串本町大島にある近畿大学水産研究所大島実験場で、マレーシア・サバ大学の学生2人が実技研修に励んでいる。
この研修はサバ大学で養殖学を専攻する3年生が実務経験を積むために取り組んでいて、近畿大学は2003(平成15)年から同研修の受け入れを行っている。養殖業界のリーダー養成を目的とし、16回目となる今回は6月30日から9月13日(木)までの期間設定で、計8人が参加している。
初日に同研究所白浜実験場で歓迎を受けた後、同実験場に4人、大島実験場に2人、浦神実験場に2人と分かれ、各種研究活動や養殖作業を補佐する形で各実験場の技術や発想に触れている。
大島実験場で励んでいるのはウマイラ・ハシムさん(22)とイリー・ラドゥアンさん(22)で、同実験場で行われている給餌や仔魚(しぎょ)の選別、設備の清掃や学生らが行う研究活動の補佐などを日々経験している。同実験場はクロマグロを筆頭にマダイやシマアジなどを卵から成魚まで育成する完全養殖技術が特色で、その実践フィールドは敷地内のふ化場から洋上のいけすまでと広大。澤田好史場長は「単に日本の技術を学ぶだけでなく、状況に対しどう技術を組み込めば成果につながるかという発想を、大島実験場の生産設備や学生らの取り組みから感じ取ってほしい」と願いながら2人の経験を後押ししている。
同実験場の印象についてハシムさんは「皆さんの働き方、例えばさまざまな管理や時間の使い方などシステム的な点がとても印象的」、ラドゥアンさんは「マレーシアにない技術がたくさんあって、養殖技術が進んでいると感じている」とコメント。仔魚選別作業に取り入れられているソーティングマシンや、容量が大きい水槽の水温をコントロールする通水式のヒーターなどの設備が興味深いという。
サバ大学は3年制で、2人は卒業後、さらに進学し研究を続けることを目指しているという。ともに活動する近畿大学農学部水産学科の小嵜陸さん(3年)は「英語でコミュニケーションを取る機会がなかなかないので、英語を勉強することは大事だなと実感しています」、海老澤晨さん(3年)は「普段自分がしている作業を英語で伝えなければならないのが難しくて、逆に状況を伝えて何といえばいいかを教えてもらっています」とコメント。
澤田場長は「この研修は近畿大学の学生にとってもいい勉強になっている。仕事をしながらでも遊びながらでも英語をしゃべることができるし、外国の文化や養殖技術、学校のシステムを知ることもでき、お互いにいい国際経験になっている」と話した。
(2018年8月16日付紙面より)
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