倒木で通行止め「大雲取越」 (台風21号で )
台風21号の豪雨で発生した倒木や土砂崩れで世界遺産の熊野古道「大雲取越」が通行止めになっている。復旧のめどはたっておらず、担当者らは現在、迂回(うかい)路の設置を検討している。
被災場所は那智勝浦町内の石倉峠―地蔵茶屋跡間。町と新宮市は両入口などに日本語と英語の看板を設置して通行止めを知らせている。周囲は私有林で、町は今後の対応を検討している。
熊野古道の「大雲取越」と「小雲取越」の中継点に位置する宿泊施設「小口自然の家」(新宮市熊野川町上長井)によると、熊野那智大社方面へ行き来する観光客は現在、バスを使用している。通行止め区間手前にある「円座石(わろうだいし)」まで歩き、引き返している観光客もいるという。
自然の家の昨年度の宿泊者数は3298人(前年度比46人増)で、そのうち外国人は1721人(同393人増)だった。管理人の小河二見博さん(66)は「宿泊の予約は、1年前は当たり前で、早い人で2年前から入っています。復旧もそうですが、早く迂回路を設置してほしい」と話していた。
「大雲取越」は那智勝浦町那智山の熊野那智大社―新宮市熊野川町上長井間の約14・5㌔。雲に手が届くほど高いという意味から名付けられた。古道の中でも難所の一つで、熊野三山の神々が談笑したという伝説があり、三つの梵字(ぼんじ)が刻まれた「円座石」や舟見峠、地蔵茶屋跡がある。
(2017年10月28日付紙面より)
太地小1年生がふるさと学習
太地町立太地小学校(前田欣克校長)の1年生6人が26日、町立くじらの博物館でくじら学習を行った。全校規模で取り組んでいる、ふるさと学習の一環で、1年生の児童らにとっては今年度2回目。6月の前回はクジラやイルカの種類を、今回は大きさを学んだ。
数字ではなく実感で知るため、同館に設置されているシロナガスクジラの骨格標本のレプリカを棒やひもを使って計測。中江環学芸員の指導の下、ひもを標本に当て、色分けしながら体長、体幅、頭、胸ビレの長さと同じに切って学校に持ち帰った。
児童らは教室の黒板や体育館、自分たちの背丈と比べ、「クジラの体の幅は、体育館の入り口にギリギリ入るくらい」、「体の長さは、みんなの17人分」と口に出して大きさを確かめた。
計測前の説明では、中江学芸員の「シロナガスクジラを知っていますか」という問い掛けに、すかさず「世界で一番大きいクジラ」と答えた児童もいた。前回の学習の際に標本に興味を持って質問し、教わったことを覚えていたそうだ。
児童らは「こんなに大きいと思わなかった」「すごい」と感想を言い、中江学芸員は「お家の人にも、クジラの大きさを教えてあげてくださいね」と呼び掛けて学習を締めくくった。
(2017年10月28日付紙面より)
西向小中校区で避難所巡り (串本町 )
西向小・中コミュニティースクール(大芝英智会長)主催の一時避難場所巡りが26日に西向小中校区内であり、児童生徒合わせて82人と区民(保護者含む)73人が一緒に住んでいる区の高台や危険な場所を確かめるなどした。
将来の発生が予想される地震や津波に備える地域共育活動として年次実施していて、本年度で5年目。児童生徒は知識を増やして日ごろの防災意識を高めるとともに、地域の一員としての自覚を持ちできることを考えることを目当てにして取り組んだ。
校区内にある9区に案内の協力を求め、児童生徒は引率の教員と共に住んでいる区の住民と合流。区長らをリーダーにして一時避難場所巡りに臨んだ。岩渕区(山本進区長)では児童4人と区民12人が合流し、▽成就寺裏▽護国神社跡▽カジヤ谷―の各高台に上がり他2本の津波緊急避難路の位置と状況を確かめた。児童最年長の下村奏斗君(5年)は「知っている避難路は多い方がいい。いざという時は近くの避難路を知っておくことが大事だなと思った」と感想を述べ、山本区長は「岩渕区にとって子どもは宝。大人になってもずっと住んでいてほしいし、そのために知っておかないといけないのが今日紹介した津波から逃げるための避難路。児童を含めた区民の皆さんにしっかりと覚えておいてほしい」と願った。
9区ともそれぞれに一時避難場所巡りを行い、区民は現地解散、児童生徒は帰校。大芝会長は「9区の皆さんには子どもたちが高台に上がるということで事前の草刈りや当日も避難先だけでなく地震で崩れやすい場所や本当に危ない時は最短ルートで畑を突っ切っても構わないなど、地域ならではの知恵もいろいろと教えていただけて大変ありがたかった。児童生徒の皆さんには家にいる時に被災するとは限らないので、みんなで情報交換をして違う区の場所にも関心を持ち、校区内の率先避難者になってほしい」と参加した児童生徒や区民らの今後を期待した。
(2017年10月28日付紙面より)
台風21号で桑ノ木の滝
新宮市相賀にある日本の滝百選の「桑ノ木の滝」へ続く山道のつり橋が台風21号の影響で崩れ落ちている=写真。橋を管理する市都市建設課は、生活で頻繁に使用する市道の修復を優先的に行うため、復旧時期は未定と話している。
熊野川支流の高田川の上流にある滝で、高さ約21㍍、幅約8㍍。手軽に行けるハイキングコースとして人気があり、毎年大勢のアマチュアカメラマンが訪れている。
滝へ続く道はつり橋が落ちているほか、崩れ落ちたり、倒木でふさがれたりしていて危険な状態となっている。市商工観光課は入口に通行止めの看板を設置した。つり橋は6年前の紀伊半島大水害でも流された。
同市熊野川町田長の「鼻白の滝」へ続く林道も土砂でふさがれている。市農林水産課によると、次の台風が接近しているため復旧は週明けになる見込み。
(2017年10月28日付紙面より)
クルーズ客船が増加傾向 (新宮港 )
新宮港クルーズ客船受入にかかる広域的取組検討会議が2日、新宮市井の沢の新宮ユーアイホテルであり、田岡実千年市長をはじめ周辺自治体の首長ら13人が出席した。近年増加傾向にあるクルーズ客船の受け入れ体制を熊野地域全体で考え、活性化につなげていく「新宮港クルーズ振興広域協議会(仮称)」を設立することを確認した。
新宮市の調べでは、昨年度、新宮港に入港した客船は10隻(前年度比1隻増)で、乗客は4511人(同732人増)。本年度は14隻が見込まれている。来年度はすでに外国船籍のコスタ・ネオロマンチカ(乗客定員1572人)が3回、スター・レジェンド(同212人)が4回、寄港を予定している。
新宮港に着岸できる船は現在、5万㌧級(乗客約900人)までだが、和歌山県は来年夏には7万㌧級(乗客約2000人)、来年12月には11万㌧級(乗客約3000人)が着岸できるよう環境整備を進めている。
外国客船をはじめとするクルーズ船の入港が今後もさらに増加すると見込まれていることから、新宮市が周辺自治体に呼び掛け今回の会議を開いた。協議会は来年春の設立を目指していて、会員は新宮市、田辺市、那智勝浦町、太地町、古座川町、串本町、北山村、熊野市、御浜町、紀宝町、和歌山県、三重県の12団体を予定している。
田岡市長は「新宮港が熊野の海の玄関口にふさわしいにぎわいの拠点となり、熊野地域全体の観光をはじめとする産業の振興に寄与できればと考えています」と協力を呼び掛けた。
会議で和歌山県県土整備部港湾空港局の浅見尚史局長が国内外のクルーズ客船の状況を説明。クルーズ客はかつて富裕層の欧米人が主体だったが、近年は庶民のレジャーとして定着。中国を中心にアジアのクルーズ人口が伸びていて2015年では10年前の2・7倍の208万人になった。
16年のクルーズ船による外国人入国者数は199・2万人と過去最高を記録。政府は20年には500万人にすることを目指している。
昨年、日本に寄港した客船は2017回と過去最高。船は7万㌧級以上が半分以上占めるなど大型化が顕著になっている。大型クルーズ客船の経済効果は少ない場合でも一人1万円。各社ともバスで2時間以内の周遊ツアーをつくっている。浅見局長は、新宮港は、航路、世界遺産などの観光資源、税関が常駐しているなど有利な面が多いと指摘。静穏度対策の防波堤工事を含め、今後も受け入れ体制を強化していきたいと述べた。
新宮市企業立地推進課の小渕学課長は「交通の便が悪いということがクルーズでは逆にメリットになる」と述べ、リピーターの乗客も多いことから、新たな熊野観光のメニューを企画していく必要があると協力を呼び掛けた。
(2017年10月4日付紙面より)
仁坂吉伸知事が行政報告会 (太地町 )
和歌山県行政報告会が2日、太地町公民館で開かれ、仁坂吉伸知事が本年度の新施策や重点事項などを説明した。会場には約300人が訪れ、満席の状態。仁坂知事の話に熱心に耳を傾けていた。
三軒一高町長は冒頭のあいさつでこの日、誕生日を迎えた仁坂知事を祝いの言葉で歓迎した。仁坂知事は今後の人口推移に関する「まち・ひと・しごと創生総合戦略策定」、本年度から始まった県の長期総合計画(10カ年)で2060年の将来人口は70万人確保を挙げた。人口減を食い止めるため、子育て支援、女性の活躍推進などさまざまな施策を説明した。
水産業では複合経営の推進を奨励。三軒町長が進める「森浦湾くじらの海計画」にも触れ、「クジラの学術研究都市は最高の計画であり、観光と漁業も脚光を浴びる」と語った。観光面では「水の国、わかやま。」、「わかやま歴史物語」「サイクリング王国わかやま」などを売り出していくと述べ、日本遺産「鯨とともに生きる」は熊野地方の誇りであり、アピールしていく方針を示した。
防災では津波避難困難地域に指定されている太地町の状況を示し、堤防を築いて津波到達までの時間を稼ぎ、町が進める緊急避難路などについて説明。建物の倒壊による犠牲者ゼロの推進のため、耐震改修や家具固定などの補助に力を入れていると述べた。仁坂知事は「災害時の司令塔は役場。高台へ持っていくべき。助けに向かう人たちが集まる場所と考えた方がいい」とも語った。
紀伊半島一周の高速道路の整備も取り上げた。今年は県の総力を挙げて太地町までの事業化を進めたいと語った。8月に完成した「道の駅たいじ」にも触れ、「和歌山県は世界一トイレがきれいな所を目指している。それは太地をまねした。太地のトイレは世界一」とユーモアを交えて語った。教育関係では学力アップを図り、全国平均に引き上げたことを紹介。いじめ、不登校問題への取り組みも説明した。
仁坂知事は「太地町は県下で優等生。(捕鯨問題で)国際的にいじめられてきたが、県警も50人体制で警備し守ってきた。シーシェパードは、今年は太地に行かないと宣言しているが、隙を見せたら来る。力を合わせていきたい」と呼び掛けた。
(2017年10月4日付紙面より)
商工会が「まちづくり座談会」 (那智勝浦町 )
那智勝浦町築地の商工会館で9月29日、寺本眞一町長や児玉征也東牟婁振興局長と町の将来について話し合う「まちづくり座談会」があった。約20人が参加し、町の将来について意見を出し合った。南紀くろしお商工会まちづくり部会が主催し、商工会全体で参加している。昨年は太地町の三軒一高町長と懇談した。
寺本町長と児玉振興局長の講演の後、参加者からは「都会へ進学した子どもらが戻ってきやすい町に」など、移住、定住を促すための施策を求める声が目立った。寺本町長は「今は仕事を選ぶ傾向が強い。観光業の労働条件を整えるのが良いのでは」と述べ、「自ら目的や意欲を持った人は支援しやすい」と話した。
I・Uターンの促進については市町村が広域で協力し合うべきとの意見を受け、児玉局長は「人口減少は全国的な問題。県内でも人口が増えたのは北山村、日高町、岩出市だけ。今年からはオール和歌山、30市町村でやっていく。都会よりも地方の方が生活は豊かで自由に使える時間が多い。自信を持ってPRしていただければ」と呼び掛けた。
(2017年10月4日付紙面より)
ぼたん荘でひだまり市 (古座川町 )
古座川町月野瀬にある南紀月の瀬温泉ぼたん荘で1日、「ひだまり市inぼたん荘いろり館」があり、開場と同時に活気づき序盤から完売続出のにぎわいを見せた。
手作りにこだわる人々が出店する市として親しまれているひだまり市。昨年までは春秋年2期(計7カ月)の毎月1日恒例で開かれていたが、今年は1回に力を入れて出店希望を多く集める代わりに、春秋年2回とする新たな開場手法を試みている。
この日は同館を会場にし、町内外から16店舗が出店。おまぜやパン類、農産物やその加工品、服飾雑貨や木工工芸品、町内で人気のこだわりかき氷などが並び、続々と訪れる人々の品定めや購入で注目を集めた。
発起人の東加世子さんによると当面は今年の形で開く方向で考えているそうで、「年2回は私たち世話役が忙しくなり運営が大変になってきたという事情もあります。その点はどうかご容赦いただき、次回は来年5月に古座街道で開く予定なのでまたのご来場をよろしくお願いいたします」と話していた。
(2017年10月4日付紙面より)
剛柔流空手道志彰会