。無事に舞ができて安心した」。
宮部会長は「4年ぶりに通常の形だったので少し不安もありましたが最高の祭りとなりました。コロナの状況が気になるが、今後も継続できる環境になってくれれば」と話していた。
(2023年9月21日付紙面より)