海亀を守る会がウミガメ放流 (新宮市王子ヶ浜 )
ウミガメの保護活動を展開する「紀伊半島の海亀を守る会」(榎本晴光会長、環境ファースト連合会員)の会員4人は26日、新宮市の王子ヶ浜で14匹のアカウミガメを放流した。榎本会長は「今年は想像通りふ化率が低かったが少しでもふ化してくれて良かった」と総括した。
同浜は絶滅危惧種・アカウミガメが訪れる世界でも数少ない海岸の一つ。同会は、波浪流失や小動物の捕食被害からアカウミガメの卵を守るための保護活動を行っている。卵は海岸に隣接するふ化場に移し、ふ化した子ガメは秋ごろ、同会や関係者、近隣住民らの手によって海に戻される。
アカウミガメの上陸・産卵シーズンは5月中旬から8月半ばごろまで。1回の産卵で平均110~120個の卵を産み、60~80日でふ化する。
同浜では、例年より早めとなった5月20日に今期初上陸および産卵が確認。会員らは同浜の大規模清掃活動などを通してウミガメの上陸に備えたが、初上陸以降、上陸はあったものの産卵は確認されなかった。
初産卵で発見された卵は98個。うち、15匹がふ化したが1匹が死んだ。榎本会長によると、早い時期に産卵が見られた場合、砂の温度が低いなどの理由からふ化率は低いという。さらに、今年は産卵からふ化までに約90日を要した。
会員らは、7㌢ほどに成長したウミガメを波打ち際で放流。榎本会長は「今年は天候不順などが影響して上陸も産卵も少なかった。来年に期待したい」と思いを語った。
(2021年9月28日付紙面より)
中村朱美さんが講演 (新宮市 )
新宮市井の沢の新宮商工会議所で25日、同会議所が主催する繁盛店づくり推進事業「逆境に負けない強い中小企業の在り方―withコロナafterコロナの時代に向けて―」があり、㈱minitts代表取締役の中村朱美さんが講話した。
中村さんは京都府亀岡市生まれ。専門学校の職員として勤務後、飲食事業や不動産事業を行う同社を設立。「1日100食」をコンセプトにおいしいものを手軽な値段で食べられる「佰食屋(ひゃくしょくや)」を行列のできる人気店へと成長させた。利用客や従業員、そして環境にも優しい経営の実現により、第32回人間力大賞農林水産大臣奨励賞、ForbesJAPANウーマンオブザイヤー2019大賞などを受賞している。
100食という「制約」におけるメリットについて、中村さんは「毎日同じ量を出すのでどれだけ発注するかを考える必要もない。フードロスにつながり従業員の労働時間削減にもつながる」。地元食材業者の安定供給にも寄与できるとした。「100食限定」が生む希少価値に加えて原価率を上げ、宣伝広告費を削減した分を商品力アップに注いでいく経営術を紹介した。
コロナ後を見越した「真の働き方改革」は「従業員が自己決定権を持つこと」とし、同店では▽出勤・退勤時間、それに伴う基本給を自分で選べる▽上司や自己評価だけではなく同僚や部下、客の口コミなど、関わる全ての人からの評価が反映される360度評価制度―を組み合わせることでモチベーションが維持されていると説明。
有給休暇が自由に管理・取得できることに伴う人手不足対策として、常に人員を多く採用していると述べ「労働力が多いことで毎日80%の実力で労働をこなすことができる」と利点を話した。
新型コロナウイルスが全国的に広がりを見せ始めた昨年、中村さんは緊急事態宣言発出前に2店舗の閉鎖を決意。
そんな逆境のさなか、コロナに対する心理的不安が広がる中において、医療従事者への支援のためのコロナ対策や食中毒対策、店舗の行動指針などを会員制交流サイト(SNS)で発表。
新型コロナの次の波を見据え商品開発を行ったほか、年末年始や卒業シーズンにおける新しいテークアウトの在り方を発信するなどして危機を乗り越えたことに対し、中村さんは「当たり前のことを誰よりも早く、たくさんやることが必要なのでは」と提案した。
中村さんは、2店舗の閉鎖を決定した際、閉鎖店舗から出た計4㌧のごみを夫婦2人で処理した経験から「人を救うのは筋力」「経験が災害対応につながるのでは」と思い立って企画した、防災と筋力を掛け合わせた新事業「防災筋力」を紹介。
経営のためには「会社」「働く人」「客」「仕入れ先」「環境」の一つも欠けてはいけないとし「AI(人工知能)、テクノロジーは愛を込めることはできない。事業に愛を込めるのが大事」と呼び掛けた。
(2021年9月28日付紙面より)
旧役場本庁舎内で実動訓練 (串本町消防本部 )
串本町消防本部(寺島正彦消防長)の串本消防署(井本茂署長)が17日と24日、旧役場本庁舎を用いて実動訓練に取り組んだ。24日は第2警防班が資器材使用訓練を実施。日頃培っている技術を運用して救助の支障を乗り越える流れを実際の施設を用いて経験した。
同本庁舎は8日から解体工事の工期に入り、10月から作業が本格化する予定。現状、内部で実動に近い想定訓練が実施可能だと判断し、17日に第1、24日に第2の各警防班がそれぞれに立てた訓練計画に基づいて臨んだ。
第2警防班は倒壊建造物を想定し、エンジンカッターやドリルなどを用いて救助ルートを妨げる支障を取り除く手順を実践。当日は11人組で行動し、鉄扉や防火扉をエンジンカッターで切り開き鉄筋コンクリート製の壁をドリルで貫通するといった課題に対しどのような手法をとるべきかの判断も含めて実践した。資器材については時間をかけ全員が順番で取り扱い、個々に習熟に努めた。
井本署長によると、第1警防班は火災を想定し、火勢が増し施設内から退避できなくなった職員を救出する手順を実践したという。職員は日頃の訓練で資器材の取り扱いなど技術の習熟に努めているが、実運用については現場同等の環境を準備する手間があり、現場自体が熟練するほど頻発しないこともあって習熟が難しい状況にある。今回は延焼や倒壊こそしていないものの、実現場に近い環境で身に付けた技術の運用に臨める絶好の機会となった。
同訓練の様子を見守った井本署長は「実際の施設を用いたことで、例えば防火扉には心材が入っているなど今まで気付かなかった状況の発見もあった。(同本部は近年)若手の職員が増え平均年齢も若返っているが、同時に技術の習熟が求められる状況ともなっている。今回の経験を技術の一層の向上につなげることを職員の今後に期待したい」などコメントした。
(2021年9月28日付紙面より)
幼稚園や保育所などでシーズン始まる (新宮市・那智勝浦町 )
新宮市と那智勝浦町の幼稚園、保育園、保育所、こども園で運動会シーズンを迎えた。
同市三輪崎の保育所型認定こども園「白梅保育園」(鈴木晴貴園長、園児43人)は26日、同市佐野のくろしおスタジアム屋内練習場で「第41回うんどうかい」を開催。園児たちはかけっこやダンスなど、さまざまな競技に元気いっぱい取り組んだ。
運動会は「今日もげんき!」の体操でスタート。保護者や職員が見守る中、園児はかけっこやリレー、玉入れなど、全12種目に臨んだ。
後半には3、4、5歳児が日頃の練習で取り組んで来た迫力ある「白梅太鼓2021『Make you happy』」を披露。会場から大きな拍手が送られた。
鈴木園長は「子どもたちの一生懸命ながらも楽しそうな姿が見られました。コロナ禍で制限せざるを得ない行事もあるかもしれないが、明るく元気で健康な園生活を過ごしてもらえれば」と話していた。
(2021年9月28日付紙面より)
勝浦八幡神社例大祭 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の勝浦八幡神社(髙橋正樹宮司)例大祭の宵宮が18日、本宮が19日に営まれた。今年は昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から神輿(みこし)渡御などの行事が取りやめとなった。しかし、本宮の19日夕方、御霊を移した辛櫃(からひつ)を船に乗せ、規模を縮小した形で渡御が行われた。
数度、開かれた祭典委員会で関係者や参加者らの安全などを考慮し、祭りの内容が決定した。
今回、祭典が主となることから、神にささげる献饌(けんせん)の伝供(でんく)は総代らが務め、髙橋宮司が笛を吹いた。
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18日午後5時から同社で宵宮の式典が営まれた。神社役員や総代、近隣の区長、各奉仕団体の代表らが参列。髙橋宮司が町の発展やコロナ終息などを祈願した。
舟謡勝謡会(中村誓会長)と勝浦獅子神楽保存会(沖和也会長)が舟謡と獅子神楽を奉納した。
祭典後は社務所に場を移し、昭和30年代の頃の例大祭の様子を収めた動画を鑑賞した。
祭りの歴史などを解説した髙橋宮司は「昔は祭り参加者も見物する人も多い。当時までとはいかなくても、神社の祭りで勝浦の活気や勢いを取り戻したい」と語った。
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翌19日は午前10時から本宮の式典を斎行した。来賓は招待せず、役員や各奉仕団体の代表らが出席し、玉串をささげた。
宵宮同様、舟謡勝謡会と勝浦獅子神楽保存会が奉納を行った。中村会長は「今年こそは神輿も出したかった。コロナ終息を心から願っている」。
沖会長は「2度も縮小して実施するのは残念。一刻も早くコロナが終息し、来年は盛大に祭りができれば」と話した。
同日夕方、渡御祭が営まれた。関係者が潮(しお)や御幣、鉾(ほこ)などを持ち、御霊を移した辛櫃が担がれた。
神社前の船着き場から達福丸、あかね丸、宮丸の3隻に乗り込み、渡御を開始。舟謡が周囲に響く中、列となった一行は勝浦漁港や市場などを通って神社に戻った。
祭典委員会の前地俊秀委員長は「渡御ができて良かった。来年は大々的にしたい」。
髙橋宮司は「縮小した形だが、神様に渡御いただけてうれしい。来年こそは本来の形で盛大にお祭りができればありがたい」と語った。
(2021年9月22日付紙面より)
県立高校で全員登校再開 (新宮市 )
新宮市内の県立新宮高校(東啓史校長、生徒541人)と新翔高校(藤田勝範校長、生徒312人)で21日、全員登校による通常授業が再開した。通学路や校舎には「おはよう、元気だった?」とクラスメートとの再会を喜ぶ姿が見られた。
和歌山県教育委員会は県内の新型コロナ感染拡大を受け、8月24日に県立学校の夏休みを31日まで延長。9月1日からは、1日交代でクラスの半分が登校し、残り半分がオンラインによる自宅学習を行う形で授業を再開していた。今回の通常登校再開は、実技・実習を伴う授業や就職・進学に関する進路指導等を充実することが目的。
新翔高校では、各クラスのホームルームで県教委が生徒・保護者向けに出した「通常の登校及び授業を再開するにあたっての留意事項」やワクチン接種の副作用による欠席の取り扱いなどを確認し、自宅学習で使っていたタブレット型パソコンを回収。3年生のクラスでは就職活動や進学に関する諸注意などが行われていた。
(2021年9月22日付紙面より)
宇久井神社例大祭を斎行 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の宇久井神社(男成洋三宮司)例大祭が19日、本殿で営まれた。熊野那智大社の神職を斎主に迎え、祭典役員、党家(とうや)講などの関係者ら約20人が、静かに海上安全や豊漁、地域の繁栄、氏子らの無病息災、新型コロナウイルス感染症の収束などを祈願した。
例年であれば、「チョーサヤ、チョーサヤ」の掛け声勇ましく神輿(みこし)行列が区内を練り歩き、御船による海上渡御や獅子舞、婦人会と宇久井保育所による手踊り、餅投げなどで地域全体が活気づく伝統行事。今年も昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から規模を縮小して式典のみを執り行った。
神事では伊藤士騎(しき)禰宜(ねぎ)が祝詞を奏上し、出席者が玉串をささげた。この日は宇久井青年会(柴原寛会長)、秋葉会(梶誠仁会長)による獅子舞奉納もあり、「鈴の舞」「剣の舞」「天狗(てんぐ)の舞」の見せ場を集めた宮神楽を披露した。
祭典委員長の亀井二三男さんは、普段の練習もままならない中で獅子舞を披露した宇久井青年会と秋葉会のメンバーをねぎらい、「来年こそは」と期待を込めていた。
(2021年9月22日付紙面より)
各地で啓発活動など
正しい交通ルールの順守とマナーの実践を呼び掛ける「秋の全国交通安全運動」が21日から始まった。30日(木)までの10日間、「子どもと高齢者をはじめとする歩行者の安全の確保」「夕暮れ時と夜間の事故防止と歩行者などの保護など安全運転意識の向上」「自転車の安全確保と交通ルール順守の徹底」「飲酒運転などの悪質・危険な運転の根絶」を重点に取り組んでいく。
新宮市では運動初日の21日、市交通事故をなくする市民運動推進協議会(会長・田岡実千年市長)、市交通指導員協議会、交通安全母の会、新宮警察署、東牟婁振興局など関係者約100人が、同市佐野のスーパーセンターオークワ南紀店で決起集会を開いた。
田岡会長は「新宮市においては人身交通事故の発生件数・負傷者数ともに減少し死者もいないが、県内では死亡事故が増加しており私たちを取り巻く交通情勢は予断を許さない厳しいもの」とあいさつ。
「交通事故のない明るい社会を目指し、今後もあらゆる機会を通じて交通ルールと交通マナーの順守を訴えていきたい」と誓いを新たにした。
酒井清崇・東牟婁振興局長は「交通事故のない安全で安心なまちづくりは全ての県民、市民の願い。交通事故をなくしていくため、引き続きご尽力を」と呼び掛けた。
山田守孝・新宮警察署長は、早めのヘッドライト点灯と、歩行者への反射材などの着用を呼び掛けたほか「管内では今年に入って飲酒運転での交通事故が4件発生。飲酒運転の根絶には徹底検挙しかない」と強調。
先週、岩出市でトラックと小学5年生男児が乗った自転車が衝突し、男児が死亡した事故に触れ「痛ましい交通事故をなくしていくためにも、この運動を一人でも多くの人に交通安全意識を持ってもらい考えてもらう機会にしていかなければ」と話した。
県内では今年、昨年同時期と比較し、人身交通事故の発生件数・負傷者数は減少しているものの、死者数は13人増加の22人となっている(8月末現在)。
(2021年9月22日付紙面より)
紀伊風土記の丘で特別展 (三輪崎小 )
和歌山市の県立紀伊風土記の丘で開館50周年を記念した令和3年度秋期特別展「海に挑み、海をひらく―きのくに七千年の文化交流史―」が10月2日(土)から12月5日(日)まで開催される。新宮市立三輪崎小学校でこのほど、展示品として同校所蔵のモリを貸し出し提供すべく、梱包(こんぽう)作業が行われた。
同展は紀伊半島の沿岸に暮らした先人たちや海の歴史を考古学と民俗学の観点から紹介することがテーマ。和歌山県発祥の漁業にもスポットを当て、改良を重ねた技術が全国各地に伝わったことや、新宮・東牟婁含む県内各地の漁具や資料などが展示される。
同校のモリ2本は寄贈されたもので、捕鯨を行っていた三輪崎組の紋「三つの輪」が刻まれている。このモリに加え、クジラのひげや疑似餌などが貸し出しされる。
三輪崎区や三輪崎郷土芸能保存会、三輪崎漁業協同組合も協力。「鯨踊りの衣装」や「捕鯨に関する写真」「一本釣りに使用した竹の釣り竿」なども展示されるという。
紀伊風土記の丘の主査学芸員・蘇理(そり)剛志さんは「県内では江戸時代から明治半ばまで捕鯨をやってきたのが、太地や古座、三輪崎。紆余(うよ)曲折を経て、約300年にわたり、行ってきた文化が残っている。三輪崎の捕鯨はなくなったが、鯨踊りなど、さまざまな形で伝統が引き継がれ、地域の誇りになっている」。
モリについては「古式捕鯨時代のもの。形も古く、数も残っていない。古くからある三輪崎鍛冶にもつながる。鉄を加工する技術あってこその捕鯨。このモリは重要なものだと思う」と話した。
嶋田雅昭校長は「当校は三輪崎郷土芸能保存会の皆さまから鯨踊りや捕鯨について教えていただいているため、児童も三輪崎の捕鯨文化に触れることができている。価値のあるモリなどを多くの方々に見ていただけるのはうれしい」。
児童に対しては「博物館に展示されるほどの貴重な物が学校にあるということを児童にも伝えたい。県内での修学旅行になるため、行き先の一つとして展示を見に行くことも検討している」と語った。
なお、太地町の鯨舟の模型や鯨絵巻、串本町の河内祭の道具なども展示される予定。
(2021年9月19日付紙面より)
相須地区でいきいきサロン (新宮市熊野川町 )
新宮市熊野川町の相須集会所で16日、「ふれあいいきいきサロン」があった。地域住民5人が参加し、防災クイズを交えてコロナ禍の避難について考えた。
サロンは地域のコミュニティーづくりや介護・寝たきり防止、1人暮らしの人への見守りなどを目的に、区と市社会福祉協議会が協力して開いている。新宮市の施設利用再開を受け、手指消毒や参加者全員の検温、マスク着用などの感染対策を取りながら実施した。
この日は市社協熊野川ステーションの大江真季さんが、コロナ禍中に災害が発生して避難所生活を送ることになったときの備えについて講話。「災害時は危険な場所から避難するのが原則だが、食料や水に加えてマスク、アルコール消毒液、体温計などの感染対策用品を持ち出し袋へ入れておくことが大事。9月の防災月間に合わせて市内のスーパーマーケットに防災用品コーナーができているので、一度見に行ってみて」と呼び掛けた。
「高齢の方や足の悪い人は警戒レベル3の『避難準備・高齢者等避難開始』のときにはもう避難しておいてほしい」と言い、改めて早期避難の重要性を伝えた。
住民からは「紀伊半島大水害の時、なかなか救援物資が届かず難儀した」「自分の身は自分で守らなければ」との声があった。
(2021年9月19日付紙面より)
宇久井神社例大祭・宵宮祭 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の宇久井神社(男成洋三宮司)例大祭の宵宮祭が17日夜、本殿であった。例年多くの人でにぎわうが、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止のため宵宮と本宮の規模を縮小。神職や祭典役員、党家講など関係者ら約20人が参列して厳かに式典が斎行された。
例年の宵宮では、式典後に宇久井青年会と秋葉会による神楽の奉納や宇久井婦人会による踊りが場を盛り上げ、盛大に餅まきが行われているが、昨年、今年は取りやめとなった。
台風接近の影響で雨が降る中、式典が進められた。熊野那智大社から出仕した伊藤士騎禰宜が神事を執り行い、祝詞を奏上。出席者が玉串をささげた。
式典後の神酒拝載では伊藤禰宜が「コロナが終息に向かいまして、活気あふれる宇久井のお祭りが復活することを心よりお祈りしております」と述べ、一同、手にした杯で乾杯した。
祭典委員長の亀井二三男さんは「残念ながら省略した形での宵宮祭となった。昨年は当地域でのコロナの影響は少なかった。来年こそはと思っていたが、感染が広がり今年も縮小する形となった。2年はわれわれにとっては大きな年。祭典関係者の高齢化も進む中、2年間休んで来年は体力的に大丈夫だろうかとの懸念もある」。
来年については「地域の祭りは氏子の方々にとって大切なもの、決断は心苦しかった。今回の祝詞にもコロナ終息の思いを込めていただいた。来年こそは皆さまの豊漁や健康を祈り、盛大にやっていきたい」と意気込みを語った。
(2021年9月19日付紙面より)
4年生が「鵜殿ばやし」を練習 (鵜殿小 )
新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの祭り、イベントが規模縮小や中止を余儀なくされ、紀宝町鵜殿地区で毎年11月22、23日に開催される「うどのまつり」も2年連続の中止が決まった。
秋を彩る「うどのまつり」は、鵜殿ばやしの手踊りが練り歩き、熊野水軍太鼓の演奏、諸手船(もろとぶね)をかたどったダンジリの上でハリハリ踊りを披露するなど、毎年、地区内が祭り一色に包まれる。
鵜殿ばやしは1992年に誕生し、96年に保存会が発足。うどのまつりや紀宝みなとフェスティバルなどで披露し、町村合併以前の旧鵜殿村運動会でも住民総出で踊ったという。
その地域の伝統踊りを子どもたちに継承してもらおうと、町立鵜殿小学校では毎年、運動会で4年生のプログラムに組み込んできた。
昨年は新型コロナの影響もあって運動会で披露する機会がなかったが、今年は10月2日(土)の運動会で2年ぶりに復活する。
本番に向け、4年生35人が保存会のメンバーに踊りを教わりながら練習に励んでいる。15日にはメンバー4人が訪れ、細かい動きを丁寧に指導した。
「沖を眺める」「網をたぐり寄せる」など漁師のしぐさを盛り込んだ男踊り。手を上げる角度や指先の力の入れ方など、難しい動作も多く、児童たちはアドバイスを受けながら覚えていった。今後も本番まで練習を重ねるという。
メンバーの松元美国さんは「現在の保存会メンバーは20人ほど。昨年から鵜殿ばやしを披露する場がなくなり、踊りを知っている子どもも少なくなってきた。鵜殿の伝統を引き継いでもらい、来年、祭りが開催されれば参加してもらいたい」と話していた。
女子児童は「踊りは難しいけど、頑張って運動会までに覚えたい」と笑顔を見せていた。
(2021年9月19日付紙面より)
「色川地ビールを育てる会」が会員募集 (那智勝浦町 )
「最初は僕たちや皆さんで楽しむビール。将来的には色川の仕事の一つにつながるビールになれば」。そう話すのは那智勝浦町小阪区長の峯茂喜さん(66)と和歌山大学観光学部4年の藤本多敬(かずひろ)さん(22)だ。二人が共同代表を務める色川クラフトビールプロジェクトはこのほど、色川地域の茶を用いた地ビールを試作。今後のさらなる生産拡大や地域おこしのために「色川地ビールを育てる会」を組織した。峯さんが会長、藤本さんが副会長を務め、現在会員を募集している。なお、酒税法の関係から、販売は行ってない。
藤本さんは3年前に和大の地域インターンシッププログラムで色川地域を訪れ、峯さんと出会った。同伴していた此松昌彦教授が高野山の地ビールづくりにも関わっており「色川でビールをつくれば良いものができるのでは」と提案した。
二人は意見交換や会議を重ね、学生や町民も参加する中、今年4月からプロジェクトを開始。非営利の育てる会では経費を会員(割り勘仲間)自身が負担し、完成したビールを楽しむという。
同地域の一部は世界遺産「那智の滝」の源流の水を使用している。今後、ビールの原料にはその水と同地域で収穫される茶やユズ、ブルーベリーなどを用いる予定。醸造は和歌山市の和歌山ブルワリーに委託する。峯さんによると、試作品は住民らに好評だったという。
本格的な初回生産は12月で、同地域のほうじ茶を使用する。その後は3カ月ごとに用いる産品を変更する方針だ。1回の生産で完成する330㍉㍑の瓶ビール約380本を会員で分ける仕組み。今後はラベルにもこだわり、一目で色川を連想できるようなものを作るという。
活動は1年間限定としており、「ビールづくりが色川の仕事になることが目標。全国には色川のファンも多い。地ビールを仲介し、人と色川をつなげる存在になってほしい」と二人。
藤本さんは「将来的には色川に醸造場ができて、地ビールで地域おこしができれば。ジビエとのセットも魅力的だと思う。地域の中でお金が循環するようなきっかけづくりになれば」。
峯さんは「農業をしたい移住者も多いが、収入面などの課題がある。それらの解決につながるのでは。『旅行者が地ビールを求めて旅をする』という言葉もある。多くの方々が地ビールを求めて色川を訪れてくれたらうれしい」とそれぞれ語った。
会員になるには申し込みが必要で分担金は1口1500円。すでに他府県からの申し込みもあるという。会員同士のオンラインによる飲み会も検討しているとのこと。
問い合わせは同プロジェクト(電話090・1893・6900)、メール(irokawa.craft.beer@gmail.com)まで。
(2021年9月18日付紙面より)
哲泉流南紀清流支部が披露 (紀宝町 )
哲泉流和歌山県支部連合南紀清流支部が15日、毎月恒例の集い「カフェいっぷく亭」に招かれ、紀宝町福祉センターで詩舞と江戸芸かっぽれを披露した。
いっぷく亭は参加者同士やスタッフと日頃の思いを話し合い、交流を深める場。毎回、検温、手指消毒など感染症対策を講じ、手の平体操やさまざまなゲームを楽しんでいる。
南紀清流支部には講師の荘司瀞扇さんをはじめ、6~86歳の12人が所属。今回は人数を限定し、5人が訪問した。
詩舞は吟詠に合わせて扇を使って舞う日本の伝統芸能。「武田節」「東風吹かば」「川中島」「名槍日本号」「英霊南より還る」を華麗に舞い、扇で詩吟を表現した。
かっぽれは、無形文化財の「住吉踊り」がルーツと伝わる大道芸、お座敷芸の一つ。「茄子と南瓜」「かっぽれ」の2演目を見せた。
いっぷく亭の参加者らは静かに舞を見入り、大きな拍手を送った。最後はスタッフの橋本純子さんが「お上手で目の保養をさせていただき、ありがとうございました。これからも頑張ってください」と伝えた。
荘司さんは「コロナ禍以前はたくさんのコンクールがあったが、今は全国的に中止になっている。お声掛けいただき、ありがたく思う。9カ月ぶりに披露の場だったので緊張したけど、楽しい場でした。また、皆さんに会える日を楽しみにしています」と話していた。
(2021年9月18日付紙面より)
新翔高校教職員の声を聞く (新宮市 )
各クラスの半分が登校し、残り半分がオンラインで自宅学習を行う形で授業を進めている和歌山県内の県立高校。前回の新宮高校に引き続き、新翔高校でも教職員の声を聞いた。
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■﨑山鈴菜教諭(社会科)
現在担当している「現代社会」の授業では、黒板への板書とパワーポイントの両方を使っています。登校/自宅学習の生徒の差が出ないよう、2日連続で同じ内容を行うのですが、扱う事例を変え、少しずつ知識が深まるよう工夫しています。
現代社会では「図書館では言語によって本棚を分けているが、それは差別か区別か?」といった問題を生徒自身に考えてもらう場面があります。教室の生徒には手元のフリップに、オンラインの生徒にはチャットに書き込んでもらうのですが、チャットの方が敷居が低いのか、普段発表しない子も意見を出してくれたりします。
オンラインの生徒には、「フォームズ」というアンケート機能で授業の終わりに理解度チェックの小テストをします。記述式や選択式の設定ができ、正答率も把握できるので、プリントよりも扱うのは楽かもしれません。授業の感想では「新鮮で面白かった」という声もあり、オンラインの物珍しさもあって楽しんでくれているようです。
パワーポイントを使う授業では、ノートを取るのがゆっくりな子もいるので、画面を切り替えるタイミングが難しいと感じます。介護実習の授業では教科書の音読やビデオ視聴を中心に板書をしない授業づくりに取り組んでいる先生や、画面共有での授業に挑戦している先生もいますね。
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■脇村綾乃教諭(英語)
授業では板書とプリントを使っています。オンライン授業を開始した当初は、ウェブ上の会議室に入室できない、音が聞こえないなどのトラブルが続出で、今でも何回かに1回はその対応をしなければいけないときがあります。
授業では生徒の音読する声を聞くため、オンライン学習の生徒にもカメラとマイクをオンにするよう呼び掛けているのですが、なかなか応じてくれない子もいるのが現状。
また、タブレット型パソコン(PC)に内蔵のマイクを使って声を届けているので、授業中はPCの前から動けず、教室を巡回して生徒の発音や理解度の確認ができないのも難しいと感じているところです。
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新翔高校教職員へのインタビューを通じ▽円滑に授業を進めるためにはマイクやスピーカーがあった方がいい▽スクリーンやプロジェクターなど扱う機材が増えると運搬や設置に時間がかかる▽画面共有などさまざまな機能を使いこなすには練習が必要―などの意見が見られた。生徒に授業が好評である一方、課題も多く、教育現場で試行錯誤が続いている現状が浮かび上がる。今後も動向を追っていく。
(2021年9月18日付紙面より)
樫野の遭難慰霊碑前で式典 (串本町 )
串本町樫野にあるトルコ軍艦遭難慰霊碑前で16日、同町主催による追悼式典があった。新型コロナウイルス感染症を考慮し、今年は田嶋勝正町長ら地元の代表者5人で両国の絆を深める決意をささげるなどして殉難将士を追悼した。
この碑は1890年の同日に樫野沖であった同艦・エルトゥールル号遭難事件の殉難将士587人を弔う墓碑として翌年に建立され、後に昭和天皇もお立ち寄りになったことに感銘を受けたトルコ共和国の初代ムスタファ・ケマル・アタテュルク大統領が国費で霊廟(れいびょう)を備えた台座を建立。その塔部に墓碑をはめ込んだ状態で今日まで伝わっている。
同町は長らく「月命日」として毎月16日、同碑に献花をしている。期日と重なる9月はその大祭として追悼式典を計画し、平年は招待参列や一般参列を迎え大勢で現地の使命を振り返り決意をともにする形で営んでいる。
前年度は同感染症の拡大に伴い規模縮小。他方で、実施できずにいた日本トルコ友好130周年記念事業の追悼式典が上積みとなり、現地参列は地元のみだが三笠宮彬子(あきこ)さまや駐日トルコ共和国大使館の特命全権大使らがオンライン参列する形で営んだ。今年も規模縮小の判断をし、昨年のような上積みがないため田嶋町長、町議会の鈴木幸夫議長、樫野区の髙山カヤ子区長、大島区の稲田賢区長、須江区の福島三男区長の5人が代表参列して殉難将士を追悼することとした。
参列はかなわなかったが同大使館の現任コルクット・ギュンゲン特命全権大使が同町へ献花の代理を依頼し、同町は式典に先んじて同碑前へ献上した。式典では黙とうを経て5人それぞれに献花をし、弔電披露を経て田嶋町長が殉難将士の境遇と当時の大島島民が示した献身に思いをはせつつ「助け合う心を語り継いで、かけがえのない絆を育んでいくことが現在に生きる我々の使命。先人の精神を継承し両国の友好の原点となった歴史を風化させないことが大切だと考える」と述べ、人を思いやる心で結ばれた両国の歴史と文化を学ぶ機会を次世代に託し両国の絆をより深めることへの尽力を誓って追悼した。
現地の髙山区長(74)は「2年続けて規模縮小となったのは残念だったけれど、こうして追悼を続けることはきっと両国の絆につながると思う。コロナが落ち着き以前のように営める日が再び訪れることを今後に願いたい」と胸中を語った。
(2021年9月18日付紙面より)
【第40回】コンポストで食育を!
皆さん、コンポストってご存知ですか? コンポストとは「生ごみを堆肥化させる」こと。簡単にいうと、土に生ごみを混ぜて、堆肥を作るということです。今家庭の生ごみを使って、簡単に堆肥を作る動きが、注目されています。
私も、この夏からコンポストを始めました。おしゃれなコンポストキットがインターネットで販売されていると聞き、早速購入。フェルト生地のような素材でできた、おしゃれなバッグが届きました。別の袋に入っている土を、このバッグの中に移して、セットは完了。後は生ごみを入れていくだけです。普段の料理で出る生ごみを入れてざっくりとかき混ぜるだけ! 土が生ごみを処理してくれるというわけです。
子どもの自由研究も兼ねて、一度入れたごみの経過を観察してみました。これがとっても面白いんです。中でどんどん発酵が進み、生ごみが時間をかけて小さくなっていきます。分解してくれるのは、微生物たち。途中、白カビが生えたり、湯気が上がったり、「あ~分解が進んでるな」と分かるのも楽しいところ。子どもも興味津々でした。
ご飯や麺、肉、魚、野菜など大体の生ごみを入れることができます。魚の骨も、もちろんオッケー。ただ、タマネギの皮や、卵の殻は、分解に時間がかかってしまうそうです。
コンポストを始めて、圧倒的にごみの量は減りました。食べ残したお料理もそのままコンポストに入れてしまいます。揚げ物や炭水化物は、分解を促進させてくれるそうですよ。最初は、「すごく臭いが出るんじゃないかな」と心配していましたが、土のおかげかそんなに臭うことはありません。むしろ、ごみの日まで生ごみを置いておくことがなくなったので、臭いの悩みから解放されました。1日300㌘の生ごみを毎日3週間ほど入れたら、立派な堆肥の完成です。私が買ったキットは、そのままプランターとして野菜を育てることもできるんです。
日本の食品廃棄物は年間2500万㌧、そのうち本来食べられるのに捨てられる食品は600万㌧にも上るといわれています。これがいわゆるフードロスになるわけです。日本のフードロスの46%が家庭から出る生ごみです。
そんな話をしながら、子どもと一緒に生ごみを土に還して堆肥にし、さらに野菜を育てられたら、最高の食育になりますよね。SDGsで、サスティナブルな社会が目標とされる今こそ、挑戦してほしい食育です。フードロスを削減するためにも、家庭からの生ごみを減らして、地球温暖化を抑制しましょう!
(2021年9月18日付紙面より)
那智谷大水害遺族会が追悼式 (紀伊半島大水害から10年 )
当地方に甚大な被害をもたらした紀伊半島大水害(2011年)から10年。各地では、同水害の犠牲者を追悼するための慰霊祭や式典、復興催事などが営まれた。本紙エリアでも新型コロナ感染予防対策が講じられる中、遺族や関係者らが故人をしのび、防災への誓いを新たにした。
4日未明、那智勝浦町井関の紀伊半島大水害記念公園で那智谷大水害遺族会(岩渕三千生(みちお)代表)による追悼式があった。犠牲者の遺族ら約60人が参列し、さまざまな思いを胸に死者・行方不明者数と同じ29個のLEDキャンドルに明かりをともした。
昨年と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、追悼式で使用するキャンドルの製作は中止となり、火を使わないLEDライトをキャンドルに用いた。
午前1時から始まった追悼式には、水害の犠牲となった中平景都君=当時(小2)=の同級生も駆け付けた。
岩渕代表(60)があいさつし、参列者が黙とうをささげた。その後、静かにキャンドルに明かりがともされた。
景都君の同級生で前日に18歳の誕生日を迎えた同町市野々在住の村田健士朗(けんじろう)君(新宮高校3年)は「高校卒業後は同級生が集まる機会がなくなってしまうので今回、集まれて良かった。帰り道も同じだった景都君を思い出しながら、感謝を伝えた。今後もまた来たい」。
水害で妻と娘を失った寺本眞一さん(68)は「家内と娘には『こんなことあったよ、初孫できたよ』と話し掛けた。各地で災害が起きると10年前を思い出して気がめいる。孫には事故や災害に遭わず、人生を全うしてほしいと思う。また、犠牲者のために多くの方が供養に来てくれるのはありがたい」と話した。
岩渕代表は「10年、20年たとうが気持ちは同じ。遺族にはそれぞれの思いがある。那智谷の復興や災害が起きないように見守っていてほしいと伝えた。今日は景都君の友人がたくさん来てくれてありがたい」。
追悼式や今後については「二度と那智谷で同じような災害を起こしてはならない。この水害を教訓にして、『早めの避難』を心掛けてほしい。大水害を忘れないためにも行事は後世に伝えていかなくてはならない。遺族会がなくなってもうちの家族だけでも式はやっていきたい」と話していた。
(2021年9月5日付紙面より)
黄色いハンカチに感謝込め (新宮市熊野川町 )
新宮市熊野川町の新宮市さつき公園(紀伊半島大水害復興祈念公園)に3日、2011年の紀伊半島大水害後に町の復興に携わった全ての人々へ感謝を込め「熊野川は元気です!」のメッセージを発信する黄色いハンカチが掲げられた。期間限定で1週間ほど設置する。
町内約600世帯と学校、福祉施設などにハンカチを配布して世話になった災害復興ボランティアや親戚、友人らへメッセージを書いてもらい、公園に掲げる取り組み。今年5月に地域住民組織「チームくまのがわ」の会合で発案され、実行委員8人を中心に大勢の町民が作業を分担した。
3日の設置作業には雨の中、実行委員8人や熊野川中学校の全校生徒22人、関係機関職員らが駆け付けて協力した。
参加した中前なごみさん(中3)は「ボランティアの方々へ感謝を伝える機会を持ててうれしい。当時は4歳だったが、泥かきをしてくれた人たちのことは記憶に残っている。これからも災害は起こるだろうが、今度は自分たちが助ける側に回りたい」。
取り組み発案者の1人で実行委員長を務めた下阪殖保さんは「SNSやメディアを通じて、『ありがとう、熊野川は元気やで』という思いが伝われば。こんなメッセージが出せるくらい、町のみんなが前向きに復興に向けて頑張ってこられたこの10年は、いいこともたくさんあったと思う」と語った。
さつき公園には翌4日にバルーンも設置され、青空の下に黄色いハンカチがたなびいていた。
(2021年9月5日付紙面より)
仲本耕士副町長に聞く (古座川町 )
古座川町では土石流こそなかったが、家屋の床上浸水585戸をはじめとし道路、堤体、公共施設など多岐の被害があり、3人が災害関連で一度は取り留めた命を失った。紀伊半島大水害時、町住民福祉課長として対応した仲本耕士副町長は「(七川ダムの)ただし書き放流は自身の経験ではこの1回だけ」と自然の脅威を振り返る。
洪水調節をする七川ダムの放流量は最大毎秒320㌧。ただし書き放流は流入量をそのまま流出させて最悪の状況(設計満水位状態からの決壊)を避ける特例操作で、当時は毎秒約1000㌧以上が流出していたという。その先にあるのが前述した被害。当時はそれほどの影響を与える雨水が古座川へ流れ込んでいた。
そのような脅威の経験を受け、同ダムは全国に先駆けて事前放流に関する協定を電力会社と結び、洪水調節の幅を広げた。同町は災害復旧に3年余りを要し、その終盤で洪水時最高水位標柱を町内各所に設置し経験の風化抑止も図った。さらにハード面で車両や農機を守る高台を6カ所造成し、ソフト面では同大水害記録誌や洪水ハザードマップの全戸配布による水防災意識の喚起や自主防災組織の結成推進による備蓄増強などの対策を積み上げている。
20年度から古座川下流域で河川整備計画に基づく河道掘削が始まり、今年8月末には古座川流域治水プロジェクトも策定された。いずれも同大水害に次ぐ被害をもたらした2001年水害(同町では家屋70戸が床上浸水)を前提。気付くべきは既往最大水位となっている同大水害規模の防災は困難で、今はこの状況に対する備えが不可避という現実だ。
「古座川は昔からつかるところ。だから逃げる場所をつくる」。ふと祖母の言葉を思い出して語った仲本副町長。同大水害から10年を迎えるに当たり「古座川町は町民1人1人の心構えと行政のサポート、その集大成で被害を『抑える』。水害の経験を風化させず、各職場、各家庭で意識を持ってほしい。そのようにして古座川とつきあっていく」と思うところを掲げ、実動の源となる減災意識を皆が持ち続けることを期した。
(2021年9月5日付紙面より)
大水害献花式で誓い新た (新宮市 )
新宮市は4日、同市熊野川町田長の道の駅「瀞峡街道 熊野川」の紀伊半島大水害慰霊碑前で犠牲者追悼献花式を営んだ。遺族や田岡実千年市長、向井雅男副市長、速水盛康教育長、大西強市議会議長ら関係者約30人が参列。犠牲者の冥福を祈るとともに、災害に強いまちづくりを誓った。
参列者たちは、同市で犠牲になった14人の名前が刻まれた慰霊碑の前で黙とうをささげ、白い菊を献花。故人をしのび、静かに手を合わせた。
田岡市長は「災害でお亡くなりになられた方々の無念の思いと、ご遺族の皆さまの深い悲しみを思うと今も哀惜の念に堪えない」と追悼。
市では災害後、国、県、市民からの多大な支援と励ましを得て復旧・復興を進めるとともに、防災対策を見直し災害に強いまちづくりに努めてきたと述べ「これからも紀伊半島大水害を片時も忘れることなく、市民の皆さまが安心・安全に暮らすことができるまちを築いていく」と決意を新たにした。
(2021年9月5日付紙面より)
宇久井中学校で防災学習 (那智勝浦町 )
那智勝浦町教育委員会は本年度、2011年の紀伊半島大水害の記憶を後世に伝えるため、町内3中学校で防災学習を実施する。2日には町立宇久井中学校(坊信次校長)で学習があり、1、3年生36人が真剣な表情で被災当時の那智川沿いの写真や遺族の証言に向き合った。
紀伊半島大水害で小中学生4人を含む29人が亡くなった那智勝浦町では、16年に町と和歌山大学が那智谷大水害遺族会の協力を得てDVD「私たちは、忘れない 紀伊半島大水害のことを」を制作。つらい記憶をよみがえらせることから生徒の視聴には賛否があったが、水害後10年を迎える今年、申し出があった3校で上映に踏み切った。
DVD視聴に続き町教委の草下博昭課長が講話。「災害時には『絆』という言葉が注目されるが、被災した状況下で人と協力していくのは容易なことではない。それが実現するには、日頃から人に優しく接し、多面的に物事を捉え、自分にできることを探すという行動を取っていることが大切なのではないか」と語り掛けた。
参加した生徒からは「どんな被害があったのか、どういう経緯で大きな被害が起きてしまったのか知ることができた。家族を亡くした遺族の気持ちは想像もできないが、一つ一つの災害を忘れてはいけないと感じた」「5歳の時、自分の家も浸水したと聞いた。自分たちにできるのは、忘れないこと、そして防災に取り組むこと」などの声があった。
(2021年9月4日付紙面より)
新たなロケットロゴT発売 (南紀串本観光協会 )
南紀串本観光協会(島野利之会長)は町独自ロゴ「スペースタウン串本ロゴ」を活用したTシャツの販売を開始した。アウトドア総合メーカー「(株)モンベル」とのコラボ商品で、カラーは3種類。1枚3000円(税込み)。同協会と同協会古座の窓口で販売している。
前面にロケットロゴ(単色)、背面の首元にモンベルのロゴをそれぞれあしらった。生地はペアスキンコットンを使用しており、丈夫で型崩れしにくく肌に優しい着心地となっている。色とサイズはネイビー(サイズS~XL)とホワイト(同S~L)、グレー(同XLのみ)。
同協会はロケット打ち上げの機運を盛り上げようと町独自ロゴを活用した商品を開発してきた。ロゴを使った商品のモデルケースを見せる狙いもある。これまでに「大漁旗Tシャツ」「ロゴステッカー」「ロケットサイダー」などを発売した。商品はJR西日本が運行する長距離列車「WEST EXPRESS 銀河」の出迎えの際などにも販売している。
今後は8月に完成した同協会オリジナルのロケットロゴ(全4種)を使った小物類の製作も計画している。商品の通信販売も検討中で、宇井晋介事務局長は「町全体で盛り上がっていることを形として示したい」と話していた。
商品などの問い合わせは同協会串本事業所(電話0735・62・3171)まで。
(2021年9月4日付紙面より)
みくまの農業協同組合 (本宮町 )
みくまの農業協同組合(JAみくまの、漆畑繁生組合長)は8月30日、田辺市本宮町の保健福祉総合センター「うらら館」で田辺市社会福祉協議会(野見陽一郎会長)に介助型車椅子10台、松葉づえ3本、段ボールベッド30個を贈呈した。
「農」と「食」と「地域を守る」を経営理念とし、地域に根差したJAとして2001年から活動してきたJAみくまの。昨今の経済情勢の変化により、今年6月に開催した第20回通常総代会で拠点再編が決まり、本宮支所が縮小となった。しかし、組合員や利用者にわずかでも地域貢献したいという思いから、「介護・福祉活動」「防災対策活動」の一助として、今回の贈呈に至ったという。
同社協の松本栄夫副会長に目録を贈った漆畑組合長は「今回、本宮支所が縮小する中で何か地域貢献ができないかと考えておりました。福祉用具の必要性などを考え、少ないですが、今回の贈呈に至りました。今後ともどうぞよろしくお願いします」と話した。
松本副会長は「大変ありがたい。少子高齢化社会が進む世の中、企業や社協もそれぞれ悩みがある。われわれとしても地域の皆さまがご心配ないように取り組み、貢献できるように進めてまいりたい」と話した。
(2021年9月4日付紙面より)
市野々小で防災学習 (那智勝浦町 )
「防災の日」(9月1日)を中心とした1週間(8月30日~9月5日)は防災週間。那智勝浦町立市野々小学校(中西健校長)で期間中の2日、防災学習があった。児童らは真剣な表情で授業に取り組み、命を守る避難行動について学びを深める機会とした。
5、6年生12人を対象に行われた授業では、新型コロナウイルス感染防止の観点から、県土砂災害啓発センターとオンラインで中継をつなぎ、防災について考える時間とした。学習テーマを「私の避難方法を考えよう」とし、同センターの坂口隆紀所長がハザードマップや警戒レベルから読み解かれる避難場所や方法などについて説明した。
同センターによるオンラインを使用しての防災学習は初の取り組み。坂口所長は「『避難』とは命を守るために逃げること」と説明。「避難所では新型コロナの感染リスクも高くなる。でも避難しないこともいけない」と述べ、分散避難(ばらばら避難)の重要性を訴えた。
分散避難のためには、自分の住んでいる所で起こり得る自然災害を知り、安全な場所を確認することが必要とし、ハザードマップを用いた事前確認を促した。
また、天気予報などで耳にする「台風が発生」「梅雨前線・秋雨前線・線状降雨帯」「大気の状態が不安定」などの言葉や、気象情報における警戒レベルとその色分けにも注意が必要とし「赤(警戒レベル3)と紫(同4)を注意する色として覚えておいてください」と呼び掛けた。
その後、児童らはハザードマップなどを参考にし、災害時の自分や家族の役割について考えながら避難スケジュールの作成に取り組んだ。
(2021年9月4日付紙面より)