ドローン技術活用の実証実験 (那智勝浦町 )
那智勝浦町市野々にある国土交通省近畿地方整備局大規模土砂災害対策技術センター(県立土砂災害啓発センター内)は15日、ドローン(UAV)全自動飛行による内の川の砂防施設点検および、2011年の紀伊半島大水害で土石流が起きた渓流崩壊地調査の実証実験を行った。砂防事業では日本初の取り組みとなる。
今回の実証実験は、ドローン導入による砂防施設点検の効率化・省力化はもちろんのこと、渓流の危険箇所監視を完全自動化するモデルケースとして、得られた知見を全国に生かす目的がある。
那智川流域で建設が進む砂防施設(えん堤)では、施設の摩耗やひび割れの定期点検に加え、出水後には人力でえん堤内の堆積土砂や上流部の調査を行っている。しかし、土砂流出などの異常が発生した後に渓流に近づくには危険が伴い、災害現場の迅速な状況把握が困難を極めるため、ドローン技術活用が模索されてきた。
今回の実験で使用した機体は㈱センシンロボティクス製の90㌢四方、高さ35㌢、重さ8・5㌔の産業用ドローン。飛行時間は25分で、速度は毎秒18㍍。
実験では、ドローンが目視外の無人地帯を補助者なしで自律的に飛行する「レベル3飛行」に挑戦。屋外に設置したドローン基地からボタン操作一つでドローンが飛び立ち、あらかじめ設定したルートに従って地上149㍍を飛行した。実験は計3回行われ、基地から約800㍍離れた渓流上部や砂防施設の動画および写真を記録した。
得られた映像や写真を解析することで、渓流部の3Dモデルを制作でき、堆積土砂の体積や流木の高さまで正確に把握できる。その他、サーモカメラを搭載して撮影すれば、えん堤からの異常漏水なども検出できる。また、現在は得られた情報を基に人の目で点検をして異常を検出しなければならないが、将来的には異常の検出を自動で行うソフト開発も視野に入れているという。
この日は全ての実験が成功。同センターの小杉恵調査課長は「法整備や電源確保、機体制御電波の状況など、まだまだクリアしなければならない課題がある。ドローン技術は日々進んでおり、さまざまな情報をキャッチしながら、一歩一歩実用化に近づいていければ」と話していた。
(2021年12月17日付紙面より)
民生委員児童委員が要望書提出 (新宮市 )
新宮市民生委員児童委員協議会(村上和弥会長)の代表ら5人は15日、新宮市役所を訪れ、田岡実千年市長に市立医療センター産婦人科や小児科の医療体制充実などを訴える要望書を提出した。
同センター産婦人科では、常勤医師2人のうち1人の退職が決定したことに伴い「後任の医師が確定していない状況下では、安心・安全な医療の提供ができない」との理由から、来年3月以降の分娩(ぶんべん)予約休止を発表している。
同協議会の要望書では、日頃より児童問題にも取り組んでいる傍ら、今回の発表は到底見過ごすことができない大きな問題とし「早急に産科医の確保を行い、分娩休止にならない体制を実行する」よう求めた。
村上会長は「市民をはじめ、多くの方から何とかしてほしいとの声が上がっている。少子化がいわれている中で、ぜひ実現していただきたい」。
要望書を受け取った田岡市長は「市民の安心、安全の根底は医療。医療センターで安心して分娩ができるよう、全力で取り組んでいきたい」と述べていた。
(2021年12月17日付紙面より)
串本町など情報提供を求む
串本町で小笠原諸島域の海底火山由来とみられる軽石の漂流・漂着が確認された。町産業課は県と情報共有を図りながら漁協などを通して目撃情報の提供を呼び掛け、状況の注視を始めている。
南紀熊野ジオパークセンターの福村成哉研究員は先週末に漂流を察知し、最寄りの上浦海岸に軽石が漂着しているのを見つけてサンプルを採取。別途沖縄県で採取されたサンプルを取り寄せて比較し、似ていると判断して直ちに分析に出したという。打ち上がっている量は他の地域の状況と比べてごく少ない印象で、海流・黒潮の流れから外れた一部が同海岸へ漂着したと推察している。
町産業課農林水産グループによると現時点で直接的な対応の考えはないが、情報提供を呼び掛け状況の把握を進めている。東牟婁振興局農林水産振興課も状況の推移を注視していて、16日正午時点で被害など影響の報告は入っていないという。
(2021年12月17日付紙面より)
JR新宮駅へ絵馬授与 (熊野速玉大社 )
新宮市の熊野速玉大社(上野顯宮司)は15日、JR新宮駅(坂本純一駅長)に来年のえと「壬寅(みずのえとら)」の絵馬を授与した。
絵馬はヒノキ製で、大きさは縦70㌢、横110㌢。上野宮司がアクリル絵の具などを使い、瑞光を背景に梛(なぎ)の御幣をくわえて鋭い眼光で前方を見据える雄虎を描いた。
この日、手渡した上野潤権宮司は「祈りは人間だけのものではなく、自然も地球の一部。改めて自然を大切にし、明るい年になってほしいという思いが込められています。駅で働く皆さんの安全とご健勝はもちろん、お客さまを明るくおもてなししていただきたい」。
絵馬を受け取った坂本駅長は「ありがたい絵馬を頂き本当に光栄です。世界中の方々が新型コロナウイルスで大変な思いをしている中、みんなで乗り越えていこうという思いを感じている。新宮地域を訪れるお客さまに絵馬を見ていただき、力強く前進するという気持ちになってもらえれば」と話していた。
(2021年12月17日付紙面より)
南紀熊野ジオパークは4日、北山村で「ジオ興し活動」を実施。同村下尾井の久保岡徳美さん宅で「北山村の伝統料理を残そうプロジェクト」を開催した。地域住民らが参加し、久保岡さんが作る同村の伝統料理に舌鼓を打った。
南紀熊野ジオパークでは、ジオパークガイドや民間事業者、行政担当者らが、東西南北の四つのエリアに分かれて「南紀熊野ジオ興しチーム」を結成。地元住民らの協力を得るなどして地域資源の発掘やジオパークの活用・普及に向けた活動を展開している。
このたびのプロジェクトでは、同村において昭和30年代ごろまで正月や結婚式など「ハレの日」に振る舞われていた伝統料理を再現。その技術や味を継承してもらうことを目的に、若年層の地域住民を対象に試食会を実施した。なお、記録として残すため、料理の手順などはスマートフォンなどで動画撮影された。
山間部に位置する同村では、日持ちさせるためにマグロに塩を振って一晩置いた「塩シビ」など、保存のために塩や酢を用いた料理が発展。しかし、交通網の発達や道路状況の改善などから、現在「塩シビ」が作られることは少なく、また、当地域に伝わる「サンマずし」や「昆布巻き」を作る人も減少している。
久保岡さんはかつて、地元食材を使ったレストラン「かからの食の店」を営業。和歌山大学の鈴木裕範・客員教授(当時は同大学経済学部助教授)の協力を得て「奥熊野の村の暮らし365日~北山村の食ごよみ~」を制作するなど、同村の伝統料理の継承に尽力してきた。
この日は鈴木客員教授も参加する中、久保岡さんは▽塩シビ▽手作りこんにゃく▽酢でしめた塩シビを入れた大根のなます▽サンマずし▽昆布巻き▽めはりずし▽ごま豆腐―など、主に熊野地方の産品を使った数々の料理を用意。参加者らは料理を口に運び「おいしい」「懐かしい味」などと感想を述べた。
同村役場の里中恵理さんがプロジェクトの趣旨を説明し、鈴木客員教授が「作る様子を見て、手間暇かけて作るからおいしいんだと改めて実感した。古くからのものは残っているが、少子高齢化の影響などでなくなっているのも事実。記録だけではなく、技術として学んで次に残すことが大事」と呼び掛けた。
試食会に参加した、同村出身の井野千代さん(55)は「小さい頃は当たり前に食べていたことを思い出した。おばあちゃんの味と同じでうれしい。生まれ育った場所の料理が、こんなにおいしいんだと再確認した。次に伝えていくために覚えて残したいと思う」と話していた。
(2021年12月7日付紙面より)
長島りょうがんさん招き人権学習 (三輪崎公民分館 )
新宮市の三輪崎公民分館(杉山秀樹分館長)は4日夜、市立三輪崎小学校体育館で、長島りょうがんさんによるトーク&ライブ「そっとやさしく」を開催した。来場者らは、りょうがんさんが展開する、笑いあり、涙あり、音楽ありのステージを楽しんだ。
同公民分館が取り組む人権学習の一環として開催。
りょうがんさんは三重県熊野市出身。中学時代からラグビーに取り組み、県立木本高校ではキャプテンとして東海大会、三重県大会で優勝した。
日本代表選手に選ばれ、オーストラリア選抜と国際試合をした時の縁でオーストラリアなど赤道付近を放浪。その時に出会った子どもたちの姿が忘れられず、教師となった。
「りょうがん」は本名ではなく、自身で「良顔先生」と名乗ったことがきっかけ。体育教師や中学校長、各教育施設勤務、三重大学・三重短期大学でも教べんを振るった経験などを基に、手作りの歌と講話を通した人権ライブキャラバンを全国各地で展開。人の温かさや優しさなどを語り伝えている。現在は三重県生涯学習センター所長を務めている。
りょうがんさんは開催に当たり、「人は人と関わることによって変わることもある。人権学習で大切なことは一人にさせないことだと思う」とあいさつ。さだまさしさんの「奇跡」をピアノの弾き語りで披露した。
唱歌「埴生(はにゅう)の宿」(原題「ホーム・スイート・ホーム」、イングランド民謡)について「音楽の教科書から消えたのが不思議」。アニメ「火垂(ほた)るの墓」(原作=野坂昭如)において、故・高畑勲監督が同曲を挿入歌に採用したことに触れ「音楽は争いも超える。戦争をなくしたい、そういう思いを入れたかった」と話した。
りょうがんさんは、家族やこれまで関わってきた人々との触れ合いや交流、心温まるエピソードの数々を講話。市場で働く母親と、その母親を絵で「世界でいちばん美しい姿」と表現した娘との心の触れ合いを紹介し「99%自分のことを考えていたとしても、1%でも自分のできることがある気がする、そう思うだけでいいと思う。つらそうな人がいたら気に掛けてあげてほしい」と講演を締めくくった。
(2021年12月7日付紙面より)
勝浦小4年が防煙教室
那智勝浦町立勝浦小学校(山下真司校長)で2日、防煙教室が開かれた。新宮保健所の中山夏美さんが講話し、4年生44人がたばこの害について学んだ。
管内の小中学校などを対象に、たばこに関する適切な知識を身に付け、将来「吸わない選択」をしてもらえるよう実施している。
中山さんは「皆さんのお父さんやお母さんが子どもの頃は、大人の男性の10人に8人がたばこを吸っていたが、今は10人に3人まで減っている」と紹介。三大有害物質である▽ニコチン▽タール▽一酸化炭素―が体に与える影響を解説した。
たばこを吸う人の口の中の写真を見せると、児童は「歯茎が紫色」「歯磨きしても色は取れないの?」とびっくり。近年市場を広げている電子たばこについても学習した。
中山さんは「たばこに依存すると、体に悪いことを知っていてもやめられなくなる。だから、最初の1本を吸わないことが大切です。皆さんには、自分の体を守る選択をしてほしい」と語り掛けていた。
(2021年12月7日付紙面より)
新宮労働基準監督署と紀南河川国道事務所紀勢線出張所が3日、串本町高富にあるすさみ串本道路高富トンネル他工事の現場で建設工事パトロールを実施し、労働災害防止のための意識喚起に努めた。
中央労働災害防止協会が主唱し、同署の上位機関となる厚生労働省が後援する本年度年末年始無災害運動(12月1日~1月15日)の一環。この運動は年末年始の慌ただしさや寒冷に伴う労働災害の発生を意識の力で抑え、従事者がそろって無事に一年を締めくくり明るい新年を迎えられるよう願いを込めて展開していて、今年で51回目を数える。
その趣旨を管内に浸透させるために同署は毎年、このパトロールに取り組んでいる。前述した現場は株式会社大林組が同事務所より発注を受けて施工中で、管内でも規模が大きい現場という点で実施を申し入れたという。当日は同署から最近の労働災害の発生状況報告と同運動の概要など、同社から工事概要と施工状況を互いに報告し、以降このパトロールに臨んで現場の安全確保に発生の要因がないかを確かめた。
パトロールの重点実施事項は▽墜落・転落災害の防止▽建設機械やクレーン等災害の防止▽倒壊や崩壊災害の防止▽火災や爆発等災害の防止▽転倒災害の防止▽職業性疾病の防止▽自主的安全衛生活動の推進―の7項目。中前英人署長と鈴木達也・労働基準監督官が同社高富トンネル工事事務所の村上正一所長ら責任者とともに現場を目視し、聴取を重ねた内容に基づいて講評を寄せて意識喚起を後押しした。
同出張所はこの日午前にあった紀伊水道を震源とする地震対応のため、急きょ代理の職員が状況を確認する形を取った。このパトロールの実施に当たり中前署長は、日頃から実践し培っている安全管理に改善点はないかをいま一度確認して無事故で新年を迎えることを同社の現場作業員に呼び掛け。パトロール対象外の管内各現場においても同様に、この運動期間をきっかけにして労働災害防止の意識が高まる状況を願った。
(2021年12月7日付紙面より)
築地公園整備終わり、お披露目 (那智勝浦町 )
那智勝浦町は役場横の築地公園の整備終了に伴い2日、お披露目を行った。この日は日本基督教団紀南教会天満保育園(小宮一文園長)の園児26人が訪れ、新しく設置された滑り台などの遊具で元気いっぱいに遊んだ。
同公園には遊具が少なく、設置されていた木製のブランコやシーソーなども老朽化していたため、今回の整備に至ったという。
11月上旬から着工し、同月末に終了した。遊具購入や整備費含め約1100万円で、コミュニティ助成金(宝くじ助成金)を主な財源としている。
今回、古い遊具やこれまであった築山を撤去。新しく、うんていなどが一つになった滑り台やブランコ、築山、砂場が設置、整備された。
園児は一斉に各遊具や砂場などに駆け寄って順番を待ち、交代しながら笑顔で楽しんでいた。
小宮園長は「他の保育園さまが役場や消防署見学をされているので、本園でも実施を検討しています。その際や築地地区見学時などにこの公園を利用させていただきたいと思います」と話した。
堀順一郎町長は「町内では親子で弁当を広げて遊ぶ場所が少ないため、子育て支援の一環で今回整備させていただいた。子どもたちには目いっぱい遊んでもらい、家族や友人など住民の皆さまが集い楽しめる場所になれば幸いです」と語った。
なお、トイレは役場庁舎内のトイレが利用でき、土、日曜日も開放するという。
(2021年12月4日付紙面より)
読み聞かせの三浦さんが講座 (紀宝町 )
紀宝町神内の紀宝はぐくみの森で、NPO(特定非営利活動)法人ほがらか絵本畑(菰野町)の理事長を務める三浦伸也さんによる子育て講座「大人がわくわくする生き方~笑いあり涙あり~」が開かれた。現代の子どもたちとどう向き合うべきか考えた。
紀宝町ファミリーサポートセンター主催の会員講習会の一環。受講生のほか、関心ある人の参加も受け付け、14人が耳を傾けた。
子どもたちと掛け合いをしながら笑いの渦を巻き起こす、独特の読み聞かせスタイルが特徴。子どもへの読み聞かせから、世代に合わせた講演などに取り組んでおり、療育施設も運営している。
ホワイトボードに「安心、自信、本心」と書くと、赤ちゃん向けの絵本を読んで場を和ました。
「安心」はどんな子どもも求めているものとし、「最近は不安な子が多くなっている」と指摘。スマホでのゲームなどが影響を与えているとし、母親など「安全基地」の存在が必要不可欠とした。
「自信」は子どもに与えたいものと紹介。「リンゴ+オレンジ=」の絵を描くと、子どもたちの発言を紹介し「答えは一つじゃない。大人が一つにしている。失敗は恐れず、できたことにスポットを当てて。大人になっても自信があれば生きていける」と伝えた。
「本心」は大人が求められているものとし、「思っていることと、実際していることの一致点を見つけて。自分に嘘はないか。子どもは常に見抜いている。子どもをフィルターにして自分を見て」と語りかけた。
(2021年12月4日付紙面より)
クリスマス水槽展示開始 (串本海中公園 )
串本町有田にある串本海中公園センター水族館(森美枝館長)で2日、クリスマス水槽の展示が始まった。
館内Aゾーンにある串本の海の話題を伝えるトピックス水槽の一趣向。年2期、クリスマス前と年末年始はスタッフ発案の風物詩企画で飾るのが定例化していて、今年は佐久間夢実さんと中村公一さんがクリスマス水槽を形作った。
同日現在で数はまだ少ないが、名前に星の言葉が入るミツボシクロスズメダイを搬入。明るい夜空に似た色彩のデバスズメダイやホンソメワケベラ、星の形をしたアライボヒトデやサンタクロースの衣装を連想させるアカシマシラヒゲエビ、クリスマスになじみ深い色の毛糸をまとったモクズショイなど12種類37匹をサンゴのツリーや雪だるま、人工物となるが雪の結晶の飾りや星空の背景と一緒に展示し、串本の海の聖夜を構成している。
全体構成は星空も好きな佐久間さんが主に担当。テーマは「星の導き」で、ツリーの頂に掲げる飾り物「ベツレヘムの星」に串本の海の生き物がにぎやかに集う様子を見ることができる。佐久間さんは「クリスマスの飾り物には一つ一つ意味がある。この水槽が皆さんにとって、込められた意味を考えながらクリスマスを過ごす導きになれば」と思いを込め、期間中の鑑賞を呼び掛けている。
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年末年始の趣向も控えているため、展示期間は25日(土)まで。別途、くしもと大水槽の年末恒例となっているサンタクロース姿での水槽掃除を11、18、25日の各土曜日午前11時から30分程度実施するそうで、併せて楽しみながら串本の海に親しんでほしいとした。
これらの企画は館内実施で、鑑賞する場合は入館料が必要となる。クリスマス水槽は期間中に生き物の状態を見て内容変更する場合があり、佐久間さんはミツボシクロスズメダイの採取を引き続き試みて数を充実していきたいと話している。問い合わせは同センター(電話0735・62・1122)まで。
(2021年12月4日付紙面より)
旧チャップマン邸で記念展 (新宮市 )
新宮市丹鶴の旧チャップマン邸で「文化学院創立100周年記念展 西村伊作の理想の学校 in Shingu」が開催されている=写真。「西村記念館・旧チャップマン邸の会」(関康之会長)主催。12日(日)まで。入場無料。
今年は市名誉市民の西村伊作が、1921年に東京駿河台に歌人・与謝野晶子・寛夫妻や画家・石井柏亭らの協力を得て文化学院を創立して100年の節目を迎える。
伊作は、理想の教育のため、当時第一線で活躍する芸術家や文化人、学者らも講師として招き、画一的な枠にはめる教育ではなく、男女の区別なく自由に個々の天分を伸ばす、当時としては画期的な教育を実践。日本で初めての男女平等教育を実施し共学を実現した。
記念展では、文化学院の初代校舎を復元した「ルヴァン美術館」の協力を得て、伊作が創立した文化学院の歩みや学院の教育、戦時体制において弾圧を受けてきた歴史などをパネルで紹介。また、伊作をはじめ、石井柏亭、棟方志功、佐藤春夫、有島生馬、村井正誠ら講師陣の絵画作品などを展示している。
記念展開催に当たり関会長は「残念ながら文化学院は2018年に閉校となったが創立100周年は大きな節目。娘や自由の教育のために東京で建物を建てた心意気、当時の日本を代表する文化人がほれ込んだその意気込み、そして新しい教育のために国からの補助も受けなかった熊野人・伊作の反骨精神を感じてほしい。この記念展が、伊作と文化学院のことを広く知るファーストステップになれば」と話している。
時間は午前10時から午後5時(最終日は3時)まで。6日(月)は休館。11日(土)午後1時30分からは、伊作のひ孫で元学院教員の立花万起子さんが、「西村伊作と文化学院―100年前の芸術教育―」を演題に講演する。
(2021年12月4日付紙面より)