八咫烏シンポジウム (那智勝浦町 )
第36回国民文化祭、第21回全国障害者芸術・文化祭那智勝浦町実行委員会は3日、那智勝浦町体育文化会館で「八咫烏(やたがらす)シンポジウム」を開催した。八咫烏に関する講演などが行われたほか、同町出身で、日本サッカー協会創立100周年を機会に日本サッカーの礎に貢献した中村覚之助氏の名誉町民顕彰セレモニーも実施され、121人の来場者が祝福した。
「紀の国わかやま文化祭2021」地域文化発信事業の一つであるシンポジウムは、熊野信仰のシンボルである八咫烏を広く周知し、八咫烏を通して熊野の魅力を発信することが目的。
開会に先立ち、堀順一郎町長があいさつ。はじめに日本ヤタガラス協会会長で国際熊野学会代表委員の山本殖生さんが「熊野の八咫烏伝承の魅力」と題し講演した。
三足の意味や古代中国や高句麗の神話、神武天皇の系譜などに触れ、「平安には八咫烏の名前が出ている。日本書紀や古事記によると、大きな鳥や偉大な鳥と読み取れる」と述べた。
山本さんは「豊かな自然・山・川・滝・海」「文化的景観として、自然と人間」「聖地の要件」「日本第一大霊験所」が八咫烏の生息環境と位置付けし、他界観や再生観、死生観、宗教観、世界観など、熊野の象徴が八咫烏であると締めくくった。
熊野三山参詣曼荼羅(まんだら)絵解き「協演」では、熊野本宮語り部の会の谷口佳子さん、新宮市観光ガイドの会の西浦康代さん、熊野那智ガイドの会の生熊みどりさんがそれぞれの絵解きを行った。
筑波大学附属高校教諭で日本ヤタガラス協会副会長の中塚義実さんが「日本サッカーの始まりと中村覚之助―JFA100周年にあたって―」を講演。「サッカーの始まりと日本への伝来」「中村覚之助の功績と日本サッカーのあゆみ」「JFAのシンボルマークをめぐって」について解説した。
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中村氏は1878年に旧那智村浜ノ宮で生まれ、1900年に東京高等師範学校(現筑波大学)に入学。「アッソシエーション・フットボール」を翻訳し、日本初のサッカー指導書を編さんした。さらには日本初となるサッカーチームを創設し、国際試合も実施。28歳の若さで逝去した。
それらの功績をたたえようと、今年9月の町議会で同町二人目の名誉町民に推挙され、全会一致で同意された。
名誉町民顕彰セレモニーでは、中村氏の兄・亀一氏の孫に当たる中村統太郎さんも出席。中村さんは「名誉町民に選んでいただき、この上ない喜び。親族として誇りに思う」と喜びを語った。
(2021年11月6日付紙面より)
子供・若者育成支援強調月間 (新宮・東牟婁 )
「子供・若者育成支援強調月間」(内閣府が主唱)に伴う「知事メッセージ」の伝達式が4日から29日(月)にかけて新宮市、東牟婁郡の各地域で行われる。初日の4日には、東牟婁地方青少年育成県民運動推進委員連絡協議会の畑林守さん、木村康史さん、横山政博さんらが新宮市役所を訪れ、青少年健全育成に協力を求める仁坂吉伸和歌山県知事のメッセージを読み上げ、田岡実千年市長に手渡した。
青少年を正しく、心豊かに育成する機運を盛り上げようと毎年実施している。メッセージでは「新型コロナウイルス感染症対策に伴うさまざまな制約により、閉鎖感や孤立感を感じている子ども・若者がいる。また、いじめや不登校、児童虐待や引きこもりのほか、SNS(会員制交流サイト)におけるトラブルやインターネットの長時間利用など、子ども・若者に関するさまざまな問題を解決するためには、家庭・学校はもちろん地域全体で取り組まなければならない」などと協力を呼び掛けている。
伝達を受けた田岡市長は同協議会の子どもたちの健全育成を目指す取り組みに感謝を示し「SNSやインターネットの普及など、便利になりすぎているが故に今までとは違った問題も起きていると感じている。引き続き子どもたちの成長のためにご協力いただければ」と求めた。
横山さんから、県ではSNSをはじめとするインターネット上のトラブルから子どもたちを守るためにネットパトロールを行い、各市町村教育委員会と学校が情報を共有しているなどと紹介。
田岡市長はインターネット上におけるいじめや誹謗中傷などの発生を危惧し「地域が一緒になって子育てしていくことが一番大事」。委員らと課題や現状などを話し会いながら今後の連携強化を図った。
(2021年11月6日付紙面より)
マリア保が創立50周年 (新宮市 )
新宮市野田の保育所型認定こども園「マリア保育園」(三浦恒久園長)で3日、創立50周年式典が開かれた。式典実行委員会や保護者会、同窓会、職員ら約40人が出席し、記念となる節目を祝った。
同園は、神に愛されている他者と自分を知り、人を愛する人間に育つことを目的に、新宮聖公会に併設する形で1971年11月に開設。地域の保育事業の一端を担い、これまで1723人の子どもたちが巣立った。97年の25周年時には、当時の園児や職員らがさまざまな品物をタイムカプセルに入れて埋設し、将来の夢を託した。
式典では、坂口涼・保護者会長、阿万卓也・実行委員長、杉浦資史・同窓会長があいさつ。コロナ禍で無事に催しが開催できたのは三浦園長はじめ職員、保護者の他、多くの人たちのおかげと感謝し、坂口会長、阿万実行委員長はそれぞれ「この伝統を引き継ぎ、次の世代に継承していきたいと思いますので今後ともご支援、ご協力をよろしくお願いします」などと述べた。
続いて97年当時の園児だった清原孝太さん、元職員の西和美さん、現職員の松原美恵教諭が、同園でのそれぞれの体験や思い出を語り、笑顔で振り返った。
中盤には、運ばれたタイムカプセルが25周年当時に役員を務めていた森光治さん、久保正彦さん、清原直樹さんによって開けられると、中から将来の自分に向けての手紙や記念ポスター、園児たちの絵などが取り出され、出席者から大きな拍手が送られた。
午前には、同園教会で感謝礼拝が行われ、聖歌や説教などで神様に感謝の祈りをささげた。
阿万実行委員長から記念品を受け取った三浦園長は「97年当時に園長を務めていた大川誠さんは人とのつながりを大事にしていた。100周年に向かって、子どもたちに寄り添っていけるよう『マリア大家族』の思いを胸に、これからも頑張っていければ」と話していた。
(2021年11月6日付紙面より)
串本で創業セミナー実施 (広域商工会東牟婁協議会 )
串本町商工会館で1日夜、研修会「2021ビジネスを始める人のための創業セミナー」があり事前申し込みの6人と同町商工会事務局の職員(経営指導員など)5人が受講して成功する起業の筋道を考えるなどした。
この研修会は、北山村・古座川町・串本町・南紀くろしおの4商工会で結成する広域商工会東牟婁協議会(森川起安会長)主催。本年度伴走型小規模事業者支援推進事業の一環で、今回は商工会の経営指導員による事後フォローの利用を前提にして管内5市町村が認定する特定創業支援事業の要件となる4分野(経営・財務・人材育成・販路開拓に該当する研修の修了)を網羅する3時間講習を計画し、受講無料、先着順で参加を呼び掛けた。
対象は経営の基本を学びたい人、独立開業を目指す人、創業後5年未満の人、副業を検討している人。講師は株式会社紀の州コンサルティング・三和社会保険労務士事務所代表の濱田智司さんが務めた。
この日は全国労働保険事務組合連合会和歌山支部も同席。まず日本政策金融公庫田辺支店が同公庫の概要と創業計画書の記入内容、各種融資制度を紹介し、以降は濱田さんが自他の経験を例示しつつ起業する場合にしてはならないことやするべきことを一通り説明して起業の志を着実に成功へとつなげる考え方や進め方を11人に託した。
(2021年11月6日付紙面より)
東牟婁地方中学校秋季陸上競技大会
サッカー・バレーボール
第15回新翔高校体育祭 (新宮市 )
雲一つ無い爽やかな秋晴れが広がった2日、新宮市の県立新翔高校(藤田勝範校長、生徒312人)で第15回体育祭(硲一静実行委員長)が開催された。今年のテーマは「とびだせ!新翔の森」。生徒たちは各種目で学年を超えて声援を送り合い、生き生きと青春の一ページを楽しんだ。
新型コロナウイルス感染拡大による夏休みの延長や分散登校の影響を受け、例年よりも1カ月遅れての開催となった。
開会式に当たり、硲実行委員長は「練習時間は限られていたが、今までの成果を発揮し、ルールを守れば、とてもいい体育祭になると思う。全力で楽しんでいきましょう」とあいさつ。藤田校長は「久しぶりの全校行事。新型コロナ対策、水分補給、けがに気を付け、頑張って」と激励した。
聖火入場に続き、青、赤、黄、緑の4ブロックを代表して大野百虹(もこ)さん、大石翔稀君、中本嵐君、坂本拓斗君が「僕たち私たち選手一同は、体育祭という日のため、一生懸命努力し、頑張ってきました。諦めず、助け合い、体育祭を開催してくれたことに感謝し、最後までやり遂げることを誓います」と宣誓した。
競技はクラス対抗リレー予選でスタートし、教師陣も加わって白熱したレースを繰り広げた。大縄跳びや応援コンクール、楽しすぎるリレー、フォークダンスなどもあり、学校全体で盛り上がりを見せていた。
(2021年11月3日付紙面より)
羽黒と熊野の共通点とは (東大人文・熊野フォーラム )
東京大学大学院人文社会系研究科は10月30日、オンラインで東大人文・熊野フォーラムin羽黒「羽黒と熊野 聖地比較のこころみ」を開催した。同大学大学院人文社会系研究科長の秋山聰さんや金沢美術工芸大学・東京家政学院大学客員教授の松﨑照明さん、国際熊野学会代表委員の山本殖生さん、東北大学名誉教授の佐藤弘夫さんがそれぞれ講演。さまざまな視点を通して、羽黒と熊野の比較を試みた。
新宮市教育委員会、出羽三山神社共催。新宮市は今年3月、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部と連携協定を締結。東京大学と共に人文学を応用しての地域振興や交流促進、地域連携活動などを図っており、同フォーラムはその一環として開催。フォーラムの様子は山形県鶴岡市羽黒町のいでは文化記念館から配信された。
秋山さんは、自身と熊野地方との出会いや関わりなどを説明。秋山さんおよび同科がこれまで熊野地方で展開してきたフォーラムやシンポジウムなどを振り返り、同フォーラムの趣旨について「熊野に限定せず、いろいろな地域でやってみようという試み」と話した。
松﨑さんは「熊野・大峰と羽黒の建築」と題して講話。能・狂言に登場する山伏から出羽と熊野・大峰の関わりを話し、羽黒山境内と大峰山寺境内の類似性について言及。「共通性が高く、大峰山で修験していた人たちの影響があったのでは」と述べた。
出羽三山神社の特殊神事「松例祭」における「国分神事」は「東三十三カ国を羽黒権現の土地に、西二十四カ国を熊野権現領に、九州九カ国は英彦山権現領」とする内容であると紹介。吹越籠堂(羽黒山中)と新宮礼殿の類似点や、神仏混淆(こんこう)の時代には虚空蔵山、熊野長峰を含めた三山を熊野三所権現とした修験道場であった金峯山と羽黒山の関係についても話した。
山本さんは「聖地熊野三山の成立と伝播―出羽三山との比較を視野に―」を演題に講話した。熊野の祭神と三山の成立について話し「牟須美(結)・速玉神は新宮で勢力を誇った豪族夫婦の祖霊神では」と述べ、熊野速玉大社の「家津御子大神坐像」は「熊野速玉大神坐像」「夫須美大神坐像」に比べて制作時期も新しく、「一遍聖絵」(1299年)では牟須美(結)・速玉神が回廊に囲まれて特別扱いされているとし「本宮が新宮の豪族の影響を受け、夫婦神を祭らざるを得なかったのでは」と持論を語った。
出羽三山と熊野三山の類似点について「どちらも他界信仰の聖地であり温泉信仰の霊場であり、出羽三山は火山性、熊野三山は熊野カルデラに基づく自然崇拝の聖地」。
羽黒山を開山した能除上人を八尺の霊烏が導いたといった故事と熊野の八咫烏(やたがらす)についても言及。「聖地成立の要因の究明や霊場形成の展開の解明、信仰伝播の実相探求は課題。これからも山岳霊場の調査を通して交流を推進していければ」と締めくくった。
佐藤さんは「熊野信仰と羽黒山―聖地誕生のメカニズム―」と題し、「中世では、この世にいるのは不幸な死者であると考えられ、別世界のイメージは膨脹した。人々を浄土に導く垂迹(すいじゃく=他界の仏の化現)や、垂迹の所在地としての霊場などを求めた」と解説。垂迹のいる場所(霊場)は山などの景勝地に造られたなどと話した。
講演後には、出羽三山神社の阿部良一権宮司、東京大学大学院人文社会系研究科教授の唐沢かおりさんも加わり、総合討議が行われた。
(2021年11月3日付紙面より)
「丹鶴ホール」で手話狂言 (新宮市・北山村手話狂言実行委 )
新宮市・北山村手話狂言実行委員会(森常夫会長)は10月31日、新宮市下本町の市文化複合施設「丹鶴ホール」で「聞こえる人も聞こえない人も一緒に楽しめる手話狂言」を開催した。来場者らは狂言やワークショップを通し、手話や演劇について理解を深めた。
30日に開幕した「紀の国わかやま文化祭2021」障害者交流事業の一つ。日本の伝統芸能である狂言を手話と音声双方で表現し、聞こえる人も聞こえない人も共に楽しむことができる演劇を通じ、手話や演劇について理解を深め普及を図ることを目的としている。
開催に当たり、森会長は「障害者差別解消法が施行されたが、当地域の手話通訳者は不足していることは緊急の課題となっている。手話言語条例も圏域市町村で次々と制定されている。地域の中で手話が広がりを見せている今、手話狂言は時期を得たと思い計画した。障害のある人もない人も共に楽しんでほしい」とあいさつ。
田岡実千年新宮市長は「障害への理解を深めるとともに、障害あるなしに関わらず地域の方の文化活動が一層広がり、活躍の場が増えることを期待している」。山口賢二北山村長は「北山村においても9月本議会で手話言語条例を制定した。今日はこの貴重な機会にぜひお楽しみいただきたい」とそれぞれあいさつした。
演目は日本ろう者劇団による「附子(ぶす)」。和泉流狂言師三宅右近師が指導した。同劇団は1980年に「東京ろう演劇サークル」として発足。社会福祉法人トット基金理事長の黒柳徹子さんと出会い、同基金の付帯劇団となり劇団名を改称。手話狂言や創作劇など独自のレパートリーを持って全国各地で公演している。
「附子」は、主人が太郎冠者と次郎冠者に、おけに入った附子(毒薬の名)に気を付けるよう言い聞かして外出するが、怖い物見たさに附子に近づいた2人はおけの中身が砂糖であることに気付き、食べてしまったことに対する主人への言い訳を考えるといった内容。
太郎冠者と次郎冠者のしぐさや対話、息の合った演技に、客席からは拍手と笑いが巻き起こった。
演目後には狂言方和泉流の三宅近成さんと、和歌山県出身で太郎冠者を演じた數見陽子(かずみ・あきこ)さんによるワークショップもあった。
三宅さんは、会話としての手話と手話狂言で用いる手話との違いなどについて解説し「254ある狂言のうち70番が手話狂言として制作されている。両手に物を持つものや謡(うた)が主なものもあることから、手話狂言に作られていない演目もあるがどうにかしてレパートリーを増やしている」と説明。
来場者らは三宅さんと數見さんから狂言の「カマエ」や手話狂言による「名乗り」などを学び、伝統文化と手話に親しむ機会とした。
(2021年11月3日付紙面より)
メランカオリさんが展示 (紀の国トレイナート )
JRきのくに線の各所を舞台にJR西日本や地域の有志、アーティストが共に立ち上げたアートプロジェクト「紀の国トレイナート」が10月31日から11月21日(日)まで開催されている。これまで本紙エリア内の作品と作成したアーティストを紹介してきた。今回はJR那智駅の駅舎内に力作「紀伊半島を巡る掃除道具とコンフェッティ・タロット」を展示しているメランカオリさんを取材した。
学生時代から、熊野地方に興味があり度々、足を運んでいたというメランカオリさん。東京芸術大学大学院先端芸術表現専攻修了後、古文講師や地球儀加工員を務める傍ら、「土星プロレス」と称した独自の占いによる作品を展開している。
2017年に初めてトレイナートに参加。ラストランを迎える今回は、学生当時から制作し続けている掃除道具に焦点を絞る。作品は熊野古道で拾った枝と竹ぼうき、那智の浜に打ち捨てられた端切れと雑巾などの素材を用いて作成。
床掃除で使用する水切り用具の先端部分を加工した那智黒石で演出し、クジラのヒゲを使ったブラシなどさまざまな道具が集まり、一つの作品を形成している。
メランカオリさんは「人や物の交流が長年続くトレイナートはすごい。節目の年に参加できて良かった。作品は最初から掃除道具の形にすると決めていた。地域にあった物や土産物などが掃除道具に生まれ変わった様や、近寄って直視した際に類似性の発見、胸を打つ瞬間を感じ取っていただけたらうれしいです」と語った。
なお、臨時アート列車「紀の国トレイナート号」走行日は11月6日(土)。御坊―新宮間を巡る。期間中は各地で関連イベントや沿線のまちへのローカルダイブも行われる。問い合わせは同実行委員会事務局(電話080・5786・2652、0739・22・5064)まで。
(2021年11月3日付紙面より)