年内に市内全域へ (新宮市 )
新宮市と新宮郵便局は現在、QRコードおよび海抜表示付き郵便ポストの更新作業を実施している。28日には同市伊佐田町の新宮郵便局前ポストで竹田和之・防災対策課長と間嶋義則・新宮郵便局長がQRコードシートを貼り替えた。年内をめどに市内99カ所の全ポストへの更新作業を行っていく。
郵便ポストへのQRコード貼付は、昨年3月から共同実施している「災害・観光・郵便局のPR」を兼ねた取り組み。
このたびの貼り替えは防災情報を最新版である「Web(ウェブ)版新宮市ハザードマップ」にリンクするためのQRコード更新に伴うもの。更新前は市内避難所・避難場所の一覧表示だったが、貼り替え後は位置情報を利用し、現在地の危険性を瞬時に確認することができる。
郵便ポストにQRコードと海抜情報を貼付することで市民はもちろん、土地に不慣れな観光客もいざというときはスマートフォンなどでQRコードを読み込むことによってハザードマップに接続が可能。ポストの位置から現在地の津波の浸水深、最寄りの避難場所などを確認することができる(位置情報を取得するためにはブラウザの位置情報をオンにしておく必要がある)。
間嶋新宮郵便局長は「新型コロナウイルスが終息したら多くの観光客が新宮市を訪れると思う。歩いて観光する人も多く、その際は防災・観光情報などの取得に活用いただければ」と話している。
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■Web版新宮市ハザードマップ
新宮市では、昨年5月から「Web版新宮市ハザードマップ」のサービスを開始している。洪水浸水想定区域や浸水被害実績、津波浸水想定区域、土砂災害警戒区域、避難所の位置などを選択して確認できるほか、洪水時や津波時の「逃げどき判定」ができる機能も備えられている。
多言語(日本語、英語、中国語、韓国語)にも対応。パソコンやスマートフォン、タブレット端末で閲覧ができる。市では「Web版新宮市ハザードマップを事前にお使いいただき、避難の際に役立てて」と活用を呼び掛けている。
(2021年9月30日付紙面より)
「社会奉仕の日」に合わせて (紀宝町 )
全国老人クラブ連合会が定めた全国一斉「社会奉仕の日」の取り組みとして、紀宝町鵜殿の老人クラブ「讃寿会(さんじゅかい)」(牧戸光彦会長)は28日、同地区の中曽公園で清掃活動を実施した。
社会奉仕の日(9月20日)は、地域社会に対する感謝と地域の担い手としての活力を示すことが目的。「きれいな地球を子どもたちへ」をスローガンに、全国各地で「花のあるまち、ゴミのないまち」を目指した美化活動、環境活動が展開されている。
同会では30年ほど前から「社会奉仕の日」と3月、7月の年3回、ボランティアで清掃に取り組んでいる。
今回は約30人が参加し、午前7時から作業を進めた。草刈り機で公園内の雑草を刈り取り、雑草を集めてビニール袋に回収するなどして約2時間で清掃を終えた。
牧戸会長は「前日から作業してくれた有志会員や参加してくれた会員のおかげでスムーズに作業を終えることができた」と話していた。
(2021年9月30日付紙面より)
すさみ串本道路田並中ノ谷地区進入路工事を請け負う木下建設株式会社が27日、串本町立串本西中学校(平原良一校長、生徒29人)を招いて現場見学会を開いた。
同社が住民に身近な工事を知ってほしいという思いで現場最寄りの同校に提案し、同校は校外の職場に触れキャリア教育を進める良い機会として招待を希望。双方、時節柄の新型コロナウイルス感染症対策を十分に講じた上で現場見学会実施へとこぎ着けた。
先んじて25日に同町の12~15歳対象新型コロナワクチン集団接種〈2回目〉があった影響で参加できた生徒は18人。スクールバスで国道42号沿いの出入り口から作業用道路経由で同社田並中ノ谷作業所(得能晃所長)を訪ね、得能所長ら社員の歓迎を受けて現場見学会に臨んだ。
得能所長による現場や見学の概要説明を経て、序盤は国土交通省紀南河川国道事務所の田中富博建設監督官がすさみ串本道路の概要を紹介。中盤は同社が準備した▽ICT建機操縦▽調査用ドローン操縦▽鉄筋組み―の各体験提供で、生徒は学年別に分かれローテーションして一通り挑戦した。終盤は工事中に心掛けていることややりがい、すさみ串本道路事業の全体像や予算規模など同校が事前に寄せた質問事項に答えて生徒の理解を後押しした。
一連の体験を経て河田栞奈さん(3年)は「ドローンで遠くまで見渡せるのが楽しかった。来る途中でいろいろな現場を見てきたけれど、難しい作業も多そうで大変だろうなと感じた。そのような仕事に頑張ってくれている皆さんと接してとてもかっこいいと思った」と印象をコメント。得能所長は「まずは学校に身近な所でしている工事や働く人々に関心を持ってもらえれば」と生徒の今後を期待し、平原校長は「校内では伝えることしかできない校外の職場をじかに見させていただけたことは、生徒の将来に対する視野を広め目標にバリエーションをもたらす。生徒の目指す将来はそれぞれなので土木分野に就くかどうかは別として、頂いた経験は今後の進路選択の中で必ず生きてくると思う」と同社の招待に感謝しつつ生徒の体験を後押ししていた。
(2021年9月30日付紙面より)
新クリーンセンター建設地 (那智勝浦町 )
那智勝浦町二河に建設される新クリーンセンターの敷地造成工事がこのほど、終了した。当初は今年5月に終了予定だったが、資材調達などに時間を要したため約3カ月の延長となっていた。令和7年度の稼働開始に向け、一歩進んだ形となった。
同町によると、工事では排水溝を設置し、谷を埋め立てて平地を造成。敷地面積は約8800平方㍍で、本年度中に工事業者の入札を実施するという。
施設本体工事は業者選定後、来年12月ごろから開始する予定。6年度(7年3月)中に工事を終え、7年度の稼働を目指すとしている。
担当職員は、新クリーンセンターは将来の人口減少やごみ量も予測して建設するとし、「1日当たりのごみ処理量は旧クリーンセンターが約50㌧だったが、新クリーンセンターは約23㌧の能力となる。人口に合わせて施設の規模も小さくなる」と話していた。
(2021年9月30日付紙面より)
海亀を守る会がウミガメ放流 (新宮市王子ヶ浜 )
ウミガメの保護活動を展開する「紀伊半島の海亀を守る会」(榎本晴光会長、環境ファースト連合会員)の会員4人は26日、新宮市の王子ヶ浜で14匹のアカウミガメを放流した。榎本会長は「今年は想像通りふ化率が低かったが少しでもふ化してくれて良かった」と総括した。
同浜は絶滅危惧種・アカウミガメが訪れる世界でも数少ない海岸の一つ。同会は、波浪流失や小動物の捕食被害からアカウミガメの卵を守るための保護活動を行っている。卵は海岸に隣接するふ化場に移し、ふ化した子ガメは秋ごろ、同会や関係者、近隣住民らの手によって海に戻される。
アカウミガメの上陸・産卵シーズンは5月中旬から8月半ばごろまで。1回の産卵で平均110~120個の卵を産み、60~80日でふ化する。
同浜では、例年より早めとなった5月20日に今期初上陸および産卵が確認。会員らは同浜の大規模清掃活動などを通してウミガメの上陸に備えたが、初上陸以降、上陸はあったものの産卵は確認されなかった。
初産卵で発見された卵は98個。うち、15匹がふ化したが1匹が死んだ。榎本会長によると、早い時期に産卵が見られた場合、砂の温度が低いなどの理由からふ化率は低いという。さらに、今年は産卵からふ化までに約90日を要した。
会員らは、7㌢ほどに成長したウミガメを波打ち際で放流。榎本会長は「今年は天候不順などが影響して上陸も産卵も少なかった。来年に期待したい」と思いを語った。
(2021年9月28日付紙面より)
中村朱美さんが講演 (新宮市 )
新宮市井の沢の新宮商工会議所で25日、同会議所が主催する繁盛店づくり推進事業「逆境に負けない強い中小企業の在り方―withコロナafterコロナの時代に向けて―」があり、㈱minitts代表取締役の中村朱美さんが講話した。
中村さんは京都府亀岡市生まれ。専門学校の職員として勤務後、飲食事業や不動産事業を行う同社を設立。「1日100食」をコンセプトにおいしいものを手軽な値段で食べられる「佰食屋(ひゃくしょくや)」を行列のできる人気店へと成長させた。利用客や従業員、そして環境にも優しい経営の実現により、第32回人間力大賞農林水産大臣奨励賞、ForbesJAPANウーマンオブザイヤー2019大賞などを受賞している。
100食という「制約」におけるメリットについて、中村さんは「毎日同じ量を出すのでどれだけ発注するかを考える必要もない。フードロスにつながり従業員の労働時間削減にもつながる」。地元食材業者の安定供給にも寄与できるとした。「100食限定」が生む希少価値に加えて原価率を上げ、宣伝広告費を削減した分を商品力アップに注いでいく経営術を紹介した。
コロナ後を見越した「真の働き方改革」は「従業員が自己決定権を持つこと」とし、同店では▽出勤・退勤時間、それに伴う基本給を自分で選べる▽上司や自己評価だけではなく同僚や部下、客の口コミなど、関わる全ての人からの評価が反映される360度評価制度―を組み合わせることでモチベーションが維持されていると説明。
有給休暇が自由に管理・取得できることに伴う人手不足対策として、常に人員を多く採用していると述べ「労働力が多いことで毎日80%の実力で労働をこなすことができる」と利点を話した。
新型コロナウイルスが全国的に広がりを見せ始めた昨年、中村さんは緊急事態宣言発出前に2店舗の閉鎖を決意。
そんな逆境のさなか、コロナに対する心理的不安が広がる中において、医療従事者への支援のためのコロナ対策や食中毒対策、店舗の行動指針などを会員制交流サイト(SNS)で発表。
新型コロナの次の波を見据え商品開発を行ったほか、年末年始や卒業シーズンにおける新しいテークアウトの在り方を発信するなどして危機を乗り越えたことに対し、中村さんは「当たり前のことを誰よりも早く、たくさんやることが必要なのでは」と提案した。
中村さんは、2店舗の閉鎖を決定した際、閉鎖店舗から出た計4㌧のごみを夫婦2人で処理した経験から「人を救うのは筋力」「経験が災害対応につながるのでは」と思い立って企画した、防災と筋力を掛け合わせた新事業「防災筋力」を紹介。
経営のためには「会社」「働く人」「客」「仕入れ先」「環境」の一つも欠けてはいけないとし「AI(人工知能)、テクノロジーは愛を込めることはできない。事業に愛を込めるのが大事」と呼び掛けた。
(2021年9月28日付紙面より)
旧役場本庁舎内で実動訓練 (串本町消防本部 )
串本町消防本部(寺島正彦消防長)の串本消防署(井本茂署長)が17日と24日、旧役場本庁舎を用いて実動訓練に取り組んだ。24日は第2警防班が資器材使用訓練を実施。日頃培っている技術を運用して救助の支障を乗り越える流れを実際の施設を用いて経験した。
同本庁舎は8日から解体工事の工期に入り、10月から作業が本格化する予定。現状、内部で実動に近い想定訓練が実施可能だと判断し、17日に第1、24日に第2の各警防班がそれぞれに立てた訓練計画に基づいて臨んだ。
第2警防班は倒壊建造物を想定し、エンジンカッターやドリルなどを用いて救助ルートを妨げる支障を取り除く手順を実践。当日は11人組で行動し、鉄扉や防火扉をエンジンカッターで切り開き鉄筋コンクリート製の壁をドリルで貫通するといった課題に対しどのような手法をとるべきかの判断も含めて実践した。資器材については時間をかけ全員が順番で取り扱い、個々に習熟に努めた。
井本署長によると、第1警防班は火災を想定し、火勢が増し施設内から退避できなくなった職員を救出する手順を実践したという。職員は日頃の訓練で資器材の取り扱いなど技術の習熟に努めているが、実運用については現場同等の環境を準備する手間があり、現場自体が熟練するほど頻発しないこともあって習熟が難しい状況にある。今回は延焼や倒壊こそしていないものの、実現場に近い環境で身に付けた技術の運用に臨める絶好の機会となった。
同訓練の様子を見守った井本署長は「実際の施設を用いたことで、例えば防火扉には心材が入っているなど今まで気付かなかった状況の発見もあった。(同本部は近年)若手の職員が増え平均年齢も若返っているが、同時に技術の習熟が求められる状況ともなっている。今回の経験を技術の一層の向上につなげることを職員の今後に期待したい」などコメントした。
(2021年9月28日付紙面より)
幼稚園や保育所などでシーズン始まる (新宮市・那智勝浦町 )
新宮市と那智勝浦町の幼稚園、保育園、保育所、こども園で運動会シーズンを迎えた。
同市三輪崎の保育所型認定こども園「白梅保育園」(鈴木晴貴園長、園児43人)は26日、同市佐野のくろしおスタジアム屋内練習場で「第41回うんどうかい」を開催。園児たちはかけっこやダンスなど、さまざまな競技に元気いっぱい取り組んだ。
運動会は「今日もげんき!」の体操でスタート。保護者や職員が見守る中、園児はかけっこやリレー、玉入れなど、全12種目に臨んだ。
後半には3、4、5歳児が日頃の練習で取り組んで来た迫力ある「白梅太鼓2021『Make you happy』」を披露。会場から大きな拍手が送られた。
鈴木園長は「子どもたちの一生懸命ながらも楽しそうな姿が見られました。コロナ禍で制限せざるを得ない行事もあるかもしれないが、明るく元気で健康な園生活を過ごしてもらえれば」と話していた。
(2021年9月28日付紙面より)
勝浦八幡神社例大祭 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の勝浦八幡神社(髙橋正樹宮司)例大祭の宵宮が18日、本宮が19日に営まれた。今年は昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から神輿(みこし)渡御などの行事が取りやめとなった。しかし、本宮の19日夕方、御霊を移した辛櫃(からひつ)を船に乗せ、規模を縮小した形で渡御が行われた。
数度、開かれた祭典委員会で関係者や参加者らの安全などを考慮し、祭りの内容が決定した。
今回、祭典が主となることから、神にささげる献饌(けんせん)の伝供(でんく)は総代らが務め、髙橋宮司が笛を吹いた。
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18日午後5時から同社で宵宮の式典が営まれた。神社役員や総代、近隣の区長、各奉仕団体の代表らが参列。髙橋宮司が町の発展やコロナ終息などを祈願した。
舟謡勝謡会(中村誓会長)と勝浦獅子神楽保存会(沖和也会長)が舟謡と獅子神楽を奉納した。
祭典後は社務所に場を移し、昭和30年代の頃の例大祭の様子を収めた動画を鑑賞した。
祭りの歴史などを解説した髙橋宮司は「昔は祭り参加者も見物する人も多い。当時までとはいかなくても、神社の祭りで勝浦の活気や勢いを取り戻したい」と語った。
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翌19日は午前10時から本宮の式典を斎行した。来賓は招待せず、役員や各奉仕団体の代表らが出席し、玉串をささげた。
宵宮同様、舟謡勝謡会と勝浦獅子神楽保存会が奉納を行った。中村会長は「今年こそは神輿も出したかった。コロナ終息を心から願っている」。
沖会長は「2度も縮小して実施するのは残念。一刻も早くコロナが終息し、来年は盛大に祭りができれば」と話した。
同日夕方、渡御祭が営まれた。関係者が潮(しお)や御幣、鉾(ほこ)などを持ち、御霊を移した辛櫃が担がれた。
神社前の船着き場から達福丸、あかね丸、宮丸の3隻に乗り込み、渡御を開始。舟謡が周囲に響く中、列となった一行は勝浦漁港や市場などを通って神社に戻った。
祭典委員会の前地俊秀委員長は「渡御ができて良かった。来年は大々的にしたい」。
髙橋宮司は「縮小した形だが、神様に渡御いただけてうれしい。来年こそは本来の形で盛大にお祭りができればありがたい」と語った。
(2021年9月22日付紙面より)
県立高校で全員登校再開 (新宮市 )
新宮市内の県立新宮高校(東啓史校長、生徒541人)と新翔高校(藤田勝範校長、生徒312人)で21日、全員登校による通常授業が再開した。通学路や校舎には「おはよう、元気だった?」とクラスメートとの再会を喜ぶ姿が見られた。
和歌山県教育委員会は県内の新型コロナ感染拡大を受け、8月24日に県立学校の夏休みを31日まで延長。9月1日からは、1日交代でクラスの半分が登校し、残り半分がオンラインによる自宅学習を行う形で授業を再開していた。今回の通常登校再開は、実技・実習を伴う授業や就職・進学に関する進路指導等を充実することが目的。
新翔高校では、各クラスのホームルームで県教委が生徒・保護者向けに出した「通常の登校及び授業を再開するにあたっての留意事項」やワクチン接種の副作用による欠席の取り扱いなどを確認し、自宅学習で使っていたタブレット型パソコンを回収。3年生のクラスでは就職活動や進学に関する諸注意などが行われていた。
(2021年9月22日付紙面より)
宇久井神社例大祭を斎行 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の宇久井神社(男成洋三宮司)例大祭が19日、本殿で営まれた。熊野那智大社の神職を斎主に迎え、祭典役員、党家(とうや)講などの関係者ら約20人が、静かに海上安全や豊漁、地域の繁栄、氏子らの無病息災、新型コロナウイルス感染症の収束などを祈願した。
例年であれば、「チョーサヤ、チョーサヤ」の掛け声勇ましく神輿(みこし)行列が区内を練り歩き、御船による海上渡御や獅子舞、婦人会と宇久井保育所による手踊り、餅投げなどで地域全体が活気づく伝統行事。今年も昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から規模を縮小して式典のみを執り行った。
神事では伊藤士騎(しき)禰宜(ねぎ)が祝詞を奏上し、出席者が玉串をささげた。この日は宇久井青年会(柴原寛会長)、秋葉会(梶誠仁会長)による獅子舞奉納もあり、「鈴の舞」「剣の舞」「天狗(てんぐ)の舞」の見せ場を集めた宮神楽を披露した。
祭典委員長の亀井二三男さんは、普段の練習もままならない中で獅子舞を披露した宇久井青年会と秋葉会のメンバーをねぎらい、「来年こそは」と期待を込めていた。
(2021年9月22日付紙面より)
各地で啓発活動など
正しい交通ルールの順守とマナーの実践を呼び掛ける「秋の全国交通安全運動」が21日から始まった。30日(木)までの10日間、「子どもと高齢者をはじめとする歩行者の安全の確保」「夕暮れ時と夜間の事故防止と歩行者などの保護など安全運転意識の向上」「自転車の安全確保と交通ルール順守の徹底」「飲酒運転などの悪質・危険な運転の根絶」を重点に取り組んでいく。
新宮市では運動初日の21日、市交通事故をなくする市民運動推進協議会(会長・田岡実千年市長)、市交通指導員協議会、交通安全母の会、新宮警察署、東牟婁振興局など関係者約100人が、同市佐野のスーパーセンターオークワ南紀店で決起集会を開いた。
田岡会長は「新宮市においては人身交通事故の発生件数・負傷者数ともに減少し死者もいないが、県内では死亡事故が増加しており私たちを取り巻く交通情勢は予断を許さない厳しいもの」とあいさつ。
「交通事故のない明るい社会を目指し、今後もあらゆる機会を通じて交通ルールと交通マナーの順守を訴えていきたい」と誓いを新たにした。
酒井清崇・東牟婁振興局長は「交通事故のない安全で安心なまちづくりは全ての県民、市民の願い。交通事故をなくしていくため、引き続きご尽力を」と呼び掛けた。
山田守孝・新宮警察署長は、早めのヘッドライト点灯と、歩行者への反射材などの着用を呼び掛けたほか「管内では今年に入って飲酒運転での交通事故が4件発生。飲酒運転の根絶には徹底検挙しかない」と強調。
先週、岩出市でトラックと小学5年生男児が乗った自転車が衝突し、男児が死亡した事故に触れ「痛ましい交通事故をなくしていくためにも、この運動を一人でも多くの人に交通安全意識を持ってもらい考えてもらう機会にしていかなければ」と話した。
県内では今年、昨年同時期と比較し、人身交通事故の発生件数・負傷者数は減少しているものの、死者数は13人増加の22人となっている(8月末現在)。
(2021年9月22日付紙面より)
紀伊風土記の丘で特別展 (三輪崎小 )
和歌山市の県立紀伊風土記の丘で開館50周年を記念した令和3年度秋期特別展「海に挑み、海をひらく―きのくに七千年の文化交流史―」が10月2日(土)から12月5日(日)まで開催される。新宮市立三輪崎小学校でこのほど、展示品として同校所蔵のモリを貸し出し提供すべく、梱包(こんぽう)作業が行われた。
同展は紀伊半島の沿岸に暮らした先人たちや海の歴史を考古学と民俗学の観点から紹介することがテーマ。和歌山県発祥の漁業にもスポットを当て、改良を重ねた技術が全国各地に伝わったことや、新宮・東牟婁含む県内各地の漁具や資料などが展示される。
同校のモリ2本は寄贈されたもので、捕鯨を行っていた三輪崎組の紋「三つの輪」が刻まれている。このモリに加え、クジラのひげや疑似餌などが貸し出しされる。
三輪崎区や三輪崎郷土芸能保存会、三輪崎漁業協同組合も協力。「鯨踊りの衣装」や「捕鯨に関する写真」「一本釣りに使用した竹の釣り竿」なども展示されるという。
紀伊風土記の丘の主査学芸員・蘇理(そり)剛志さんは「県内では江戸時代から明治半ばまで捕鯨をやってきたのが、太地や古座、三輪崎。紆余(うよ)曲折を経て、約300年にわたり、行ってきた文化が残っている。三輪崎の捕鯨はなくなったが、鯨踊りなど、さまざまな形で伝統が引き継がれ、地域の誇りになっている」。
モリについては「古式捕鯨時代のもの。形も古く、数も残っていない。古くからある三輪崎鍛冶にもつながる。鉄を加工する技術あってこその捕鯨。このモリは重要なものだと思う」と話した。
嶋田雅昭校長は「当校は三輪崎郷土芸能保存会の皆さまから鯨踊りや捕鯨について教えていただいているため、児童も三輪崎の捕鯨文化に触れることができている。価値のあるモリなどを多くの方々に見ていただけるのはうれしい」。
児童に対しては「博物館に展示されるほどの貴重な物が学校にあるということを児童にも伝えたい。県内での修学旅行になるため、行き先の一つとして展示を見に行くことも検討している」と語った。
なお、太地町の鯨舟の模型や鯨絵巻、串本町の河内祭の道具なども展示される予定。
(2021年9月19日付紙面より)
相須地区でいきいきサロン (新宮市熊野川町 )
新宮市熊野川町の相須集会所で16日、「ふれあいいきいきサロン」があった。地域住民5人が参加し、防災クイズを交えてコロナ禍の避難について考えた。
サロンは地域のコミュニティーづくりや介護・寝たきり防止、1人暮らしの人への見守りなどを目的に、区と市社会福祉協議会が協力して開いている。新宮市の施設利用再開を受け、手指消毒や参加者全員の検温、マスク着用などの感染対策を取りながら実施した。
この日は市社協熊野川ステーションの大江真季さんが、コロナ禍中に災害が発生して避難所生活を送ることになったときの備えについて講話。「災害時は危険な場所から避難するのが原則だが、食料や水に加えてマスク、アルコール消毒液、体温計などの感染対策用品を持ち出し袋へ入れておくことが大事。9月の防災月間に合わせて市内のスーパーマーケットに防災用品コーナーができているので、一度見に行ってみて」と呼び掛けた。
「高齢の方や足の悪い人は警戒レベル3の『避難準備・高齢者等避難開始』のときにはもう避難しておいてほしい」と言い、改めて早期避難の重要性を伝えた。
住民からは「紀伊半島大水害の時、なかなか救援物資が届かず難儀した」「自分の身は自分で守らなければ」との声があった。
(2021年9月19日付紙面より)
宇久井神社例大祭・宵宮祭 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の宇久井神社(男成洋三宮司)例大祭の宵宮祭が17日夜、本殿であった。例年多くの人でにぎわうが、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止のため宵宮と本宮の規模を縮小。神職や祭典役員、党家講など関係者ら約20人が参列して厳かに式典が斎行された。
例年の宵宮では、式典後に宇久井青年会と秋葉会による神楽の奉納や宇久井婦人会による踊りが場を盛り上げ、盛大に餅まきが行われているが、昨年、今年は取りやめとなった。
台風接近の影響で雨が降る中、式典が進められた。熊野那智大社から出仕した伊藤士騎禰宜が神事を執り行い、祝詞を奏上。出席者が玉串をささげた。
式典後の神酒拝載では伊藤禰宜が「コロナが終息に向かいまして、活気あふれる宇久井のお祭りが復活することを心よりお祈りしております」と述べ、一同、手にした杯で乾杯した。
祭典委員長の亀井二三男さんは「残念ながら省略した形での宵宮祭となった。昨年は当地域でのコロナの影響は少なかった。来年こそはと思っていたが、感染が広がり今年も縮小する形となった。2年はわれわれにとっては大きな年。祭典関係者の高齢化も進む中、2年間休んで来年は体力的に大丈夫だろうかとの懸念もある」。
来年については「地域の祭りは氏子の方々にとって大切なもの、決断は心苦しかった。今回の祝詞にもコロナ終息の思いを込めていただいた。来年こそは皆さまの豊漁や健康を祈り、盛大にやっていきたい」と意気込みを語った。
(2021年9月19日付紙面より)
4年生が「鵜殿ばやし」を練習 (鵜殿小 )
新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの祭り、イベントが規模縮小や中止を余儀なくされ、紀宝町鵜殿地区で毎年11月22、23日に開催される「うどのまつり」も2年連続の中止が決まった。
秋を彩る「うどのまつり」は、鵜殿ばやしの手踊りが練り歩き、熊野水軍太鼓の演奏、諸手船(もろとぶね)をかたどったダンジリの上でハリハリ踊りを披露するなど、毎年、地区内が祭り一色に包まれる。
鵜殿ばやしは1992年に誕生し、96年に保存会が発足。うどのまつりや紀宝みなとフェスティバルなどで披露し、町村合併以前の旧鵜殿村運動会でも住民総出で踊ったという。
その地域の伝統踊りを子どもたちに継承してもらおうと、町立鵜殿小学校では毎年、運動会で4年生のプログラムに組み込んできた。
昨年は新型コロナの影響もあって運動会で披露する機会がなかったが、今年は10月2日(土)の運動会で2年ぶりに復活する。
本番に向け、4年生35人が保存会のメンバーに踊りを教わりながら練習に励んでいる。15日にはメンバー4人が訪れ、細かい動きを丁寧に指導した。
「沖を眺める」「網をたぐり寄せる」など漁師のしぐさを盛り込んだ男踊り。手を上げる角度や指先の力の入れ方など、難しい動作も多く、児童たちはアドバイスを受けながら覚えていった。今後も本番まで練習を重ねるという。
メンバーの松元美国さんは「現在の保存会メンバーは20人ほど。昨年から鵜殿ばやしを披露する場がなくなり、踊りを知っている子どもも少なくなってきた。鵜殿の伝統を引き継いでもらい、来年、祭りが開催されれば参加してもらいたい」と話していた。
女子児童は「踊りは難しいけど、頑張って運動会までに覚えたい」と笑顔を見せていた。
(2021年9月19日付紙面より)
三輪崎でささやかな打ち上げ花火 (新宮市 )
三輪崎八幡神社氏子総代会(中村武総代会長)は15日夜、区民に笑顔になってもらおうと新宮市三輪崎の孔島付近で花火の打ち上げを実施した。三輪崎漁港には近隣の住民らが訪れ、つかの間の花火大会を楽しんだ。
新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、昨年に引き続き大幅な規模縮小を余儀なくされた三輪崎八幡神社例大祭。漁労加護、五穀豊穣(ほうじょう)、商売繁盛など地域の繁栄を願い、現在の三輪崎漁協付近にあった元宮に神様が年に1度里帰りする祭りだ。
元宮を目指して八幡神社を出発し、恵比寿(えびす)、二十四孝(にじゅうしこう)、大黒天の山車が豪快にぶつかり合いながら町を練り歩く神輿渡御(みこしとぎょ)やその他奉納行事は全て中止に。同日午前に約20人の関係者のみでしめやかに本殿大前ノ儀が営まれた。
花火の打ち上げは新型コロナの終息と区民の健康を祈願し、また区民の笑顔を取り戻したいという思いから企画したもの。色とりどりの約70発の花火が約3分間にわたって夜空を彩る様子に、地域住民らは惜しみない拍手を送った。
中村総代会長は「花火には神輿渡御など、奉納行事の2年連続中止に伴い、『祭りを忘れてほしくない』気持ちと、コロナ禍での一服の清涼剤になってほしいとの願いを込めた」と語り、「近隣地区にも祭りへの思いが浸透し、より活気のあるものにしていけたら」と地区の活性化と来年の盛大な斎行を願った。
(2021年9月17日付紙面より)
いきいきサロン大勝浦区 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の大勝浦漁民集会場で15日、2カ月ぶりに「いきいきサロン大勝浦区」が開かれた。地域住民14人が集い、歌や体操で楽しい時間を過ごした。
いきいきサロンは地域の高齢化や1人暮らしの増加を背景に、引きこもり防止や生きがいづくりを目的としてスタート。同区では2019年に初めて開催され、月1回地域の高齢者が和気あいあいと交流する場となっている。8月は新宮保健所管内の新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止したが、今回は▽マスク着用▽手指消毒▽換気▽検温―の感染対策を取って2カ月ぶりに開いた。
雨の中集会所に集った参加者は、最初にお座敷小唄の替え歌の「ボケない小唄」「ボケます小唄」を歌い、「お酒も旅行もきらいです、歌も踊りも大嫌い、お金とストレスためる人、人の2倍もボケますよ」の歌詞に笑い合った。ラジオ体操1番、2番で体をほぐした後は、3密を避けてカラオケやゲームをした。
参加した70代女性は「普段から顔を合わせている人も多いですが、久しぶりに集まって話すからか、なんだか声が出にくいような気がします。やっぱりみんなで集まるのは楽しいですね」と話していた。
(2021年9月17日付紙面より)
地域リハビリ活動支援事業 (串本町包括支援セ )
串本町地域包括支援センターがリハビリテーション専門職を派遣する介護予防推進事業「地域リハビリテーション活動支援事業」を始めた。対象となる団体の申し出に応える形での実施で、派遣を希望する団体は同センター(電話0735・62・6005)まで連絡してほしいという。
この事業の対象は▽主に町内在住者で構成し活動拠点を町内に置く▽月1回以上の活動をしている▽おおむね65歳以上の高齢者で構成―の3条件を満たす団体。同センターから活動場所へ理学療法士や作業療法士などを派遣し、同町が町民の健康寿命増進を目的として導入した体成分分析装置「InBody」による測定や8項目の体力測定、測定前の問診の結果に基づいて今後の介護予防に適した体操メニューを提案する。
担当する専門職との日程調整が必要となるため、申し込みから派遣まで1カ月ほどの時間がほしいという。派遣は両測定や問診票受け付けで1回(同センター職員も同伴)、測定結果の説明や体操メニューの指導で1回の計2回で両者は1カ月程度の間隔を空けて行う。派遣は一団体につき年1度とし、できるだけ多くの団体を支援できる状況を目指すという。
この事業には並行して同センターには個人の特定に至らない範囲で測定や問診の結果を統計活用し町民の傾向をしっかりと踏まえた介護予防施策を展開したいという思いがあり、全体として町民に実のある支援をしつつデータ収集の協力を得るという縮図になっている。
まずはこの事業を町民に知ってもらうことが必要だとし、その足掛かりとして14日は県立潮岬青少年の家で親睦グラウンド・ゴルフ大会に臨む同町老人クラブ連合会女性部を対象にして1回目の派遣を試行した。71人全員とはいかないができる限り測定や問診の機会を届けて同事業を紹介。その延長で今後の派遣希望も伺うなどした。
この事業の問い合わせは同センターまで。
(2021年9月17日付紙面より)
町内の紀宝熊野道路に計画を (紀宝町 )
紀宝町と同町議会は15日、合同要望活動を実施。西田健町長、町議会の向井健雅議長、山本精一副議長、榎本健治・近畿自動車道紀勢線建設特別委員会委員長が国土交通省中部地方整備局紀勢国道事務所を訪問し、藤山一夫所長に一般国道42号紀宝熊野道路への休憩施設整備を求める要望書を提出した。
14日に開かれた町議会定例会で「津波浸水時にも機能する紀宝熊野道路に、一時避難や道路情報の提供、給油などができる防災機能を併せ持つ休憩施設の整備が強く望まれる」などの議決が採択され、要望に至った。
近畿自動車道紀勢線には、紀北町の「紀北PA」から和歌山県上富田町の「道の駅くちくまの」間の約140㌔にパーキングエリアが整備されておらず、町では防災機能を併せ持つ休憩施設の整備を求めていくこととした。
要望書には「三重県の南玄関に位置する本町に休憩施設が整備されることは、道路利用者の安全性と利便性の向上が図られるだけでなく、県域を越えた連携促進により、近畿自動車道紀勢線の効果を最大限に引き出し、交流人口の拡大、観光・産業の振興、地域経済の活性化に寄与することが大いに期待できるものであります。これらのことからも、今後、道路計画を進めるにあたり、本町内の一般国道42号紀宝熊野道路への休憩施設整備につきまして、格段のご配慮をいただきますようお願い申し上げます」などと整備計画の必要性を盛り込んだ。
(2021年9月17日付紙面より)
各スポーツ少年団が活動再開 (新宮市 )
新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受けて先月3日から休止していた新宮市の関連施設再開に伴い、市内の各スポーツ少年団は13日から随時練習を始動させている。
新宮保健所管内の感染者発生状況を鑑み、再開決定に至った。今後は感染対策を徹底して運営していく。現在、市スポーツ少年団にはサッカー、野球、バレーボール、ラグビーなど21団体が所属している。
蓬莱体育館では、新宮バドミントンスポーツ少年団(奥田清二代表)が練習を再開。▽うがい▽手指消毒▽換気▽できる限りの密を避ける▽各家庭での検温―などの予防対策を講じ、熱中症を防ぐため、練習中はマスクを着用せず、こまめな水分補給も行っていく。
この日は約30人が参加。全員でランニングした後、ネット際やレシーブを打つ「ノック」「基礎打ち」、試合形式の「ゲーム練習」などに励み、久しぶりの練習に汗を流した。
丸山莉実(れみ)さん(12)は「久々にみんなと会えてうれしい。練習ができない間は家でトレーニングや壁打ちをしていた。しばらく期間が空いていたので、これから少しずつ感覚を取り戻していきたいです」と笑顔を見せた。
奥田代表は「子どもたちの元気そうな姿が見られてよかったです。練習が再開したとはいえ、まだまだコロナの状況は油断できないので、今後も感染対策をしっかりと施していきたい」と話していた。
なお、同日には木戸浦グラウンドや天満球場、テニスコートなど、スポーツ施設を含む那智勝浦町の関連施設も使用を再開した。
(2021年9月15日付紙面より)
10月31日まで、宇久井ビジター (那智勝浦町 )
那智勝浦町の環境省宇久井ビジターセンターで13日から、「宇久井半島のシダ標本展」が始まった。宇久井半島で確認されている65種のシダのうち48種の標本を展示しており、園地内には散策中の来園者に見てもらえるよう12種類のシダのネームプレートも設置している。
シダ植物とは、根・茎・葉の区別があり、維管束(水や養分を運ぶ管)を持ち、種子を作らない植物のことで、コケ植物と種子植物の両方の特徴を持つ。花は咲かず、葉の裏面などから胞子を飛ばして子孫を残す。
展示では正月飾りとして知られるウラジロやコケのような見た目のヒカゲノカズラ、山菜として食されるワラビの他、ヘラシダ、ホシダ、ベニオオイタチシダなど形も大きさもさまざまな標本を展示。これらは今年1月に県立新翔高校の職業体験で同センターを訪れた亀井青空さん、西村悠羽さんが採取したものだという。
半島内で見られるシダの見分け方を記したプリントも配布しており、同センターの浦希世子さんは「少しでもシダに興味を持っていただき、野に出掛けたときの植物観察の楽しみの一つに加えていただければ」と話していた。
(2021年9月15日付紙面より)
紀伊半島大水害10年シンポ (紀宝町 )
紀伊半島大水害10年シンポジウムが11日、オンラインで開催された。2011年の大水害で甚大な被害を受けた三重、和歌山、奈良の3県関係者ら74人が参加し、犠牲者に黙とうをささげた上で、風水害への防災意識向上を図った。
災害対応力向上を図る「紀伊半島大水害10年プロジェクト」の一環。当初は紀宝町で予定していたが、新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、オンラインでの開催に至った。三重県などが主催し、共催した同町からは西田健町長、鮒田自主防災会の東口高士会長が思いを語った。
黙とう後、鈴木英敬知事のビデオメッセージを流し、西田町長は「シンポジウムは皆さまと一緒に紀伊半島大水害を振り返り、当時の対応や大水害から得た教訓を今後も風化させることなく、後世に伝えていく機会にしたい」とあいさつした。
東京大学大学院客員教授で、紀宝町防災行政総合アドバイザーの松尾一郎さんが「大規模風水害を見据えた地域防災の必然性」をテーマに基調講演。「災害は地域で発生するため、地域で危機感を共有して災害に備えることが大切。水害は先を見越して早めの防災対応が重要で、これがタイムライン」と話した。
紀宝町は全国に先駆け、2015年に事前防災行動計画(タイムライン)を策定。パネルディスカッションで西田町長はタイムラインや町民防災会議、防災情報共有システムなど町の防災対策を説明し「今後も大規模災害に備え、タイムライン防災が紀宝町の文化となるよう、充実を図り、災害に強い安全・安心な町づくりに努める」と伝えた。
東口会長は当時の写真を基に「川の水が輪中堤を越えるとの情報があり、住民を避難させた」と大水害を振り返った。
過去の水害を教訓として次世代につなげていくことが求められている今日。実際に災害を経験したからこそ得られる「今」があり、これを風化させないためにも過去を振り返り、認識・危機感を新たにして行動することが大切になる。
(2021年9月15日付紙面より)
ヒマワリを育てることを通じて命の大切さを学び、交通事故の被害者支援へ理解を深める「ひまわりの絆プロジェクト」の輪が広がっている。新宮市の近畿大学附属新宮高校・中学校(池上博基校長)でもこのほど、生徒会メンバーが大切に育てていたヒマワリが、太陽へ向かって大輪の花を咲かせた。
2011年に京都府内で発生した交通事故で亡くなった男児(当時4歳)が生前育てていたヒマワリの種を引き継ぎ、全国で開花させるプロジェクト。交通事故を担当していた警察官の元へ遺族から「私たちの子どもが生きた証しを残したい。このヒマワリがあちらこちらで咲けば、この子もいろんな所へ行けると思う。もう交通事故は嫌です」の言葉とともに種が託されたことを契機に、15年にスタートした。
同校では中学校生徒会(宇惠諒介会長)が中心となって取り組みへ参加。7月初旬に種をまき、水やりには高校生徒会(小屋敷卓真会長)や教職員も協力して成長を見守ってきた。
開花したのは5本。生徒らの背丈ほどに育ったヒマワリの花を眺め、宇惠会長は「取り組みを通じ、交通事故の危険性を伝えたい。僕たちも毎日徒歩や自転車で通学しており、事故はいつでも起こりうるので、気を付けていきたいです」。小屋敷会長は「京都府で発生したような事故が二度と起こらないよう、自分たちも交通ルールを守っていきたい」と話していた。
(2021年9月15日付紙面より)
紀の国わかやま文化祭 (新宮市 )
10月30日(土)から和歌山県内全域で開催される「紀の国わかやま文化祭2021(第36回国民文化祭・わかやま2021、第21回全国障害者芸術・文化祭わかやま大会)」を広く周知しようと同文化祭和歌山県実行委員会は12日、新宮市のJR新宮駅で西日本旅客鉄道株式会社和歌山支社協力の下、長距離列車「WEST EXPRESS 銀河」とタイアップしたおもてなし企画を実施した。同文化祭スペシャルインフルエンサーを務めるモデルの本谷紗己さんが一日車掌を務め、催しのPRなどを行った。
この日は地元和歌山を拠点に活動する兄弟お笑いコンビ「すみたに」らキャラバン隊メンバーと、きいちゃんも現場に駆け付け、場を盛り上げた。
本谷さんは駅構内において、乗客や駅利用者らを前に文化祭の詳細などをマイク放送し、記念撮影などにも応じた。乗車後は同駅からJR太地駅までの間、列車内で銀河限定のスタンプ押印や文化祭に関するパンフレットなどの配布にも取り組んだ。
また、同じくスペシャルインフルエンサーで、声優の中島由貴さんが事前収録した声による車内放送も紀南、紀中、紀北の各エリアで流され文化祭をPRした。
本谷さんは「銀河に乗って乗客の皆さまに文化祭をPRできることはめったにない貴重な経験。本当にうれしいです」。
意気込みについては「スペシャルインフルエンサーとしてこの日、撮影した動画や写真はユーチューブ(動画投稿サイト)やインスタグラムを通して発信します。今日は多くの方々に和歌山の魅力と文化祭を知っていただきたいです」と笑顔で語った。
駅構内で銀河や催しを撮影していた40代男性は「国民文化祭が来月、和歌山県で開催されることを初めて知った。知人にも教えてあげたい」と話していた。
(2021年9月14日付紙面より)
智英さんが補陀洛山寺住職に (那智勝浦町 )
「父と兄から、西国三十三所の一番寺と世界遺産の重みを引き継いで身の引き締まる思い」。那智山青岸渡寺の副住職として、兄で住職だった故・髙木亮享(りょうきょう)氏を支えてきた亮英(りょうえい)さん(71)は語る。8月5日に正式に同寺の住職を拝命した。また、同日に長男の智英(ちえい)さん(39)が補陀洛山寺の住職を拝命。親子二人三脚で歴史と文化が詰まった世界遺産の両寺を守っていく。
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那智山で生まれ、那智の滝を身近に感じながら成長した亮英さん。1965年に比叡山に入山し72年に龍谷大学を卒業した。
那智勝浦町史の編さん委員も務め、74年に出家得度。同寺の住職だった父の故・亮孝氏と兄・亮享氏の背中を追い、今日に至る。
諸国霊山100余カ所、中国、インド、韓国で仏教聖地巡礼し、スペイン巡礼も行う。84年に同寺の副住職を拝命。89年には熊野大峰奥駈修行を復活させた。
その後は世界宗教サミットへの参加、那智四十八滝回峯復活、葛城二十八宿行も始めた。2017年には権大僧正に昇任している。
「これまで寺を守ってきた父、その跡を継いだ兄。二人の存在のおかげで今がある。尊敬する兄という手本を失ったのは大きな痛手」と父と兄の死を振り返る。
住職拝命について「父と兄の背中を参考にして、歴史や文化、重責を受け継ぎ、火災や災難を防ぎ寺を守っていく。その後は熊野修験も含め、心も信仰も次の世代に伝え引き継いでいきたい」と力を込めた。
趣味は山歩き。座右の銘は、自分自身の置かれた場所で精いっぱい努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも代え難い貴い国の宝という意味の「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」だと話した。
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智英さんは2000年に県立新宮高校卒業後、龍谷大学に進み04年に比叡山延暦寺にて得度受戒。亮英さんの弟子となった。
05年に比叡山行院にて天台四度加行遂行。その後、叡山学院を経て神峰山寺(かぶさんじ)に入寺し修行。19年に那智山青岸渡寺に入寺した。
大阪府の神峰山寺時代については「檀家(だんか)寺だったため、お通夜やお葬式のお勤めも多かった。いろいろな方々と接し、悩みに添えるようなこともあったため良い修行を積むことができました」と回顧する。
補陀洛山寺の住職拝命を受けて、「天台宗補陀洛山寺の法灯を継承すべく、後世に歴史や信仰を伝えていきたい」と抱負を述べた。
また、智英さんは総本山から辞令が下り次第、年内にも青岸渡寺の副住職を拝命する。寺院運営や熊野修験については「時代の流れに合わせて青岸渡寺、補陀洛山寺のホームページやSNS(会員制交流サイト)の整備などを行う。幅広い世代の方々に参詣していただけるような寺院運営に従事していきたい。また、復興した熊野修験を後世に残すため、祖父と父の意志を受け継いで継承していく」と固い意志を示した。
父・亮英さんに対しては「父と同じようにはできない。父をサポートするとともに、これからも背中を追い続けていきたい。一生、修行です」。
趣味は父と同じで山歩き。好きな言葉は「忘己利他(もうこりた)」。自分のことは後にして、人に喜んでもらえることを行うといった意味があるという。
(2021年9月14日付紙面より)
潮岬中2年の久保凛さん (串本町 )
本州最南端から全国の頂へ―。全日本中学校陸上競技選手権大会共通女子800㍍に出場した串本町立潮岬中学校2年・久保凛さんが10日、田嶋勝正町長を表敬訪問し結果を報告するなどした。
久保さんは7月にあった第67回全日本中学校通信陸上競技大会和歌山県大会共通女子800㍍で優勝。その予選で大会新となる2分14秒04を記録した。この大会は第48回全日本中学校陸上競技選手権大会標準記録突破大会を兼ねていて、標準記録(2分16秒50)を突破し同選手権大会同種目の出場権を獲得した。
来る本番までの間には第70回近畿中学校総合体育大会があり、久保さんは地方、県、近畿の同種目で優勝。ベストタイムの更新はならずも力を増して先月18、19日実施の同選手権大会を迎えた。
予選の記録は41人中9位。8位以上を対象とするA決勝には届かなかったが9~16位を対象とするB決勝に進出し3着となった。結果は総合11位だが、記録だけをみれば全国で7番目、2年生選手の中では全国首位の結果となった。
以降、28日に紀三井寺公園陸上競技場であったU―16陸上競技大会選考会女子県代表選考種目1000㍍に挑戦し記録2分56秒22で優勝。来月22日(金)から24日(日)まで愛媛県総合運動公園陸上競技場で開かれるジュニアオリンピックカップ(JOC)第52回U―16陸上競技大会の同種目出場権を得た。
これら一連の経過を教育課の鈴木一郎課長が本人同席の下で田嶋町長へ報告。同校も同選手権大会女子800㍍決勝の動画で久保さんの挑戦の様子を伝え、田嶋町長は県市町村対抗ジュニア駅伝競走大会でもコースレコードを重ねる活躍をしている久保さんのさらなる好成績を喜び「話を聞いて心強く、まだ伸びると感じた。まちもできる限りバックアップ態勢を取るので、次のU―16などいろいろな場面でいい成績を残してほしい」といっそうの活躍を今後に期待した。
田嶋町長に将来の目標を尋ねられ、「オリンピックに出たい」と胸を張って答えた久保さん。「(同選手権大会の)結果には少し悔しいところもあるけれど、自分の全力で走れたし悔いはない。来年も出場して1位が取れるよう、これからも頑張ります」と意気込み、その目標を達成する自信も力強く示した。
(2021年9月14日付紙面より)
高田小・中で土砂災害避難訓練 (新宮市 )
新宮市立高田小学校・中学校(大家淳志校長、児童6人、生徒6人)で10日、土砂災害避難訓練があった。児童生徒たちは避難経路を確認するなど、災害への意識を深めた。
訓練は2019年から実施し、今年で3年目。11年に発生した東日本大震災、紀伊半島大水害から10年が経過したことに伴い、子どもたちに山の多い同地域で起こる可能性がある土砂災害への意識を持ってもらおうと行われた。
この日は同校横にある山が崩れ落ちたと想定。災害を知らせる校内放送が流れると、児童生徒は防災頭巾をかぶり、教職員の指示に従って駐車場へ一次避難した。駐車場に土砂が迫り、校門から逃げられないことも想定し、脚立を使ってフェンスを乗り越える二次避難訓練にも取り組んだ。
避難を終えた子どもたちに同中学校の成見雅貴教頭が「土砂が押し寄せた場合には校門からは出られず、さらに避難しなければいけません。地形上、津波の心配は少ないかもしれないが、豪雨時には川の増水が考えられるので注意しましょう」と伝えた。
大家校長は「災害発生時に先生たちが皆さんの近くにいるとは限らない。そんな状況でも早急に逃げられるように訓練を重ね、精度を上げるのが重要。自然災害はいつ、どこで起こるか分からない。『絶対に生きる、諦めない』という気持ちで、命を守ることを忘れないでください」と呼び掛けた。
水口胡都(こと)さん(6年)は「最初に比べると訓練の大切さを知り、避難時の判断ができるようになりました。実際の災害は想像以上に恐ろしいと思うので、授業の中だけでなく普段から防災への意識を高めたい」と話していた。
(2021年9月14日付紙面より)
秋季高校野球県一次予選
サッカー普及の功績たたえ (那智勝浦町議会 )
那智勝浦町議会(荒尾典男議長、12人)の9月定例会が10日再開し、国内におけるサッカー普及に大きく寄与した同町出身の中村覚之助氏を名誉町民に推挙する議案が全会一致で同意された。この日は日本サッカー協会が設立100周年を迎える記念すべき日だった。
中村氏は1878年に旧那智村浜ノ宮で生まれ、1900年に東京高等師範学校(現筑波大学)に入学。教授の坪井玄道氏が海外視察から持ち帰った「アッソシェーション・フットボール」を翻訳し、日本初のサッカー指導書を編さんした。さらには日本初となるサッカーチームを創設し、国際試合も実施した。1906年に28歳の若さで逝去した。
それらの功績をたたえようと、同町出身でロサンゼルス、ベルリンの両オリンピックの棒高跳びにおいて銀メダルを獲得した西田修平氏に次いで二人目の名誉町民に推挙された。
同町によると、東京五輪や協会設立100周年などもあったことから、今回のタイミングになったという。
堀順一郎町長は中村氏の功績をたたえ「本日は協会設立100周年を迎える記念の日。サッカーの発展に貢献したことから協会からも町へ感謝状を頂くことになった」と報告。
今後については「中村さまを顕彰し、このことを日本全国、世界に発信していく。サッカーの町、ヤタガラスの町としても多くの方に来ていただける取り組みも併せて進めていきたい」と話した。
この日、議場に駆け付けた中村氏の兄・亀一氏の孫に当たる統太郎さんは「覚之助の生前の功績が認められ名誉町民に選ばれた。この上ない喜びであり、親族としても光栄に思う」と喜びを語った。
(2021年9月11日付紙面より)
熊野・那智ガイドの会(汐﨑眞次会長)のメンバー11人は9日、世界遺産「紀伊産地の霊場と参詣道」の一部であるかけぬけ道で道普請(みちぶしん)に汗を流した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定されていた中高生の修学旅行は延期となっているが、古道を歩く人々の安全を確保するとともに、地元の人々にも歩いてほしいとの思いから実施した。
この日は熊野那智大社・那智山青岸渡寺~妙法山阿弥陀寺を結ぶルートで道普請。2011年の紀伊半島大水害で発生した土石流によって道が流失した部分の迂回(うかい)路とかけぬけ道の合流地点付近で、道を覆い隠すように茂るマツカゼソウを刈り、枯れ葉で埋まった石段を掘り起こした。
作業後は、道中の落石の除去や危険箇所の確認などをしながら、霧にかすむ古道をたどって阿弥陀寺まで歩いた。
汐﨑会長は「コロナが収束したら、観光客の数も増えてくるはず。ガイドの仕事に興味がある方は、ぜひ一緒に活動しましょう」と呼び掛けている。
(2021年9月11日付紙面より)
CGS部調理班、販売急ぐ (串本古座高校 )
県立串本古座高校(左近晴久校長)のCGS部調理班(森陽翔班長、班員8人)が9日、3年越しで地元食材を使った万能だれ「あがらのたれ」を商品化した。来週中に協力事業所で販売を始める予定で、入部以来関わってきた森班長(3年)は「肉にも野菜にも合い、野菜嫌いの自分でもこれをかけると野菜が食べられる。班一丸で作った自慢のたれなので、ぜひ手にとってほしい」とアピールしている。
このたれは、みくまの農業協同組合の働き掛けにより古座川町~旧古座町域で生産が活発化している食材・ニンニクの消費を促すレシピ作りに協力する中で開発。イベントで試験披露したり家族など班員つながりで試食をしてもらったりなどして得た意見も取り入れながら、レシピを練り上げてきた。
2年余り関わってきた3年生の引退間際で「最後までやり切るべき」と班員は一致団結し、商品化のノウハウを持つ古座川ゆず平井の里に協力を依頼。先月25日に班員4人も手伝って調理~瓶詰めをし、今月9日にカイロス缶バッジのデザイン担当・雑賀和さん(1年)のイラストを取り入れたラベルなどを貼って商品化した。
用いた地元食材は同班自家製の黒ニンニク、古座川町産のユズ果汁やニホンミツバチの蜂蜜、県産のミカンジュース、那智勝浦町・藤野醤油醸造元のしょうゆ「菊」。さらにリンゴやみりん、日本酒などを加えたレシピに調味料など所要の添加をして万能だれを仕上げ、200㍉㍑瓶に詰めた。
長引くコロナ禍により自宅で過ごす時間が増える中、「あがらのたれ」が一家だんらんのきっかけになればという願いもあって果汁を効かせ子どもも親しみやすい甘口の味わいとしている。その分消費期限は4カ月〈12月23日(木)まで〉と短いため、急ぎ販売促進媒体を作って販売までこぎつけるという。
価格は1瓶400円(税込み)で、生産数は260本。コロナ禍で文化祭など直販の機会が作りにくい状況があり、販売できる事業所があれば9月中にご連絡いただければと協力を求めている。連絡や問い合わせは同校(電話0735・62・0004)まで。
(2021年9月11日付紙面より)
新宮市立王子ヶ浜小学校(谷口幸生校長)は9日、防災学習を実施した。4年生62人が教職員の誘導を受け、阿須賀神社までの避難場所などを歩きながら確認した。
防災学習は総合学習の一環で、各学年が毎年、防災について学びを深めている。4年生は実際に歩いて町を探索し、防災マップを作成している。
2011年に起きた東日本大震災や紀伊半島大水害、今後の発生が危惧されている南海トラフ地震などの災害に備えて、子どもたちが自分の命を守り考えて避難できるようになってほしいとの思いから実施している。14日(火)には、4グループに分かれて校区内の地域を調べた後、マップを作る予定となっている。
児童は教職員から説明や移動中の注意事項を受けると、指示に従って学校を出発。市の避難所に指定された場所などでは教職員が用意した「防災」の旗を基に、どのような行動を取るべきかを考えながら阿須賀神社までの経路をたどった。
上野萩晴(しゅうせい)君は「どうやって危険な場所から逃げるかを考えながら歩きました。災害はいつ起きるか分からないので、いろんな避難場所を知って早く逃げられるように勉強したい」と話していた。
(2021年9月11日付紙面より)
那智谷大水害遺族会が追悼式 (紀伊半島大水害から10年 )
当地方に甚大な被害をもたらした紀伊半島大水害(2011年)から10年。各地では、同水害の犠牲者を追悼するための慰霊祭や式典、復興催事などが営まれた。本紙エリアでも新型コロナ感染予防対策が講じられる中、遺族や関係者らが故人をしのび、防災への誓いを新たにした。
4日未明、那智勝浦町井関の紀伊半島大水害記念公園で那智谷大水害遺族会(岩渕三千生(みちお)代表)による追悼式があった。犠牲者の遺族ら約60人が参列し、さまざまな思いを胸に死者・行方不明者数と同じ29個のLEDキャンドルに明かりをともした。
昨年と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、追悼式で使用するキャンドルの製作は中止となり、火を使わないLEDライトをキャンドルに用いた。
午前1時から始まった追悼式には、水害の犠牲となった中平景都君=当時(小2)=の同級生も駆け付けた。
岩渕代表(60)があいさつし、参列者が黙とうをささげた。その後、静かにキャンドルに明かりがともされた。
景都君の同級生で前日に18歳の誕生日を迎えた同町市野々在住の村田健士朗(けんじろう)君(新宮高校3年)は「高校卒業後は同級生が集まる機会がなくなってしまうので今回、集まれて良かった。帰り道も同じだった景都君を思い出しながら、感謝を伝えた。今後もまた来たい」。
水害で妻と娘を失った寺本眞一さん(68)は「家内と娘には『こんなことあったよ、初孫できたよ』と話し掛けた。各地で災害が起きると10年前を思い出して気がめいる。孫には事故や災害に遭わず、人生を全うしてほしいと思う。また、犠牲者のために多くの方が供養に来てくれるのはありがたい」と話した。
岩渕代表は「10年、20年たとうが気持ちは同じ。遺族にはそれぞれの思いがある。那智谷の復興や災害が起きないように見守っていてほしいと伝えた。今日は景都君の友人がたくさん来てくれてありがたい」。
追悼式や今後については「二度と那智谷で同じような災害を起こしてはならない。この水害を教訓にして、『早めの避難』を心掛けてほしい。大水害を忘れないためにも行事は後世に伝えていかなくてはならない。遺族会がなくなってもうちの家族だけでも式はやっていきたい」と話していた。
(2021年9月5日付紙面より)
黄色いハンカチに感謝込め (新宮市熊野川町 )
新宮市熊野川町の新宮市さつき公園(紀伊半島大水害復興祈念公園)に3日、2011年の紀伊半島大水害後に町の復興に携わった全ての人々へ感謝を込め「熊野川は元気です!」のメッセージを発信する黄色いハンカチが掲げられた。期間限定で1週間ほど設置する。
町内約600世帯と学校、福祉施設などにハンカチを配布して世話になった災害復興ボランティアや親戚、友人らへメッセージを書いてもらい、公園に掲げる取り組み。今年5月に地域住民組織「チームくまのがわ」の会合で発案され、実行委員8人を中心に大勢の町民が作業を分担した。
3日の設置作業には雨の中、実行委員8人や熊野川中学校の全校生徒22人、関係機関職員らが駆け付けて協力した。
参加した中前なごみさん(中3)は「ボランティアの方々へ感謝を伝える機会を持ててうれしい。当時は4歳だったが、泥かきをしてくれた人たちのことは記憶に残っている。これからも災害は起こるだろうが、今度は自分たちが助ける側に回りたい」。
取り組み発案者の1人で実行委員長を務めた下阪殖保さんは「SNSやメディアを通じて、『ありがとう、熊野川は元気やで』という思いが伝われば。こんなメッセージが出せるくらい、町のみんなが前向きに復興に向けて頑張ってこられたこの10年は、いいこともたくさんあったと思う」と語った。
さつき公園には翌4日にバルーンも設置され、青空の下に黄色いハンカチがたなびいていた。
(2021年9月5日付紙面より)
仲本耕士副町長に聞く (古座川町 )
古座川町では土石流こそなかったが、家屋の床上浸水585戸をはじめとし道路、堤体、公共施設など多岐の被害があり、3人が災害関連で一度は取り留めた命を失った。紀伊半島大水害時、町住民福祉課長として対応した仲本耕士副町長は「(七川ダムの)ただし書き放流は自身の経験ではこの1回だけ」と自然の脅威を振り返る。
洪水調節をする七川ダムの放流量は最大毎秒320㌧。ただし書き放流は流入量をそのまま流出させて最悪の状況(設計満水位状態からの決壊)を避ける特例操作で、当時は毎秒約1000㌧以上が流出していたという。その先にあるのが前述した被害。当時はそれほどの影響を与える雨水が古座川へ流れ込んでいた。
そのような脅威の経験を受け、同ダムは全国に先駆けて事前放流に関する協定を電力会社と結び、洪水調節の幅を広げた。同町は災害復旧に3年余りを要し、その終盤で洪水時最高水位標柱を町内各所に設置し経験の風化抑止も図った。さらにハード面で車両や農機を守る高台を6カ所造成し、ソフト面では同大水害記録誌や洪水ハザードマップの全戸配布による水防災意識の喚起や自主防災組織の結成推進による備蓄増強などの対策を積み上げている。
20年度から古座川下流域で河川整備計画に基づく河道掘削が始まり、今年8月末には古座川流域治水プロジェクトも策定された。いずれも同大水害に次ぐ被害をもたらした2001年水害(同町では家屋70戸が床上浸水)を前提。気付くべきは既往最大水位となっている同大水害規模の防災は困難で、今はこの状況に対する備えが不可避という現実だ。
「古座川は昔からつかるところ。だから逃げる場所をつくる」。ふと祖母の言葉を思い出して語った仲本副町長。同大水害から10年を迎えるに当たり「古座川町は町民1人1人の心構えと行政のサポート、その集大成で被害を『抑える』。水害の経験を風化させず、各職場、各家庭で意識を持ってほしい。そのようにして古座川とつきあっていく」と思うところを掲げ、実動の源となる減災意識を皆が持ち続けることを期した。
(2021年9月5日付紙面より)
大水害献花式で誓い新た (新宮市 )
新宮市は4日、同市熊野川町田長の道の駅「瀞峡街道 熊野川」の紀伊半島大水害慰霊碑前で犠牲者追悼献花式を営んだ。遺族や田岡実千年市長、向井雅男副市長、速水盛康教育長、大西強市議会議長ら関係者約30人が参列。犠牲者の冥福を祈るとともに、災害に強いまちづくりを誓った。
参列者たちは、同市で犠牲になった14人の名前が刻まれた慰霊碑の前で黙とうをささげ、白い菊を献花。故人をしのび、静かに手を合わせた。
田岡市長は「災害でお亡くなりになられた方々の無念の思いと、ご遺族の皆さまの深い悲しみを思うと今も哀惜の念に堪えない」と追悼。
市では災害後、国、県、市民からの多大な支援と励ましを得て復旧・復興を進めるとともに、防災対策を見直し災害に強いまちづくりに努めてきたと述べ「これからも紀伊半島大水害を片時も忘れることなく、市民の皆さまが安心・安全に暮らすことができるまちを築いていく」と決意を新たにした。
(2021年9月5日付紙面より)