未来を見据えた農業改革とは (新宮市 )
今後、地元の経済を支えるのは“ネギ”かもしれない―。そんな、にわかには信じがたいことがもしも現実になったら?
新宮市木ノ川の道阪耕一さんは、自身が所有する畑で青ネギの栽培を始めた。昨年11月に約15㌃の畑にネギの苗を定植。5月に初収穫を予定している。
「(道阪さんの)ネギの収穫が成功すれば、新宮にとってのイノベーション(新機軸)になるのでは」。“ネギ”に新宮の未来の活路を見いだし、道阪さんと共にネギ畑を見守る井上訓さんはそう話す。そう、全ては「ネギ=イノベーション」のモデルを示すための取り組みなのだ。奈良県五條市の通称「ネギ博士」からの助言を受けつつ、2人は今日もネギ畑と将来の新宮市に思いをはせる。
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新宮市の農業産出額は2億2000万円で、全国順位1557位、県内では30市町村中27位となっている(2016年度産対象)。
強みとなっているのは市の耕種農業の農業産出額全体の50%を占める「米」だが、「米」に焦点を当てるも県内順位は20位にとどまり、また高齢化や後継者不足などの問題から耕作放棄地や休耕田も増え続けている現状にある。
「ネギは休耕田を利用して育てることができる。手間も掛からない上に年間通して寒暖差が小さいこの土地はネギの生産に向いている」。道阪さんと井上さんは声をそろえる。
さらに2人は、ネギ栽培を推進する最大の理由を打ち明ける。「販路が確保できている。われわれはネギを生産するだけ」。
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サクセム株式会社(中里輝茂代表取締役社長、本社=大阪府熊取町)は、紀の川市に工場を置く菓子製造会社だ。
世界の食糧飢餓に苦しむ子どもたちに無償で配布し救援・救済することを目的として備蓄保存パン「ライフブレッド」を開発。先日、新宮市に1000本を寄贈した。
実は洋菓子の製造を始めたのは2014(平成26)年から。08(平成20)年に大阪府堺市で青果販売業として創業したのが始まりだ。
現在、中国産が販売数のほとんどを占めるカットネギ。同社は国産カットネギ市場を構築しようと、16(平成28)年に自社農場で青ネギの栽培を開始。和歌山県全域で地元農家、JAなどの協力のもと、青ネギの委託栽培とカット用青ネギの出荷を始めた。
同社と縁のあった井上さんは、道阪さんと共に国内におけるカットネギの需要に着目。木ノ川や佐野、蜂伏周辺の土壌や気候は「ネギの栽培にうってつけ」と、ネギ博士のお墨付きだ。
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少子高齢化、耕作放棄地や休耕田の増加などの「弱み」を「強み」に―。道阪さんと井上さんはネギを通した「持続可能な農業」の形を模索する。いつの日か生産したネギをカットするプラント工場の建設も視野に入れている。道阪さんは初めてネギを作りたい人や休耕田などを借りたい人に対して相談にも乗っていくという。
「ネギの生産地となれば雇用も生まれる。若い人が農業を職業としてやっていける道筋をつくりたい。ネギを通して地元に誇りを持つ子どもたちが増えてくれる未来を創ることができたら」。若いながらも青々と畑を彩るネギを見つめながら、道阪さんと井上さんは笑顔で語った。
(2021年2月21日付紙面より)
津村雅稔さんが講演 (太地町 )
新宮・東牟婁圏域自立支援協議会は19日、太地町の多目的センターで「LGBTQと人権について考えよう『多様な性を知ろう~和歌山で自分らしく生きる~』」を開催した。NPO法人「チーム紀伊水道」副理事長の津村雅稔さんが講師を務め、自身の体験を踏まえながらセクシュアルマイノリティーや当事者の考え方、取り巻く環境などを講演。会場で17人、ウェブで60人が参加した。
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和歌山県を中心に活動する性的少数者(セクシュアルマイノリティー)と、セクシュアルマイノリティーを理解したいメンバーで構成。セクシュアルマイノリティーへの理解を深めるために和歌山市や橋本市、田辺市を主に、県内各地域で「自分らしさを出せる場」を提供すべく交流会を開催している。
そのほか、人権啓発イベントへのブース出展や講演会、学校や行政、企業、団体への講師派遣、会員制交流サイト(SNS)やホームページの運営、性に関する相談をメールで受け付けている。
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幼い頃に男性が好きであることに気付いた津村さん。周囲との違いに戸惑い、相談相手もおらず、事実を打ち明けられない日々を過ごしていた。
その後、自身以外のセクシュアルマイノリティーの人々と出会い、自分らしく生きることを決意。友人や家族にカミングアウトし、先進地との差に翻弄(ほんろう)されながらも本当の自分を受け止める作業を続け、「自分自身が学び続けること」が自身の人生だと思えるようになったという。
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講演会で津村さんは、性(セクシュアリティー)は男性と女性の二つだけではないと指摘し、性の在り方は人の数だけ多様であると述べ、「生物学的性」(身体の性)「性自認」(自認している性の在り方)「社会的性」(服装や言葉遣い、生活スタイルなど表現する性)「性的指向」(恋愛感情や性的な欲求を持つ相手)の四つを構成要素として上げた。
レズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性別越境者)の頭文字を取った「LGBT」に触れ、この四つがセクシュアルマイノリティーの全てではないと主張。四つ以外の「Q」というセクシュアリティーが存在するとし、セクシュアリティーが揺れ動いている「クエスチョニング」と、あらゆるセクシュアルマイノリティーを包括的に指す「クィア」があると解説した。
津村さんはセクシュアルマイノリティーの国内統計調査では3~8%であると報告。「あなたの町にもいることを知ってほしい。『いない、知らん、なにもしない』と言う人もいるが、言わせないとする社会があるのは事実」と課題を挙げた。
続いて▽トランスジェンダーの多様性▽性同一性障害者や関する法律▽当事者を傷つける言葉や差別用語▽本人の意志で明らかにするカミングアウト▽無断で第三者に暴露するアウティング▽それぞれのセクシュアリティーを表し、誰もが共通して使える「SOGIE」(ソジ)について▽同性婚▽証明書を発行することで、社会的サービスを受けられる同性パートナーシップ宣誓証明制度―などの詳細を話した。
津村さんは「見た目などで性を決めつけず、いろんな情報を知ってほしい。話しを聴いて、自分らしさを大切にしてほしい。嫌なことにはノーを言い、ノーと言われたら諦めることも大切です」。
今後については「積み重ねていくことが大事。たくさんの選択肢を持っていただきたい」と締めくくった。
(2021年2月21日付紙面より)
ジュニア駅伝に向け壮行会 (那智勝浦町 )
21日(日)に和歌山市内で開催される「第20回和歌山県市町村対抗ジュニア駅伝競走大会」を前に19日、那智勝浦町選手団が同町役場で壮行会を開いた。
大会は、各出場チームの選手10人が午前11時に紀三井寺公園陸上競技場をスタート。仲間との絆をたすきでつなぎ、県庁前をゴールとする10区間21・1㌔のコースで競い合う。
壮行会では、団長を務める堀順一郎町長が練習を重ねてきた選手たちに「30人の選手の皆さんはそれぞれの学年、学校、何より那智勝浦町の代表。自信と誇りを持ってください。昨年は過去最高の順位でした。今年はその記録を塗り替えるような走りをしてもらいたい。健康や体調管理などに尽力いただいた監督やコーチ、各学校の先生、保護者の方々に感謝の気持ちを持って最後までたすきをつないで頑張ってください」と激励した。
寺本尚史監督は「コロナの影響で例年参加している駅伝やマラソン大会、合同練習の中止など、困難な状況の中、しっかりと頑張ってくれました。皆さんにお願いした『あいさつ』『自分で考えてベストを尽くす』『休憩』も積み重ねてくれた。みんなの心と働きが一つになったとき、素晴らしい力を発揮することができます。試合当日は普段の走りをしましょう」とあいさつ。
元マラソン日本記録保持者で、カネボウ化粧品陸上競技部監督を務める高岡寿成さんからメッセージが届いたことを紹介し「一人で走っていると、つらさに我慢ができなくなるが、みんなと一緒に工夫して練習したことを思い出し走り切ってほしいです。諦めずに頑張ってください」と読み上げ士気を高めた。
選手団代表の速水健君(那智中3年)は「選手一同はチームワークを大切にし、一本のたすきを全員でつないで精いっぱい走ることを誓います」と決意を表明していた。
大会の模様は動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」でライブ放送され、テレビ和歌山でも午後7時54分から録画放映される。
(2021年2月21日付紙面より)
「カフェいっぷく亭」で (紀宝町 )
毎月1回、日頃の思いを話し合い、交流を深める「カフェいっぷく亭」が17日、紀宝町の鵜殿地域交流センターであった。今回は町みらい健康課の保健師2人が訪問し、新型コロナウイルスの感染防止対策や日常生活で気を付けたいポイントなどを紹介した。
参加者、スタッフ計13人を前に「新型コロナウイルス感染症を防ごう」をテーマに話を進めた。ウイルスは粘膜などの細胞に付着して増えるが、健康な皮膚に入り込むことができず表面に付着するだけのため、手洗いで流すことができると説明した。
感染防止対策として▽手洗い▽マスク着用▽せきエチケット▽人混みを避ける▽定期的に換気する―を挙げた。日常生活では生活リズムを保ち、近所付き合いやサロンなど今まで通り交流を続けることや、散歩、運動を勧めた。
手洗いは①流水でよく手をぬらし石けんを付けて手のひらをよくこする②手の甲を伸ばすようにこする③指先、爪の間を念入りにこする④指の間を洗う⑤親指と手のひらをねじり洗いする⑥手首も忘れず洗う―と手順を紹介。参加者は「手洗いの歌」の歌詞に合わせて正しい手の洗い方を実践した。
(2021年2月21日付紙面より)
県産農産物利用拡大に向け (太地町 )
学校給食へ地場産食材を供給する取り組みが太地町(太地町学校給食推進協議会)でスタートした。17日には町立太地小・中学校で、新宮市産の小松菜などが給食の献立に登場。児童・生徒らは地元産の野菜や魚に舌鼓を打った。
和歌山県では、学校給食献立の早期作成や入札方式導入の働き掛けにより「必ず作ります・売ります・買いますシステム」を確立することで県産野菜などの利用拡大を推進。市町村協議会で学校給食関係者が「購入希望リスト」、生産者が「供給可能リスト」を作成し需要と供給のマッチングを図る。
取り組みは2019(令和元)年に広川町でスタートし、すさみ町、新宮市に続いて県内4地域目。新宮広域圏公設地方卸売市場を核として実施する新宮・東牟婁地域では2地域目となる。
取り組みを進めるに当たり、太地町では1月に町教育委員会、太地小・中学校、新宮周辺地場産青果物対策協議会、県東牟婁振興局農業水産振興課で構成する「太地町学校給食推進協議会」を立ち上げた。太地小・中学校では今後、年に3回ほど地元農水産物を使用した給食が提供される見通しだ。
この日、給食に登場したのは新宮市産小松菜を使った三色ごまあえをはじめ、那智勝浦町太田産の米で炊いたご飯、県産サバのカレー焼き、けんちん煮、牛乳。
太地小学校(宮本礼子校長)では、教諭から「今日の給食には和歌山県の食材がたくさん使われています」と説明を受けた児童たちが、大きな口を開けて地元の味を堪能。長尾彩羽さん(2年)は「野菜も魚もおいしい」と笑顔で話した。
公設市場の出前授業で学びを深めるほか、実際に小松菜や大根を植えて収穫するなどして、普段から野菜に触れる機会を設けている同小学校。取り組みを通して野菜に抵抗がなくなった児童も多いという。
宮本校長は「今日の給食は、いつも以上に食が進んでいるように思います」と話し、児童の給食を見守っていた。
(2021年2月19日付紙面より)
三輪崎小3年生が学習
新宮市立三輪崎小学校(嶋田雅昭校長、児童371人)で16日、熊野学研究委員会や市文化財保護審議会の委員を務める中瀬古友夫さんによる講話があり、3年生60人が昔の市内の風景や人々の暮らしを学んだ。
3年生の社会科では通年で地域学習に取り組んでいるが、教科書の例として紹介されている都市が他府県のため、児童が自身の住む市についてより具体的にイメージできるようにと講話を依頼した。
中瀬古さんは、市の昔と現在の写真を並べ、そこに写った人々の生活を解説。佐野駅近くの踏切を蒸気機関車が走る様子や、三輪崎にある久嶋(孔島)近くに停泊した客船から小舟で運ばれた乗客たちが背負われながら浜に上がる様子を語った。
三輪崎小学校について、「オーストラリアに出稼ぎに行った潜水夫らの寄付によって、和歌山県で初の鉄筋コンクリート校舎として1927(昭和2)年に建設された」と話し、校舎の完成記念として開かれた運動会の写真も見せた。
児童は「全然違う」「山の形は一緒だから同じ場所なのかな」と話しながら写真を見比べ、普段何気なく見ている場所に秘められた歴史に興味を引かれた様子だった。
(2021年2月19日付紙面より)
熊野那智大社で「祈年祭」 ( )
那智勝浦町の熊野那智大社(男成洋三宮司)で17日、「祈年祭」が営まれた。同大社責任役員の塩﨑巍朗(たかお)さんや献穀講員らが参列し、実りへの感謝と五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。
「としごいのまつり」ともいい、古くから定められた国家祭祀(さいし)が起源。旧暦2月4日に行われていたが1873(明治6)年の改暦後は17日となった。
11月の新嘗祭(にいなめさい)と対になる祭りで、日本列島各地で神々に食べ物やささげ物を奉り、豊かな実りに感謝し人々の幸せを祈る祭祀・儀礼が行われている。
同大社では、男成宮司が神饌(しんせん)が供えられた拝殿で祝詞を奏上。新型コロナウイルスの早期終息も祈願した。巫女(みこ)が神楽「浦安の舞」を奉納し、参列者らが玉串をささげ、春の訪れや農作物の豊かな実りに感謝した。
神事を終え、男成宮司は「那智勝浦町では幸いにも新型コロナは拡大していないが、地域経済は厳しい状況にある」と現状に触れ、同日から医療従事者を対象に始まったワクチン接種に対して「大きな期待をしている」と述べあいさつとした。
その後、別宮「飛瀧(ひろう)神社」でも同様に神事が斎行された。
(2021年2月19日付紙面より)
海ノ民話のまちプロジェクト実行委員会が18日、稲村(とうそん)亭の民話を原作としたアニメーション作品「お屋敷になったクジラ」の完成を串本町へ報告した。
同実行委員会は、次代を担う子どもへ海を語り継ぐ日本財団「海と日本プロジェクト」の一環で2018(平成30)年度に発足。以降毎年「海ノ民話のまち」を認定していて、本年度は同町など7自治体を選定し、同町には昨年7月実施の認定証贈呈時に民話アニメの制作と関係フィールドワークへの協力を求めていた。
「お屋敷になったクジラ」は町内にある古民家・稲村亭に伝わる民話の一つ「恩返しの家」を原作とした上映時間5分強の短編作品。同実行委の沼田心之介認定委員長が取締役を務める制作会社「株式会社トマソン」が同町・海ノ民話のまち実行委員会事務局の吉川公一さん(テレビ和歌山東京支社長)の仲介を得ながら制作を進めた。
収束しない新型コロナウイルス感染症の情勢を考慮し、東京を拠点とする同プロジェクト実行委員会と同町をウェブ会議システム「ZOOM(ズーム)」でつないで完成報告の場を整えた。東京からは同実行委員会の沼田委員長と柴田英知さんや吉川支社長、同町からは田嶋勝正町長や稲村亭を預かる株式会社一樹の蔭の博多敏希代表取締役、制作を支援した南紀串本観光協会の宇井晋介事務局長が出席。作品を鑑賞して、串本儀平が作品に登場するクジラと巨木をモチーフにした和菓子の取り扱いを目指し、同協会が作品視聴QRコード付きPRシールを作成配布するなど、今後の利活用を話し合った。
フィールドワーク(上映会込み)は26日(金)に串本西小学校4~6年生を対象に実施する予定。報告を受けた田嶋町長は「本を読む機会が少ない中、5分間にまとめたアニメを見るのはいいことだと思う。串本は捕鯨で栄えたまちで、地震や飢饉(ききん)もうたわれたこの民話から歴史を知り、次の世代へ受け継いでくれれば」と展望を期待した。
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■「お屋敷になったクジラ」視聴方法
作品「お屋敷になったクジラ」は先行して同協会の公式動画チャンネル「くしもと珍魚ちゃんねる」で同日午後1時から公開を開始。同チャンネルは同協会公式ホームページにあるリンクや前述したコードを使って開くこともできる。
同プロジェクト実行委員会と同町の架け橋となっている株式会社テレビ和歌山は、一連の様子も含めて番組を制作し作品と合わせて3月中の放送を目指すほか、最寄りの道の駅へも上映の相談をする予定という。
(2021年2月19日付紙面より)
国内で約100年ぶりに新種と確認された「クマノザクラ」の利活用や保全活動を目指す「日本クマノザクラの会」が発足した。個人、団体を含む76人の会員が連携して和歌山、三重、奈良の3県にまたがる自生地で広域的な活動に取り組む。正確なクマノザクラの情報を発信するため、ホームページ(kumanozakura.jp)を開設した。3月上旬にはリーフレットを作製する予定だ。
クマノザクラはバラ科サクラ属の樹木で、2018(平成30)年に新しく公表された野生種。紀伊半島南部の3県に分布し、早咲きで花が美しいことから観賞用の利用が期待されている。
発見、命名した森林総合研究所多摩森林科学園チーム長の勝木俊雄さんによると、ほとんどが山林に自生しており、花びらはピンク色。海岸部、山間部で違いはあるものの、ソメイヨシノより少し早い2月下旬から3月中下旬に開花する。
14日には、紀宝町の町福祉センターで設立総会があり、会長に勝木さん、副会長にNPO熊野さくらの会理事長の田尾友児さんを選出した。
リモートを含む31人が出席。冒頭、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使って東京から参加した勝木さんが「クマノザクラの魅力は美しさにある。すでに観光目的の植栽が始まっており、地域の経済発展に生かすことができる。今後、会員の皆さんと一緒に活動を考えていきたい」とあいさつした。
来賓の西田健・紀宝町長は「皆さんと連携して多くの方々にクマノザクラの良さを知ってもらい、名所として地域の起爆剤になることを願っている」と祝辞を述べた。
議事では役員を選出したほか、会則、事業計画案、予算案を審議し、採択した。本年度はNPO法人化の準備・手続きや、新型コロナウイルスの感染状況に応じて観察会、講習会、講座の開催などを計画した。クマノザクラの鉢植えを貸し出し、その良さもアピールする。
(2021年2月16日付紙面より)
ロケット事業「宇宙ウイーク」 (串本町 )
串本町が12日から14日までの3日間、役場古座分庁舎などでロケット事業「宇宙ウイーク」を実施した。
ロケットによる町民総参加の振興の第一段階「ロケットを自分事にする」を担う同事業は本年度、観光庁「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業の適用を受けて展開。「宇宙ウイーク」は先んじて取り組んだ町民向けロケットワークショップ(WS)に続く公開行事で、12日は関係者向けのビジネスデー、13、14日は町民向けの一般公開日としてさまざまな企画を展開した。
12日午前はオープニングセレモニーとして、町独自作成のロケットロゴマーク2種類を発表し、漫画「宇宙兄弟」の作者・小山宙哉さんの公式ファンクラブ・コヤチュー部プレミアムが応援の意を込めて単行本全巻(現38巻)3セットや小山さんのサイン入り「宇宙兄弟×串本町コラボレーションポスター」を、小山さんのビデオメッセージを添えて贈呈した。
午後は同事業の委託を受けるUSPジャパンの榎坂伸也さんをファシリテーターとしてトークショーを実施。ファムトリップで来町中のアメリカ人ジャーナリストのロブ・シュワルツさん、小山さんの代理で株式会社コルクの小室元気さん、地元を代表して役場企画課の濵地弘貴課長と南紀串本観光協会の宇井晋介事務局長がパネラーとして登壇した。
テーマは「2025年の串本町の姿」。濵地さんは小型ロケット発射場誘致の経緯、宇井さんは観光需要の変遷を踏まえてどのような活用を見据えているかを語り、外部からの視点でシュワルツさんは訪日外国人観光客対応のさらなる充実の必要性、小室さんは宇宙兄弟関係グッズの売れ筋と作成時の視点を紹介して地元の振興の挑戦を後押しした。
榎坂さんは、2025年は遠くではなく少し未来の話であり、このショーを4年後の串本をどうしたいかを考えるきっかけにすることを呼び掛け。最後に濵地さんは「必ずや皆さんの活性化と笑顔につなげることを約束する」と誓い締めくくった。その後は南紀串本観光協会ガイド部会による宇宙ガイドWSもあった。
12日と13日は午後6時から田原で建設中の小型ロケット発射場の射点そばからサーチライトを照射。一般公開日は午前10時~午後3時に、入場無料で随時来場を受け付けた。翌15日以降は町立小中学校を対象にした見学の受け入れもし、さらに公開の裾野を広げている。同課によると、寄贈の単行本3セットのうち1セットは来夏の新庁舎移転以降に宇宙振興拠点となる同分庁舎、残り2セットは同町図書館で所蔵する。別途、町立小中学校の全図書室に単行本を入れて児童生徒が手軽に読める状況を目指している(実現は来夏の見込み)ことも同ショーの中で明かした。
(2021年2月16日付紙面より)
大辺路コンシェルジュ (那智勝浦町 )
世界遺産・熊野古道「大辺路」活性協議会(会長=堀順一郎・那智勝浦町長)は12、13、14日の3日間、串本町と那智勝浦町間の14駅に「大辺路コンシェルジュ」を配置し、JRの利用客などに熊野古道「大辺路」や地域の魅力を発信した。
大辺路コンシェルジュは大辺路を愛する地元ボランティアの「なちかつ古道を守る会」(以後、守る会)「熊野那智ガイドの会」(以後、ガイドの会)、「大辺路刈り開き隊」の会員がJR和深~紀伊田原駅、紀伊浦神~那智駅に滞在し、熊野古道「大辺路」に興味のある人やウオークを楽しみに来た人々を迎えるもの。
JRの利用促進に務めるとともに、「大辺路アクセス・ルートマップ」や「お散歩まっぷ」を用いて交流しながら、古道と地域の魅力を伝えることが目的だという。
那智勝浦町ではJR浦神、下里、湯川駅を守る会が、紀伊勝浦、紀伊天満、那智駅はガイドの会が担当した。
最終日の14日、那智駅ではガイドの会の宇保英生さんが駅利用者などに声掛けをし、資料などを配布していた。宇保さんは「興味のない方にも大辺路を知っていただいた。那智浜や補陀洛山寺なども案内しました」。
山東健会長は「大辺路を知らない方も多かったが良い反応もあった。この機会を通じて今後は大辺路の魅力を広げていきたい」と話した。
湯川駅では守る会のメンバー5人が周辺の案内や見送りに加え、電車が到着するまでの空き時間を利用してトイレ清掃や駅ホーム、駐車場などのごみ拾い、花壇整備にも取り組んだ。
小松隆幸さんは「訪れた方が気持ち良く過ごしていただけることが大事。また来たいと言ってくれた人も多かった」。
太田耕二代表は「今回は仕方ないが、夏休み時期ならもっと反響があったと思う。このモデルを今後、行政がどうやって引き継いでいくかが課題では」と語った。
同協議会のプロジェクトマネージャーの齊藤滋さんは開催時期や新型コロナウイルスの影響から催しへの参加者数は想定より少なかったと説明。
しかし、運営に協力した各団体や参加者、通勤・通学する地元住民らの、大辺路と周辺地域への魅力再認識や意識の向上、JRの利用促進が大きな成果だと述べた。
齋藤さんは「参加団体の皆さまには感謝しています。アクセス・ルートマップや各お散歩まっぷを集めたマップ集も成果物として残る。継続していく基盤はできたと思う」と語った。
(2021年2月16日付紙面より)
5児童館でチャレラン大会 (新宮市 )
新宮市の中央、くろしお、下田、橋本、浮島の5児童館で13日、チャレンジランキング大会が開かれ、子どもたちが「紙ひこうきゴルフ」と「文字探し」に挑戦した。
チャレランとは、子どもたちがさまざまなゲームに挑戦し、記録やランキングを競う活動。例年は児童が1カ所に集まって開催するが、今年は新型コロナウイルス感染症対策のため5児童館に分かれて同じゲームをし、20日(土)に総合順位の発表と表彰を行う。
今回の競技は、紙飛行機を5㍍先の地点に向けて飛ばして近さを競う「紙ひこうきゴルフ」と、400文字の中にある「い」の字を30秒以内に何個見つけられるかを競う「文字探し」の二つ。
床や多目的トイレ、LED照明など内部の改装工事を終えて9日から開館した浮島児童館では、近隣の児童5人が参加。真っすぐに飛ばない飛行機に一喜一憂し、悔しがる様子も見られた。この日は同館で30年以上続く高田優子さんによる料理教室もあり、児童6人がクリームチューを作って持ち帰った。
両方に参加した前山百花さん(王子ヶ浜小3年)は「浮島児童館には料理やバドミントン、茶道、習字などの習い事でよく来ます。改装して床などがきれいになった。紙ひこうきゴルフでは、2位か3位になれたらいいな」と話していた。
(2021年2月16日付紙面より)
森の再生を考える会が植樹 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の住民団体「森の再生を考える会」(新垣有慶会長)は7日、同町湯川の熊野古道沿いで植樹会を開き、ヤマザクラなど26本を植樹した。和歌山県の「令和2年度未来を彩る花の郷づくり事業」を活用した。
同会は熊野古道の一部であるゆかし潟周辺の昔の景観を再現し、古道を散策する来町者に楽しんでもらうことを目的に活動している。昨年には緑の募金事業を活用し、同町湯川のゆかし潟北側側道沿いにヤマザクラ21本の植樹を行った。
この日は▽なちかつ古道を守る会▽南紀くろしお商工会▽南紀くろしお商工会西部支部▽町観光企画課▽二河公民館▽虹の会▽東牟婁振興局▽くまの里山▽NPO三つの森▽ふるさと共会▽住民▽山下造園―など約50人が参加した。
堀順一郎町長は「当町は自然環境に優しい取り組みを行うため、町民の皆さまに生活を見直していただくきっかけになればと思い、ゼロカーボンシティ宣言をした。ぜひ皆さまとたくさんの桜を植えていきたい」。
濵﨑信雅湯川区長は「今日植樹する苗木が桜の名所となって、熊野古道を散策する皆さまの楽しみになればうれしい」とあいさつした。
参加者は3班に分かれ、それぞれの植樹場所へ移動。スコップなどで穴を掘り、肥料を入れるなどして苗を植えた。獣害対策ネットや倒木防止用の杭を打ち込むなど協力しながら作業に汗を流した。
数年前から同会に参加し助言なども行う熊野自然保護連絡協議会の瀧野秀二副会長は「山桜は常緑樹に負けてしまう恐れもあり、ダニを運ぶシカなどの食害もあるので注意が必要。手を掛けていくことで将来は多くのきれいな花が咲き、子どもたちが楽しめる場所になるはず」と話した。
新垣会長は「元々この周辺は桜があったが、朽ちてしまった。熊野古道周辺に再度、桜を植えることで景観を美しくしたい。先では桜を楽しむための会も作ることができれば」と語った。
(2021年2月10日付紙面より)
西向の成就寺で防火訓練 (串本町 )
串本町西向にある薬王山成就寺(大崎實宗住職)で8日、防火訓練があり串本町消防本部古座消防署とともに出火時の初動の在り方を実践しながら確かめるなどした。
第67回文化財防火デーの趣旨に基づく取り組み。旧古座町域は同寺と古座にある佛光山善照寺が隔年で同訓練をしていて、西暦奇数年は成就寺の巡りに当たる。
同寺には国指定重要文化財「成就寺の芦雪(ろせつ)画(方丈障壁画45面)」を所蔵しているが、44面は県立博物館へ寄託済み。昨年7月に残る1面を修復のため搬出し後に県立博物館へ寄託するため同文化財は堂内に残っていないが、守るべきは同文化財を含む寺宝全般であり、これらを火災から守るため同訓練に臨むこととした。
この日は同寺の大崎住職や檀家らと同署の職員、合わせて20人が参加。庫裏から出火し初期消火に失敗したという想定で同訓練を始め、大崎住職は人命最優先の観点で堂内に火事を伝え参拝者が急ぎ寺門そばまで避難した。119番通報をして消防の到着を待つ間、駆け付けた総代らが手分けして本堂の寺宝(同日はその模擬品を使用)を寺門の外へ持ち出し。到着した職員は境内へホースを引き込み、本堂屋根に放水するところまで実践した。
ホースは延長途中で二股分岐をはさみ、今回は実践を省略したが残る一口からも放水できる状態とした。同署による講評後、総代から守るべき文化財がもうない点で訓練実施の意図を確かめる質問があり、大崎住職は数ある寺宝の中でも本尊と過去帳は絶対に守らなければならないという思いを伝えて引き続きの協力を求めた。
(2021年2月10日付紙面より)
新宮高校の教育現場で
和歌山県教育委員会は現在、県内全ての全日制および定時制県立高校に1万9239台のタブレット型パソコン(PC)端末「Surface Go 2」の導入を進めている。新宮市の県立新宮高校(前田成穂校長、生徒547人)にも既にPC端末や高速大容量ネットワーク環境(校内LAN)が整備され、積極的に情報通信技術(ICT)を活用した授業づくりが行われている。
政府は現在、義務教育を受ける全ての小・中学生に1人1台の学習用タブレットPCと校内LANを整備する「GIGAスクール構想」を推進している。高校生は対象外だが、低所得世帯の生徒には端末貸与などの支援を行う方針で、必要な費用を本年度の第3次補正予算案に計上した。一方、和歌山県を含む全国11県は、独自に公立高校の1人1台の端末整備を進めており、本年度内にも整備を終える見通しだ。
新宮高校では、昨年12月中旬から生徒にPC端末を配布した。インターネット接続や機器の不具合はおおむね1週間で終息。当初はPCを使う授業の時間のみ端末保管室から持ち出す形を取っていたが、現在では科目数の増加により一日中端末を貸し出すこともあるという。
コミュニケーション英語の岡野恵子教諭は「もともとパワーポイントで授業をしていたこともあり、現在では黒板に板書をすることはほとんどない」と語り、「PC端末の強みはリスニング。教壇にオーディオを置いて音声を流すのではなく、自分の聞きたいところで巻き戻したり、繰り返したりできる」と話す。
体育の創作ダンスでは、グループごとにはやりのK―POPミュージックなどを流し、動画を見ながら練習をしている。丹羽泰一郎教諭は「動画のスロー再生など、生徒から新しい機能を教えてもらうこともある。球技のシュートやランニングフォームを動画で見せることで、生徒の理解も深まるのでは」。
地理の授業では、ルワンダ内戦やチェチェン共和国問題、北アイルランド紛争といった世界の民族紛争の調べ学習に端末を使用。雨郡義和教諭は「自分で調べた内容を共有したり、発表用のスライドで使う画像を探したりするときには便利だが、差別や偏見を含む情報へのリテラシーも必要になる」と課題を述べた。
大きな抵抗感なくPC端末を使った授業スタイルが定着する一方、有害情報への対応や、いかに生徒の学力向上へつなげていくかが課題として浮かび上がる。今後も各校の取り組みに注視が必要だ。
(2021年2月10日付紙面より)
ワクチン事業盛り込んだ補正予算を可決 (新宮市議会 )
新宮市議会(久保智敬議長、15人)は9日、臨時会を開き、新型コロナウイルスワクチン接種推進事業に係る予算を盛り込んだ「令和2年度新宮市一般会計補正予算(第9号)」を審議。全会一致で可決した。
既存システム改修費用、クーポン券印刷および郵送料、ワクチン接種委託料などワクチン接種に関する予算補正を行い、歳入歳出予算の総額に1355万円を追加し、歳入歳出予算の総額を236億3411万6000円とするもの。
審議に当たり、田岡実千年市長が「10都府県で緊急事態宣言が延長となるなどまだまだ収束の兆しは見えてこないが、間もなく開始されるワクチン接種に大きく期待している」とあいさつ。
国の指示の下、市町村において実施するワクチン接種事業に対して「最優先事項であると考え、迅速かつ的確に実施するため先月に新型コロナワクチン接種推進室を設置した。さらに関係課長などで構成する『新宮市コロナワクチン接種推進連絡会』を設置し、全力で進めていきたい」と決意を新たにした。
県が主体となり3月から医療従事者などに優先接種される新型コロナワクチン。ワクチンを保存する超低温冷凍庫は基本型接種施設である市医療センターに設置され、現在のところは市医療センターや連携型接種施設である新宮病院と岩崎病院、県立なぎ看護学校体育館などでの接種を予定している。
対象者は市医療センターや市内医療機関の従事者や消防の救急隊員など約1000人。接種は任意で、新宮保健所は対象者のうち7割程度の接種を見込んでいるという。
高齢者や高齢者施設などの従事者、基礎疾患を有する人、それ以外の市民への接種については、国から3、4、6月に1台ずつ超低温冷凍庫が提供される予定。
接種には自治体が発送するクーポンを受け取り電話などで予約する必要がある。当局は3月中旬から下旬にかけてクーポンと案内を送り、4月から集団接種を先行して進めていく見通しであるとした。
(2021年2月10日付紙面より)