国立文化財機構東京文化財研究所保存科学研究センター修復計画研究室の朽津信明室長、徳島大学大学院の西山賢一准教授らが13日、新宮市熊野川町九重を訪れ、過去に同地区で発生した土砂災害を伝える文字が刻まれた石碑を調査した。石碑は地元でも一部の人にしか知られておらず、2011年の紀伊半島大水害後の和歌山大学災害科学教育研究センター客員教授、後誠介さんらの調査で「土砂災害慰霊碑」としての存在が明らかになった。
石碑は1821(文政4)年に医師湯川為善が建立と記され、かつての土砂災害で犠牲者が出たことを伝える何かを発見し、それを記念して建てたという内容が刻まれている。九重地区では紀伊半島大水害で土石流が発生し、後さんらの調査団が2013年に現地入りした。その際に地元の玉置利一さんが石碑の存在を知らせ、15年に後さんが調査した。紀伊半島大水害での土石流現場から北隣の沢筋でも過去に土石流が発生していたことが調査団の調べで分かっており、石碑は過去の発生を裏付ける証拠として注目を集めた。
石碑は倒木で塔が倒れ、砂岩の部分に刻まれた部分が痛み、文字が見えなくなっている。後さんの連絡で和歌山県立博物館の施設活性化事業実行委員会が調査。玉置さんが平成17年に行った解読資料を基に刻まれた文字を訳し、冊子「先人たちが残してくれた『災害の記憶』を未来に伝えるⅣ」に収録した。
朽津室長は石碑の全体像が不明なため、文化財の指定は難しいとしながらも「字の大きさに統一性がなく専門性がある人が作ったものではないとみられる。しかし、だから価値が低いとは言えない。先人が精いっぱい頑張って伝えなければいけないという思いで残したもの。われわれはその内容を受け取らなければならない」と語った。石碑の文字に墨入れがされていることから、過去の土砂災害発生の日などに合わせて地元の人たちで墨入れし、防災の意識を後世に伝えるイベントとしてはどうかと提案した。
後さんは「津波や水害を記録する碑は多いが、土砂災害慰霊碑は珍しい。文化財として残すことしか考えていなかったが、専門家の議論の中で作った人の思い、書かれた内容をどう伝えていくかという考えが生まれた。有意義だった」と話した。城和生区長は「住む人が少なくなっているが、保全に力をいれていく。墨入れの行事も今後の課題にしたい」と話していた。
(2018年11月16日付紙面より)
温泉病院で世界糖尿病デーイベント (那智勝浦町 )
WHOが定める世界糖尿病デーの14日、那智勝浦町立温泉病院(山本康久院長)で糖尿病治療の啓発イベントが開かれた。同病院と同町の糖尿病患者らで組織される「やたがらすの会」などが協力して開催している。今年で5回目、新病院となってからは初。糖尿病患者や健康管理に関心のある地域住民ら41人が訪れた。
病院内の1・2階を会場とし、血圧や血糖の測定体験、フットケアなど各コーナーを回るスタンプラリーも行われた。運動紹介コーナーでは握力を測定後、担当者がいすを使用した筋力トレーニングなどの運動方法を提案。保健師や薬剤師などによる各種相談も盛況だった。
同病院内科の医師、石亀綾奈さんが「災害と糖尿病」をテーマに講演。膵臓でインスリンを分泌する力が弱まり、出なくなる「1型」や高齢者に多く、遺伝や環境が原因とされる「2型」など糖尿病の種類や症状を説明した。
災害については「発生直後は十分な支援が期待できない。最低1週間分の薬、注射キットが必要」と強調した。不規則な避難生活については「患者は日常生活を保つことが難しくなる。血糖は多少、高めでも構わない。低血糖対策にアメなどの準備もしてほしい」と解説した。
その後は▽ストレスの管理▽十分な食事と水分の摂取▽体を動かす▽ウイルスや感染症を防ぐ―などの避難所で災害を乗り切るための心得を話した。
同町天満在住の80代女性は「今年で2回目。身近で先生たちと話ができるのでありがたい。薬のことなども詳しく聞けた。改めて、注意しなくてはいけないと気が引き締まった」と述べた。
山本院長は糖尿病について、「一人で悩まなくていい。悩みなどをシェアするのがやたがらすの会。年々、人数も増えている」と述べ、「この病気は上手に付き合っていかなくてはならない。医療スタッフがしっかりとサポートするので、仲の良い関係を続けていただけたら」と語った。
(2018年11月16日付紙面より)
全国地産地消推進協賞受賞 (串本町 )
串本町大島にある有限会社岩谷水産(岩谷裕平代表取締役)がこのほど、『紀州梅まだい』の取り組みで全国地産地消推進協議会会長賞を受賞した。
この賞は、同協議会が農林水産省と共に地産地消や国産農林水産物・食品の消費拡大を目的として年1回行っている『地産地消等優良活動表彰』の一賞。本年度は生産・食品産業・教育関係・個人の4部門で団体や企業、個人の取り組みを受け付け、全体で123件の応募があった。その後▽取り組みの持続性▽農林水産業振興への貢献▽安定した生産と供給▽利用促進による消費拡大―などを基準とした審査により13件が受賞し、今月3日に表彰が行われた。
同社は34件の応募があった生産部門で受賞し、同協議会が行った唯一の表彰だという。応募件名は「海と山の融合による『ブランド魚』の開発で地域貢献」。バブル経済崩壊後の苦境を打破するため、同社は平成14年に養殖魚『紀州梅まだい』の開発に着手。17年に魚に適した梅酢配合飼料の特許を取得し、養殖を本格化した。
ウメは古くから健康食材として親しまれる県の特産品。その評価は養殖魚にも当てはまり、『紀州梅まだい』は梅酢配合飼料により抗生物質などの投薬を要しない飼育に成功していて、栄養価も高いマダイとして高い評価を受けている。19年には紀州梅まだい生産組合を立ち上げて独自の販路開発にも着手。県推奨の衛生管理システムに組合独自規定を重ねてブランド魚として信頼性を高め、県推奨品『プレミア和歌山』の認定も受けた。一連の取り組みは第23回和歌山漁業者実績発表会最優秀賞や第16回全国漁業者交流大会全国漁連海面魚類養殖業対策協議会会長賞に選ばれた経緯がある。
現在は同社と太田水産で年間15万匹強を、同組合経由で近隣の宿泊施設などを含む国内外へ出荷。同社取締役の岩谷昇さん(30)を軸とする20~30代の若者6人で養殖の現場を支え、この需要に応えている。『進化前進』をスローガンに掲げて日々研究を重ね、『紀州梅まだい』を筆頭に『紀州梅くえ』や『紀州梅シマアジ』と育てる魚種の幅を拡げ、自ら取り組みを積極的に情報発信するなどして養殖を地場産業として未来へつなぐ努力を重ねている。
次の世代への引き継ぎが思い描ける養殖の確立が同社の目指すところ。その最前線である現場を開発者の父に代わって束ねる岩谷取締役は「父がやってきたことは正しかった。そして自分はこれでまい進していいという確信が得られた。皆がいてくれてこその紀州梅まだいで、この賞は皆がプライドを持ってやってきたことへの評価だ」と語り、共に頑張る新たな担い手を得るきっかけにもなることを期待しながら受賞を喜んでいる。
(2018年11月16日付紙面より)
郡市連合音楽会中学校の部 (新宮・東牟婁地方 )
東牟婁郡新宮市音楽教育研究会(太田雅也会長)主催の「第68回郡市連合音楽会」中学校の部が15日、那智勝浦町体育文化会館であった。下里、高田、色川、北山、城南、熊野川、太地、光洋、那智、宇久井、緑丘の11校の生徒らが歌や合奏を発表。緑丘、光洋、那智、潮岬の吹奏楽部による合同演奏もあった。
尾﨑卓子副会長は教育委員会、設営関係者らに感謝し、生徒らに「無音も一つの音です。思いは音として出ませんが、心の音となります。心に響く音を大事に全ての音を楽しんで。音をやりとりし、良い音を聴き合って良い音楽会にしましょう」とあいさつ。「皆さんご存じのように音は空気を振るわせることで伝わります」と話し、音の科学やピアノの仕組みを解説した。
全員の合唱『もみじ』で始まり、各校が順に全24曲を披露。保護者、一般の来場者らが聴き入った。16日には小学校の部が同じく那智勝浦町体育文化会館で開催される。
(2018年11月16日付紙面より)
御船祭の早船競漕 (新宮の速玉祭 )
熊野速玉大社(上野顯宮司)の例大祭「新宮の速玉祭(はやたまさい)」の御船祭(みふねまつり)・早船競漕(きょうそう)で入賞した王子区(上り1位)、大王地区(上り2位、下り1位)、丹鶴区(上り3位)、堤防区(下り2位)、明神区(下り3位)への表彰式が13日、同大社で行われた。
表彰式には5地区の代表者と審判委員が参加。神職によるおはらいの後、上野宮司から上り表彰では各地区に賞状、盾、賞金、下り表彰では1位の大王地区に賞状と盾、2位堤防区、3位明神区に賞状が贈られた。
各地区への賞状、盾、賞金は、株式会社R.Link Corporationの椋野玲史取締役会長から、御船祭を後世に伝え、繁栄させてほしいとの願いを込めて贈られた助成金によるもの。
表彰後、下地昌宏審判長が「来年も今年のような勢いを持って頑張りましょう。よろしくお願いします」と呼び掛け、上野宮司が「各区の練習するその努力はもちろんで、それをこうして表彰し、無事に今年も終わった栄誉をたたえていただいたことを力として、また他の地区からも目指していただけるような立派な区になることを目指してほしい。皆さんがこいでくださるこの姿というのは、今の姿だけで終わると思っては困るわけです。ずっと伝えていくという、その姿のことを思って優勝した区も、また目指そうとする区の皆さんも、勝ち負けは大事だろうけども、それ以上に大事なものを背負っていることも申し送ってほしいというのが私たちの願いです」とあいさつ。
上りで優勝した王子区のとも取りの西村雄作さんは「10年ぶりの優勝で感無量です。OBの皆さんにも喜んでもらうことができ良かった」と話した。
(2018年11月15日付紙面より)
香港ユネスコの楊さんが視察 (南紀熊野ジオパーク推進協 )
南紀熊野ジオパーク推進協議会は11日から13日までの間、香港ユネスコ世界ジオパーク園長などを務める楊家明(ヤン・カーミン)さんを招き、和歌山県内の南紀熊野ジオパークの2度目となる視察が行われた。本紙エリア内では北山村、那智勝浦町、太地町を訪れた。
今回の視察は楊さんから県内ジオパークについてアドバイスなどを受け、改善点の解消や新たな魅力の発見に努めるとともに、世界的な情報発信につなげることが目的。
楊さんはジオパークの世界的な普及に取り組んでおり、日本や世界各地の40カ所以上のジオパークで基調講演やアドバイスを行っている。世界ジオパーク・ネットワークを生かして国際ワークショップを開き、アジアや世界のジオパークの情報拠点となるように尽力している。
12日には、那智勝浦町の勝浦漁港と宇久井ビジターセンターを見学した。太地町では町立くじらの博物館で捕鯨の文化や移民の歴史などを同館学芸員の櫻井敬人さんが解説し、館内を案内した。
楊さんは視察について「訪れた地域は観光客にとっては興味深い場所だと思う。自然の景観や文化的景観も素晴らしい。前回来た時よりも改善された点も多く見受けられる。和歌山には他の地域が学べるところも多い」と評価した。
課題については「資源は豊富にあるが、重点や的を絞った取り組みができていない。その場合、お金や時間をかけ過ぎてしまううえ、うまくいかない」と指摘。「重要でないものは取り除いていくことが大事。ジオパークの取り組みが開始されて6年ほど経過したが、総括していく時期だと思う」と語った。
その後、楊さんは太地町内のまちなかジオツアーに参加し、堀順一郎・那智勝浦町長を訪問した。夜はホテル浦島で歓迎会が開かれた。12日には北山村を訪問し、「筏師の道」を歩いた。
(2018年11月15日付紙面より)
八坂神社秋季祭典迎える (古座川町 )
古座川町池野山にある八坂神社の秋季祭典が10日に宵宮、11日に本祭を迎えた。宵宮は夜半に境内で火焚(た)き行事を営み、区民らの随時参拝を集めるなどした。
池野山と上部の氏神社として護持される同神社は現在、年4回の例祭(正月、節分、夏季祭典、秋季祭典)が営まれている。11月の秋季祭典は池野山区(垣秀志区長)が奉仕の主体で、今年は同区の9班(矢本真一班長)と10班(谷正夫班長)が当番の巡りにより宵宮の火焚きを営んだ。
池野山の火焚きは、製材所があった下部のように夜通し行うわけではないが、夜半に火を保ち続けながら参拝者を迎える。宵宮は両班長の仕切りで境内にまきを積み、日没ごろに点火。たちまち広がる火に1本、また1本とまきをくべて火勢を保ちながら区民を迎えた。神前では神酒が振る舞われ、参拝した区民はしばし火焚きを眺め区民同士で近況を報告しあうなどして過ごした。
本祭は早朝に式典があり、その後は上部の獅子連中を迎えて奉納や酒宴の座を営み、その後は道の駅虫喰岩駐車場で区域全体を対象にした地下舞わしもあったという。矢本班長(46)は「区の皆さんが災害を被ることなく平穏に過ごせれば」と今回の奉仕を通して願うところを語った。
(2018年11月15日付紙面より)
3保育所が消防署見学 (新宮市 )
新宮市の蓬莱、佐野、高田保育所は14日、合同で市消防本部を見学した。5歳児44人がビデオ視聴や緊急車両見学、放水体験などをして消防士の仕事を学んだ。
5歳児交流の一環で、年間を通じてジャガイモ掘りや運動会ごっこなどを実施している。園児らは映像教材『火あそびはあぶないよ』を見て火事の恐ろしさを学び、火遊びをしないと約束。防災指導係の堀口清明さんが▽ライターやマッチで遊ばない▽花火をするときは大人と一緒に▽火事になったら逃げて大きな声で知らせる―を呼び掛けた。園児らからは「消防車のホースからどうして水が出るの?」「どんな訓練をしているの?」などの質問があった。
園児らは2班に分かれて通信指令室、救急車、消防車などを見学。車両の役割や装備の説明を受けた。放水体験に挑戦した園児らは防火衣を着用し、緊張した面持ちでホースを握っていた。
はしご車には職員2人が乗り込み、25㍍の高さから360度旋回。園児たちは「先生、大丈夫?」「高い」などと歓声を上げながら手を振っていた。
(2018年11月15日付紙面より)