「病気なんかで髪の毛がない子がたくさんいる。誰かが喜んでくれたらいいな」。
新宮市立神倉小学校に通う曽越亮君(11)は、11年間にわたり伸ばし続けた髪の毛約40㌢を23日にカット。切った髪の毛を小児がんや先天性の疾患、事故などで頭髪を失った子どものためにウィッグを提供する「ヘアドネーション」に協力する。髪の毛は現在乾燥中。8月に入り次第宮城県でヘアドネーションプロジェクトを展開するNPO法人に送付するという。
亮君が髪の毛を伸ばし始めたのは、特撮テレビドラマ「仮面ライダー電王」(2007~08年)のお気に入りキャラクターに影響を受けたことがきっかけ。当時、頭髪がないことに苦しむ男児のインタビューをニュースで目にした母の公子さんがヘアドネーションの話を持ちかけたところ、亮君は参加の意思を示したという。
「女の子みたい、とクラスメイトにからかわれて泣きながら帰ってくる日もあった」と公子さん。しかし亮君の意思は固かった。ヘアドネーションへの協力には原則として31㌢以上の長さがあることが条件となっているため、根気よく髪の毛を伸ばし続けた。
「今でも癖で髪の毛を触っちゃう」と亮君。「でも、やって良かった」と笑顔を見せる。女性の髪の毛で作られたウィッグに抵抗を示す男児もいることから「同じ年くらいの男の子に使ってもらいたい」と話す。
公子さんは「たとえ嫌なことがあっても11年目にして認めてもらえた。そのことは息子の自信や成長にもつながったと思います。理解を示し協力してくれた学校の先生方にも感謝しています」。
亮君の行動に影響を受けた妹の睦ちゃん(4)も現在髪の毛を伸ばし中。来年、ヘアドネーションへの協力を予定しているという。
(2020年7月31日付紙面より)
佐田などで災害警備訓練 (串本警察署 )
古座川町佐田、七川ダム湖などで29日、串本警察署(﨑口忠署長)と管内関係機関等の合同災害警備訓練があった。
この訓練は、大規模災害時における管内関係機関等との緊密な連携をあらかじめ培う目的で計画。同署は今回、県警本部警備部の警備課と機動隊および生活安全部の警察航空隊、航空自衛隊串本分屯基地、串本町消防本部、串本町役場、古座川町役場、株式会社POSとの連携を構築し、集中豪雨により佐田一帯の河川流域で多数の孤立者や行方不明者が発生しているとの想定で▽部隊輸送訓練▽情報伝達訓練▽救出救助訓練―を順次実践した。
部隊輸送訓練は警察ヘリにより串本町上野山から古座川町蔵土まで救出救助部隊を輸送、情報伝達訓練は防災相互通信用無線機などを使って関係機関と情報を送受する内容。
救出救助訓練は同湖を訓練区域とし、▽浸水家屋の屋根に避難した孤立者を警察ヘリで救助▽POSと連携し無人航空機(ドローン)で湖畔の孤立者を捜索▽POS・自衛隊・消防(救急)と連携し、輸送した警察のボートで湖畔の孤立者を救助―といった項目を実践した。
一連の実践後、﨑口署長が「今年も全国各地で集中豪雨による災害が発生している。その事態が串本地域で発生した場合、串本警察署のみで対処することは到底無理。引き続き関係機関の皆様と緊密な連携をさせていただき、被害を最小限に抑えられるよう活動したいので今後ともよろしくお願いしたい」と講評を述べて締めくくった。訓練指揮者として統括に当たった同署警備課の井口潔課長は「今回は集中豪雨による災害訓練だったが、大水だけでなく津波や河川氾濫、地震といろいろな(災害の)パターンが考えられる。今後もバリエーションを加えて訓練の練度を上げていきたい」と思うところを語った。
(2020年7月31日付紙面より)
相野谷中学校で学習会 (紀宝町 )
紀宝町立相野谷中学校(佐藤光一校長、20人)で29日、平和学習会があり、水爆実験で被ばくした「第五福竜丸」の悲劇を通して全校生徒が非核と平和の大切さを学んだ。
講師は第五福竜丸事件の語り部で、被ばく後の1956年に同船の改装工事を請け負った強力(ごうりき)造船所(現ゴーリキ)=伊勢市=の3代目・強力修さん(69)と同社の阪本典子さん。
54年3月1日にビキニ環礁でアメリカによる水爆実験で被ばくした遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」。47年に串本町の古座造船で第七事代丸として建造された際、木材の松は紀宝町の井田海岸や東正寺(鵜殿)の裏山から切り出されたという。
「悲劇の第五福竜丸から希望のはやぶさ丸へ」と題し、強力さんは「ビキニから160㌔離れた第五福竜丸以外にも何百隻もの日本のマグロ船や現地の漁船が被ばくした」と話した。
被ばく後、「はやぶさ丸」として改造され、工事を請け負った強力造船所の社員は犯罪者扱いされるなど、つらい経験をしたという。最後に強力さんは、元第五福竜丸無線長の久保山愛吉さんが残した言葉「原水爆の被害は私を最後にしてほしい」を生徒たちに伝えた。
阪本さんは、強力造船所創業者で福竜丸を改装した強力善次さんの生涯を描いた紙芝居を伊勢弁で披露した。
第五福竜丸は現在、東京都立第五福竜丸展示館で永久保存されており、4月に修学旅行で同館を訪れる予定だった3年生は「戦争や平和の本を読んでみようと思った」「平和の大切を教わり、勉強になった」「いろいろな人の思いを知った」などと話していた。
(2020年7月31日付紙面より)
被災地に簡易トイレ寄贈 (令和2年7月豪雨 )
今月3日から発生した「令和2年7月豪雨」の被災地を支援しようと、紀宝町鵜殿に本社を構える倉本工務店(倉本博美代表取締役)はこのほど、非常用簡易組み立て式トイレ20個を制作した。トイレは豪雨により甚大な被害を受けた熊本県の球磨(くま)村役場を通して、現地の避難所や仮設住宅へと贈られる。
倉本代表取締役は、自身が鵜殿地区の自主防災組織の役員を務めていた経験に基づき「災害時はトイレが一番困る」と思い立ち、従業員と2人、5日間で20個のトイレを制作。建築業に携わる観点から「木を使いたい」と国産ヒノキを使用した。
トイレは組み立て式。もともと商品化を見据え改良を加えてきた自社のオリジナルだ。4、5㌔と軽量で、3分ほどで組み立て可能。平時では椅子や収納庫としても使用できる。
背の部分をカエルの顔に見立てており一つ一つの表情も異なる。「笑顔あふれる家に、早く帰る(カエル)ことができますように」と願いを込めた。表情豊かなカエルのトイレを見て、子どもたちが少しでも笑顔になれたらという思いもある。
「紀伊半島大水害の時は、全国の人からお世話になった。少しでもお返しできれば」。倉本代表取締役は制作に込めた思いを語る。
「ヒノキ材は匂いが良く、癒やしの効果がある。トイレが避難所から離れている場合、お子さんたちは夜中のトイレなどが大変だと思う。避難所の方々が一日でも早く家に帰ることができるよう、そしてカエルのトイレで少しでも笑顔になってくれるように祈っています」と話していた。
(2020年7月31日付紙面より)
太地小が福祉推進指定校 (太地町社会福祉協議会 )
太地町社会福祉協議会(岡本研会長)は17日、太地町立太地小学校(宮本礼子校長)を福祉教育推進校に指定した。指定式後は、同小4年生の5人が福祉学習に取り組んだ。
以前から福祉学習に取り組んでいた町社協によると、本年度から要項を定めシステム化することで子どもたちへの福祉教育充実化を図ることが目的だという。福祉学習は同校の総合的な学習の一環で行われる。
岡本会長から指定書を受け取った宮本校長は「社協が入ってくれることで専門的な学習を受けることができる。単なる理解だけでなく、深い学びにつながります」と話した。
福祉学習では美熊野福祉会の職員らが来校。事務局長の橋上慶一さんの司会の下、同福祉会利用者で全盲の溝本和彦さんが講師を務め児童と交流を深めた。溝本さんは「今日は皆さんと一緒に楽しく点字の勉強をしたいと思います。よろしくお願いします」とあいさつした。
橋上さんは全盲の障害を持つ人の見え方などを説明。溝本さんの日常生活や、スポーツ大会での活躍についても触れた。白杖(はくじょう)や点字ブロック、盲導犬、音の出る信号機、ガイドヘルパーの重要性を説いた。
その後、児童は溝本さんの手を引いて図書室まで案内した。続いて、アイマスクを着用し全盲の体験や点字学習を行った。
宮本校長は「今後はさらに高齢化社会となるため、福祉学習は子どもたちにとって大きな成長につながる。意識も変わり、次の行動につながっていくと思う」。
岡本会長は「ハンディを持つ方々の生活や、どんなことに困っているかを学んでいただき、心の優しい子どもたちに育ってほしい。今後は太地中学校にも広げていきたい」と語った。
(2020年7月19日付紙面より)
ダイワテックと三銀が毛布寄贈 (那智勝浦町 )
愛知県名古屋市の株式会社ダイワテック(以降、ダイワテック)と第三銀行(三銀)は17日、那智勝浦町役場で寄贈式を行い、連名で真空パックされた毛布160枚を町に贈った。町によると毛布は各避難所などに配備し、災害時に役立てるという。
同町は、三銀の仲介で自然エネルギーを活用したソーラーハウスなどを手掛けるダイワテックと昨年10月に災害時におけるレンタル資機材の提供に関する協定を締結。これにより、災害発生時は同町へ優先的に蓄電システムが完備されたソーラーシステムハウス(コンテナ状の建物)が届けられるという。
今回の毛布寄贈については、両社が取り組むSDGs(国連が2030年までに達成すべき世界共通目標として掲げる「持続可能な開発目標」)の実践として行われた。
寄贈式にはダイワテックの岡忠志代表取締役社長と渡邊實取締役が、三銀からは執行役員の小松正実・紀州地区営業部長と五十嵐禎幸・庄内支店長、小林秀行・勝浦支店長が出席。
ダイワテックの岡社長は「今回も第三銀行さまのご縁。昨今では100年に1度といわれる災害が毎年発生している。わが社は普段、発電した自然エネルギーを自分たちで使うことをコンセプトにしているが今回は毛布。何もないことが一番だが、発生時には毛布をお役に立てていただけたら」。
三銀の小松紀州地区営業部長は「2016年から同様の取り組みを行っており、現在は90件を超えている。今後も地域貢献していきたい」と語った。
寄贈を受けた堀順一郎町長は「身も心も温まる毛布を寄贈いただきありがとうございます。長期避難だけでなく、一時避難の際にも活用させていただきたい」と感謝を述べた。
(2020年7月19日付紙面より)
浦神実験場で水産実習 (近大新宮高 )
新宮市の近畿大学附属新宮高校(池上博基校長、365人)の2年生の希望者15人は17日、水産実習で那智勝浦町浦神にある近畿大学水産研究所浦神実験場を訪れた。
「実学教育」を建学の精神とする近畿大学との高大連携の一環で、生徒にクロマグロの完全養殖で知られる同大学水産研究所の最先端の研究の一端に触れる機会を提供する。浦神実験場でマダイ、新宮市高田の新宮実験場でアマゴ、チョウザメを育て、生物・生命の尊厳について考える。
生徒たちは昨年11月から実習用いけすで養殖しているマダイの体重を測り、その成長を実感。今年2月時点で150㌘ほどだったが、今回は平均で479・6㌘になっていた。
講義室では家戸敬太郎教授らの指導の下、船の係留や養殖網の設置に使える「もやい結び」や「巻き結び」などに挑戦。初めての作業に悪戦苦闘しながらも、ほどけにくく、必要なときに解きやすい結び方を考案した先人の知恵に驚いていた。
大槻湧山君は「前来たときよりもマダイが3倍近く大きくなっていて驚いた。順調に育ってくれてうれしい。もやい結びは最初は難しかったが、だんだん楽しくなってきた」と語った。
秋ごろには養殖に必要な餌の量についても学ぶ予定。現在の3年生が育てたマダイは近大新宮祭で提供する予定だったが、新型コロナウイルス感染対策で中止となったため、どうするか検討中だという。
(2020年7月19日付紙面より)
新宮グラウンドゴルフ同好会 (新宮市 )
宿泊費など一部割引 (わかやまリフレッシュプラン )
和歌山県は8日、県民が県内の宿泊施設などを利用する際に、宿泊費などを割引するキャンペーン「わかやまリフレッシュプラン」チケットの販売を開始した。実施期間は9月30日(水)まで。
県が展開する「蘇(よみがえ)りの地、わかやま」キャンペーンの一環。新型コロナウイルス感染症の影響により県内の観光が大きな打撃を受ける中、県民に県内観光地を訪れてもらい、観光需要の喚起につなげる狙いがある。
内容は、総旅行代金の2分の1以内(1人、1泊当たり最大1万円)を割引するもの。泊数制限なし。日帰り旅行も対象となる。電子チケットは1枚額面5000円を2500円で販売。1回当たり50枚購入できる。
利用可能プランは、県内の旅行代理店や宿泊施設のうち、「わかやまリフレッシュプラン」登録の参加事業者(県内165社)が販売する1人当たり5000円以上の募集型企画旅行や受注型企画旅行、手配旅行および宿泊プラン。参加事業者は特設ホームページ(https://wakayama-refresh.com)に掲載している。
電子チケットの購入には「Pass Me!」への会員登録(無料)が必要。購入した電子チケットを宿泊施設などのチェックインの際にスマートフォンやタブレットなどで掲示する。インターネット環境がない人は、プラン予約の際に参加事業者(宿泊施設)に申し出ることにより利用可能。
問い合わせは「わかやまリフレッシュプラン販売促進事務局」(電話0570・01・2288)まで。県では「ぜひ電子チケットを利用し、県内各地を巡り改めて和歌山県の魅力に触れていただき、新型コロナによる閉塞感から心身ともにリフレッシュしてください」と呼び掛けている。
また、大手旅行専門誌じゃらんは、和歌山県在住者向けに那智勝浦町の対象宿泊施設の宿泊料金が最大半額となる「ふっこう割クーポン」を配布している。
(2020年7月10日付紙面より)
藤原ひろのぶさんが講演 (新宮市 )
新宮市仲之町のCOLORsで6日、NPO法人「NGO GOODEARTH」代表の藤原ひろのぶさんの講演会があった。藤原さんは「藤原ひろのぶお話会~世界との繋がりに気づけばあなたの選択が大きく変わる」を題目に環境・貧困問題などについて講話。25人ほどが聴講した。
身体や健康に配慮した物の販売、食や肌に関する教室などを展開している「イロドリラボ」(新宮市三輪崎)主催。藤原さんは、2009年に「GOODEARTH」を設立以降、発展途上国と呼ばれる国々で貧困に苦しむ人々の問題解決に取り組んでいる。
年に数回は自ら現地に赴き暮らしの現状をインターネットサイトなどを通じて発信。持続可能な支援の仕組み作りをしている。現在は支援活動の傍ら、全国で「貧困問題」をテーマに講演会やセミナーを開催している。現在39歳で4児の父。
藤原さんは、現在世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症に触れ、「日本では年間約1万人がインフルエンザで亡くなっている。大人がメディアにあおられてパニックを起こすと子どもなどの弱い立場の人が傷つく」と警鐘を鳴らした。
免疫力や体力を高めることが必要とし「休校措置によって子どもたちを家に閉じ込めた結果、強くなる機会を奪っている。冷静に判断しなければならない」。
世界的に見ると、貧困国ではマラリアや結核、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染症で毎日、子どもを含む7000人以上の人が命を落としている現状に触れ「コロナウイルスで金持ちの国の高齢者が亡くなり出すと世界がパニックになった。その影響でマラリアなどの感染症がまん延しているスラムではその日の食費をまかなうだけの仕事もなくなり、病気に飢餓も加わった」。その傍ら、コロナ禍の3カ月間で米国の富裕層の資産が62兆円増えたことを紹介した。
地球の裏側の貧困問題や環境問題などを克復するためには、▽思考停止▽二項対立▽お金―の三つの弱点が問題解決の障壁であるとし、誘導型メディアの在り方に言及。「メディア、国、国民のレベルは同等。自分の意思で考えることのできる情報を提供するのがメディアの在り方であり、国民はもっと賢くなる必要がある」と述べた。
二項対立に関しては「正義か悪か、敵か味方か。対局にあるものを排除しようとするのは人間の悪い癖。しかし、そのせいで想像しない暴力に加担してしまうこともある」。
「お金は誰かがプラスだと誰かがマイナスになる。人間がお金を追いかけ回すから地球よりお金が重くなっている。お金を得るために資源を浪費している」と話し、現在起こっている異常気象や絶滅の恐れのある野生動物などに言及。「大きな問題に目を向けなければ自分たちも守れない。目の前のことに振り回されずに日々の選択をすることが必要」などと呼び掛けた。
(2020年7月10日付紙面より)
人権擁護委員委嘱伝達 (串本町 )
串本町役場本庁で8日に人権擁護委員の委嘱状伝達式があり、西向在住の植松豊子さん(67)と田原在住の和田充旦さん(66)が委嘱状の伝達を受け着任の節目をつけた。
同委員は、人権擁護委員法に基づいて基本的人権の侵犯を監視し、侵犯があった場合は救済のため速やかに適切な処理をとり常に自由人権思想の普及高揚に努めることを使命とする特別職国家公務員。人選は市町村長の推薦により行い、法務大臣が任期3年で委嘱をしている。
法務省和歌山地方法務局新宮支局(山田勝久支局長)の管内では1日付で串本町の新任2人と古座川町の再任2人、那智勝浦町の再任1人が委嘱を受け、順次委嘱状の伝達(再任者は郵送伝達)を進めている。
この日は串本町役場本庁町長室で推薦者の田嶋勝正町長と新宮人権擁護委員協議会の垣本正道会長が立ち会う中、山田支局長から同町の新任2人に委嘱状を伝達。田嶋町長は家庭内暴力や体罰、いじめに加え最近の傾向の一端でインターネットによる誹謗中傷を注視しつつ「誰が加害者か分からない事案も多発している中、被害を受けたときに誰に相談すれば良いかで悩んでいる人もたくさんいると思う。その解決に向けて力を貸してあげていただけるとありがたい」と期待した。
同支局管内の現在の委員数は29人で、うち7人が同町からの推薦。管内で新宮人権擁護委員協議会を結成し、人権侵犯への対応に加えて6月と12月に人権啓発を展開し常設相談、特設相談の窓口を設けるなど人権擁護思想の裾野を地域に広げつつ使命の全うに努めている。
(2020年7月10日付紙面より)
福祉セで寺子屋分校再開 (紀宝町 )
紀宝町福祉センターで8日、寺子屋分校が再開された。今回は「楽しい手芸教室」で、参加者7人がミニカバン、トンボ、帽子のかわいらしいストラップやブローチを縫った。
同町鵜殿の植野洋子さん、大和田富美子さんを講師に、古布を使った小物作りをする教室。同センターの改修工事に伴って休止していたが、4月には町民の要望を受けて布マスク教室を実施。本格的な活動再開は今回からで、参加者全員の検温をした他、一人一つの机を使うなど距離を保つ対策をした上で開催した。
今回の小物は植野さんが本や見本を参考にしたもの。参加者は好みの布のキット2種類を選び、互いにアドバイスしながら手縫いし、小花やビーズで飾って完成させた。
植野さんは「古い着物の生地を集め、小さな布でも捨てずに小物作りに活用している。準備は大変だが、今日はたくさん冗談も言って、みんな楽しめたのでは」と顔をほころばせた。
来月は髪や浴衣の帯に使える和風の花飾りを作る予定にしている。
(2020年7月10日付紙面より)
扇立祭は時間短縮し斎行 (熊野速玉大社 )
熊野地方の夏の風物詩として1000年以上の伝統を持つ「扇立祭(おうぎたてまつり)」が14日(火)に開かれるのを前に、新宮市の熊野速玉大社(上野顯宮司)で6日、祭り当日に各殿で開帳する檜扇(ひおうぎ)7握を虫干しのため蔵から出した。なお、今年の扇立祭は新型コロナウイルス感染症拡大予防の観点からミス浴衣コンテストなどの奉賛諸行事や露店商組合の出店は中止。午後3時に本殿・各殿に檜扇を開帳し、午後5時に閉門となる。
扇立祭は、神前に立てられた檜扇に神が降臨し、氏子が病気にかからないよう、また五穀につく虫を追い払って豊作を願い始まった。
室町時代の作品と伝わる檜扇は大社を代表する宝物で、現在、日本に18握ある国宝のうち11握が大社に伝わっている。ヒノキの薄い板の木目の美しさを生かしながら彩色、金箔(きんぱく)、銀箔(ぎんぱく)が施されていて「熊野檜扇」と呼ばれている。
祭りで使用されている檜扇7握は、1964(昭和39)年に模写されたもので、本殿用(高さ1・5㍍、幅1・65㍍)は大社先々代の故・上野殖宮司、残り6握の各殿用(高さ0・8㍍、幅1・3㍍)は故・杉本義夫さんが模写し、故・鮒田和往さんが奉製したものとなっている。
(2020年7月7日付紙面より)
町と自主防が開設・運営訓練 (紀宝町 )
大里地区の四つの自主防災会と紀宝町は5日、同町の大里多目的集会施設で新型コロナウイルスに対応した避難所開設・運営訓練を実施した。各自主防災会、町、町消防団第3分団大里班などから参加した約50人が施設内で避難者同士が密にならないようパーティションを設置し、避難者の受け入れ方法を考えた。
今後、出水期に避難する機会が増えることが予想され、避難所での3密を避けるなど新型コロナ対策を講じた「新しい生活様式」による避難所運営がスムーズに行えるよう地区、町が連携した。密集回避のため参加者を限定し、検温、マスク着用、手指消毒をした上で行った。
訓練を前に、町防災行政総合アドバイザーで東京大学の松尾一郎・客員教授が「新型コロナによって人との接し方が変わった。ワクチンができない限り終息は難しいため、感染対策を講じた避難所運営を行政と一緒に取り組んでほしい」と呼び掛けた。
訓練は設営から開始し、パイプとビニールシートのパーティション、テント、簡易ベッドを組み立てた。間仕切りした避難所の完成後、受け入れ訓練に移り、受付に消毒関係備品を配置。防護服、フェースシールドを着用して避難者の問診や検温をし、発熱者は津本防災センターに専用車両で搬送した。分散避難できるよう、車中避難者の駐車スペースも設けた。
訓練を見守った西田健町長は「新型コロナと水防をしっかりと見据えた上での訓練が問われている。今回はその先駆的な訓練で、今後も身の安全を守る体制をつくっていきたい」と話した。
終了後、参加者からは「先着順か高齢者を優先するのか」「受け付けが混雑した。問診を簡潔にすれば」などの意見があった。今回の訓練で得た改善点などは大里地区タイムラインに反映するという。
(2020年7月7日付紙面より)
町民有志が署名求める (那智勝浦町 )
那智勝浦町の「体験型観光」の代表として知られる紀の松島観光船は現在、新型コロナウイルスの影響などを受け、事業運営が厳しくなっているという。その現状を鑑みて、町民有志らで組織される「紀の松島観光船存続を求める会」(小阪三喜子代表)が存続を願って署名活動を展開している。
□ □
熊野学研究委員会の委員である中瀬古友夫さんによると、紀の松島観光船は戦前から70年以上の歴史があるという。中瀬古さんは1940年当時に南紀を訪れた旅行者のアルバムや過去の松島めぐりに関する資料などから、さまざまな業者が代わりながらこの観光船業を経営してきたことを説明。
「勝浦温泉は海が玄関口。那智勝浦町にとって伝統を受け継ぐ島めぐりの船がなくなっては非常に残念。熊野という観光地は各地のさまざまな要素が協力し合って発展したもの。そのうちの一つをなくしてしまってはいけないと思う」と語った。
□ □
紀の松島観光船について、「町の観光の目玉」と掲げる小阪代表は現存する観光資源を大切にすべきだと主張している。
「この町の観光にとって観光船は必要なもの。なくしてから後悔しては遅い」と危惧。運営会社である紀の松島観光株式会社には「引き続き、企業努力してほしい」と要望するとともに、観光船の存続を願う署名活動に6月中旬から取り組んでいる。署名は2週間経過時点ですでに約1000人に達しており、集まり次第、堀順一郎町長宛てに提出する。
小阪代表は「一度廃止にすると、再開には多くの時間やお金が必要になってしまう。実際にファンは多い。磨いていって勝浦の魅力発信につなげてほしい。町が入って存続してもらえたらありがたい」と語った。
□ □
紀の松島観光株式会社の支配人である畑下誠紀さんによると、同観光船事業は2003年から同社が経営。事業に関しては国や県からの補助金なしに運営しているという。
近年の乗船人数は15年が3万3988人、16年が2万8327人、17年が2万6171人、18年が1万9839人、19年が1万4859人と減少傾向となっている。しかし、那智勝浦町史によると「1973年には年間51万4741人が利用」と記されているほど観光資源としての人気があったとされている。
観光船は主に他府県からの修学旅行や、国土交通省勝浦海事事務所が行う「海の日」記念行事では地元小学生の乗船体験などの利用もある。また、太地町のくじら浜公園に寄港することから、町立くじらの博物館へ足を運ぶ観光客も多いという。
畑下さんは「コロナの影響で今年2月から運航休止となっていたため、それ以降の売上はない」とし、これまでは国の雇用調整助成金などを活用し、しのいできたと説明。10月以降は国の支援継続の有無や町内宿泊施設の状況を注視しながら、事業継続を判断していくと話した。
「署名活動をしていただき感謝している。企業努力は今後も続けていく。急には難しいが、将来的には町に経営していただけたらと考えている」と語った。
太地町在住の50代男性は「博物館の利用促進にもつながっている。自分的には勝浦の観光を担う存在だと思う」と話していた。
(2020年7月7日付紙面より)
伝統文化親子教室がスタート (新宮市 )
「和の心『珠蒼(しゅそう)の会』」の苅屋企世子代表が指導する「いけばな きもの着装・マナーこども教室」が5日、新宮市の蜂伏会館で始まった。文化庁の令和2年度伝統文化親子教室事業の一環。11月まで10回の教室を予定しており、初回は市内外の小学生やその母親ら10人が参加した。
子どもたちがいけばなやきもの着装、マナーなど伝統文化に触れることで、大人になるために必要なマナーや命の大切さを学び、文化を継承することを目的に毎年実施している。苅屋講師は華道家であり、きもの学院と池坊いけばな教室を主宰。礼法も指導する。今年は手や机などの消毒、換気、マスク着用など、新型コロナウイルス感染症予防対策を講じた上での実施となった。
苅屋講師は「今は新型コロナの影響で大変な思いをしていると思いますが、みんなで頑張りましょう」とあいさつ。この日は、半幅帯の結び方に始まり、立礼や立ち方、座り方、お辞儀の仕方などの作法を学んだ。
休憩を挟んでのいけばなでは、苅屋講師が「花にも命があることを忘れずに、優しく丁寧に扱ってあげてください」などと心構えを説明。いけばなの根源・池坊の歴史も紹介した。参加者らは苅屋講師の指導の下、ルリタマアザミやスプレーカーネーション、ベニバナ、ケイトウ、ユーカリなどの植物を使い、型にとらわれない自由花に取り組んだ。
毎年、12月に集大成として発表会を開催しているが、今年は新型コロナ予防の観点から発表会を11月1日(日)に前倒し。今後の状況を鑑みた上で密を避ける形での開催を模索していくという。
(2020年7月7日付紙面より)