紀伊半島大水害供養花火 (新宮市熊野川町 )
新宮市熊野川町能城山本(のきやまもと)で4日夜、2011年の紀伊半島大水害で犠牲になった人々を追悼する花火が打ち上がった。地元住民や車中から花火を観覧していた人らは、夜空に咲いた774発の花火に10年前の水害に思いを巡らせるとともに、犠牲者の冥福を祈った。
10年の節目に供養する機会を設けられればとの思いから「供養花火をする会」(池上順一会長、会員12人)が実行した。和歌山、三重、奈良の3県から50を超える団体や法人、個人の協賛を得て実施に至った。
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、花火打ち上げの是非や事前告知の在り方などについて協議を重ね、地元ケーブルテレビ局でのライブ中継やインターネットの動画投稿サイトの配信準備も進めた。
池上会長は「『やらない』という選択をするのは簡単なこと。供養花火を打ち上げることに対し、多くの人から協賛と協力を得た。何もしないと前に進まない。多くの人が同じ思いだったのでは」。
当日は十数㌶の田んぼの真ん中から打ち上げた。スターマインや6号玉が夜空を彩り、「献花」をイメージした白一色の花火がフィナーレを飾った。
池上会長は「6号玉の響く音が、水害で亡くなった天国のみんなに届いてくれたら。(花火が打ち上げられたのは)多くの方々のおかげ。みんなの思いが一つになった花火だと思う」。
10年間、長かったが早かった―。池上会長は熊野川を見つめ「水害後数年は復旧活動に奔走した。水害後もいろんなことがあった。これで一つの区切りがついたと思う」と話していた。
(2021年9月7日付紙面より)
鮒田地区の新たな防災拠点に (紀宝町 )
紀宝町の鮒田地区自主防災会(東口高士会長)は5日、地区の高台に完成した一時避難場所防災倉庫に地区住民の避難用品を収納した。災害時の資器材なども保管し、東口会長は「この避難場所を鮒田地区の新たな防災拠点にしたい」と話していた。
避難場所に整備した三つの倉庫を活用し、水害だけでなく、火災や津波など全ての災害を想定した防災の取り組み。150世帯のうち、この日集まった74世帯分を保管した。今後も避難用品を受け付けていくという。
避難用品を入れる衣装ケースは幅74㌢、奥行き40㌢、高さ31㌢で全世帯に配布。各家庭専用QRコードを貼り付け、家族の名前、電話番号を読み取ることができるよう工夫した。
この日は住民約50人が協力。鮒田構造改善センターで受け付けし、地区住民が各自の衣装ケースを持ち込んだ。ケースには衣類やマスク、ティッシュ、毛布、靴などが入っており、地区の男性は「災害時に必要な物を入れた」と語った。
軽トラックで衣装ケースや資器材などを倉庫に運び保管した。避難場所は海抜20㍍に位置し、広さは約850平方㍍。災害時には車中泊も可能だという。
センターでは、同地区の防災活動に関わってきた大阪工業大学工学部都市デザイン工学科の田中耕司・特任教授が配布した防災アンケートも回収した。
アンケートは、防災意識の調査を目的としたもので▽日常の習慣▽地区との関わり▽地区の防災情報▽日常的な災害への備え▽台風接近時の行動―などを聞いた。
田中教授は「鮒田地区が取り組む防災農園や防災散歩などの効果を調べた。皆さん協力的で、意識の高さがうかがえた」と話し、これから回答を分析するとした。
(2021年9月7日付紙面より)
大水害記念公園で慰霊祭 (那智勝浦町 )
2011年に発生した紀伊半島大水害から10年を迎えた4日、那智勝浦町は同町井関の紀伊半島大水害記念公園で慰霊祭を営んだ。例年は犠牲者の遺族や地域住民が参列するが、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から堀順一郎町長と那智谷大水害遺族会の岩渕三千生代表のみが出席。二人は29人の犠牲者・行方不明者をしのび献花を行った。
午後1時30分に町内全域にサイレンが響く中、関係者は黙とうをささげた。その後、二人は29個のキャンドルがともされた慰霊碑に白いカーネーションを供えた。
堀町長は「亡くなられた方々のご冥福と被災された皆さまへのお見舞いを申し上げるとともに、人的災害や家屋災害がないように霊前にお誓いした。ご遺族にとっては悲しみが薄れることはない。4割の町職員が大水害を知らない世代となっているが、決して風化させてはいけない」。
対策や抱負については「台風は止めることはできないが、来た際にはハード整備で一時的に止め、危険から逃げていただく。町としては情報収集を行い、素早く町民に知らせ避難いただけるように率先して啓発していきたい」と述べた。
岩渕代表は「もう二度と災害が起きないように見守ってくださいという思いしかない。早めの避難を徹底し、自分の身は自分で守ることが大事。これらの行事は後世に伝えていかなくてはいけないと改めて思った。そのための活動を今後も続けていきたい」と語った。
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この日は熊野那智大社(男成洋三宮司)と那智山青岸渡寺(髙木亮英住職)が初の合同慰霊祭を営んだ。
男成宮司が祝詞を奏上し、参列者が玉串をささげた。続いて、髙木住職らが読経する中、焼香が行われた。
合同慰霊祭を終え、岩渕代表は「自分の気持ちで詰まっていたものがすっと下りたような気がする。心が安まる追悼供養をしていただいた」と話していた。
(2021年9月7日付紙面より)
仁坂知事が慰霊碑に献花 (那智勝浦町、新宮市 )
2011年の紀伊半島大水害から10年となった5日、仁坂吉伸知事は県内に所在する同水害の慰霊碑や記念碑を訪れ献花。犠牲者の冥福を祈った。
県では同水害から10年の節目に当たり、那智勝浦町体育文化会館で「紀伊半島大水害10年追悼式」の開催を5日に予定していたが、県内外における新型コロナウイルスの感染状況を鑑み追悼式は延期となった。
仁坂知事は那智勝浦町井関の「紀伊半島大水害記念公園内慰霊碑」と、新宮市熊野川町田長の「道の駅 瀞峡街道熊野川内慰霊碑」など、県内4カ所の慰霊碑および記念碑での追悼献花を挙行した。
那智勝浦町では、仁坂知事は花束と、水害発生から県が復興に向け実施した取り組みなどを記した冊子「紀伊半島大水害 復興10年の軌跡」を慰霊碑に供え、犠牲者を追悼した。
仁坂知事は大水害発生当時を「どれだけの犠牲者が出ているのか、恐怖で肝がつぶれるようだった。われわれは津波に備え対策し、大きなダム設置も行ったが、足りないことが分かった。人命救助後は復旧を目指した。国の支援を受けながら懸命に努力し、本格復旧が95%まで達成できた」と振り返った。
今後については「災害を忘れず、行政は災害が発生した際に人の命を救うことが重要。ITなどを駆使して、情報収集や分析を行い、次に当たらなくてはならない」と決意を新たにした。
(2021年9月7日付紙面より)
秋季高校野球一次予選
宇久井中学校で防災学習 (那智勝浦町 )
那智勝浦町教育委員会は本年度、2011年の紀伊半島大水害の記憶を後世に伝えるため、町内3中学校で防災学習を実施する。2日には町立宇久井中学校(坊信次校長)で学習があり、1、3年生36人が真剣な表情で被災当時の那智川沿いの写真や遺族の証言に向き合った。
紀伊半島大水害で小中学生4人を含む29人が亡くなった那智勝浦町では、16年に町と和歌山大学が那智谷大水害遺族会の協力を得てDVD「私たちは、忘れない 紀伊半島大水害のことを」を制作。つらい記憶をよみがえらせることから生徒の視聴には賛否があったが、水害後10年を迎える今年、申し出があった3校で上映に踏み切った。
DVD視聴に続き町教委の草下博昭課長が講話。「災害時には『絆』という言葉が注目されるが、被災した状況下で人と協力していくのは容易なことではない。それが実現するには、日頃から人に優しく接し、多面的に物事を捉え、自分にできることを探すという行動を取っていることが大切なのではないか」と語り掛けた。
参加した生徒からは「どんな被害があったのか、どういう経緯で大きな被害が起きてしまったのか知ることができた。家族を亡くした遺族の気持ちは想像もできないが、一つ一つの災害を忘れてはいけないと感じた」「5歳の時、自分の家も浸水したと聞いた。自分たちにできるのは、忘れないこと、そして防災に取り組むこと」などの声があった。
(2021年9月4日付紙面より)
新たなロケットロゴT発売 (南紀串本観光協会 )
南紀串本観光協会(島野利之会長)は町独自ロゴ「スペースタウン串本ロゴ」を活用したTシャツの販売を開始した。アウトドア総合メーカー「(株)モンベル」とのコラボ商品で、カラーは3種類。1枚3000円(税込み)。同協会と同協会古座の窓口で販売している。
前面にロケットロゴ(単色)、背面の首元にモンベルのロゴをそれぞれあしらった。生地はペアスキンコットンを使用しており、丈夫で型崩れしにくく肌に優しい着心地となっている。色とサイズはネイビー(サイズS~XL)とホワイト(同S~L)、グレー(同XLのみ)。
同協会はロケット打ち上げの機運を盛り上げようと町独自ロゴを活用した商品を開発してきた。ロゴを使った商品のモデルケースを見せる狙いもある。これまでに「大漁旗Tシャツ」「ロゴステッカー」「ロケットサイダー」などを発売した。商品はJR西日本が運行する長距離列車「WEST EXPRESS 銀河」の出迎えの際などにも販売している。
今後は8月に完成した同協会オリジナルのロケットロゴ(全4種)を使った小物類の製作も計画している。商品の通信販売も検討中で、宇井晋介事務局長は「町全体で盛り上がっていることを形として示したい」と話していた。
商品などの問い合わせは同協会串本事業所(電話0735・62・3171)まで。
(2021年9月4日付紙面より)
みくまの農業協同組合 (本宮町 )
みくまの農業協同組合(JAみくまの、漆畑繁生組合長)は8月30日、田辺市本宮町の保健福祉総合センター「うらら館」で田辺市社会福祉協議会(野見陽一郎会長)に介助型車椅子10台、松葉づえ3本、段ボールベッド30個を贈呈した。
「農」と「食」と「地域を守る」を経営理念とし、地域に根差したJAとして2001年から活動してきたJAみくまの。昨今の経済情勢の変化により、今年6月に開催した第20回通常総代会で拠点再編が決まり、本宮支所が縮小となった。しかし、組合員や利用者にわずかでも地域貢献したいという思いから、「介護・福祉活動」「防災対策活動」の一助として、今回の贈呈に至ったという。
同社協の松本栄夫副会長に目録を贈った漆畑組合長は「今回、本宮支所が縮小する中で何か地域貢献ができないかと考えておりました。福祉用具の必要性などを考え、少ないですが、今回の贈呈に至りました。今後ともどうぞよろしくお願いします」と話した。
松本副会長は「大変ありがたい。少子高齢化社会が進む世の中、企業や社協もそれぞれ悩みがある。われわれとしても地域の皆さまがご心配ないように取り組み、貢献できるように進めてまいりたい」と話した。
(2021年9月4日付紙面より)
市野々小で防災学習 (那智勝浦町 )
「防災の日」(9月1日)を中心とした1週間(8月30日~9月5日)は防災週間。那智勝浦町立市野々小学校(中西健校長)で期間中の2日、防災学習があった。児童らは真剣な表情で授業に取り組み、命を守る避難行動について学びを深める機会とした。
5、6年生12人を対象に行われた授業では、新型コロナウイルス感染防止の観点から、県土砂災害啓発センターとオンラインで中継をつなぎ、防災について考える時間とした。学習テーマを「私の避難方法を考えよう」とし、同センターの坂口隆紀所長がハザードマップや警戒レベルから読み解かれる避難場所や方法などについて説明した。
同センターによるオンラインを使用しての防災学習は初の取り組み。坂口所長は「『避難』とは命を守るために逃げること」と説明。「避難所では新型コロナの感染リスクも高くなる。でも避難しないこともいけない」と述べ、分散避難(ばらばら避難)の重要性を訴えた。
分散避難のためには、自分の住んでいる所で起こり得る自然災害を知り、安全な場所を確認することが必要とし、ハザードマップを用いた事前確認を促した。
また、天気予報などで耳にする「台風が発生」「梅雨前線・秋雨前線・線状降雨帯」「大気の状態が不安定」などの言葉や、気象情報における警戒レベルとその色分けにも注意が必要とし「赤(警戒レベル3)と紫(同4)を注意する色として覚えておいてください」と呼び掛けた。
その後、児童らはハザードマップなどを参考にし、災害時の自分や家族の役割について考えながら避難スケジュールの作成に取り組んだ。
(2021年9月4日付紙面より)