新宮市の
熊野速玉大社、那智勝浦町の
熊野那智大社、田辺市本宮町の
熊野本宮大社で3日、節分行事が営まれた。境内に「福は内、鬼は外」の声が響く中、参拝客らは疫病退散や除災招福などを祈願した。
□ □
■熊野速玉大社
熊野速玉大社(上野顯宮司)では、鬼を払う追儺式(ついなしき)と正月に飾ったしめ縄などを燃やすどんど焼きがあった。
追儺式では境内に赤鬼と青鬼が登場。上野宮司をはじめ大社関係者らが「福は内、鬼は外」と豆をまき、鬼を鳥居の外に。子どもたちも加わり、元気いっぱいに鬼を追い払った。
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、最後に行われる福豆やお菓子まきは中止とし、上野宮司らが子どもたちにお菓子を配った。
毎年多くの人が求める縁起物の「吉兆(きっちょう)」は同日午前中に完売。どんど焼きでは午前中から多くの人が訪れ、境内に掘られた穴に御神火がついたお焚き上げたいまつと一緒にしめ縄などを投げ入れていた。どんど焼きに協力した新宮市消防団丹鶴分団は、
火災防止のために午前8時から神社敷地内に放水を行った。
上野宮司は「冬と春が分かれる日に新しい命と力を得るため邪気を払って福を呼び込む
神事。このような伝統
神事を続けていくことは意味深いこと。健康な1年であることを心から願っています」と話していた。
□ □
■熊野那智大社
熊野那智大社(男成洋三宮司)は、午前と午後の2回に分け、2年ぶりに「鬼追い追儺式」を営んだ。午前の式では、大檀那(だんな)と呼ばれる特別崇敬者の約60人が参列。鬼役が面を着けて福升の豆をまき、
社殿前の石階段を青竹で3回打ち付け、「家内安全、延命息災、家運隆昌」と唱えて邪を払い、福を呼び込んだ。
「お弓の儀」もあった。神職が弓を引き、「鬼」の字が書かれた的を射抜いた。放った2本の矢はどちらも命中し、見学者や参拝者の拍手と歓声が湧いた。宝物殿の回廊からの、男成宮司や大檀那による豆まきもあり、福を求めて多くの人が手を伸ばす姿が見られた。
男成宮司は「鬼に例えて邪を払い、福を呼ぶ伝統的な行事。こういう時代こそ絶やさないことが大事」と語った。
□ □
■熊野本宮大社
熊野本宮大社(九鬼家隆宮司)では、神職や大社役員らが参加する中、3年ぶりに通常規模で
節分祭と追儺式が執り行われた。
追儺式では、神職や大社関係者らが豆をまきながら拝殿の回廊を3周。鬼を前に、泣き叫ぶ子どももいる中、九鬼宮司が天に向かって3本の矢を放ち鬼を追い払った。
追儺式後には、多くの地域住民らが集まる中、大社関係者や今年厄年を迎える人らによって餅やお菓子などがまかれた。
九鬼宮司は「昨年はコロナの影響で餅まきも控えたが、今年は一歩でも前進するという意味で餅やお菓子をまかせていただいた。久しぶりににぎやかな節分。子どもたちにも力をもらいました」と述べた。
(2023年2月5日付紙面より)