海亀を守る会がウミガメ放流 (新宮市王子ヶ浜 )
ウミガメの保護活動を展開する「紀伊半島の海亀を守る会」(榎本晴光会長、環境ファースト連合会員)の会員4人は26日、新宮市の王子ヶ浜で14匹のアカウミガメを放流した。榎本会長は「今年は想像通りふ化率が低かったが少しでもふ化してくれて良かった」と総括した。
同浜は絶滅危惧種・アカウミガメが訪れる世界でも数少ない海岸の一つ。同会は、波浪流失や小動物の捕食被害からアカウミガメの卵を守るための保護活動を行っている。卵は海岸に隣接するふ化場に移し、ふ化した子ガメは秋ごろ、同会や関係者、近隣住民らの手によって海に戻される。
アカウミガメの上陸・産卵シーズンは5月中旬から8月半ばごろまで。1回の産卵で平均110~120個の卵を産み、60~80日でふ化する。
同浜では、例年より早めとなった5月20日に今期初上陸および産卵が確認。会員らは同浜の大規模清掃活動などを通してウミガメの上陸に備えたが、初上陸以降、上陸はあったものの産卵は確認されなかった。
初産卵で発見された卵は98個。うち、15匹がふ化したが1匹が死んだ。榎本会長によると、早い時期に産卵が見られた場合、砂の温度が低いなどの理由からふ化率は低いという。さらに、今年は産卵からふ化までに約90日を要した。
会員らは、7㌢ほどに成長したウミガメを波打ち際で放流。榎本会長は「今年は天候不順などが影響して上陸も産卵も少なかった。来年に期待したい」と思いを語った。
(2021年9月28日付紙面より)
中村朱美さんが講演 (新宮市 )
新宮市井の沢の新宮商工会議所で25日、同会議所が主催する繁盛店づくり推進事業「逆境に負けない強い中小企業の在り方―withコロナafterコロナの時代に向けて―」があり、㈱minitts代表取締役の中村朱美さんが講話した。
中村さんは京都府亀岡市生まれ。専門学校の職員として勤務後、飲食事業や不動産事業を行う同社を設立。「1日100食」をコンセプトにおいしいものを手軽な値段で食べられる「佰食屋(ひゃくしょくや)」を行列のできる人気店へと成長させた。利用客や従業員、そして環境にも優しい経営の実現により、第32回人間力大賞農林水産大臣奨励賞、ForbesJAPANウーマンオブザイヤー2019大賞などを受賞している。
100食という「制約」におけるメリットについて、中村さんは「毎日同じ量を出すのでどれだけ発注するかを考える必要もない。フードロスにつながり従業員の労働時間削減にもつながる」。地元食材業者の安定供給にも寄与できるとした。「100食限定」が生む希少価値に加えて原価率を上げ、宣伝広告費を削減した分を商品力アップに注いでいく経営術を紹介した。
コロナ後を見越した「真の働き方改革」は「従業員が自己決定権を持つこと」とし、同店では▽出勤・退勤時間、それに伴う基本給を自分で選べる▽上司や自己評価だけではなく同僚や部下、客の口コミなど、関わる全ての人からの評価が反映される360度評価制度―を組み合わせることでモチベーションが維持されていると説明。
有給休暇が自由に管理・取得できることに伴う人手不足対策として、常に人員を多く採用していると述べ「労働力が多いことで毎日80%の実力で労働をこなすことができる」と利点を話した。
新型コロナウイルスが全国的に広がりを見せ始めた昨年、中村さんは緊急事態宣言発出前に2店舗の閉鎖を決意。
そんな逆境のさなか、コロナに対する心理的不安が広がる中において、医療従事者への支援のためのコロナ対策や食中毒対策、店舗の行動指針などを会員制交流サイト(SNS)で発表。
新型コロナの次の波を見据え商品開発を行ったほか、年末年始や卒業シーズンにおける新しいテークアウトの在り方を発信するなどして危機を乗り越えたことに対し、中村さんは「当たり前のことを誰よりも早く、たくさんやることが必要なのでは」と提案した。
中村さんは、2店舗の閉鎖を決定した際、閉鎖店舗から出た計4㌧のごみを夫婦2人で処理した経験から「人を救うのは筋力」「経験が災害対応につながるのでは」と思い立って企画した、防災と筋力を掛け合わせた新事業「防災筋力」を紹介。
経営のためには「会社」「働く人」「客」「仕入れ先」「環境」の一つも欠けてはいけないとし「AI(人工知能)、テクノロジーは愛を込めることはできない。事業に愛を込めるのが大事」と呼び掛けた。
(2021年9月28日付紙面より)
旧役場本庁舎内で実動訓練 (串本町消防本部 )
串本町消防本部(寺島正彦消防長)の串本消防署(井本茂署長)が17日と24日、旧役場本庁舎を用いて実動訓練に取り組んだ。24日は第2警防班が資器材使用訓練を実施。日頃培っている技術を運用して救助の支障を乗り越える流れを実際の施設を用いて経験した。
同本庁舎は8日から解体工事の工期に入り、10月から作業が本格化する予定。現状、内部で実動に近い想定訓練が実施可能だと判断し、17日に第1、24日に第2の各警防班がそれぞれに立てた訓練計画に基づいて臨んだ。
第2警防班は倒壊建造物を想定し、エンジンカッターやドリルなどを用いて救助ルートを妨げる支障を取り除く手順を実践。当日は11人組で行動し、鉄扉や防火扉をエンジンカッターで切り開き鉄筋コンクリート製の壁をドリルで貫通するといった課題に対しどのような手法をとるべきかの判断も含めて実践した。資器材については時間をかけ全員が順番で取り扱い、個々に習熟に努めた。
井本署長によると、第1警防班は火災を想定し、火勢が増し施設内から退避できなくなった職員を救出する手順を実践したという。職員は日頃の訓練で資器材の取り扱いなど技術の習熟に努めているが、実運用については現場同等の環境を準備する手間があり、現場自体が熟練するほど頻発しないこともあって習熟が難しい状況にある。今回は延焼や倒壊こそしていないものの、実現場に近い環境で身に付けた技術の運用に臨める絶好の機会となった。
同訓練の様子を見守った井本署長は「実際の施設を用いたことで、例えば防火扉には心材が入っているなど今まで気付かなかった状況の発見もあった。(同本部は近年)若手の職員が増え平均年齢も若返っているが、同時に技術の習熟が求められる状況ともなっている。今回の経験を技術の一層の向上につなげることを職員の今後に期待したい」などコメントした。
(2021年9月28日付紙面より)
幼稚園や保育所などでシーズン始まる (新宮市・那智勝浦町 )
新宮市と那智勝浦町の幼稚園、保育園、保育所、こども園で運動会シーズンを迎えた。
同市三輪崎の保育所型認定こども園「白梅保育園」(鈴木晴貴園長、園児43人)は26日、同市佐野のくろしおスタジアム屋内練習場で「第41回うんどうかい」を開催。園児たちはかけっこやダンスなど、さまざまな競技に元気いっぱい取り組んだ。
運動会は「今日もげんき!」の体操でスタート。保護者や職員が見守る中、園児はかけっこやリレー、玉入れなど、全12種目に臨んだ。
後半には3、4、5歳児が日頃の練習で取り組んで来た迫力ある「白梅太鼓2021『Make you happy』」を披露。会場から大きな拍手が送られた。
鈴木園長は「子どもたちの一生懸命ながらも楽しそうな姿が見られました。コロナ禍で制限せざるを得ない行事もあるかもしれないが、明るく元気で健康な園生活を過ごしてもらえれば」と話していた。
(2021年9月28日付紙面より)
広角南交差点、信号機表示変更へ (新宮警察署 )
国道42号、広角南交差点(新宮市)の信号機の表示方法が今月30日の夕方ごろから変更となる。変更に伴い、同交差点は同日午後2時ごろより切り替え工事を実施。新宮警察署では「工事中は渋滞が発生する可能性もあるが、警察の指示に従って安全運転に協力を」と呼び掛けている。
現在、青信号で直進左折車と右折車が同時通行となる同交差点。直進車と右折車の接触事故が絶えず、令和2年中(1~12月)には人身事故1件、物損事故7件が発生。今年1月から8月末にかけては人身事故の発生はなかったものの、10件の物損事故が発生している。
信号機の表示切り替えは、右折車と直進車の接触を避けるなど、交通事故を一件でも減らすために講じられるもので、切り替えにかかる工事は数時間を予定しているという。改良後には矢印信号により直進左折車と右折車が分離となる。
同署の楠間慎也交通課長は「交通状況の改良のためということにご理解を。ご迷惑をお掛けするかもしれないが、矢印信号に従って安全運転で通行していただければ」と話している。
(2021年9月23日付紙面より)
昨年度うどの幼保護者ら要望 (紀宝町 )
昨年度の紀宝町立うどの幼稚園の保護者らが21日、紀宝町役場で西田健町長と面会し、184世帯479人分の署名を添えて防災公園の設置を要望した。
既存の公園の老朽化やコンビニがたまり場になっていること、室内でのゲーム遊びに依存しがちになっている現状を踏まえ、令和2年度の同園PTA役員会が、3月から町内の子育て世代への署名活動を行った。
新年度になったため、名称を「防災公園設立委員会」とし、子どもが安心して遊べる場所づくりを求めて取り組んでいる。
要望では▽子どもが徒歩や自転車で行ける場所への設置▽安全に自転車の練習ができる広さがあること▽子どもから高齢者までが集える環境であること▽災害時にも活用できる機能があること―などを訴えた。
この日は、委員長で同PTA前会長の中澤武さん、副委員長の中村和隆さんが訪れ、西田町長に要望書を渡し、意見を交わした。
中澤さんは「子どもとお年寄りが寄り添えるような場所にしたい。次世代に地元にいてもらえるような起爆剤になり、地方創生に結び付けばいい」と伝えた。中村さんも「大人の目が届き、安心して遊べる場所に公園をつくってほしい」と話した。
西田町長は「紀宝町に住んでもらいたいというのが原点で、このまちで安心して子育てをしていってほしい。気持ちはしっかり受け止めたい」と答えた。
同町によると、町内に公園は条例化されていない4カ所を含めて18カ所ある。地区別では、鵜殿10カ所、井田2カ所、神内1カ所、成川1カ所、鮒田2カ所、大里2カ所となっている。
(2021年9月23日付紙面より)
秋の交通安全運動で啓発 (串本町 )
正しい交通ルールの順守とマナーの実践を呼び掛ける「秋の全国交通安全運動」が21日、始まった。串本町くじ野川の橋杭海水浴場駐車場では街頭啓発があり、関係者らが物資を配布しドライバーへ安全運転や交通ルールの順守などを求めた。
同運動は30日(木)までの10日間。県内では▽子どもと高齢者をはじめとする歩行者の安全の確保▽夕暮れ時と夜間の事故防止と歩行者などの保護など安全運転意識の向上▽自転車の安全確保と交通ルール順守の徹底▽飲酒運転などの悪質・危険な運転の根絶―を重点にし活動が行われる。
この啓発では交通事故をなくする県民運動推進協議会串本地区連合会の事務局・東牟婁振興局串本建設部、串本警察署、町交通指導員会、串本地区交通安全母の会、町などの関係者らが参加。同連合会会長の久保浩也・串本建設部長は重点を挙げ、秋の行楽シーズンで交通量も増加することから交通安全運動の取り組みの効果で事故が少しでも減少すればと述べた。
同町の平井治司副町長は「運動期間中はもとより、日頃からも町において職員一丸となり交通ルールを順守するとともに、マナーの向上に努め、交通事故防止活動に積極的に参加し、町民の模範となるよう努力していきたい」。
串本警察署の泉政勝署長は8月末現在の管内の交通事故発生状況を人身事故12件、物損329件の計341件で昨年同期と比較し微増していると説明。うち8割近くが地域住民の関わる事故となっており、啓発活動を通じ地元住民に「安全運動なんや。気を付けて運転せなあかん」と思ってもらうことに価値があると呼び掛けた。
あいさつ後、パトカーや白バイがそれぞれパトロールに出発。以降ドライバーを駐車場に誘導し、物資を手渡すと「交通安全運動です」と声を掛けるなどして注意を促した。
(2021年9月23日付紙面より)
秋の海ごみゼロウイーク (那智勝浦町 )
日本財団「海と日本PROJECT」と環境省などが実施する全国一斉清掃キャンペーン「秋の海ごみゼロウイーク」にエントリーした「かつうら渚(なぎさ)の会」(猪飼伸会長)は19日、那智勝浦町のブルービーチ那智で清掃活動に取り組んだ。会員や一般参加者など45人ほどが集まり、マスク着用や3密に注意するなど新型コロナウイルス感染症対策を施して作業に汗を流した。
清掃キャンペーンは同財団らが海洋ごみ問題の周知啓発と海洋ごみの流出を少しでも防ぐことを目的に、「ごみゼロの日」の5月30日から6月8日の「世界海洋デー」前後を「春の海ごみゼロウイーク」、9月18日の「ワールドクリーンアップデー」から26日までを「秋の海ごみゼロウイーク」と定めている。渚の会は春にもエントリーし、約100人が参加して海岸をきれいにした。
前回と同様にキャンペーンの必須アイテムである青色の服やタオル、帽子などを身に着けた参加者が協力し合って海藻や流木などの漂着物やごみを拾った。
同会の濵邊誠治副会長は「天気や潮によって漂着物の量は違うが、有名な那智の浜をきれいにすると気持ちがいい」。
猪飼会長は「次回からは那智浜での清掃はザルなどを使って少しでも砂を減らさないようにしようと思う。若い世代の参加者が増えてくれてうれしい。子どもから大人まで皆さんで町の海をきれいにしていきたい」と語った。
(2021年9月23日付紙面より)
各スポーツ少年団が活動再開 (新宮市 )
新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受けて先月3日から休止していた新宮市の関連施設再開に伴い、市内の各スポーツ少年団は13日から随時練習を始動させている。
新宮保健所管内の感染者発生状況を鑑み、再開決定に至った。今後は感染対策を徹底して運営していく。現在、市スポーツ少年団にはサッカー、野球、バレーボール、ラグビーなど21団体が所属している。
蓬莱体育館では、新宮バドミントンスポーツ少年団(奥田清二代表)が練習を再開。▽うがい▽手指消毒▽換気▽できる限りの密を避ける▽各家庭での検温―などの予防対策を講じ、熱中症を防ぐため、練習中はマスクを着用せず、こまめな水分補給も行っていく。
この日は約30人が参加。全員でランニングした後、ネット際やレシーブを打つ「ノック」「基礎打ち」、試合形式の「ゲーム練習」などに励み、久しぶりの練習に汗を流した。
丸山莉実(れみ)さん(12)は「久々にみんなと会えてうれしい。練習ができない間は家でトレーニングや壁打ちをしていた。しばらく期間が空いていたので、これから少しずつ感覚を取り戻していきたいです」と笑顔を見せた。
奥田代表は「子どもたちの元気そうな姿が見られてよかったです。練習が再開したとはいえ、まだまだコロナの状況は油断できないので、今後も感染対策をしっかりと施していきたい」と話していた。
なお、同日には木戸浦グラウンドや天満球場、テニスコートなど、スポーツ施設を含む那智勝浦町の関連施設も使用を再開した。
(2021年9月15日付紙面より)
10月31日まで、宇久井ビジター (那智勝浦町 )
那智勝浦町の環境省宇久井ビジターセンターで13日から、「宇久井半島のシダ標本展」が始まった。宇久井半島で確認されている65種のシダのうち48種の標本を展示しており、園地内には散策中の来園者に見てもらえるよう12種類のシダのネームプレートも設置している。
シダ植物とは、根・茎・葉の区別があり、維管束(水や養分を運ぶ管)を持ち、種子を作らない植物のことで、コケ植物と種子植物の両方の特徴を持つ。花は咲かず、葉の裏面などから胞子を飛ばして子孫を残す。
展示では正月飾りとして知られるウラジロやコケのような見た目のヒカゲノカズラ、山菜として食されるワラビの他、ヘラシダ、ホシダ、ベニオオイタチシダなど形も大きさもさまざまな標本を展示。これらは今年1月に県立新翔高校の職業体験で同センターを訪れた亀井青空さん、西村悠羽さんが採取したものだという。
半島内で見られるシダの見分け方を記したプリントも配布しており、同センターの浦希世子さんは「少しでもシダに興味を持っていただき、野に出掛けたときの植物観察の楽しみの一つに加えていただければ」と話していた。
(2021年9月15日付紙面より)
紀伊半島大水害10年シンポ (紀宝町 )
紀伊半島大水害10年シンポジウムが11日、オンラインで開催された。2011年の大水害で甚大な被害を受けた三重、和歌山、奈良の3県関係者ら74人が参加し、犠牲者に黙とうをささげた上で、風水害への防災意識向上を図った。
災害対応力向上を図る「紀伊半島大水害10年プロジェクト」の一環。当初は紀宝町で予定していたが、新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、オンラインでの開催に至った。三重県などが主催し、共催した同町からは西田健町長、鮒田自主防災会の東口高士会長が思いを語った。
黙とう後、鈴木英敬知事のビデオメッセージを流し、西田町長は「シンポジウムは皆さまと一緒に紀伊半島大水害を振り返り、当時の対応や大水害から得た教訓を今後も風化させることなく、後世に伝えていく機会にしたい」とあいさつした。
東京大学大学院客員教授で、紀宝町防災行政総合アドバイザーの松尾一郎さんが「大規模風水害を見据えた地域防災の必然性」をテーマに基調講演。「災害は地域で発生するため、地域で危機感を共有して災害に備えることが大切。水害は先を見越して早めの防災対応が重要で、これがタイムライン」と話した。
紀宝町は全国に先駆け、2015年に事前防災行動計画(タイムライン)を策定。パネルディスカッションで西田町長はタイムラインや町民防災会議、防災情報共有システムなど町の防災対策を説明し「今後も大規模災害に備え、タイムライン防災が紀宝町の文化となるよう、充実を図り、災害に強い安全・安心な町づくりに努める」と伝えた。
東口会長は当時の写真を基に「川の水が輪中堤を越えるとの情報があり、住民を避難させた」と大水害を振り返った。
過去の水害を教訓として次世代につなげていくことが求められている今日。実際に災害を経験したからこそ得られる「今」があり、これを風化させないためにも過去を振り返り、認識・危機感を新たにして行動することが大切になる。
(2021年9月15日付紙面より)
ヒマワリを育てることを通じて命の大切さを学び、交通事故の被害者支援へ理解を深める「ひまわりの絆プロジェクト」の輪が広がっている。新宮市の近畿大学附属新宮高校・中学校(池上博基校長)でもこのほど、生徒会メンバーが大切に育てていたヒマワリが、太陽へ向かって大輪の花を咲かせた。
2011年に京都府内で発生した交通事故で亡くなった男児(当時4歳)が生前育てていたヒマワリの種を引き継ぎ、全国で開花させるプロジェクト。交通事故を担当していた警察官の元へ遺族から「私たちの子どもが生きた証しを残したい。このヒマワリがあちらこちらで咲けば、この子もいろんな所へ行けると思う。もう交通事故は嫌です」の言葉とともに種が託されたことを契機に、15年にスタートした。
同校では中学校生徒会(宇惠諒介会長)が中心となって取り組みへ参加。7月初旬に種をまき、水やりには高校生徒会(小屋敷卓真会長)や教職員も協力して成長を見守ってきた。
開花したのは5本。生徒らの背丈ほどに育ったヒマワリの花を眺め、宇惠会長は「取り組みを通じ、交通事故の危険性を伝えたい。僕たちも毎日徒歩や自転車で通学しており、事故はいつでも起こりうるので、気を付けていきたいです」。小屋敷会長は「京都府で発生したような事故が二度と起こらないよう、自分たちも交通ルールを守っていきたい」と話していた。
(2021年9月15日付紙面より)
歌詞作成の羽山美苗さん (那智勝浦町 )
「やさしい朝のあいさつが みんな仲よくたすけあう きょう一日のはじめです 明るい宇久井小学校
みどりの芝の運動場 ちひろの浜の白砂に とんだりはねたり元気です 楽しい宇久井小学校
大きくゆたかな黒潮の 心をうけて育とうと 勉強に仕事にはげみます かがやく宇久井小学校」―。
「まさか自分の歌詞が選ばれるとは思わなかった。今も歌っていただいているのは本当にありがたいことです」。そう話すのは新宮市三輪崎在住の羽山美苗(みなえ)さん(93)だ。那智勝浦町立宇久井小学校で約70年歌い継がれる校歌の歌詞を作った羽山さんに当時の心境や校歌に対する思いを聞いた。
田辺市下屋敷町に生まれた羽山さんは和歌山師範学校を卒業後、父親と同じ教職の道へ進む。幾つかの小学校を経て、20代前半で同校へ赴任。当初は知人や友人がおらず、不安を抱えていたが、当時の中地晴一校長や同僚たちに励まし支えられたという。
羽山さんによると、地域や教師生活に慣れてきた頃のある夏休みに、「教師への宿題」として中地校長から校歌の歌詞制作の話が上がった。同校にはすでに明治時代に作られた校歌はあったが、歌詞が難しく当時は歌われていなかったと話す。
宇久井地域について、詳しくなかった羽山さんは困惑しながらも、夏休み期間中に地域の海や山などを自身の足で歩いて回り、前述の歌詞が完成した。その後、9月の職員会議で提出された歌詞の中から見事、羽山さんのものが選ばれた。
「言葉や意味が難しい校歌じゃなく、子どもたちにとって分かりやすいものを心掛けて作った。私の校歌が当時の文部省に送られた後に、文部省の方が宇久井小へ来られた。歌詞にある運動場などを確認していたのを覚えている」と当時を振り返った。
町立那智中学校で定年退職を迎え、教師としての務めを終えた。その後新宮市の自宅で、書道教室を開く。和歌山県美術家協会に所属し、現在も現役で地域の子どもや大人たちに書道を指導している。
羽山さんは「歌い継がれていることに感謝しています。校歌にも『仲よくたすけあう』とあるように、宇久井小に赴任した時やこれまでも、今も多く方々に支えられて生きている。それを忘れず、今後も感謝していきたい」と笑顔で語った。
(2021年9月1日付紙面より)
長寿命化計画を策定 (新宮市 )
新宮市教育委員会はこのほど、「市学校施設等長寿命化計画」を策定した。子どもや、施設を利用する全ての人々の安心安全の確保を最優先に考え、80年改築を基本に改修周期などの方針を固めた。
全国的な児童生徒数の減少による学校施設などの統廃合が進む。そんな中、市も例外ではなく、現在は小学校5、中学校5、幼稚園1。市教委が所管するスポーツ施設は現在7施設となっている。災害時には避難所としての役割も果たすため、施設の老朽化対策や環境整備は喫緊の課題だ。
千穂・丹鶴小の統合に伴い神倉小が、王子・蓬莱小の統合に伴い王子ヶ浜小が誕生。その際、神倉、王子ヶ浜小ともに校舎の建て直しや増築などが実施された。建設から40年が経過し、経年劣化による雨漏りなどの被害があった緑丘中の体育館も先日、修復工事が完了した。
しかし、城南中に至っては校舎、体育館ともに50年が経過しているほか、光洋中も45年、熊野川中も50年近く経過している。スポーツ施設では、総合体育館、佐野体育館が建築から40年以上がたっている。
同計画は、長寿命化改修を実施し、80年改築を基本とし、改修周期は建築後25年程度で大規模改造、50年程度で長寿命化改修を実施するというもの。
利用者の安心安全の確保を最優先とし、避難施設の位置付けも考慮しながら、ユニバーサルデザインの視点に立った施設造りを目指していくとしている。計画期間は今年7月から2060年までの40年間。なお、市の試算では計画実行で従来(築50年程度で改築を実施する更新)より年間8000万円のコスト縮減につながるという。
一方、児童生徒数についてはどうか。市によると、2020年度の児童生徒数は約1880人。25年後の45年度には半数程度の約920人になると予測されている。
今年2月に実施された市総合教育会議において、田岡実千年市長は「生徒数の減少に伴い、緑丘・城南中学校の2校の統合に向けて検討を」。8月19日の教育民生委員会の場で速水盛康教育長は「どのような学校にしたいかなど、さまざまなことを検討する委員会を本年度中に設置できたら」と発言した。
計画は、学校や施設の統廃合と並行して進めていく必要があるが、施設老朽化も待ったなしの状況。市教委は「子どもたちのために安定した教育環境を整備する必要がある。子どもや施設利用者の安全性や時代性を考慮しながら、どういった施設を残すのかなどを議論していかなければならない」と話している。
(2021年9月1日付紙面より)
古座川町社会福祉協議会へ (JAみくまの )
那智勝浦町天満に本所を置くみくまの農業協同組合(JAみくまの、漆畑繁生代表理事組合長)が8月30日、古座川町社会福祉協議会(会長・西前啓市町長)に介護用ベッド一式6台を寄贈した。
この寄贈は、同組合とJA共済の連名で展開する地域貢献活動の一環。介護・福祉活動として同町社協が必要とする一助を話し合う中で同ベッドが話題となり、その購入代行を同町社協に依頼し現物の到着に合わせて寄贈を申し出た。
この日は漆畑組合長と関係職員2人が西前町長を表敬訪問して目録を贈呈。その後は町社協が代行購入した同ベッドの実物を確かめて説明を受け、寄贈の旨を示すシールを貼り改めて有効活用を願い出た。
目録の贈呈を受け西前町長は「うち(=古座川町)も高齢化率が非常に高く、介護用ベッドは昔から無料貸与している。今は55台あるが51台が稼働している状況で、今回提供いただけたことは本当にありがたい。上手に活用させてもらいたい」と述べて感謝。町社協事務局は現行の無料貸与の仕組みに乗せ、全町規模で希望を受ける中で託された同ベッドも活用していくとしている。
この寄贈の背景には6月実施のJAみくまの第20回通常総代会で経済情勢の変化に対応しうる強固な経営基盤を確立するための拠点再編案が承認され、同町内にある七川店(購買店)と明神支所が次年度に西向支所・西向営農センターへ統合される状況がある。
JAみくまの共済部の井上馨部長によるとサービスの提供自体は統合以降も西向を拠点にして極力不便を掛けることなく続ける方向で準備を進めているが、併せてこれまで明神、七川の拠点を支えてくれた地域への貢献ができないかを考えた末今回の寄贈に至った。この日は田辺市本宮町にある同市社協本宮事業所へも同事業所が必要とする物品の寄贈を申し出たという。
(2021年9月1日付紙面より)
3日から、「スペースポート~天ノ光~」 (尾﨑酒造 )
熊野地方唯一の地酒メーカー、新宮市船町の尾﨑酒造株式会社(尾﨑征朗(いくろう)社長)は、3日(金)から新商品「スペースポート~天ノ光~」の販売を開始する。500㍉㍑で1210円(税込み)。
本州最南端の町・串本町田原で建設が進む、民間初の小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」。
同社は、熊野川の伏流水や地元産「コシヒカリ」を使用するなど、地元「熊野」にこだわった酒造りを続けている、本州最南端の蔵元。
6代目の尾﨑社長は「地元の皆さんにかわいがってもらえるお酒を」と、1880(明治13)年から140年の伝統を守っており、新商品には「大宇宙への清らかな光を求めての思い」を込めた。
宇宙や空をイメージした、青い爽やかなボトルの中身は本醸造酒で、ラベルには「太平洋」から月(宇宙)に向かって打ち上がるロケットをイメージ。気になるお味はボトルと同様「軽くて爽やかな味。癖がなくていろいろな料理に合わせやすい」(森本紘造・製造部長)。
新宮・東牟婁地方の酒屋や土産屋、ホテルの売店などで購入可能とのことで、尾﨑社長は「(ロケットの打ち上げは)うれしいこと。本州最南端の地からの打ち上げに、本州最南端の蔵元から応援したい。(新商品は)幅広く楽しんでいただける一品。若い人にも手に取っていただければ」と話している。
(2021年9月1日付紙面より)