「ここは魚屋があった」「違うよ。散髪屋やったと思うよ」「この並びやと、八百屋とちゃうかな」―。
住民や関係者らが記憶を紡ぎ合って、旧勝浦町と那智勝浦町の地図や歴史などをまとめた冊子「懐かしい時代 勝浦町~那智勝浦町」がこのほど、完成した。冊子はカラー刷り16㌻で、昭和30~40年代のにぎわった町の様子などの紹介や名所の写真に加え、懐かしい店名などが記された手書きの絵地図で構成されている。14日には、作成活動の中心となった「なちかつ古道を守る会」(地庵晋司会長)が同町の海のホテル一の滝で関係者らを前に冊子完成を発表した。
「歴史と文化と環境を守ろう」をテーマに活動する同会は、過去にも同町下里を紹介した冊子を作成。2021年には、今回と同様に会員や住民らで記憶を頼りに同町天満地区の冊子「懐かしいまち 那智勝浦町 天満」が完成した。この冊子が好評を博し「勝浦もぜひ」と作成を熱望する声が多く届いたという。
昨年夏から作業に取りかかり、会員らは町史や個人執筆の郷土資料の収集、各地の写真撮影などの取材活動、文章の校正にも汗を流した。その間も、大勝浦や仲ノ町、築地の住民が何度も集まり、協力して地図を仕上げ、冊子を作り上げていった。
「ちょっと昔をふりかえってみませんか」と表紙にあるように、冊子を開けば▽温泉と旅館▽港のにぎわい▽町村合併と時代▽神社と寺院▽民話と伝説▽町村合併前の勝浦三景―などが詳細に紹介されており、その時代を知る人には懐かしく、知らない人にとっても町の歴史を知ることができる一冊となっている。
14日は、常時、作成に携わった会員らが「多くの皆さまのおかげで完成に至った。読んだ方からは感動したとの声も多数頂き、うれしく思う。私たちは人に喜んでもらえることが一番楽しい」と語った。
地庵会長が「大勢の方のご協力に感謝している。往年の方には懐かしんでいただき、若い人たちにはふるさとに興味を持ってもらえるきっかけになればうれしい」と話していた。
冊子は、同町湯川の喫茶きよもんで、無料で配布している。問い合わせは喫茶きよもん(電話0735・52・0881)まで。
(2023年9月17日付紙面より)