木質バイオマスの発電所 (新宮市 )
新宮市佐野のスーパーセンターオークワ南紀店の裏手で、新宮フォレストエナジーによる木質バイオマス発電所(川畑智昭所長)が稼働している。発電量は約3200世帯分となる約1680㌔㍗。その発電の具体的な方法や、地域が得られる恩恵について尋ねた。
フォレストエナジーは、東京都に本社がある。新宮の発電所は、昨年の12月末から稼働。川畑所長(46)は新宮発電所の大きな特徴として「既存のボイラータービンではなく、ガス化による発電」を挙げる。「炭小屋で炭を作るとき、空気を絞り炭化させ、煙突からガスを出す。同様の原理でガス化し、そのガスでエンジンを燃焼させ、電気と熱を取り出す」という。
このガス化が、地域林業への大きな貢献をもたらす。「ボイラータービン型の発電所は大型でないと採算がとれず、膨大な量の木が必要。集材に県境を越え、輸入にも頼ることになる。新宮発電所はガス化のおかげで、周囲50㌔ぐらいの地域の未利用材を100%使って、地産地消で発電できる」と明かす。新宮発電所の材はほとんどがスギという。
具体的には、年間で約2万㌧を集材し、新宮発電所内で切削してチップに。これを乾燥させて、ガス化設備に送る。なお乾燥させるのに、発電で発生する熱を利用する。チップはガス化により、バイオ炭となる。熊野地方の農家が、農地用にこのバイオ炭を利用し始めている。他にもバイオ炭は固めると成形炭として利用できるほか、土壌改良材や浄水フィルター、アスファルト混入材などに使用できる。このバイオ炭は、年間で約1500㌧ができる。
発生したガスは、ガスエンジンに送られる。エンジンの回転力を発電機に送って発電する。発電機は500㌔㍗のものが4台あり、合計で2000㌔㍗の発電能力があるが、電力会社の送電容量の関係で出力を抑えている。燃焼で発生する熱は約3800㌔㍗で、約90度の温水として取り出す。
この温水はヨーロッパであれば、利用できるインフラが整っているが、日本にはなく、整備するにも高額。このため新宮フォレストエナジーでは、余剰熱を利用し乾燥チップ製造を行い、同チップの販売先として、今後周辺地域で導入が期待される超小型のガス化発電機「ボルター」向けなどに販売を予定している。ボルターのチップ使用量が年間で約500㌧(生チップベース)、約40㌔㍗(約60世帯分)の電気と約100㌔㍗の熱、年間で約10㌧のバイオ炭を産出する。使用するチップは新宮発電所から供給し、設備メンテナンスも受けられる。
川畑所長は「山をきれいにがコンセプト、それに伴って川も海もきれいになる。林業の未利用材を有効利用し、電気や熱、バイオ炭を生み、それらを活用したサービスを地域に供給することを通じて地域活性化に貢献できれば」と思いを語った。
(2022年6月26日付紙面より)
熊野カフェで意見交換 (那智勝浦町 )
那智勝浦町勝浦の「熊野カフェ」は18日、オープン10周年記念事業の一環として、勝浦観光に関する語りイベント「勝浦温泉の今昔(いまむかし)」を開催した。語り手を務めた「かつうら御苑」会長の中定俊さん(74)が、町の景気が良くにぎやかだった当時の思い出話やまちづくりについて語り、フリートークも行われた。
過去に町観光協会長なども務め、町の活性化に尽力してきた中さん。幼い頃の思い出について、「小さい頃からお蛇浦(じゃうら)海岸や千畳敷でよく遊んだ。近くには旅館があり、有名な役者も来て、時代劇の撮影もよく行われていた」と説明した。
昭和から平成の好景気だった当時を振り返り、「鳥羽・勝浦・白浜は新婚旅行のメッカ。多くの新婚旅行客を迎えた。人口も2万5000人ほどいた。マグロ船も多く、昼も夜もとにかく活気があった」。
体育文化会館やゴルフ場、グリーンピア南紀なども建設され、今後のさらなる発展に期待していたと述べた。しかし、バブルが崩壊し、東京などの大都市は大変な事態に陥っていたとし、同町では3年ほど遅れて影響がやって来たと述べた。
現在においては、コロナ禍が収束して多くの観光客が戻り、町が活気づいたとしても問題があるとし、「人口が当時から1万人ほど減少している。多くの観光客を受け入れ、サービスなどに対応できる人材がいない状態にある」と指摘した。
そのほか、ふるさと納税の利活用や民間と行政の会話・協議の場づくりの重要性を訴えた。中さんは「観光客については民間が努力する部分。しかし、従業員などの雇用の問題は行政の力が必要になる」と語った。
フリートークでは「観光でもうけることができれば、福祉にもお金が使える」「この町が潤うには観光振興しかない」「行政と民間が連携できずに役割分担ができていない」「町民と行政が交わるような基本構想が必要では」など、町の活性化や観光産業についての意見が出された。
同店オーナーの畑中卓也さんは「この町の地理的ハンディを補うのはやっぱり人だと思う。参加された皆さんは心から町を良くしたいと思っている。今後もこのような機会を持ちたい」。
中さんは「人口が減り続けるのは間違いない。常に行政や町、関係者らで対話し、意見を言い合える場が必要だと思う」と話した。
(2022年6月26日付紙面より)
紀宝町には31世帯50人が
昨年度、県外から三重県に移住した人が541人に上り、6年連続で前年を上回った。前年度から約5%増となり、集計を始めた2015年度から6年連続で前年を上回っており、7年間の累計で2460人となった。
移住者数は15年度124人、16年度205人、17年度322人、18年度371人、19年度383人、20年度514人。昨年度の541人のうち市町の補助・助成制度、空き家バンクの利用が半数以上だった。
熊野市、尾鷲市、紀北町、御浜町、紀宝町の東紀州地域には117人が移住し、全体の21・6%を占めた。
このうち、紀宝町には31世帯50人が移住。東紀州地域全体の42・7%に上り、30~40代の子育て世代の転入が目立っているという。
町では移住・定住を支援、推進する町有地分譲、空き家バンク制度をはじめ、生活体験を通して町への移住を検討してもらうお試し住宅制度などを展開。昨年度は移住後の新生活支援制度を新設するなど取り組みを進めてきた。
本年度は、国・県の補助金、交付金を活用し、若者の定住促進、婚活支援、結婚新生活支援などを拡充する。大学などを卒業したUターン、Iターン、Jターン者の奨学金返還支援などを新たに創設するほか、移住者に移住定住支援員を委嘱し、生活体験を通して感じた町の魅力を発信してもらう。
町の担当職員は「支援制度をより充実させ、積極的に移住、定住対策を推進していく」と話している。
(2022年6月26日付紙面より)
三輪崎保で梅シロップ作り (新宮市 )
新宮市の保育所型認定こども園「三輪崎保育園」(中畑元太園長)で23日、5歳児による梅シロップ作りがあった。
毎年恒例の行事で、みなべ町の農家から届いた南高梅で梅シロップを漬け、夏の終わりのウオーターパーティーなどでかき氷にかけてみんなで味わう。
黄色や赤に完熟した南高梅に触れた園児たちは「モモと同じにおいがするよ!」「いいにおい!」と笑顔になり、エプロンと三角巾姿でシロップ作りをスタート。つまようじで丁寧に「おへそ」を取って水で洗い、キッチンペーパーで優しく水を拭き取った。梅を砂糖と交互に瓶に詰めたら完成。
漬け込みを終えた園児たちは「どのくらいで完成するの?」と完成を心待ちにしていた。
(2022年6月26日付紙面より)
市野々小が現場体験学習 (那智勝浦町 )
国土交通省近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所は20日、那智勝浦町の「那智川本川上流帯工(左岸)他工事」の現場に同町立市野々小学校(中西健校長)の児童を招き、砂防工事についての現場体験学習を実施した。全校児童29人がミニショベルカーの操作や砂防えん堤への石積みを体験し、土砂災害からまちを守る仕事に触れた。
紀伊半島大水害(2011年)において土石流などで大きな被害を受けた那智川流域では、現在までに8支川に15基の砂防えん堤の建設が完了。那智川本川上流帯工(左岸)他工事は井筒建設株式会社が施工し、発生した土石流の流れを緩和して堆積させる遊砂地の造成などを行っている。
学習には同事務所那智勝浦監督官詰所・建設専門官の追鳥裕樹さんや井筒建設の瀬古幸信さんらが協力。追鳥さんは現在進んでいる砂防工事の意義を解説し、「砂防施設は造って終わりではなく、たまった土砂をショベルカーなどで運び出す作業が必要。今日は、皆さんにその工事をしてもらいます」と説明。児童は重さ1㌧弱のミニショベルカーに乗り込み、プールに浮かぶゴムボールを土砂に見立てて運び出していった。
3~6年生の体験では、県内有数の観光地である那智川流域の景観を保全するため、砂防えん堤などに職人が一つ一つ手作業で石積みを施していることを説明。井筒建設の職員が製作した模型に石を貼り付け、その構造を学んだ。
大谷英吉君(1年)は「ショベルカーを動かしてボールがいっぱい取れたのが楽しかった。またやりたい」。米川愛琉(あいる)さん(4年)は「ショベルカーが動いているのを見たことはあるけれど、動かしたのは初めて。楽しかった」と話していた。
(2022年6月21日付紙面より)
太地小4年が福祉学習
太地町立太地小学校(海野文宏校長)で16日、福祉学習があった。4年生20人が美熊野福祉会事務局長の橋上慶一さんと同福祉会利用者で全盲の溝本和彦さんから視覚障害を持つ人の見え方や生活などについて教わった。
同校は町社会福祉協議会(岡本研会長)によって「福祉教育推進校」に指定にされている。学習は、児童がさまざまな人の立場や人生を体験することで、自分たちに何ができるのかを考えて福祉への学びを深めることを目的に行われている。この日は同協議会や民生委員、地域包括支援センターなどの職員も来校した。
冒頭で岡本会長は「これから皆さんが、どのように成長してくれるかと思い企画しています。今日、学んでもらうことを忘れず今後に生かしてもらいたいと思います」とあいさつした。
橋上さんと溝本さんは子どもたちを前に「見えない人のことを知ろう」をテーマに講話。視覚障害の症状には▽全く見えない▽物が半分しか見えない▽望遠鏡を通しているようにしか見えない―など、人によって違いがあると説明。生活の中でさまざまな状況を把握しているとし「私たちと同じように毎日を安心して暮らし、いろんな場所に行って楽しんだりする権利があります。みんなが思いやりの心を持って、お互いに助け合うことを忘れてはいけません」と述べた。
橋上さんは溝本さんの日常生活を交えながら白杖や盲導犬、点字ブロック、音響信号機、ガイドヘルパーの重要性を語った。その後、児童は溝本さんの手を引いて声をかけながら4年生の教室や階段の上り下りの誘導を実践。アイマスクを着用し全盲の体験や点字学習にも取り組んだ。
授業を終え、筋師令那(すじし・れな)さんは「アイマスクを着けて目が見えない体験をして怖かったけど、少しでも気持ちが知れてよかった。これから困っている人を見かけたら進んで手伝いができるようになりたいと思った」。
海野校長は「幼い頃から福祉を学習することによって障害を持った方が、どのような生活や困り事、上手な活動しているかを知る貴重な経験になると思います。授業を通じて困っている人に自然とサポートができる思いやりのある大人に成長していってもらえれば」と話していた。
(2022年6月21日付紙面より)
潮岬分団第3部器具置場開所 (串本町消防団 )
串本町潮岬、望楼の芝西端の道向かいで17日、串本町消防団潮岬分団(稲田賢団長、芝山克分団長)の第3部器具置場の開所式があった。
住民の高台移転に伴い世帯数が急増傾向にある同分団管内。同分団はとりわけ新築住宅が増えている芝古地地区の消防力強化を目的として第3部の新設(増設)へと動き出し、団本部経由でその思いを知った町も潮岬地区財産区所有地の無償貸与を受けて器具置場を新設し可搬式小型動力ポンプ軽積載車を配備。互いに出動可能な状況を整えて、この日の開所式へとこぎ着けた。
同分団からは芝山分団長以下6人が代表出席。田嶋勝正町長は「この施設で防災力も高まると思う。潮岬分団の皆さん方におかれては、地域の皆さん方の安全安心のため尽力いただくことを心からお願いしたい」と述べて器具置場と車両の鍵を託し、芝山分団長は「潮岬区民、並びに広めては串本町民の生命と財産を守るため大切に活用していきたい」と応えて預かった。
来賓の町議会・鈴木幸夫議長と潮岬地区・西敏幸代表区長が見届け、立ち会った稲田団長は「芝山分団長を中心に、潮岬の区民方が安心して暮らせるよう警戒に当たってほしい」と述べて団員を鼓舞し、併せて土地を提供している同財産区への感謝も掲げた。
器具置場は木造平屋で延べ床面積は24・8平方㍍。配置する器具などの屋外整備を想定し前面に5㍍せり出すコンクリート舗装が付帯するが、詰め所となる待機室はなく形状としては倉庫となっている。
(2022年6月21日付紙面より)
丹鶴幼で火災避難訓練 (新宮市 )
新宮市立丹鶴幼稚園(尾﨑卓子園長、園児39人)で17日、火災避難訓練が行われた。園児らは避難経路をたどり防災への意識を高めた。
同園では定期的に火災や地震、不審者などの各訓練を実施し、日頃から防災・防犯意識を高めている。
この日は、職員室から火災が発生したと想定。午前10時30分ごろに放送が流れると、子どもたちは教職員の指示に従って避難を開始し、手を口と鼻に当て、落ち着いて近隣にある市保健センター隣の花壇・タウンガーデンへと逃げた。
尾﨑園長は「今日は皆さん、上手に逃げることができました」と講評。「絶対に火事が起きないということはなく、おうちでも発生することもあるかもしれません。その時は訓練したことを忘れず、安全に避難しましょうね」と呼びかけていた。
(2022年6月21日付紙面より)
アジサイをささげ祭典 (熊野那智大社 )
那智勝浦町那智山の熊野那智大社(男成洋三宮司)で14日、「紫陽花(あじさい)祭」が営まれた。アジサイを神前にささげて自然の恵みへの感謝をささげるとともに、梅雨時の無病息災を願った。
境内の紫陽花園でも花盛りを迎えるころであるこの日に、毎年実施されている。今年は風雨ともに強い悪天候の中で行われた。祭典が行われた拝殿では、神職がおはらいの後、神前にアジサイを供え、男成宮司が祝詞を奏上。アジサイの小枝を手にした巫女(みこ)が、神楽「豊栄(とよさか)の舞」を奉納した。
同様の神事は、別宮の飛瀧(ひろう)神社でも営まれた。また同大社のちょうず鉢には、たくさんのアジサイが浮かべられ、竹筒にも生けられていた。コロナ禍以前は茶席も設けられ、参拝者にお茶と菓子が振る舞われていたが、それは今回もなかった。
男成宮司(68)は、新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きつつあるが収束には至っていないこと、ロシアのウクライナ侵攻など世情は厳しいことなどに言及。「アジサイを供え、皆さんが健やかでますます栄えるよう、祈らせていただいた」と話した。
1カ月後に控えた例大祭「那智の扇祭り(火祭)」についても「今年は通常通り、扇神輿(みこし)や大たいまつも出る。感染対策を行いつつだが、別宮(那智の滝前)は外なので、拝観者も入ってもらえる。拝観者と共に、五穀豊穣(ほうじょう)や新型コロナ収束を祈りたい」と述べた。
(2022年6月16日付紙面より)
ケアマネが集い研修 (新宮市 )
新宮市地域包括支援センターの主催による、第2回新宮市ケアマネジャー支援会議が14日、新宮市役所別館であった。ケアマネジャー(ケアマネ・介護支援専門員)の約30人が参加、講演などを通して知識を深めた。
新宮市民で介護保険の要支援者を担当している、新宮市から熊野市までの事業所に所属するケアマネが参加対象となった。新宮市の生活支援コーディネーターの福島圭さんが「新宮市での生活支援コーディネーター活動について」と題して説明を行ったほか、公益財団法人さわやか福祉財団さわやかインストラクターの高林稔さんが「生活支援コーディネーターの役割を知ろう! ~今 助け合いの地域づくりが求められています~」を演題に講話した。
高林さんは長寿社会における「人生100歳時代」について「二幕目の人生は、健康、運動、社会参加が大事」と説明。少子高齢化についても、人口推計のグラフを基に、働ける世代が減っていること、少人数で高齢者を支える「肩車型」の社会へと進んでいることを示した。「高齢者も支えられるだけでなく、できる範囲でできることを。高齢者でも働ける人は働き、支え手を増やす努力が必要に」と述べた。
地域包括ケアシステムについて「住み慣れた地域で、医療、介護、助け合いの切れ目のない支援を行う取り組み」と紹介。「目指すのは、住み慣れた地域で、自分らしく安心して暮らし続けること」と伝えた。
助け合いの重要性や、つながりや信頼関係の構築の方法にも言及。生活支援コーディネーターと連携し、地域ケア会議も活用して、利用者の自立した生活を目指すべきと力を込めた。
(2022年6月16日付紙面より)
串本中2年対象に手話講座 (串本町 )
串本町立串本中学校(濱﨑和司校長)の2年生39人を対象にした手話講座が13日にあり、生徒らが聴覚障害者の実像や求められる接し方を知る機会を持った。
町は2019年12月に手話言語条例を制定。その趣旨に基づき前年度から町立小中学校を対象としたこの講座を出張実施するようになり、本年度は同日現在で串本中と潮岬中の各2年生が別日に講師派遣を受けて受講する計画となっている。
串本中は先んじての開講で、東牟婁新宮聴覚障害者協会会員の須川陽一さんと美熊野福祉会の手話通訳者・大代聖子さんが講師として来校。須川さんは生まれつき聞こえない自身の生い立ちや生活の様子を伝えて生徒の聴覚障害者への理解を促し、「耳が聞こえないだけで、ほかはみんなと一緒」としてみんなと同じ生活をしていくために生活上の支障をなくする工夫を積み上げていることなどを紹介した。
聞こえないことで受ける差別をなくしたい、という思いも掲げ、今までにどのようなことに困ったか、その時にどのような支援がほしかったかも説明。聞こえないことが周囲に気付いてもらいにくいことも課題だと考えて作ったコミュニケーションツール「防災バンダナ」を紹介するなどして障害者差別解消法が社会に求める合理的配慮の義務がどのような発想に基づくかを示し、目指す社会への筋道をつけた。
後半は聴覚障害者とのコミュニケーション手段として手話以外に空書、筆談、口話、身ぶりがあり、さらに相手の表情から言葉が帯びる感情を見て取ることなどにも触れて「伝える気持ちを大切にして接してほしい」という思いを生徒に託すなどした。
受講した生徒の一人、荒木陽芽花(ひめか)さんは「手話だけでなく他の手段でも会話ができるという話が勉強になった。手話は覚えたいし、覚えきれなくてもしっかりと相手の反応を見て接していきたいという気持ちになった」と感想を話した。
潮岬中は27日(月)に受講予定となっている。
(2022年6月16日付紙面より)
国交省が導入地域の募集開始
国土交通省は4月、地方版図柄入りナンバープレートの導入地域と、新たな地域名表示(ご当地ナンバー)の導入を伴う図柄の募集を開始した。既存の地域表示名または都道府県の全域を単位とする図柄については2023年10月ごろ、新たな地域名表示を単位とする図柄については25年5月ごろに交付を開始する予定だ。
「ご当地ナンバー」は、国土交通省が自動車のナンバープレートに表示する地名について、対象市町村の区域を限って、新規の自動車検査登録事務所の設置によらずに独自の地名を定められるよう、2006年に開始した制度。
「富士山ナンバー」など、22年5月現在で46地域が導入している。三重県では鈴鹿市、亀山市で「鈴鹿ナンバー」、四日市市で「四日市ナンバー」、伊勢市や鳥羽市、志摩市などで「伊勢志摩ナンバー」が導入されている。
当地域では過去に導入に向けた活動が、導入条件のハードルの高さから頓挫した経緯があるが、今回の募集では「登録車が5万台以上または登録車と軽自動車との合計が8・5万台以上」(複数市区町村の場合)など、軽自動車の保有台数の高まりを考慮して軽自動車との合計を条件とするなど、導入条件が緩和されている。
しかし、導入に当たっては要綱を満たす地域の市町村が住民の意向を踏まえた上で、都道府県を通じて地方運輸局に要望する必要がある。
なお、21年3月31日現在の新宮市・東牟婁郡の登録自動車・軽自動車数は4万9415台、田辺市・西牟婁郡では9万2880台、三重県熊野市・南牟婁郡は2万9875台、尾鷲市・北牟婁郡で2万6643台となっている。
さて、そんな「ご当地ナンバー」導入のメリットといえば、地域のPR、ブランド化が挙げられる。いわば「走る広告塔」だ。愛郷心もますます高まることだろう。一方で、居住地の特定につながりやすいといった問題を指摘する声もある。
14日に開会した新宮市議会6月定例会では、「ご当地ナンバー導入の実現を求める請願書」が提出された。前述した当地域の登録自動車・軽自動車数からみて「ご当地ナンバー」導入に向けては、広域で議論を交わしていかなければならないことは明らか。各自治体の今後の動きに注目が集まる。
(2022年6月16日付紙面より)
第37回紀南テニス協会団体戦
なちかつGGCクラブ大会
学童軟式野球大会(B級)東牟婁大会
全国高校総合体育大会県予選会
渚の会が地元区らと連携 (那智勝浦町 )
日本財団「海と日本PROJECT」と環境省などが実施する全国一斉清掃キャンペーン「春の海ごみゼロウイーク」にエントリーした「かつうら渚(なぎさ)の会」(猪飼伸会長、会員22人)は5日、ウミガメの産卵地としても知られる那智勝浦町下里の太田川河口(通称・大浜海岸)で清掃活動を実施した。会員や地元の高芝区、地域の各団体、一般参加者など約80人が集まり、作業に汗を流した。
清掃キャンペーンは同財団らが海洋ごみ問題の周知啓発と海洋ごみの流出を少しでも防ぐことを目的に、「ごみゼロの日」の5月30日から6月8日の「世界海洋デー」前後を「春の海ごみゼロウイーク」、9月18日の「ワールドクリーンアップデー」から26日までを「秋の海ごみゼロウイーク」と定めている。
この日は開始時刻より1時間以上早くから現地に集まり、作業に取り組む人の姿も多く見られた。キャンペーンの必須アイテムである青色のシャツや帽子、タオルなどを身に着けた参加者はごみ拾いに加え、大きな木々の切断や海藻、流木などを集めて焼却した。
清掃に参加した堀順一郎町長は「渚の会を中心に地元区の方々や県、役場、各団体、サーファーの皆さまにご参加いただけて良かった。この活動を通して、町民の皆さまにも地域の魅力や環境の大切さを再認識していただけたら」。
高芝区としても年に数回、大浜を清掃しているという伊藤善之区長は「この浜では釣り客やパラグライダーをされる方もいる。町内外からご参加いただき、感謝しています。近年では不法投棄も問題になっているため、浜をきれいにしていただくことで抑止にもつながる。また、流木が流れてこないために行う施策の検討も必要かもしれない」と話した。
猪飼会長は「多くの皆さまにお集まりいただき、本当にありがたい。ウミガメが産卵に訪れる場所が少しでもきれいになればうれしいです」と語った。
この日は高芝区民、町赤十字奉仕団、「なちかつ古道を守る会」、南紀パラグライダー、玉の浦リップルズクラブ、東牟婁振興局、町役場職員、などの各有志が参加した。
(2022年6月7日付紙面より)
潮岬小6年対象の租税教室 (串本町 )
串本町立潮岬小学校(水上茂秀校長)の6年生25人を対象にした租税教室が2日にあり、児童は講師の新宮納税協会会員と一緒に税金の大切さを考える機会を得た。
この教室は、新宮・東牟婁租税教育推進協議会(会長=山端克明(やまばな・よしあき)新宮税務署長)が学校からの依頼に応えて講師を派遣する形で実施。串本町内ではこの日が初実施で午前に串本小、午後に潮岬小でそれぞれ開講した。
潮岬小へは同協会を代表して青年部会の野中亮伸副部会長と税理士を本業とする部会員・中谷公大さんが同協会の泉晶子書記と共に来校。前半は中谷さんと一緒に身近なところでどのような税金があるかを考え、約50種類ある税金がなかったら世の中はどうなるかを映像教材「マリンとヤマトの不思議な日曜日」を鑑賞しワークシートで考える流れでイメージし、税金の大切さを実感した。
後半は野中副部会長が児童に身近な学校の建設や義務教育にどれぐらいの税金が充てられているかを説明。学校は平均15億円、義務教育は小学生1人につき平均で年間89万円(月約7万4千円)と伝え、通い事の月謝のように毎月これを払うのは大変だと児童と共感しあって中谷さんのいう大切さを後押しした。
児童は説明に出てくる額の実感を得るきっかけとして1億円(1万円札×1万枚)の重さも体験。中谷さんは「税金はみんなから集める社会の会費だとおうちの人に話し、みんなの税金でつくった学校を大切にして勉強や運動に頑張ってほしい」と呼びかけて締めくくった。
同協議会事務局によると、串本小へは新宮税務署の職員を講師として派遣。同町内では13日(月)に西向小、15日に(水)に出雲小と橋杭小で開く予定(以降の日程は未発表)という。
(2022年6月7日付紙面より)
歴探スクールで白石博則さん (新宮市 )
熊野学研究委員会歴史部会・新宮市教育委員会が主催する令和4年度熊野学講座「第37回歴史探訪スクール」が5日、同市下本町の市文化複合施設「丹鶴ホール」であった。和歌山城郭調査研究会代表の白石博則さんが「奥熊野の城跡―その魅力と歴史を語る」をテーマに講話。約80人が聴講した。
開講式を兼ねたこの日は、講演を前に速水盛康教育長があいさつ。熊野学研究委員会の山本殖生さんが講師の白石さんを紹介した。
白石さんは、最近では天守のない城も注目されている傾向にあるとし「城跡から過去の人間や生き様など、『人との出会い』を感じているのでは」と推測した。
近世城郭や中世城郭を写真で紹介し、村やクニなど公共団体が維持管理をしていた古代から、武士の館であった平安~鎌倉時代を経て南北朝時代には山城が出現。戦国時代には山城と館がセットになった根小屋式城郭となり、その後、安土城や大坂城に代表される織豊系城郭が誕生したと説明した。
那智山麓、那智川の両岸の二大勢力(廊ノ坊塩崎氏一族らと実報院米良氏+堀内氏)による那智山内の覇権争いの際に、廊ノ坊が籠城した勝山城跡(那智勝浦町、1581年落城)について「山麓には関所もあったとされる。元々地域の政治的な場だった」。
勝山城の対岸にあった実報院の藤倉城跡の主要部分は、インターチェンジのために削減されたが多くの遺物が出土していることなどを紹介。「勝山城籠城戦は奥熊野戦国史のハイライト。堀内氏は勝山城を落とした後、さらに南に進攻していった」と説明した。
築城の名手・藤堂高虎が85~89年ごろに築城したと伝わる赤木城(熊野市紀和町)について「枡形虎口(ますがたこぐち)や横矢掛(よこやが)りなど織豊系城郭の特徴が見られる。豊臣政権にとって熊野木材の確保は喫緊の課題であり北山支配は極めて必要度が高く築城の契機となったと考えられている」。
堀内氏が築き、堀内氏善が蟄居(ちっきょ)したとされる京城跡(紀宝町大里)について「奥熊野随一の優れた縄張り。奥熊野で使われる築城技法を全て使った城だが織豊系城郭の影響は限定的」とした。
白石さんは、石垣・石積みの多用や、城内に聖地の印として大岩が残されているなど、奥熊野の魅力や特徴、登りやすい城跡を紹介。「戦国・安土桃山・江戸時代の三期の城が狭い範囲で見学できる。奥熊野は隠れた名城の宝庫」と評した。
(2022年6月7日付紙面より)
那智勝浦町の海岸沿いで発見
那智勝浦町の海岸沿いで、国指定天然記念物であるムラサキオカヤドカリを発見した。陸にすむ大型のヤドカリの一種で、日本の固有種。体長は7㌢ほどで、鮮やかな紫色の体色をしており、発見時にはサザエの殻をすみかにしていた。
世界の熱帯・亜熱帯を中心に分布するオカヤドカリ属は15種が知られており、日本にはそのうちの7種が生息。主生息地である沖縄諸島や小笠原諸島以外にも、高知県や宮崎県、東京都の八丈島や伊豆大島などで発見されている。
ムラサキオカヤドカリはその中でも最も北方に分布し、低温に適応した種であると考えられている。普段は海岸近くの林の中に住み、夏の繁殖期には夜間に海岸へ移動して波打ち際で幼生を海へ放つ。北限に近い生息地である紀伊半島へは、黒潮に乗って幼生が運ばれたものとみられる。
小型のムラサキオカヤドカリは赤や白、明褐色などさまざまな体色を持っているが、大型の個体はおおむね鮮やかな紫色になる。
国内で発見されている7種のオカヤドカリは、いずれも国指定天然記念物であり、個人での採取、飼育、販売は法律によって禁じられている。
(2022年6月7日付紙面より)
県内行進、新宮市で最終日 (国民平和大行進 )
原水爆禁止和歌山県平和行進実行委員会は、核兵器廃絶を訴えながら被爆地広島・長崎を目指す「国民平和大行進2022」を実施している。5月6日に橋本市から始まった県内の日程は2日をもって終了。今後は三重県に引き継がれ、8月4日(木)に終結地の広島県の広島平和記念公園に到着する予定。
広島と長崎に原爆が投下されて77年目。2017年7月、国連総会で賛成122、反対1の大差で核兵器禁止条約が採択され昨年1月22日、50カ国を超える国々の参加で国際法となった。なお、唯一の被爆国である日本は参加も批准もしていない。
平和大行進は1958年6月、たった1人の行動から始まった。現在では全都道府県および8割以上の自治体を通過し、毎年10万人の人々が参加する国民的行動となった。
条約発効後2回目となった今年の平和行進。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、昨年に引き続き従来通りの集会と行進を中止。核兵器のない平和な世界への願いを署名とペナントに託し、各自治体を宣伝カーでつないだ。
和歌山県最終日の2日、新宮市では、市役所駐車場で出発集会があった。紀南地区労働組合協議会の岸本芳明事務局長は、ロシアによるウクライナ侵攻、日本で米国の核兵器を配備して共同運用する「核共有」の議論を求める声が上がっていることなどに言及。「今やるべきことはウクライナからのロシア軍の撤退、国連憲章に基づく平和と核兵器の禁止・廃絶を求めていくこと。唯一の被爆国である日本が一日も早く核兵器禁止条約に署名し批准するように求めていきたい」とあいさつした。
田岡実千年市長は「ロシアによるウクライナ侵攻により国際社会の平和と安全が脅かされており、地球上には人類を絶滅させるほどの大量の核兵器が蓄積・配備されている。こうした状況の中にあって唯一の被爆国であるわが国の果たすべき役割は極めて重要」。
「平和行進にご参加の皆さんの行動を支持し、共に力を合わせて核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向かって前進したい」と激励した。
原水爆禁止和歌山県協議会の里崎正事務局長が諸報告を行い、和歌山市民生協の杉岡龍一さんが「2022原水爆禁止広島大会の成功を目指して共に頑張りましょう」と決意表明。参加者らは核のない世界恒久平和の実現に向けて行進を開始。三重県に宣伝カーをつないだ。
(2022年6月4日付紙面より)
神倉小4年生がふるさと学習 (新宮市 )
新宮市立神倉小学校(藪中秀樹校長)の4年生71人は5月31日、市内各所でふるさと学習のフィールドワークを実施した。児童は各クラス2班に分かれ、新宮城跡、浮島の森、神倉山、徐福公園へと赴き、地域の歴史や文化について学びを深めた。
学習は同校運営協議会(下岡輝子会長)による「ヤタガラス子ども未来プロジェクト」の一環。まちの歴史や文化を学び、愛着を持ってもらおうと、同協議会メンバーを中心に有志ボランティアの協力を得ながら取り組んでいる。4月18日には、下岡会長をはじめコーディネーター5人が来校し、事前授業が行われた。現地で学んだ内容や感想は後日、壁新聞などで発表する予定となっている。
児童らはガイドブックや取材用紙を手に同校を出発。各班にはコーディネーターなどのボランティアも同行した。1組の「おいの伝説班」17人は東くめ生家跡を訪れた後、「新宮藺沢(いのそ)浮島植物群落」(浮島の森)で学習。市観光ガイドの会の赤嶋恵子さんから浮島の森の成り立ちや同所で見られる動植物について教わった。
旧千穂小学校時代の図工クラブの児童たちが1986(昭和61)年度に卒業記念として制作した紙芝居「浮島の森」で伝説の復習もした。
赤嶋さんは「昔、この場所は海の中にあった」「寒い所と暖かい場所に生息する植物が混じり合うように生えています」などと説明。子どもたちは熱心にメモを取り、敷地内の珍しい植物や昆虫を観察して回った。
森岡源氏君は「『お正月』などの有名な歌が、新宮出身の東くめさんが作ったのが印象に残った。楽しかったです」。米良晄君は「昨年、新宮市に引っ越してきたので、勉強になった。世界遺産のある町で、これからもいろんなことを調べたい」と話していた。
(2022年6月4日付紙面より)
ジオ興しチームと橋杭小 (串本町 )
串本町域を枠組みにして地質資源活用の在り方を考える集まり「ジオ興しチーム」が2日、町立橋杭小学校(溝内聡子校長)の6年生12人と連携して橋杭岩保全活動に取り組んだ。
町産業課や町教育委員会教育課、同町商工会や南紀串本観光協会の各職員と町内で活動する南紀熊野ジオパークガイドで結成する同チーム。会議を開いて前述した在り方を模索する中で町域へさらに考える裾野を広げる必要があると気づき、その足掛かりとして町域でも特に象徴的なジオサイト「橋杭岩」を架け橋にして同校と連携することを考えた。
同パークの学びを通して地域への愛着を深め、その精神で保全活動に取り組んで考えるきっかけを託すという筋道をこの活動の狙いとし、連携の誘いを受けた同校は総合的な学習の時間の成果としてこの狙いを組み込み。その達成のための内容を準備してこの日の実動へとこぎ着けた。
当日は潮岬にある同パークセンターで合流し、同チームの上野一夫さん(同ガイド)をリーダーに立てて活動を始めた。序盤は上野さんが橋杭岩の成り立ちの背景にある大地や人の営みなどを解説して理解と愛着を深め、中盤は橋杭岩前へと移動し本来はそこにないはずの石類(コンクリートや陶器、ガラスなど)を判断して拾い集める保全活動に両者一丸で取り組んだ。昼食休憩を経て終盤は活動の振り返りをして締めくくったという。
中盤までの内容を経て橋杭小の中海琴さんは「このごつごつとした岩が地震とかで動いているという話が印象に残った。橋杭岩はすごいし日本一だと思うけど、何がいいのかもっと知りたいなと思った」と印象を語った。
今回の活動は橋杭小との連携を前提にして考えた内容で、同チームは学校だけでなく町内のいろいろな集まりと互いにできる内容で連携して町域全体に活用の考えを広めていきたいとしている。問い合わせは同チームの事務局がある町産業課(電話0735・62・0557)まで。
(2022年6月4日付紙面より)
細密鉛筆画家・篠田さん (熊野那智大社 )
那智勝浦町の熊野那智大社(男成洋三宮司)で2日、神奈川県出身で細密鉛筆画家の篠田教夫さんが手がけた「那智瀧図Ⅱ―夜―」「那智瀧図Ⅲ―霧―」2作品の奉納があった。篠田さんは那智勝浦ロータリークラブ(那智勝浦RC)の後誠介会長と共に同大社を訪れ、奉納参拝を行った。
篠田さんは鉛筆による細密描写、迫真表現で自然の造形の社寺などをテーマに作品を発表している作家で、「高野山・熊野を愛する百人の会」メンバー。2017年に那智勝浦RCの招きで、初めて同大社に「那智瀧図」を奉納しており、今回で3作目となった。
「那智瀧図Ⅱ―夜―」は4年前に、「那智瀧図Ⅲ―霧―」は昨年4月ごろに完成した作品。
昨年11月には那智勝浦RCの創立60周年記念事業で、「紀の国わかやま文化祭2021(第36回国民文化祭・わかやま2021、第21回全国障害者芸術・文化祭わかやま大会)」応援事業の一環として「細密鉛筆画家 篠田教夫展―神仏宿る細密画の世界 那智瀧図にはじまる―」を町内で開催している。
奉納を受け、男成宮司は「以前に奉納いただいた分も含め、素晴らしい作品。大社にとって滝は神様。精神的で、宗教的な印象も感じます」。
後会長は「本来なら昨年に奉納する予定だった。コロナ禍で半年、遅れることになり残念。しかし、このような形で篠田先生と熊野に関わりができ、深まっていただけてありがたい。次の作品も楽しみにしています」と話した。
現在4作目の作画に挑んでいるという篠田さんは「那智の滝は、風や水量の作用などで印象が変化する。さまざまな表現形態を考えた際、那智の滝一つだけでその全てが可能になる。追求する間に一生を終えてしまうほど。今後も表情の違う那智の滝を描いていきたい」と語った。
なお、篠田さんは11日(土)から25日(土)までの間、水墨画家の山口英紀さんと共に東京都の日本橋茅場町の「Gallery Suchi」で「篠田教夫・山口英紀 二人展」を開催する。
(2022年6月4日付紙面より)
新宮市緑ヶ丘の東牟婁振興局で5月31日夜、「国道168号美化協議会」の設立総会があった。和歌山県、新宮市、市観光協会、新宮商工会議所、熊野川町ふれあい公社、新宮青年会議所、新宮ライオンズクラブ、新宮ロータリークラブなど協議会構成団体関係者ら26人が出席。協議会規約や本年度事業計画などを承認。会長に里中陽互・市観光協会長を選任した。
東牟婁地域と県内外各地域との往来のための主要道路である国道168号。沿道は住宅が少なく人目にもつきにくいことから、全域でポイ捨てによる空き缶やペットボトルなど飲料のごみが散乱しており、待避所や道の駅周辺では飲食物のごみが散乱している。沿道に捨てられたごみは熊野川に流れ込み、最終的に海に至る。
そういった状況を鑑み、東牟婁振興局健康福祉部衛生環境課は昨年秋、168号沿いの道の駅および待避所計3カ所に実験的に公衆ごみ箱を設置。ごみ箱の維持管理における問題点と沿道などにおける散乱ごみの削減効果の検証を実施してきた。
協議会の設立は、公衆ごみ箱の常設設置を行うことにより、路上などの散乱ごみ(ポイ捨てごみ)を低減させ、当地方の山・川・海の自然環境の保全に寄与することを目的として官民一体となって組織。運営母体となって情報交換や連絡調整を行いつつ、相互に連携して不法投棄対策活動を展開していく。
開会に当たり、杉本善和・東牟婁振興局健康福祉部長が設立趣意を説明。「県では2020年4月に『ごみの散乱防止条例』を施行し対策を強化してきたが完全には抑制しきれていない」と現状を明かした。
昨年、公衆ごみ箱を設置し検証を行ったところ、沿線全域でごみの種類別に25~40%程度の削減効果が認められたとし「ポイ捨て根絶を目指すためには行政だけではなく、地元住民や事業者が主体となって地域に根差した取り組みを継続していくことが重要」と協力を呼びかけた。
里中会長は関係者や賛助会員に対する感謝を示し「世界遺産にも登録されている当地域の素晴らしい景観を守り、子どもたちに残していくためにも、地域に根差した実践活動を実施していきたい」とあいさつ。オブザーバーとして参加した酒井清崇東牟婁振興局長が出席者や関係者に感謝を伝えた。
本年度は▽公衆ごみ箱の設置▽公衆ごみ箱の維持管理▽周知や啓発、関係機関との連携による清掃活動など、ごみの不法投棄防止対策に関する事業―などを予定。公衆ごみ箱は昨年設置した3カ所(相賀、熊野川町田長、同町相須)に加え、南桧杖と熊野川町日足にも設置する計画としている。
(2022年6月3日付紙面より)
「わくわく楽しいありがとう展」 (那智勝浦町 )
5月27~29日の3日間、那智勝浦町朝日で「わくわく楽しいありがとう展」を初開催した陶芸サークル「器遊」とペーパークイリング「ファミリー」、己書(おのれしょ)「紀伊のおと道場」の3団体の代表者らは30日、同町役場を訪問し、期間中に募ったウクライナ人道支援のための義援金を堀順一郎町長に手渡した。集まった6万5710円は日本赤十字社を通して寄付される。
各団体のそれぞれの力作を、多くの人に味わい、楽しんでもらいたいという思いから実施に至った同展。
会場には手作りの皿や器などの陶芸作品、色とりどりの紙を巻いて作った小さいパーツを組み合わせ、刺しゅうのような装飾を施すペーパークイリング作品、書き方や文字の書き順にとらわれることなく、自由に筆を走らせ、自分の世界観を楽しく表現する己書作品を多数展示。また、無料のプレゼントコーナーや各種体験も人気を博した。
同展事務局によると、新型コロナウイルス感染症対策を施した中で実施された催しには3日間で500人以上が訪れたという。
会場に足を運んだという堀町長は「素晴らしい器や根気のいるペーパークイリング作品、前向きな言葉などが書かれた己書を見せていただいた。文化活動や地域に根差した祭りなど、残すべきものは残していきたい」。
義援金については「このたびはありがとうございました。多くの命が絶たれてしまう状況が続く、ウクライナ問題が一刻も早く、収束してほしいと願っている」と述べた。
「器遊」代表の松本ひとみさんと、「ファミリー」の石橋久美子さん「紀伊のおと道場」の道場主・杉本博子さんらは「義援金はお困りの方々に届けていただけたらそれが一番です。国内でもコロナ禍で最高の日常が失われてしまっている。催しの名前のように、わくわく楽しい日常が取り戻されることを祈っています。タイミングがあえば、次回もぜひ開催したいです」と話していた。
(2022年6月3日付紙面より)
円柱堤防を助成受け研究 (新宮高校 )
和歌山県立新宮高校(東啓史校長)3年生の寺地航琉(わたる)君がこのほど、日本財団とリバネスが行うマリンチャレンジの認定研究に採択された。円柱の防波堤で津波被害を低減させる研究で、研究費の助成を受けて実験を繰り返し、最終的には最適な防波堤配置の提案を目指す。
マリンチャレンジとは、海洋分野の課題の研究に挑戦する中高生を対象に、研究資金の提供や助言者による支援を行う事業。対象地域は全国で、申請書での選考を経て認定研究が決まる。採択を受けた研究者は、研究費5万円などを受けて研究を行い、主に8月に全国5カ所で実施される成果発表会に臨む。さらに上位の全国大会もある。
寺地君のテーマは「津波減波に最適な防波堤形状と設置方法に関する研究」。円柱が水流に対して耐性があることから、円柱の防波堤を隣接して配置し、津波の威力を相殺することで、被害を最小限にできるとの仮説を立てた。その実証として、模型で実験した後、津波発生装置とコンピューターによるシミュレーションを行うことを考えている。環境面でも、従来型の防波堤より負荷を低減できるとする。2年生だった2月に申請し、4月に採択を受けた。
防災課題を考え始めたきっかけは、2011年の紀伊半島大水害。「当時は小1だった。新宮市に住んでいて被害はなかったが、自分の身を守るにはどうしたらいいかを考えるようになった」と振り返る。この経験が、津波被害低減の研究につながっていった。今回の採択について「これで研究できると思うとうれしい。考えているときが楽しい。研究は自分にとって最高のものだと感じている」と喜ぶ。
8月の成果発表会に向けた実験は、すでに始まっている。発泡スチロールの箱と水道を使って、簡易的な津波発生装置を製作。滑車や重りを用いて、起こる津波の威力を一定にするよう工夫した。水を入れたペットボトルで、円柱の構造物を再現。2本の円柱の距離を変えることで、津波の威力がどれぐらい低減するかを調べている。
津波により流された物の距離で、威力を数値にすることを考えている。「可視化して、グラフを活用して(最適値を)求めていきたい」と意気込む。実験は毎日、昼休みや放課後に学校内の一室で行っている。
これらで得た知見を基に、南紀熊野ジオパークセンターの津波発生装置を借りて実験を行い、大学などの関係機関にコンピューターシミュレーションを行ってもらう構想もある。「津波という地域課題の解決につながり、将来は円柱の防波堤が建つようになればうれしい。今回の研究は絶対やり遂げたい」と力を込める。
他にも、円柱の防波堤に加え、さらに沖合に円すいの防波堤を配置し、津波の威力のみならず、向きまでも変えることができないかとの発想もあるという。
(2022年6月3日付紙面より)
井田海岸でウミガメパトロール開始 (紀宝町 )
アカウミガメの産卵期を迎え、紀宝町ウミガメ保護監視員(萩野進也代表)は1日、同町の井田海岸でパトロールを開始した。萩野代表と木村一樹さん、西昌志さん、前地敏久さん、杉浦利也さん、前地正喜さんが7月末まで交代で海岸を歩き、上陸、産卵するアカウミガメを見守る。
初日は上陸がないか確かめ、毎年続けている清掃活動と海岸の定点測量も行った。今年も産卵した1匹分の卵を井田小学校のふ化場に移す。萩野代表は「3年間上陸、産卵がなかったが、いつ上陸してもいいように海岸の環境整備を続けている。毎年、最初の1匹を見るとほっとする。今年は1匹でも上陸、産卵してほしい」と話していた。
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■パトロールボランティア募集
同町企画調整課は、ウミガメ保護監視員と一緒にパトロールするボランティアを募っている。7月末まで毎週土曜日午後8時から実施し、1回だけの参加も可能。中学生以下は保護者同伴。
申し込みは同課(電話0735・33・0334)まで。受け付けは平日の午前8時30分から午後5時まで。新型コロナウイルス対策としてマスク着用、検温に協力を呼びかけている。感染状況により、中止となる場合もある。
(2022年6月3日付紙面より)