「コロナに負けるな」 (手作りマスクに込めた思い )
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、マスク不足が叫ばれるようになってはや2カ月。いっときに比べマスク不足解消の兆しは見えつつあるものの、いまだ入手できない人が多いのが現状だ。
そんな中、マスク不足を払拭(ふっしょく)しようと、趣向を凝らしたマスクを手作りする人が増加。好みの布で作ったマスクを身に着ける人々が、春、そして間もなく初夏を迎えようとするまちなかに彩りを与えている。
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困難な状況にあっても女性のおしゃれ心は健在だ。「ガーゼが品薄」「耳に掛けるゴムが手に入りにくい」。そんな情報が流れるごとに誰かが代替案や代用品を提案し、手法などがアップデートされていく。今ではインターネットで「手作りマスク」と検索すると、無料型紙や彩り豊かな手作りマスクの画像などが日々更新されている。中には国が配布する布マスクの俗称「アベノマスク」を「ベツノマスク」「ウチノマスク」としてリメークしてしまうつわものも。
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100年前のパンデミック(世界的大流行)「スペイン風邪」では、当時の日本の総人口約5600万人に対し約2400万人が感染したとされ、終息には丸2年を費やした。スペイン風邪の大流行をきっかけに、当時、主に炭鉱などで働く人たちの粉じんよけとして使用されていたマスクが一般に普及したという。
しかし当時もマスクの供給が需要に追い付かず値段が高騰。さらに困難な状況に一山当てようと、マスクの「不正商人」が横行したという。
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いまだ終息のめどの立たない新型コロナウイルス禍。このたびもマスクなどの転売が社会問題となったが、いつの時代も暴利商法を用いて不正を働く者がいる一方、しなやかに、そしてたくましく困難に立ち向かう人々の姿もある。このコーナーでは、鮮やかなマスクを身に着けた人々の笑顔にスポットを当てたい。
「コロナに負けるな」。「手作りマスク」には、そんな人々の思いが込められているのではないだろうか。
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本紙では、自慢の「手作りマスク」を着用した写真を募集しています(マスク単体でも可)。あなたのすてきな「手作りマスク」の写真をお送りください。画像は「手作りマスク」コーナー宛てで、熊野新聞社フェイスブックもしくはメール(info@kumanoshimbun.com)でお送りください。
(2020年4月29日付紙面より)
中止事業の予算を活用し (古座川町老連 )
古座川町老人クラブ連合会(奥根公平会長)がこのほど、全会員に首掛け式の空間除菌剤1個を配ることを決めた。近々入荷予定で、単位老人クラブ会長経由で会員に届けるという。
24日にあった役員会で、新型コロナウイルス感染予防の観点から本年度前半の行事をすべて中止する判断をした同町老連。関係予算の新たな有効活用の方法を話し合う中で奥根会長(88)が身に着けている空間除菌剤が話題になり、それを全会員へ配って感染予防意識を喚起する方向へとまとまった。
その空間除菌剤は薬局を営む娘夫婦が感染予防に役立てばという思いで託した品で、薬剤師として近隣の病院に勤めた経験を持つ夫・尾鷲恭二さん(68)は医療従事者が身に着けている状況を見て自身も3年ほど前から使っているという。奥根会長は「手洗いや消毒、マスクなど基本の対策の上乗せとして、人が集まる場所へ行かなければならないときに使っている」と利用の状況を語り、ただ配るのではなく感染予防の説明をし日頃の心掛けを高めながら配るとしている。
同町老連事務局の同町社会福祉協議会によると、会下には12の単位老人クラブがあり総会員数は300人弱。今回は予備分も含めて320個を購入し、会員の感染予防に役立てるとしている。
(2020年4月29日付紙面より)
事業主らに応援金など支給 (紀宝町 )
紀宝町は27日、独自の新型コロナウイルス対策として、町に住民票または法人登記を有し県外に事業所、店舗などを構える中小企業・小規模事業者に支援金を、三重県の協力金交付対象外の全ての町内食事提供施設に応援金を支給すると発表した。
県では「緊急事態措置」として、対象施設に休業または営業時間を午後8時(アルコール提供午後7時)まで短縮するよう要請し、協力した県内中小企業・小規模事業者(個人事業主含む)に協力金を交付している。
同町は和歌山県と隣接し、県外で事業を展開する事業主などが多いことから、町では県外事業者向けの支援金として1事業者当たり最大25万円を交付する。29日から5月6日(水・振休)まで休業や営業時間の短縮といった三重県の要請に協力することなどが条件となる。
応援金は、町内で喫茶店や飲食店など食事提供施設を経営し、県の休業要請に当てはまらない事業者に10万円を交付する。
受け付けはいずれも5月18日(月)から6月5日(金)までで、郵送での申し込みとなる。申請書は町のホームページでダウンロードできるほか町産業振興課、町商工会でも入手できる。支援金、応援金ともに申請要件が異なるため、詳しくは町産業振興課(電話0735・33・0336)まで問い合わせを。
町では5月13日(水)の臨時議会に一般会計補正予算として計上し、可決されれば5月末から交付を開始する。
会見した西田健町長は「紀宝町に住民票を有しながらも県外で活躍する人が多い。厳しい状況にある施設の皆さんに町として応援金を交付し、持続・継続できるよう支援したいという強い思いを持って提案した」と述べた。
(2020年4月29日付紙面より)
グランドール紀の風 (新宮市 )
新宮市佐野のサービス付き高齢者住宅グランドール紀の風(鈴木幹啓代表取締役、中村光德施設長)は23日、職員らが手作りした紙製の桜を飾った同施設内のテラスで「テラスでお花見お茶会」を開いた。マスク着用や互いの距離を空けるなど新型コロナウイルス感染対策を取った利用者は笑顔で外の空気を味わい、花見を楽しんだ。
同施設では毎年、同市の黒潮公園で花見を行っているが、新型コロナの影響で実施できない状況となったため、今回の花見を計画した。
桜の花は柔らかい折り紙で作成。利用者も手伝い、竹と段ボールで木の幹や枝を再現した。準備は1カ月ほど要したという。
花見はグループごとに行われ、職員がシャボン玉を飛ばし、お茶やお菓子でもてなした。
利用者は晴天の下、日光浴をしながら手作りの桜を鑑賞。「本当にきれい」とうれしそうに目を細めていた。また、花見待ちの利用者はバルーンアートなどを楽しんでいた。
催しを企画した同施設管理者の森晶平さんは「新型コロナの影響で利用者の方が屋外へ出ることができないため、少しでも楽しんでもらおうと考えた。今回の催しが今後の良い思い出になってくれたら」と話した。
中村施設長は「新型コロナの影響で面会が禁止になっているため、入居者の方やご家族にはご不便をかけ心苦しく思う。こんな時だからこそ、感染拡大には細心の注意を払いながら、笑顔でいられる環境を提供したい。その様子を写真に収めてご家族に送らせていただきます」。
「来年こそは利用者の皆さまに屋外で思い切り空気を吸ってもらい、お花見を楽しんでもらいたい。そして最高の笑顔をつくっていきたいと思う」と語った。
(2020年4月29日付紙面より)
再開2年目の商業捕鯨 (太地町 )
太地町漁業協同組合(脊古輝人組合長)の捕鯨船「第七勝丸」(32㌧、乗組員5人)が3日夜、再開され2年目となる商業捕鯨を行うため東北沖などを目指し太地漁港を出港した。駆け付けた家族らが漁の安全を願い船を見送った。
昨年7月に31年ぶりの再開となった商業捕鯨。同船は漁が好調だったため、昨年10月に当初の見込みより早く帰港している。
太地漁協によると、宮城県や千葉県の捕鯨船と協力し、5日から宮城県沖でミンククジラ漁を開始する予定。続いて青森県八戸沖でもミンククジラを、千葉県房総半島沖で国際捕鯨委員会(IWC)規制対象外のツチクジラを捕り、北海道網走沖で再びミンククジラを対象に操業を行う。漁期は11月までとなるが、水産庁が定めるミンククジラの漁獲枠100頭に達し次第、漁が終わる。一時的に太地沖に戻り、5、6月ごろにかけてマゴンドウとツチクジラを捕る予定だという。
同漁協の〆谷(しめたに)和豊業務部長(53)は「大きいクジラが捕れて水揚げできればうれしい。安全第一に操業していただければ」。
竹内隆士船長(41)は「今年は最初から商業捕鯨としての操業になる。今回は天候の関係もあり、安全な操業のため、夜の出航となった」と説明。
「しっかりと漁獲枠を取り終えて、今後の枠の増加につなげていけるように頑張りたい」と抱負を述べた。
(2020年4月5日付紙面より)
飲食業界も悲鳴
新型コロナウイルスの全国的な感染拡大を受け、当地方においても不要不急な外出を自粛する人が増え、客足が遠のいた飲食店が大きな打撃を受けている。そんなさなか、会員制交流サイト(SNS)などで「○○店でコロナ感染者が食事をしていた」「○○で感染者が出た」「感染者が○○に立ち寄った」などといったうわさやデマが流布。業界は悲鳴を上げている。
新宮市内の飲食店経営者は「SNSではあり得ないようなうわさが拡散されており驚いている。営業していることがデマである何よりの証拠なのに」と困惑した表情。「当店だけの問題ではない」と憤りを見せる。
新宮市料理飲食業組合(平見一雄組合長)も現状を問題視。「われわれもコロナウイルスの影響を鑑み、『ご来店ください』とは言えない中で、より一層厳しい状況になっている」と現状を語る。
当地域でも営業を自粛する店舗や閉店、休業を選択した店舗、不安を抱えながらも営業を続ける店舗などさまざまだ。営業を続ける店舗では、普段以上に手洗いやアルコール除菌などを徹底し対策を取っていると強調。同組合は「それぞれに考えた上で下した結論。どの選択が正しいとかではない」と話す。
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先月、米紙「ワシントン・ポスト」に、和歌山県の新型コロナウイルス対策を絶賛する記事が掲載された。県は政府の反応を待たずに知事の強力なリーダーシップの下で迅速な検査と感染ルートの追跡を徹底した結果、封じ込めに成功したとたたえている。
「和歌山モデル」と呼ばれるそれは、迅速な判断と行動によってウイルスの流行を抑制し、感染の連鎖を絶つことができるといった教訓をもたらした。
2月の半ば、湯浅町の病院に勤める男性医師が陽性であることが判明。その後同病院において医師と患者3人に感染の疑いが持たれた。
当時、国は医療機関を受診する目安として「中国・湖北省への渡航歴」や「37・5度以上の発熱が4日以上続く人」に限定。県は基準に当てはまらない人に対しても検査を実施。約3週間後、仁坂吉伸知事は安全宣言を出し、ウイルスの封じ込めに成功した。
現在においても県では、ホームページ(https://www.pref.wakayama.lg.jp/index.html)上で発生状況や情報の更新を続けている。
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新型コロナウイルスという見えない敵との戦いが長期化する中で、不安やストレスを抱える人は少なくない。しかし、出どころ不明なうわさを流布することは、飲食店のみならず商店を廃業に追い込むことも起こり得るという想像力が必要だ。また、不安感から帰国者・接触者相談センターに不要な問い合わせをすることは、本来検査や治療を受けるべき人が手遅れになってしまう危険性もある。県ホームページで状況を確認し、冷静な判断をする必要があるだろう。
幸いにもまだ感染者が出ていない当地域において必要なのは、うわさの流布や真偽を検証することではなく、せきエチケットや手洗い・うがいの徹底を、私たち一人一人が心掛けることではないだろうか。
(2020年4月5日付紙面より)
公式HPをリニューアル (南紀熊野ジオパーク )
南紀熊野ジオパーク推進協議会が3月31日、リニューアルした同パーク公式ホームページ(HP)の運用を始めた。
同協議会は、2014年4月17日に旧HPを開設。以来約6年が経過し、昨今のインバウンド(訪日外国人観光客)の傾向も考慮に入れて、多くの観光客がいっそう快適に利用できる形を目指して内容を再構築したという。
ページデザインを一新し、旧来の日本語、英語に中国語(簡体字)版を新たに追加。地域別一覧で紹介しているジオサイトをフリーワードでも検索できる機能を取り入れ、ジオパークガイド申し込みについて旧来の申込用紙をダウンロードして使用する形に加えて申し込みフォームも利用できるようにしたのが、今回のリニューアルの主なポイントだという。
同ガイドが推奨するコース紹介を随時していたが、その内容をモデルコースとして紹介する要素も導入。旧来と同一アドレス(https://nankikumanogeo.jp)でリニューアル後のHP運用を始めていて、同協議会事務局は「ぜひご覧ください」と呼び掛けている。
今回のリニューアルは、パソコン版とスマートフォン版の両方を対象としている。
(2020年4月5日付紙面より)
新宮市
新宮市の丹鶴城公園(新宮城跡)のサクラが開花。3日現在で七分咲きとなっている=写真①。公園にはソメイヨシノ122、シダレザクラ21、ボタンザクラ5、ヤマザクラ5、カンヒザクラ3の計156本のサクラが植栽されている。
同所は例年大勢の花見客でにぎわうが、今年は新型コロナウイルス感染症予防の観点から、恒例の夜桜ライトアップは中止。市は、日中のサクラ観賞は可能だが、公園内での飲食を控えるとともにせきエチケットの徹底などを呼び掛けている。
文化複合施設建設が進む丹鶴小学校跡地のサクラも開花=写真②。現在八分咲きといったところだ。同所のサクラは建設工事に伴い撤去の案もあったが、地域住民の要望に応える形で保存されるようになったもの。春を待つ通行人やドライバーらの目を楽しませている。
(2020年4月5日付紙面より)
新宮神社でさくら祭 (熊野速玉大社 )
新宮市の熊野速玉大社(上野顯宮司)境内にある新宮神社で3日、例祭(さくら祭)が執り行われた。大社崇敬会の杉本義和会長や敬神婦人会の久保あや子会長ら約30人が参列し、桜の枝を玉串として奉奠(ほうてん)した。
新宮神社は明治40年、神社合祀(ごうし)令により、新宮町内にあった18社18柱の祭神を大社境内の金刀比羅(ことひら)宮に合祀したのが始まり。中でも最も位の高い渡御前(わたりごぜん)社の主祭神・神武天皇の例祭に合わせて、毎年4月3日に営まれている。同神社は昨年から御代(みよ)替わりの年の記念事業として修復工事を行っている。鬼瓦と拝所の瓦は、当時(江戸時代のものとされる)のものを利用しているという。
祭典では、上野宮司による祝詞奏上の後、桜の小枝を髪に挿した巫女(みこ)たちが、桜の木を背に優雅に「浦安の舞」を奉納した。
上野宮司は参列者らに対し「新型コロナウイルス感染症のことで気がめいるが、一人一人が食物を大切にし、しっかり栄養を取って体力をつけ、元気な気持ちを持って健康に留意を」と呼び掛けた。
祝詞奏上では、コロナウイルスの早期の終息を願ったと話し「本来なら春で心麗しい時だがコロナ災禍で気を病んでいる人も多いのでは。そういった気を吹き飛ばし、一日でも早く心の底から花をめで、祭りを楽しむことができるようにお祈りをしました」と話していた。
祭典終了後には、関係者らにより、参拝者や地域住民らに厄払いの餅が配られた。
(2020年4月4日付紙面より)
一枚岩のセッコクが開花 (古座川町 )
古座川町相瀬、一枚岩の壁面に根付くセッコクの開花が始まった。2日現在でごく一部が白い花を付けている状況。ここ数年では特に早いシーズンインとなっている。
セッコクはラン科の多年草で、温帯域の岩や木に着生し複数本の節がある茎を伸ばして繁茂する。一枚岩には点々と小さな虫食い状のくぼみがあり、その一部に根付いている。
草丈は20~30㌢、花は約3㌢。一枚岩の巨大な壁面に比べるとごく小さい存在だが、花盛りを迎えると対岸からでも咲いているのが見て取れるようになる。
セッコクの花のシーズンは一般に約1カ月とされ、今年はゴールデンウイーク半ばが終盤にかかりそうなタイミング。19日(日)とその前後3日間の午後5時前は風物詩「一枚岩の守り犬の影」が上流側の壁面に映り込む時期で、天候が良ければ花と影を併せて観賞できる好機でもある。
道の駅虫喰岩の施設は本年度から運営者が変わり5月1日(金)にcamp &Food「monolith」がオープン予定。先行して今月3日から30日(木)まで屋台の出店が始まっている。昨年まであった単眼鏡が今年はないので、セッコクを観賞するときは各自で望遠鏡を持参すると役立つ状況だ。
(2020年4月4日付紙面より)
紀宝町鵜殿の讃寿会グラウンドゴルフ部(福本稔夫部長)は3日、鵜殿グラウンドで本年度最初の活動を実施した。部員約30人が参加し、和気あいあいと楽しんだ。
新型コロナウイルス感染症対策を取りながら、健康維持のため毎週金曜日に活動を続けている。この日は桜を眺めながら8ホールを4周し、元気いっぱいにプレーした。
女性最高齢の辻本ミサエさん(92)は「グラウンドゴルフが大好き。これが生きがい」。男性最高齢の中井清さん(90)は「これからも続けたい」と笑顔を見せていた。
福本部長は「町の了解を得ながらグラウンドを使用し、部員の健康のために活動を続けている。皆さん、楽しんでくれていますよ」と話していた。
(2020年4月4日付紙面より)
新宮市仲之町に就労支援センター開所 (NPO法人ぷろぼのくまの )
新宮市仲之町で中高生向け「くまのチャレンジスクール」と社会人向け「くまのジョブトレスクール」を運営するNPO法人ぷろぼのくまの(柴田哲弥理事長)はこのほど、同町に新施設「くまの就労支援センターヨリドコ」を開所した。休校措置が終了し次第、社会人のパソコン(PC)スキルの獲得支援などを展開していく。
開所に当たり、同法人は昨年9月13日から12月2日にかけて、改修資金を集めるために、インターネットを通じて資金調達するクラウドファンディング(CF)を実施。CFを通じ139万円の支援を受けたほか、203万円もの寄付が直接届けられたという。総額は342万円で目標金額の350万円をほぼ達成した。柴田理事長は「こんなに集まるとは思っていなかった。還元がない中でこれだけの寄付を頂き感謝しかないです」と話す。
新型コロナウイルス感染症の影響で開所式はなし。小中学校の休校措置に伴い、利用者が体を動かせるようにと、3月上旬から改修工事と並行して空間の利用を開始した。バランスボールや小型トランポリンなどを配置し、夕方までのPC教室が終了次第、子どもたちが遊びや学びに利用している。
同所での開所にこだわった理由は「まちなか」。「まちの真ん中で困っている人を受け入れ、社会性を身に付けてもらうために間口を広くした」と柴田理事長。「誰かのよりどころとなるように」との思いを込め「ヨリドコ」と命名した。道沿いに上がりスペースを設け、テーブルと座布団を配置。「生きづらさを感じている人限定ではなく、利用者、商店街を歩く人が交流できる施設になれば」と期待を寄せた。
(2020年4月4日付紙面より)
【第9回】今こそ食育のチャンス!
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、さまざまな影響が広がっていますね。
不安な状況が続いて、ご自宅で過ごす時間も増えているのではないでしょうか? そこで、私が今こそ提案したいのが、食育です! それどころじゃないよという声も聞こえてきそうですが、お子さんたちと過ごす時間が増える今こそ食育のチャンスだと思うんです。
自宅で長い時間を過ごすとなると、ついついお子さんとご両親で別々の時間を過ごしてしまいがちですよね。でも、長い休校と春休みで、子どもたちも退屈していると思います。そんなときに、お料理をイベントにして、一緒に作るというのは、いかがでしょうか? クッキーやドーナツなどのスイーツを作るのも楽しそうですし、ギョーザを皮から作ったり、ピザを焼いてみたり。普段やらない手間のかかるお料理を一緒にするのは、本当にオススメです。
一緒に作るときに、ぜひ心掛けていただきたいポイントが幾つかあります。一つ目は一緒に思い切り楽しむということです。上手くできないことを笑い合ったり、会話を楽しみながら作ってください。とにかく「お料理は楽しい!」と思ってくれるように、演出することが大切です。小学生の家庭での調理経験を研究した論文では、「食事を楽しんでいる児童ほど、調理や食事の準備をよく行っている」と報告されています(小学生高学年の食生活と学習態度や意欲との関連性、大阪教育大学紀要、2007)。お料理を楽しめる子は、食事を楽しめる子ということですね。また、「調理経験は自尊感情のうち【他者への思いやり】に最も強く影響を及ぼす」という論文もあります(小学生の家庭での調理経験が食事観、自尊感情、教科に対する関心に及ぼす影響、栄養学雑誌、2018)。つまり調理経験のある子どもは、人に優しい子になる可能性が高いということです。これは、人との関わりに大きく関連していると思うのですが、楽しい経験が優しさを生み出すという側面もあると考えています。
もう一つのポイントは、とにかく褒めてあげてほしい!ということです。調理工程でもそうですが、一緒に食べて「おいしい!」「ありがとう!」と言ってあげてほしいのです。「自分で作ったものを家族や友達に食べてもらい、『おいしい』と言ってもらえたときの喜びは、【自分が大切なものである】という自尊感情につながる」(高学年児童の学校給食への関心と学習態度・意欲や健康状態との関連、日本食育学会誌、2018)という報告があるくらい、作ったものを褒めてもらうことは、子どもたちにプラスになるんです。
最後のポイントは一緒に考える!です。お料理は大人とやると、指示されたことをする「お手伝い」になりがちです。私は、大人が子どもと一緒に「味どうかな?」「どうやったらおいしくなるかな?」と考えながら作ることで、子どもの思考力や自尊心の向上につながるのではと考えています。ぜひ、巣ごもり中の楽しいイベントの一つとして、お料理を取り入れてみてはいかがでしょうか。
(2020年4月4日付紙面より)