新宮市観光協会は29日、平成32年度完成を目指している文化複合施設を、建設予定地から出土した遺跡を生かした観光拠点として整備することを求める要望書を田岡実千年市長に提出した。田岡市長は「重要な遺構が次々と出土する中、遺構はそのまま残すべきと思っております。建てる場所は制約されますが、なるべく要望を取り入れるべく研究していきたい」と回答した。
要望活動には丹羽生会長、外濵道明副会長、森本祐司専務理事、提案者の隅地洋さんの4人が参加。要望書では、建設予定地の旧丹鶴小学校跡地は、熊野速玉大社、神倉神社、新宮城跡、阿須賀神社などをつなぐ「重要な歴史的結節点」であると説明。熊野学センターの建設を見送り、文化ホールと図書館の2棟案に落ち着いた現在の計画では、「観光交流の人口の増加=地域経済の活性化」の視点が抜け落ちていると指摘している。
丹羽会長は、時間や予算の制約があることは理解しているとした上で、「中心市街地の疲弊が顕著になる中、地域活性化のためにも、市民が本当に望む施設計画を推進してほしい」と訴えた。
隅地さんは建設計画の基本理念の一つは「新しい歴史文化を紡ぐ文化観光拠点」であると述べ、「せっかく観光客が来ているのに、ゆっくり休め、情報を得る場所がないと聞く。文化複合施設を市内の観光地をつなぐ拠点とし、日帰り客を宿泊につなげないとお金を落としてもらえない。今こそ行政が主導して学習効果を発揮し、知恵をしぼり出し、関係団体が一体となってプロジェクトを組んで、より良い文化複合施設の代案づくりを目指すべき」。
森本専務理事は「現状を見ると、観光交流人口は置き去りにされている感がある。遺跡は新宮のポジションが重要であることをクローズアップしている。あらためて考えていただきたい」。
丹羽会長は「新宮は熊野三山の中で一番観光体制が遅れている」と述べ、縄文時代から明治時代までの各年代から出土している珍しい遺跡を生かした観光拠点が整備できれば「熊野の都として復活できる」と訴えた。
同席した楠本秀一教育長は「おっしゃる通りだと思います。長く滞在してもらう受け皿として図書館の担う役割は大きい」と述べた。要望書は屋敷満雄市議会議長にも提出した。
(2017年8月31日付紙面より)
改修期成同盟会で国が説明 (新宮市 )
熊野川改修促進期成同盟会(会長・田岡実千年新宮市長)の通常総会が29日、新宮市井の沢の新宮ユーアイホテルであり、本年度事業計画など5議案を承認した。総会終了後に国土交通省近畿地方整備局紀南河川国道事務所の冠雅之副所長が熊野川の河川事業について説明した。
2011(平成23)年9月の紀伊半島大水害では、国直轄区間(河口から5㌔)の熊野川本川7カ所で堤防から越水し、支川の相野谷川では輪中堤から水があふれ、一部の輪中堤が転倒した。直轄区間では、新宮市で2301戸(床上1293戸、床下1008戸)、紀宝町で1021戸(床上869戸、床下152戸)の浸水被害があった。
水害後に国が直轄区間で実施していた河道掘削、築堤などの熊野川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)は昨年度終了。本年度から引き続き5年間の緊急対策事業で90万平方㍍の河道掘削を実施している。事業費は約34億円。
冠副所長は、激特事業で掘削した土砂215万立方㍍のうち約60万平方㍍は七里御浜の海岸浸食対策として搬出したことや、紀宝町成川では本年度、竜光寺樋門の耐震対策工事を実施することなどを紹介した。
熊野川は延長183㌔、流域面積2360㌔平方㍍。管理者が国、和歌山県、三重県、奈良県と混在していることから、新宮市などは大水害後の土砂撤去などがスムーズに進んでいないとし、国直轄区間を宮井地点まで約20㌔延長することを要望している。
同会は1981(昭和56)年11月設立。会員は新宮市と紀宝町の首長や議員。国直轄区間河川の整備工事推進を目的に要望活動などを展開している。
(2017年8月31日付紙面より)
櫂伝馬の練習スタート (勝浦八幡神社例大祭へ向け )
那智勝浦町の勝浦八幡神社(髙橋正樹宮司)例大祭へ向け、櫂(かい)伝馬保存会(濱口起年会長)の中学生の練習が28日夜、勝浦港で始まった。
櫂伝馬船は全長約9㍍、幅は広い部分で約1・6㍍の木製の舟。祭り本番は、色とりどりのささ飾りを立てて港をこぎ回り、海上神事ではみこしを引き合うなど重要な役割を果たす。大人の愛友会、商工会の2隻に加え、中学生が乗り込む櫂伝馬保存会の3隻の計5隻が祭りに奉仕する。
午後7時に中学1年生が乗る「赤舟」、2年生の「白舟」、3年生の「黄舟」が勝浦港の船だまりを出発。太鼓のリズムに合わせて力強く港内をこぎ回った。この日、黄舟で練習をした小阪嚴護さん(15)は「今日一日で(手に)まめが10個できましたが、今年で最後の参加なので精いっぱい頑張ります」と意欲を見せた。
子どもが少なく人数を集めることが年々困難になっている中、練習を見守った副会長の立木憲さん(59)は「赤舟の1年生がどうにかそろったのでほっとしたところ。今後1隻1学年は難しくなってくると思う。今年も無事に祭りを渡せるよう頑張りたい」と話していた。
(2017年8月31日付紙面より)
串本町テニス協会(中地孝行会長)は26日、同町総合運動公園テニスコートで「ヨネックス小・中学生講習会」を開き選手54人に全国大会入賞経験者から直接指導を受ける機会を提供した。
この講習会は、串本ジュニアソフトテニスクラブと関係の深い田辺市のスポーツ店から紹介され、貴重な機会だと喜んで申し込んだことにより実現。全国大会入賞経験を持つヨネックス株式会社大阪支店の川口純吾さんと杉野優也さんが講師となり直接指導した。
参加した小中学生の内訳は同クラブの小学生25人と串本西中、大島中、串本中のソフトテニス部部員29人。リード役として同クラブ出身の高校生選手も講習に参加した。
両講師は序盤にウオーミングアップ、中盤以降はストロークやボレー、サーブなど基本となる技術を中心に指導。体の軸を動かしながら打つことやインパクト時のイメージをしっかり持つことなどを実践練習で経験させ、技術向上を後押しした。参加者の指導陣もつぶさに両講師の指導術を見学し、積極的に狙いを尋ね探るなどした。
参加者の一人、齋藤ひなさん(串本中2年)は「ラケットの握り方や打ち終わった後の面の位置が今までの自分のやり方と違っていて、そこを直してもらって力強い球を打てるようになった。腰を使うと力強い球が打てることも改めて確認できたので、今後の練習に生かしたい。このような機会があったらまた参加したい」とコメント。
両講師によると、現代のソフトテニス競技にも前・後衛があるが、どちらの選手も両方をこなさないと勝てない時代に差し掛かっている。そのため講習では、前後衛問わず全般の技術に触れる指導を意識しているという。
今回の指導に対し杉野さんは「一度にたくさんのことは覚えられないので、今日は何か一つでいいので持ち帰りしっかりとできるようになってほしい」、川口さんは「体をとにかく使って打つことを覚えれば、いろんなプレーがしやすくなる。そのあたりを今日の講習で教えたい」と込めた思いを語った。
(2017年8月31日付紙面より)
那智勝浦ゴルフ倶楽部8月度月例杯
秋季紀南バレーリーグ
三軒町長、フェロー諸島から帰国 (太地町 )
小型鯨類の追い込み漁を行っているデンマークの自治領・フェロー諸島との姉妹都市提携を目指して現地を21日から訪問していた太地町の三軒一高町長が27日帰国した。三軒町長は「心のこもった歓迎を受けた。提携へ好感触を得た。来年には結べればうれしい」と話した。
フェロー諸島はイギリスの北方、ノルウェーとアイスランドの間にある。人口約5万人の漁業が主体の自治領で古くから捕鯨の歴史を持ち、23の入り江でマゴンドウなどの追い込み漁を行っている。国際捕鯨委員会(IWC)で太地町との懇談で姉妹都市提携のアイデアが出た。太地町では同じ漁をする町として捕鯨文化の発信や鯨類の持続的な利用のために協力関係が築けるとして姉妹都市提携を目指している。
三軒町長と町職員らは人口約5000人のクラクスヴィーク町を訪れた。フェロー諸島政府の外務貿易省、漁業省、漁業関係機関を訪ね、島の生活や文化について意見交換した。三軒町長は「辺境の地で木々が全くなく、生きんがために漁業で暮らしてきた町ということがよく分かった。ルールをきちんと決めて追い込み漁をしている。捕鯨の原型が生きていると感じた。住民が力を合わせて暮らしている。太地水産共同組合が思い浮かんだ」と印象を語った。反捕鯨団体の活動に対しては思想的な面は自由だが、法を犯す行為には厳しく取り締まるという姿勢で対処している。
太地町総務課によるとヨグバン・スコアハイム町長(34)は「太地町の町のことやビジョンはよく分かった。姉妹都市提携協定書案については確認している。9月開催の議会で各議員に諮った上で返事したい」と回答したという。三軒町長は「フェロー島の漁業会社は、収益を地元の住民などに還元しているなど共同の精神も感じることができた。同様のクジラ文化を持つ自治体として多数の共通点を確認できた。返事を待ちたい」と話した。
(2017年8月29日付紙面より)
公立小中学校で始業式など (新宮市 )
新宮市内の公立小中学校は28日、授業を再開した。約1カ月の夏休みが明けて児童生徒たちが登校し、静かだった校舎に活気が戻った。
通学路では「さわやか朝の声かけ運動」があり、学校職員、市職員や民生委員児童委員協議会メンバーらが児童生徒らに「おはようございます」「気を付けてね」と声を掛け、登校中の安全を見守った。
市立熊野川小学校(上地健校長)では、2学期始業式が開かれた。体育館で全校児童の校歌斉唱後、上地校長はジャマイカの、元陸上短距離のウサイン・ボルト選手を紹介し「自分のハンディやケガの中、諦めずに頑張ってきた。みんなもボルト選手を知ることで、踏ん張る力、頑張る気持ちを持ってほしい」と呼び掛けた。
前期児童会を代表し上野光優さん(6年)は「すてきな夏休みを過ごせましたか。私は6年生の女子で行った川遊びが楽しかったです。今日から気持ちを切り替えて頑張ってください」とあいさつした。生活指導からは新しくできた道と公園に関して、登下校時に通らないことや道路、階段で遊ばないこと、公園の遊具やトイレを正しく使うなどの話があった。
谷口遼真君(5年)は「夏休みは川で遊んだのが楽しかった。2学期は勉強をよくしたり、みんなと遊びたい」と話していた。
(2017年8月29日付紙面より)
第13回おもしろ夏祭り (串本町 )
串本町潮岬の県立潮岬青少年の家で26日、イベント「第13回おもしろらんど夏祭り」があり夏休み最後の週末をさまざまな体験を楽しんで過ごす子どもや家族連れでにぎわった。
潮岬おもしろらんど体験学習推進協議会(地主春美会長)主催。地域ができることを持ち寄って形作る交流企画で、会場にはさまざまな体験や工作の各コーナー、フリーマーケットや模擬店、ステージが並んだ。
体験の目玉となっているお化け屋敷は実施3回目で、今回も本館研修室2室を暗室にし前回よりお化けが増えて怖さがアップ。他の体験や工作はスタンプラリーの対象とされ、六つ以上挑戦すると金魚すくいができる特典をつけて子どもの挑戦を促した。中でも木工工作は夏休みの自由工作にも役立つ人気企画で、今年も多くの家族連れが、奈良県五條市から参加した出店者・工房ひらおかの製材支援を受けながら作品作りに取り組んだ。
普段は有料の施設プールもこの日は無料開放。併せてカヌー試乗会もあり、川や海より安全とあって代わる代わる絶え間ない利用を集めた。
ステージでは和歌山市在住の日本デコ寿司(ずし)協会会員のかおり巻子さんが当日参加の子ども10人と協力し全長約2㍍のデコ巻き寿司作りに挑戦した。この寿司は千葉県の食文化で、金太郎あめのように切り口に絵柄が現れるのが特徴。今回はバラの切り花をイメージした絵に挑戦し、切り分けた寿司は来場者に振る舞われた。その後も子どもビンゴゲームや子ども億万長者ゲーム、ダンス教室「PHAT DANCE STUDIO」メンバーのパフォーマンスがあり、最後はお菓子まきでにぎやかに締めくくられた。
残暑厳しい好天下で本番を迎え、地主会長は「夏休みの最後にいろいろな体験をしていただくのが私たちの希望するところ。積極的なチャレンジ精神を発揮して楽しんでいただければ十分です」と期待しながら来場者の応対に努めていた。
(2017年8月29日付紙面より)
那智勝浦町、地元有志で記念公園を清掃 (紀伊半島大水害から6年 )
那智勝浦町井関の紀伊半島大水害記念公園で26日、那智谷遺族会の岩渕三千生代表と地元建設業有志ら8人が、周辺の清掃を行った。猛暑の中9月4日の慰霊祭に向け、慰霊碑裏の側溝や川沿いの空き地に生い茂った草刈りで汗を流した。
同遺族会は2011年9月の紀伊半島大水害における那智勝浦町の犠牲者遺族らで発足した団体。翌12年12月には災害記録写真集「紀伊半島大水害」を発行。写真集の収益金の一部を全国の被災地への義援金に充てる活動を続けている。
岩渕さんは「清掃活動は今年で5年目。毎年有志の協力で行っている。7回忌とは言っても、何年たっても悲しみは変わらない。忘れてはならない。これからも続けていく」と話していた。
同会は7月に発生した集中豪雨による九州北部の被災地へ義援金を送る予定にしている。
(2017年8月29日付紙面より)
もみじ会が8月月例杯
県下高校野球新人戦
大商大卓球部が技術指導
新宮市総合計画審議会
新宮市総合計画審議会(会長・足立基浩和歌山大学経済学部教授、委員20人)は22日、第2次新宮市総合計画基本構想案の答申書を諮問した田岡実千年市長に提出した。田岡市長は4回にわたる熱心な議論に感謝し、「総合計画はこれから10年間の市政の根幹で、市内外に発信する大変重要な計画。答申を最大限尊重して9月5日の市議会に提出したい」と述べた。
基本構想案の目指すべき都市像は「人とまちが輝き、『未来』へつなぐまち 新宮市」。政策目標は▽安心・安全に暮らせるまち▽心豊かな人を育むまち▽共に支え合い幸せ感じるまち▽安定した雇用を生み出すまち▽魅力ある文化がつなぐにぎわいのまち▽健全かつ効率的な行財政運営―の六つ。2027年度末の人口は2万5600人を上回るものとした。
答申書の提出には足立会長、勢古啓子副会長(仲之町商店街振興組合理事長)、筒井三輝朗委員(新宮市都市計画審議会長)、和平幸勝委員(新宮信用金庫本店営業部長)の4人が出席。足立会長は▽地域力をさらに高め市民がそのことを真に実感できる施策の立案に努める▽斬新な経営感覚を取り入れた行財政運営を推進する▽基本構想の内容を分かりやすく市民に広報する―などに留意することを求めた。
来年度から10年間の第2次総合計画はまちづくりの最も上位に位置付けられる行政計画。市の将来目指すべき都市像を示す「基本構想」(長期10年)、具体的施策について体系化した「基本計画」(中期5年)、具体的な事業や規模などを示す「実施計画」で構成。2月上旬に「基本計画案」の答申を予定している。
答申書提出後の意見交換で、足立会長は委員からの意見として、最先端技術の導入、広域連携などに積極的に取り組むことを求めた。
田岡市長は、特に山間部の買い物難民対策が行政の大きな課題になっていると説明。新宮港への大型客船入港が増えていることから、熊野市から串本町、田辺市本宮町までの範囲で受け入れ体制を準備していると紹介し、「これをきっかけにさらに連携を深めることができれば」と話した。
勢古副会長は、商店街は高齢化と後継者不足で体力がなくなってきている、和平委員は創業者を増やす環境整備を官民一体となって取り組むべきなどと話した。
筒井委員は平成32年度完成予定の文化複合施設を活性化の起爆財に、足立会長は増加している空き家や空き店舗の利用しやすい環境づくりを、と提案した。
(2017年8月23日付紙面より)
感謝を込め地元で特別上映会 (太地町 )
太地町を舞台に捕鯨を巡る世界的な論争をテーマにしたドキュメンタリー映画「おクジラさま ふたつの正義の物語」(佐々木芽生監督)が完成し、撮影に協力した町民らを対象に特別上映会が19日夜、同町の畠尻湾の海岸で開かれた。満天の星の下、映画の出演者らを含む町民約200人がスクリーンに見入っていた。佐々木監督も会場に訪れ、上映後には地元住民らとの対話集会もあった。
ニューヨーク在住の佐々木さんは、捕鯨に対する賛否をニュートラルな視点から捉えた作品にしようと2010年6月から撮影を開始した。イルカ追い込み漁を否定的に描いた「ザ・コーヴ」を見て「一方的」との印象を受けたことがきっかけという。
映画にはイルカ漁に携わる住民と反捕鯨団体をはじめ、対立を仲介しようとする団体、捕鯨の賛否に意見する人、中立的な立場の米国人ジャーナリストなどが登場する。佐々木監督は「誰も悪人には描きたくなかった。善悪を決めようとしたとたんに亀裂が生まれる。太地町で起きていることは世界の縮図。欧米が主体のグローバルスタンダードと相いれないローカルの文化が押しつぶされている。対立していても海の環境問題改善については大きな共通点があるはず、そこを認識してほしい」と述べた。
対話集会では、町民らから「ザ・コーヴがワンサイドで世界に発信され、困り果てていた。両サイドの視点でわれわれの文化を伝えてくれて感謝する」「今後は情報発信もやっていく必要を感じた」などの言葉があった。
映画は9月9日(土)に東京・ユーロスペースで上映後、大阪、京都、仙台、札幌で順次公開。学校やコミュニティセンターでの上映、世界各国へのデジタル配信を準備している。
(2017年8月23日付紙面より)
第1回こどもスクール (南紀熊野ジオパーク )
南紀熊野ジオパークガイドの会主催のイベント「第1回南紀熊野ジオパークこどもスクールin串本」が21、22の両日、串本町文化センターや県立潮岬青少年の家を拠点にして開かれた。同会初の宿泊型体験プログラムで、御坊市から新宮市の小学5年生から中学1年生まで21人が参加。特色のある地質や地形を見学しながら成り立ちなどを探り、学んだり気付いたりした事柄を地域にPRするなどした。
同パークのジオサイトを通して子どもが主体的に自然と接し愛着を高める機会として、国立青少年教育振興機構事業「子どもゆめ基金」の助成を受けて計画。前年度に県立潮岬青少年の家を拠点にして開かれた「地震火山こどもサマースクール」の様式を取り入れた内容で、小学5年生~高校3年生を対象にして参加を呼び掛けた。
初日はコーディネーターの築山省仁さんと仲江孝丸さんらスタッフ、講師の後誠介さん(和歌山大学災害科学教育研究センター客員教授)や参加者同士で自己紹介をし合い、「大きな子ども」(=活動支援スタッフ)を含む3班に分かれて活動を開始。橋杭岩、江田海岸、一枚岩を見学し、県立潮岬青少年の家で同パークを構成する大地の特色や成り立ち、人々の営みを教わるなどした。
同家泊を経て2日目は班ごとに姫の浜、有田の浜、月野瀬の河原の3カ所に分かれてフィールドワークに臨み、最寄りの施設で地域の話を聞き現地ならではの調理実習にも挑戦。午後は同センターでもろもろの活動から得た情報を班ごとにまとめ、「南紀熊野・大地の魅力PR合戦」と題して公開発表に臨んだ。主体性を引き出す手法として、スタッフが感心する質問や報告をした参加者に都度カードを配り、最多獲得班の参加者には賞品が贈られた。
見学後の座学で後さんは同パーク内が大きく▽火成岩体▽前弧海盆堆積体▽付加体―の三つで形作られていることを紹介。参加者は食材を使った実験で▽固さの違う岩が水で浸食されるとどうなるか▽固さの違う層に力がかかるとどうなるか―を確かめ、橋杭岩や一枚岩、江田海岸で見た地層の褶曲(しゅうきょく)を形作った大地の営みを想像した。その後は大地に宿る人々の営みをゲスト講師陣らから教わるなど、同パークの考え方の筋道を一通り経験しつつ、主体活動となる2日目の班別フィールドワークや公開発表に向けて気持ちを高めた。
(2017年8月23日付紙面より)
追い込み漁解禁に備え臨時交番 (太地町 )
小型鯨類の追い込み網漁が9月1日(金)に始まることを受けて和歌山県警は21日、太地町畠尻湾前に臨時交番を開所した。今年で7年目。来年3月末まで設け、反捕鯨団体の違法行為を24時間体制で監視する。
反捕鯨団体はこれまでに、無許可で地元漁師の動画を撮影するなどの嫌がらせ行為や、イルカのいけすの網を切るなどの違法行為を働いている。逮捕事案としては、2011年に暴行事件、12年にくじら浜公園にあるモニュメントのもりを折る器物損壊があった。今年1月にも、地元企業が所有するイルカのいけすの網が切断された。
臨時交番では、安全パトロール班7人が交代で常時2人以上勤務するが、状況に応じて増員する。活動家の多くが女性であることから、このうち2人が女性警官になる。これに加え、情報採証班と遊撃警戒班5人も配備される。
開所式には約20人が出席した。太地町特別警戒本部長を務める県警警備部の保富速人部長は「臨時交番を設置して以降、反捕鯨活動家の来町が減少するなど効果を上げているが、依然として捕鯨を巡る世界情勢は厳しいものがある。基本方針の徹底による違法行為の未然防止、関係機関との連携の強化と継続、公平忠実な対応の3点を重点に、町民が安心して暮らせるよう一丸となって活動してほしい」と求め、署員に期待を寄せた。
(2017年8月23日付紙面より)
第33回C級和歌山県学童軟式野球大会
スポ少剣道交流和歌山大会地方予選
県警特練生らが防犯剣道教室 (新宮警察署 )
和歌山県警察剣道特別練習生による防犯剣道教室が19、20の両日、新宮市と那智勝浦町で開催された。県警剣道師範の宮戸伸之さんや訓練生ら14人が紀宝町から串本町までの剣道クラブに所属する幼稚園児から高校生までの剣士らに模範稽古や実技指導などをした。
少年の健全育成を目的に、新宮警察署管下防犯協議会が主催した。昨年に続き2回目の開催。師範以下訓練生のほとんどが参加する教室は珍しい。宮戸師範は新宮市出身。数少ない剣道の最高位の8段を2008年に40代で取得した。一昨年の都道府県対向剣道大会では大将を務め、県を初の優勝に導くなどしている。特練生の中には三輪崎剣道クラブ出身の下貴広さんと西村雄希さんらがいる。
19日は市立光洋中学校体育館で約80人が参加した。準備体操、素振りの後、訓練生の稽古を見学し、迫力のある姿や動きに真剣な表情で見入っていた。20日は那智勝浦町体育文化会館であった。宮戸師範や特練生がアドバイスを交えながら指導し、約100人が懸命に稽古に励んだ。実技指導では訓練生を相手に竹刀を振るい、汗を流した。
谷本克也・新宮警察署長は「和歌山県警の剣道特練生は非常に優秀で実力のあるチーム。いろんなことを教えていただき、技術と心身の成長に役立てて」。同協議会会長の田岡実千年・新宮市長は「両親や指導者に感謝の気持ちを持ち、剣道を通じ、心も体も成長し立派な人間になるよう頑張ってほしい」とあいさつ。
宮戸師範は参加者らに向け「稽古の前に特練生を見てイメージして同じようにやろうとする気持ちがあるから一つ一つ正しく見ているし気迫も違う。剣道は運動神経の良しあしでなく、コツコツ地道にやることが上達の一番の秘訣(ひけつ)。少ない人数の中でも一生懸命やることを忘れないで」と呼び掛けた。
稽古を終え「やりがいがあった。速い技や高度な技の中でも、基本が大事ということを特に教えたかった。基本ができているから応用技ができるということを分かってくれれば。楽しさ、良さを分かってくれて、続けてほしい」と語った。
昨年に続き2回目の参加の瀧本鉄馬君(12)は「特練生は一本一本が全部決まっているような感じがして、毎日どんな稽古をしているのかが気になりました。宮戸先生は人を強くすることを考えており、いろんなアドバイスをしてくれました。分かりやすくやってくれるのでいい先生だと思いました」。
「今までとは違うような感じの稽古で楽しかったです。いつも戦えないような特練生の人たちと会えてうれしかった。今後は同じように一本一本を大事にして決めていきたい。将来は警察官になって特練生になりたいと思います」と話していた。
(2017年8月22日付紙面より)
歴史探訪スクールに80人 (新宮市 )
新宮市教育委員会、熊野学研究委員会主催の平成29年度熊野学講演会・歴史探訪スクールオープン講座が19日、市福祉センターであった。帝塚山学院大学名誉教授の鶴﨑裕雄さんが約80人を前に、『平野郷社(杭全神社)縁起絵巻―大阪平野区杭全(くまた)神社の熊野信仰―』の演題で話した。
歴史探訪スクールは熊野地方の特色ある歴史や文化を楽しく学ぶことを目的に開催している。鶴﨑さんは大阪市平野区が平安時代初期に坂上広野麻呂により開発され、一族や家臣らが街を形成していったと紹介。杭全神社に関して、拝殿や社殿を写真で紹介し「趣が新宮の神社に似ている」と語った。
「文芸遊びが行われた場所」として連歌所の写真を挙げ、熊野権現が描かれた軸、牛頭(ごず)天皇が描かれた軸を示し「二つの神様をお祭りしている神社」と説明。三つの絵巻物の内『平野郷社縁起絵巻』をスライドで映しながら読み解いていった。描かれている一つ一つの場面を語り、神話などが基になっていることや、二つの神を結ぶ特定の根拠はないことを話した。
人々が杭全神社に短歌や、短歌の上の句と下の句を交互に呼んでいく連歌を奉納していたとして解説。万葉集や拾遺和歌集、愛宕(あたご)百韻から引用し、歴史的背景や意味などを語った。
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■那智大滝の信仰と歴史
次回の講座は9月10日(日)午後2時から4時まで、熊野学研究委員会の山本殖生さんが講師となり『那智大滝の信仰と歴史』をテーマに、講話やフィールドワークをする。参加費は500円(年会費を納入した人、中高生は無料)。集合場所は那智山青岸渡寺尊勝院新館。動きやすい服装、靴での参加を呼び掛けている。
申し込みは市教育委員会文化振興課(電話0735・23・3368)まで。期限は9月6日(水)。
(2017年8月22日付紙面より)
串本で初のBFL公式戦
串本町サンゴ台にある総合運動公園野球場で19日、プロ野球独立リーグ「ベースボールファーストリーグ(BFL)」の公式戦があり、田辺市を拠点とするチーム「和歌山ファイティングバーズ(以下FB)」と東大阪市のチーム「06BULLS(以下06)」の対戦が地元の少年野球チーム選手らの注目を集めた。
BFLは、日本野球機構(NPB)12球団入りを目指す高校生より上の世代の選手で結成したチームが参戦するプロリーグ。本年度は06とFB、兵庫県三田市を拠点とするチーム「兵庫ブルーサンダース(BS)」が参戦し、各チームのホームグラウンドを回る形で公式戦を重ねている。
県勢のFBは2016年4月に野球王国和歌山の再燃を目指して設立された新興のチームで、運営母体はNPO法人ANFUTURE。▽田辺スポーツパーク▽上富田スポーツセンター▽串本町総合運動公園―の3球場をホームとし、山﨑章弘監督や吉田篤史コーチ率いる選手21人チームで本年度からBFLへ参戦している。
この日開かれたのはBFL公式戦第13試合で、同公園での実施は初となる。会場地を代表して田嶋勝正町長が特産の長期保存水『なんたん水』を差し入れつつ歓迎と激励のあいさつ。特別協賛者を代表して串本ライオンズクラブの尾﨑和貴会長が始球式に臨み、06の先攻で試合が始まった。
先に優勢に立ったのはFBで、二回裏に2点を先制。追う立場の06は三回表と六回表で各1点、FBも五回裏で1点を追加。八回裏で長打を持ち味とする大月翔選手が今季第1号のソロホームランを放って点差を広げ、06も九回表ワンアウト一、三塁で4番打者という局面から1点を追加したが届かず、スコア4―3でFBが勝利した。
観客席は18歳以下無料、19歳以上1000円(障がい者手帳提示で500円)で開放され、少年野球クラブの選手やその家族と指導陣、硬式野球愛好者らが観戦。串本オーシャンズの切畑桧キャプテン(6年)は「フォアボール後、すぐに(気持ちを)切り替えてストライクをとるところがすごかった。自分はキャッチャーをしているけど、セカンドへ送球する時の素早さは学びたいと思った」と話した。
試合中は串本オーシャンズの切畑キャプテンと大藤麗生君と中村裕斗君(いずれも6年)、KKN少年野球クラブの杉本龍河君(6年)と薮根心海君(5年)がボールボーイ、串本の澤井亜侑さん(4年)とKKNの杉本沙羅さん(2年)がアナウンスを体験。両チームの選手は試合後、FBによる野球教室に参加して山﨑監督らから直々にアドバイスを受け、選手の技術を間近に見学する機会も得た。
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■次回は9月16日正午~
同公園ではこの日のほか、9月16日(土)正午に公式戦(対兵庫BS戦)を予定している。FBの高下沢理事は「今は手が回っていないが、将来的に新宮市のくろしおスタジアムもホームにと考えている。まずは次回(の同公園での公式戦)、今回以上の観客を集められるよういっそう努めるので、地元からの観戦や応援をよろしくお願いします」と話した。
(2017年8月22日付紙面より)
例大祭へ準備始まる (勝浦八幡神社 )
那智勝浦町の勝浦八幡神社(髙橋正樹宮司)で20日、例大祭=9月16日(土)宵宮、17日(日)本宮=で使われる櫂伝馬(かいでんま)の蔵出しがあった。作業には愛友会(濱口泰至会長)とそのOBで結成する櫂伝馬保存会(濱口起年会長)の会員らが奉仕した。
例大祭は、神輿(みこし)渡御(とぎょ)行列、還御舟行列をはじめ、大黒天の墨塗り、櫂伝馬、徒士山伏、餅搗(もちつき)、獅子神楽、舟謡などの伝統行事があり、古くからの年行司制度も引き継がれ、多彩な祭典・神賑(しんしん)行事が行われる。還御舟行列は町の無形民俗文化財に指定されている。
伝馬船は全長約9㍍、幅約1・6㍍、スギ、ヒノキなどを適所に使い、古くから伝わる船大工の技術で作られた美しい船形の木造船。若者らが乗る「愛友会舟」、中学1年生が乗る「赤舟」、2年生の「白舟」、3年生の「黄舟」、南紀くろしお商工会青年部の「商工会舟」の計5隻が本祭の櫂伝馬行事に登場する。この日は商工会舟を除く4隻が蔵出しされ、神社前の海に進水。保存会集会所近くへ移動し練習に備えた。
蔵出しを手伝った栗原聡信さん(20)は「まだ2年目ですが、とても楽しみです」、愛友会の濱口会長(28)は「若い人たちが多いので、勉強しながら頑張ります」と話していた。
櫂伝馬保存会の役員が指導する中学生の練習は28日(月)から勝浦漁港で始まる。
(2017年8月22日付紙面より)
県下高校野球新人戦
ジュニアテニスサマーステージ13歳以下
伝統の「佐野柱松」勇壮に (新宮市 )
五穀豊穣(ほうじょう)などを願う伝統行事「佐野柱松」が16日夜、新宮市佐野の新宮港緑地公園であった。スギで作られた御柱(おんばしら)上部に取り付けた籠目掛けて火のついた松明(たいまつ)を投げる勇壮な儀式には、雨の中多くの注目が集まった。
柱松は戦時中に一時中断。1948年に佐野青年会が再開したものの、資金や人手の不足から59年に再び途絶えていた。93年に現在の佐野柱松実行委員会(瀬古尊夫会長)が祭りを復活させて今回で25周年を迎える。
一部プログラムを変更し、サニーサイド・ジャズ・オーケストラの演奏、くろしお児童館の子どもたちの創作踊りなどがステージを盛り上げた。新宮市三輪崎出身の小阪芳史さんの氷の彫刻の実演では、名古智美さんのバルーンアートと共演し、火の鳥をイメージした作品を完成させた。25周年記念花火をはじめ約600発の花火が空に大輪の花を咲かせた。
御柱の籠への松明投げ入れに成功した那智勝浦町宇久井の浦山昌嗣さん(50)には米が贈られた。浦山さんは「何回か参加しています。めっちゃうれしいですね。楽しいですよ。このような祭りは長く続いてほしいです」と喜んでいた。子ども松明投げは三輪崎小5年の植田里希丸君が投げ入れ、「初めて参加しました。うれしいです」と笑顔を見せた。
瀬古会長は「柱松も今年で25回目を迎えます。柱松が永遠に続いていけますよう、会員一同一生懸命頑張ってまいりますので、ご協力をお願いいたします」とあいさつし、区民や企業、雨の中訪れた人たちに感謝した。
来賓の田岡実千年市長は地元の活性化につながっており、実行委員会に敬意と感謝を表した。前田道春佐野区長は「催しが1年でも長く続いていくように、皆さま方にお願いしながら協力していきたい。柱松実行委員会員の皆さまに、区民を代表して感謝とお礼を申し上げる」と述べた。
(2017年8月18日付紙面より)
日本代表としての活躍誓う (新宮市 )
トルクメニスタンで開かれる第5回アジアインドア&マーシャルアーツゲームズ(9月17~27日)へ日本代表として出場する新宮市出身で早稲田大学2年の宇井大和選手(新宮高校卒)が15日、新宮市役所を訪れ、田岡実千年市長に大会での健闘を誓った。
宇井選手はレスリング男子グレコローマンスタイル66㌔級で出場。市役所へは同大レスリング部監督の太田拓弥さん、新宮高校レスリング部監督の籔中(やぶ・あたる)教諭とともに訪問した。
宇井選手は1年時に全日本大学グレコローマン選手権、2年生になった今年4月のJOCジュニアオリンピックカップで優勝したことなどが選考委員会で評価され代表入りを決めた。
田岡市長は「4月のJOC杯での優勝おめでとうございます。9月のアジア大会、優勝目指して頑張ってほしいと思います。健闘を祈っています」と激励。
宇井さんは「シニアの大会に日本代表として出場するので恥ずかしい試合はできないと思う。大会に向けて一生懸命練習して、いい結果を残せるようにがんばりたい」と応え、「まだ全日本で優勝できるような選手ではないので、まずは学生の大会で圧倒的に勝てるようになってから、全日本でも勝って五輪に出られるように頑張りたい」と五輪への思いも話した。
太田監督は宇井選手について「シニアとしては初めての大会。今までよりレベルが上がり、相当厳しい戦いになる。アジアも、韓国、イラン、ソビエト系の国などレベルの高い国が多いので簡単には勝てないが、まず1試合勝って、3位決定戦ぐらいまで進み、試合数を1試合でも多くやって経験を積んでもらいたい」とアジア大会に向けて話した。
(2017年8月18日付紙面より)
海外協力隊の小林千華さん (串本町 )
青年海外協力隊平成27年度1次隊の隊員として2年間、カメルーン共和国に派遣された同町古座の小林千華さん(27)が17日、田嶋勝正町長に報告した。
小林さんは70日間の候補生養成を経て平成27年7月に同国へ。ニョン・ソー県初等教育事務所に配属され、2年間の支援をして29年6月末に帰国した。派遣中の目標は、情操教育を理解し自主的に実践する教員を増やすこと。主役は教員で自分はその支援者という考えで一歩下がった姿勢を貫き、1年目は6校、2年目は5校を巡回する形で支援を注いだという。
この日はJICA国際協力推進員の足立朋美さんや和歌山青年海外協力協会の談儀善弘会長も立ち会う中、小林さんはプレゼンテーション資料を交えて2年間の活動状況を報告した。1年目は「とにかく慣れる。何でも挑戦する」を意識して現場理解に奔走し、2年目は「広めるより深める」を意識。配属先のサポートを得て意欲的な教員を対象にした情操教育リーダー養成講習会を開き研究授業、討議会といった日本の仕組みを伝えたことや、運動会運営ワークショップを通して巡回先の1校、ンガラン小学校が関心を示しカメルーン人自身の自主的実践で実現したことは嬉しい成果だとした。情操教育に役立つ教材冊子をフランス語で自主制作して託したことも、実物を交えて報告した。
2年間の支援を通して小林さんは▽諦めない▽信じる▽楽しむ―ことの大切さを実感したと振り返り、今後は教職復帰かさらなる国際貢献のいずれかで進みたいと総括。田嶋町長は「報告を受けて充実した2年間を送ったと感じ、カメルーンの皆さんだけでなく小林さん自身も成長したように思う。その貴重な経験を生かすことを期待して、今後も頑張ってほしい」と小林さんの活動をねぎらった。
(2017年8月18日付紙面より)
高田川で岩壁登り
「川のアルピニスト」と呼ばれているボウズハゼが新宮市の高田川で群れになって垂直の岩壁を登っている=写真。何度も流されながら上流を目指している。
関東地方以西の太平洋側から琉球列島に分布するスズキ目ハゼ科の魚。体長は5~10㌢。初夏に産卵し、川で生まれた稚魚は海に下り、次の春に川に帰ってくる。餌を求めて群れで川の流れに逆らって泳いでいく習性がある。
吸盤状の口と腹びれを巧みに使って、垂直の岩壁でも登ることができる。餌は海ではプランクトン、川ではコケなど。寿命は4~6年で、川の上流などの岸に穴を掘り冬眠する。頭が丸いことからこの名が付いた。
(2017年8月18日付紙面より)
少林寺拳法南紀熊野スポーツ少年団
全国中学生空手道選手権大会に出場
第53回和歌山県吹奏楽コンクールが4日から6日にかけ、県民文化会館ホールで開催された。当地方からは6校が出場。新宮市神倉の県立新宮高校(畑伸憲校長)吹奏楽部(亀谷覚史顧問)が4年連続の金賞、3年ぶりの県代表に選ばれた。立溝まい部長は「真剣に楽器と向き合って練習に取り組み、関西大会では120%の力が出せるようにしたい」と意気込んでいる。
新宮高校は『リンコドンティプス―蒼き海の守り神―』で、小編成26人で出場した。立溝部長は「場面転換が多く、景色や色合いなどが分かりやすく描かれている曲。壮大な雰囲気の所が何カ所かあり、吹いていて楽しいです。拍子を変えるところが難しく、和音のずれも気になります」。
県コンクールでは初日のトップバッターを務めた。「緊張や不安がありました。練習通りの力は出し切れませんでしたが、それでもできる限りの演奏ができたと思います。部員のみんなも金賞の発表を受けられることを楽しみにしており、とてもうれしかったです」と語った。
関西コンクールには、これまで悔しい思いをしてきた先輩の気持ちも持って行きたいとし「自分たちの限界を超えられるくらいのいい演奏をしたいです」と話していた。
コンクール前には長年使っている楽器の一部に不具合が生じ、急きょ代替品をレンタルしての出場となった。「例年以上にチームの状態も不安定で、トップバッターという絶対的に不利な状況だった」と亀谷顧問。「結果は求めず新高らしい演奏をしたいと思っていました。発表では『ゴールド』の言葉に例年落ち着いている生徒らも泣き崩れており、僕自身も驚きました」。
関西に向け「年々少しずつ成長していますが、当地方では他校と対抗してコンテストに出場したり、演奏を聞いたりする機会もなく、本番で緊張し、萎縮してしまいます。伸び伸びと演奏してほしく、本来発揮できる力は別次元なので、本番でその力を出し切りたい。課題は多いです。県代表として他のバンドの思いも背負っている。まずは自分に負けず、練習したことを発揮できるよう内面を磨き上げてほしい。それができれば、もっといい形で現れると思うし、苦労をはじき返す音楽を作ってくれると信じています」と話していた。
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各校の結果は次の通り。
■金賞
▽県立新宮高校(県代表・県知事賞)
■銀賞
▽新宮市立緑丘中学校
▽那智勝浦町立那智中学校
■銅賞
▽県立串本古座高校
▽新宮市立光洋中学校
▽近畿大学附属新宮高校・中学校
(2017年8月10日付紙面より)
和歌山とスペインの合唱団が奉納演奏 (那智勝浦町那智山 )
和歌山市を拠点に活動する和歌山児童合唱団(岩橋延直育成会会長)とスペイン・バルセロナのアミクス・デ・ラ・ウニオ(アミクス)児童合唱団は8日、那智大社創建1700年・青岸渡寺西国三十三所草創1300年を記念して那智勝浦町那智山の両社寺で奉納演奏を催した。境内に和歌山の中高生団員41人とアミクスの中高生団員38人の清らかな歌声が響いた。
2016年5月にブルガリアで開かれた第37回May国際合唱コンクールをきっかけに両団は知り合い、アミクスから「日本でコンサートを行いたい」という希望を受けて、創建草創記念の年と重なることもあって今回の演奏が実現した。アミクスが日本で公演するのは初めてだという。合唱団一行は那智大社本殿前、青岸渡寺の那智の滝展望地、飛瀧神社で「ふるさと」や「Song of hope」など複数曲を合同合唱、奉納した。
和歌山児童合唱団員で私立開智高校2年の西川千尋さん(17)は「ブルガリアで会った時から今日が楽しみでした。このような神聖な場所で生の歌が聴けて、共演もできてうれしい。観客の皆さんもしっかり聴いてくれて、歌が届けられたと思う」。
アミクス児童合唱団のパウラ・コロナド・ソリアーノさん(17)は「那智の滝がすごくすてきで、神様が宿る自然と私たちの歌を一緒に楽しんでいただけるのは、とても光栄なこと。自然と観客がつながる感覚があった」と奉納時の印象を語った。
アミクスの講師で指揮者のジュゼップ・ヴィラ・ジョベルさん(46)は「観光だと信仰など深いところまで知ることができない。この場所で演奏できたのは、幸せなこと。自然と芸術が融合できたのは素晴らしい」と話した。
この日は奉納演奏のほか、町立市野々小学校でコンサートが開かれ、地域住民と同校児童に日本とスペインの合唱曲全10曲を披露した。市野々小児童会の中村悠寿副会長(5年)は「コンサートを開いてくれてありがとうございました。歌声がとてもきれいで、スペインの楽曲は日本のものと違っていて良かったです」と感謝を述べた。
(2017年8月10日付紙面より)
KAK第2弾第2回活動 (古座川町 )
古座川町教育委員会(和田充旦教育長)主催事業「KozagawaAdventureKids(KAK)」の本年度第2弾第2回活動が5日、古座川町民体育館であり町内の小学1~6年生35人が古座川の伝統漁法「ウナギ石漁」の仕組みを教わるなどした。
同町子ども教育15年プランに掲げられた3大重点活動の一つ、体験活動「古座川アドベンチャープログラム(KAP)」を社会教育領域で展開する同事業。本年度第2弾のテーマは「みんなで古座川天然うなぎをとろう!~伝統漁法うなぎ石漁を学ぼう!~」で、事前の申し込みでは37人が参加を希望したという。
第1回活動は7月21日にあり、ウナギ取り名人の細井孝哲さんと一緒にウナギ石漁の仕掛けを、少女峰前の古座川の瀬に五つ作った。第2回活動は漁に臨む計画だったが、台風5号に伴う雨を警戒した七川ダムの事前放流で水位が上がり、仕掛けが水没したためやむなく中止。会場を同館に変更し、環境学習や天然ウナギの調理実演見学と試食のみ実施した。
活動冒頭、ウナギを捕る感覚だけでも伝えたいとして、細井さんが体長80㌢の天然ウナギをたらいに入れて捕り方を紹介。代表3人にウナギばさみで捕まえ方を実践指導してこつを伝えた。
環境学習では県環境学習アドバイザーの瀧野秀二さん(=熊野自然保護連絡協議会副会長)が、ウナギ石漁の仕組みを解説した。仕掛け「ウナギ石」はウナギのエサになるハゼの仲間やエビ類なども隠れ家にするので、ウナギにとっては天敵のカワウやサギから身を守ると同時にエサを探す手間もない快適な居場所。それをウナギが好むきれいな状態(隙間が詰まっていない状態)で作り出して誘い込むのがこの漁の仕組みで、同じ理屈でしば束を沈めて捕る方法もあると紹介した。
併せてウナギ以外に川で観察できる生き物や川石の裏に張り付いている虫の種類と数を調べると川のきれいさがわかる(=スコア法)ことにも触れ、「古座川はスコア法で10点満点中8~9点が取れるきれいな川。だからこそ大切にしてほしい」と呼び掛けた。
学習後は南紀月の瀬温泉ぼたん荘の深海政也料理長らによるさばき方や調理を見学。焼き上がった古座川産天然ウナギのかば焼きをうな丼にし、命をいただくことへの感謝を胸に抱きながらみんなで味わって活動を締めくくった。
(2017年8月10日付紙面より)
熊野マウンテンビルディング
新宮市熊野川町上長井の熊野マウンテンビルディング(南方商店前)のギャラリースペースで若手作家たちの作品展『健康』が開催されている。9月上旬まで。不定休で、開場時間は午前10時ごろから午後4時ごろまで。入場無料。
作品を展示している作家は、ジュエリー作家の高瀬大輔さん、折り紙職人の太田弘昭さん、プログラマーの齋藤雄介さん、写真家の秦雅則さんら。拾った石を乗せる指輪、フイルムを腐敗させた写真など計約20点を並べている。
現在、ビルを管理しているのは写真家の芹川由起子さん(33)=東京都。自らも作品を制作中で、近く展示する。
芹川さんは「健全な考え方、健康的なものを応援するプロジェクトです。日常でないことが考えられる場所になればと思っています」と来場を呼び掛けている。
(2017年8月10日付紙面より)
紀南十高校リーグ秋季リーグ戦
新宮弓友会主催の月例射会
トルベリーノカップキッズ大会
創建1700年を祝い (熊野那智大社 )
那智勝浦町の熊野那智大社(男成洋三宮司)で6日、舞踊指導者で構成する「三踊(さんよう)の会」による創建1700年を祝う舞の奉納があった。
会のメンバーは西川友千恵さん(日舞)、川上邦子さん(現代舞踊)、竹中みどりさん(フラ)の3人。いずれもこの地方の先駆者的存在で、尾鷲市から串本町間で多くの踊り手を育ててきた。午後6時すぎのスタートにもかかわらず、拝殿には約100人の関係者や一般の人たちが集まり、3人の踊りに見入った。
奉納は竹中さんがフラの打楽器イプヘケで大王をたたえる曲「カラカウア」を演奏して始まり、川上さんが熊野の地で守られ、今があることにお礼の気持ちを込めて「熊野に生きる ありがとう」を静かに、時には躍動的に全身で生の喜びを表現した。竹中さんは笑顔を絶やさず、柔らかな動きで世界の平和を祈念しつつ、「ハナレイ・ムーン」を。西川さんは、神の前で踊れる光栄を胸に秘め、りんとした舞いで「四君子」をみやびに表現。三者三様の踊りで大社の歴史と存在に、改めて感謝を表現した。踊り終えた3人は「この年まで踊れ、本当に幸せ」「緊張したが神を感じた」「踊りがあったから、熊野が好きになった」などと、それぞれに思いを語った。
男成宮司は三踊の会に感謝状を授与。「素晴らしい踊りの奉納」とたたえながら「踊りは神にささげるところから始まったと思う。道を究められた先生方だが、さらに高みを目指してご精進を」と一層の活躍を願った。
(2017年8月9日付紙面より)
台風5号、紀伊半島通過
台風5号は7日午後3時30分ごろ和歌山県北部に上陸し、熊野地方にも激しい雨を降らせた。那智勝浦町では天満地区薬師谷付近の4世帯に避難勧告が発令され、田辺市本宮町では午後1時に大塔川の水位が上昇、川湯地区の30世帯に避難指示が出された。同日午後7時ごろまでには雨もやみ、避難発令も全て解除された。8日午前11時現在、大きな被害の情報は入っていない。
気象庁によると7日の雨量は三重県御浜町で206・5㍉を観測、古座川町西川276・0㍉、新宮市で165・5㍉だった。
那智勝浦町では7日午前8時40分に町内6地区に避難準備・高齢者等避難開始が発令され、市野々小学校に13人、福祉健康センターに9人、体育文化会館に7人の計29人が避難した。新宮市では旧新宮市内7カ所、旧熊野川町内に14カ所の避難所を開設。午後1時には33世帯47人が避難した。
古座川町では平井地区11人をはじめ、町内の10カ所の避難所に計28人が避難した。串本町では田原、古座、姫、串本、上田原の5地区で9世帯10人が避難した。
関西電力によると那智勝浦町で40戸、古座川町で20戸が停電した。
県の調べでは田辺市神子浜で80歳の女性が風にあおられ転倒して軽症、和歌山市西浜で76歳女性の原動機付き自転車が風にあおられ軽乗用車と接触して骨折するなど人的な被害が出ている。日高川高津尾の鳴滝歩道橋つり架線が断線するなど物的被害も県北部に集中している。
気象庁によると台風5号は8日午前8時現在、新潟県糸魚川市の北西約40㌔にあって、北北東へ1時間に25㌔のゆっくりした速さで進んでいる。
(2017年8月9日付紙面より)
にぎわった「紀和の火祭り」 (熊野市 )
熊野市紀和町小川口の北山川河川敷で5日、「紀和の火祭り」が催された。近づく台風の影響が心配されたが、主催者発表で約3500人が炎の祭典を楽しんだ。実行委員会(岡本尚委員長)が主催した。
午後6時には夜店がオープン。紀和特産のキジ肉の手羽焼きなど地元特産品が並び、ビアガーデンも人気を集めた。高さ20㍍の柱に取り付けた籠に燃えるたいまつを投げ込む「柱まつり」では、50人の若者がたいまつをくるくると回しながら籠をめがけ、次々に放り投げた。たいまつが命中すると、中に仕掛けられた花火が火を噴き、周囲を明るく照らし出して来場者から大きな拍手が送られた。
この行事は、あらゆる災害をたいまつとともに夜空に放つことで、いかだ流しのいかだ師たちの安全や無病息災、豊漁、五穀豊穣(ほうじょう)などを願う伝統行事。一時途絶えていたが、有志が復活させ、今年で29回目。ソーラン踊りや地元出身のプロ歌手紀の川良子さんのミニコンサートなどに続いて、幕末に住民が作った木製大砲「北山砲(づつ)」の発射や打ち上げ花火もあった。
河上敢二熊野市長は過疎高齢化が進む紀和町に「スポーツ人口が増えている」と喜び、岡本委員長は「今から本当の火祭り。見てね」と気勢を上げた。
(2017年8月9日付紙面より)
福竜丸歴史展関係イベント (串本町 )
串本町役場古座分庁舎で5、6の2日間、「第5福竜丸=第7事代丸建造70年歴史展」関係イベントが開かれた。6日の対談では東京都立第五福竜丸展示館の市田真理学芸員と同展を監修した仲江孝丸実行委員が語り合った。仲江実行委員は「国連の核兵器禁止条約採択のきっかけがビキニ事件であり、それを世界に知らしめたのが第五福竜丸。建造の地の一人として次の世代にそう語り継げるよう今後も取り組む」と思いを掲げた。
福竜丸の歴史展実行委員会(藤田勝彦会長)主催、同町教育委員会後援。同展は1日から6日まで同庁舎1階ロビーであり、マグロ漁船第五福竜丸の前身であるカツオ漁船第七事代丸を建造した古座造船所や立地・字中洲の歴史と第五福竜丸が被ばくしたビキニ事件から核兵器禁止条約採択までの経緯を並列させた構成で史実を伝えた。
併せて5日は同庁舎3階大会議室で映画上映があり、約80人がドキュメンタリー作品「放射線を浴びたX年後」を鑑賞。太平洋域における核実験の影響、とりわけ第五福竜丸以外の被ばく漁船や船員らがどのような扱いを受けその後を生きたかを遺族の心境談話も交えて知る機会を持った。
6日の講演と対談は約40人が聴講した。藤田会長のあいさつを経て始まった講演では、東京都立第五福竜丸展示館の市田学芸員が「第五福竜丸の航海はつづく」と題して登壇。
今年2月のマーシャル諸島(=実験場となったビキニ環礁を含む海域)における聞き取り調査の成果として現地の人々の実直な思いを伝達し、7月に国連交渉会議で採択された核兵器禁止条約との対比で「陸揚げされ海を進むことはもうないが、核兵器のない未来に向けて今も航海を続けている」と現在の第五福竜丸を位置づけた。
続く対談で仲江さんは字中洲の歴史や古座造船所がカツオ漁船第七事代丸を建造した経緯など、市田さんは第五福竜丸被ばく後の調査が打ち切られた時の状況やその後も続いた太平洋での核実験の経緯などを報告した。
会場からは大腸がんになる日本人が多いことと核実験の因果関係を問う質問などがあり、市田さんは「長期被ばくについては誰も責任が負えず、誰も評価できないのが現実」としつつ、後の調査で明らかになった放射性物質拡散状況を示す資料の一部を示し、当時はとんでもない環境汚染があったことを示唆するなどした。
一連のイベントを終えて藤田会長は「この地で第五福竜丸の前身、第七事代丸が建造され、原水爆禁止運動の礎になっているという経緯を改めて認識する機会になった。この成果をしっかりと次世代へつなぎ、一日も早く核のない世界を作る一端にできれば」と語った。
(2017年8月9日付紙面より)
長女の紀さん「涙が出そう」 (新宮市 )
新宮市出身の芥川賞作家、中上健次(1946~92年)が千穂小学校5年生の時に書いた詩『映画』がこのほど見つかった。長女で作家の中上紀さん(46)=東京都=が4日、市立図書館が保管している小学3年生時の詩『さいふ』と2編を確認し、「没後25年の節目の年にうれしい偶然です。衝撃的で涙が出そうになりました」と話した。
全集に収められていない2編の詩は、当時の名字で「木下健次」となっている。『映画』は千穂小学校5年生全員の作品を収めた詩集『どんぐり』の中の1編で、同級生の仲憲次さん(70)=岐阜市=が実家の整理中に見つけ6月4日、図書館内にある中上健次資料収集室に寄贈した。
紀さんは「過去の扉がいきなり開かれたような感じで非常にショックを受けました。名字を見ても父の複雑な家庭環境があらわになります。当時、映画館に行くことは特別なことだったと思います。父が小説『青い朝顔』の中で書いているように当時の貧しい生活を思いました」
現在確認されている中上が書いた文章で最も古い『さいふ』は、当時の新宮市内小中学生の優秀な詩や俳句を集めた冊子『わかあゆ』に収められている。図書館に2014年7月、市民から寄贈された。中上の同級生で詩人、ラテン・アメリカ文学研究者の田村さと子さんが『中上健次発言集成1・月報①』の中で1995年に紹介している。
紀さんは「小学3年生なのに、ちゃんと韻を踏んでいて、文才があったのかなと思います。比喩もすばらしく非常に良い詩だと思います」と話していた。
(2017年8月6日付紙面より)
熊野再発見プロジェクト (那智勝浦町 )
大学生の視点で那智勝浦町の観光の魅力を探る京都橘大学の「熊野再発見プロジェクト」の発表会が4日、同町体育文化会館であり、2、3両日に熊野地方を巡った約40人の学生らがグループ単位で意見を述べた。町からは花井啓州町観光協会長、大門坂茶屋のおかみ宮本照代さん、町観光産業課職員らが出席し、学生の貴重な意見に耳を傾けた。
2015年度から実施しているプロジェクトで、京都橘大学は昨年6月、那智勝浦町と「大学のふるさと協定」を結び、地域資源の再評価や観光PRの支援に取り組んでいる。同大学の木下達文教授が担当するゼミの学生や講義の受講生らを中心に広く学内から関心のある生徒が参加している。
町や観光協会が発行する案内パンフレットを参考に自由にテーマや行き先を決め、同町の築地や湯川地区、那智山、太地町を散策した。発表では、町の良い点は「人が温かく、どの地域でも親切に声を掛けてくれた」「ビン玉通りがレトロで素敵だった。京都と比べて観光地なのにゴミが少なく海がきれい」などが上がったが、課題も多くあった。「若い人向けの土産や那智の滝をイメージしたものが少ない」「紀伊勝浦駅の近くに駐車場がない」との指摘があり「商店街がシャッターだらけで暗くて近寄りづらい。空き店舗を利用して中が見える休憩スペースを作ってはどうか」「くじらの博物館までのバスの本数が少なく待ち時間が多い。待合場所で、もっと観光情報の提供を」など、課題に対する提案もあった。
木下教授は「観光振興には頑張っている人の点と点をつなげて全体で考えるテーブルが必要。京都にいると和歌山の情報が少ない。こういった学生と皆さんとのネットワークが他の大学でも広がっていけば」と話していた。
(2017年8月6日付紙面より)
葦舟で本宮から新宮へ
田辺市本宮町の熊野本宮大社から新宮市の熊野速玉大社までの熊野川34㌔を下っている熊野葦舟プロジェクト実行委員会(高栖浩史代表)は5日、新宮市熊野川町の熊野川行政局前から2日目をスタートした。同日午後4時ごろ、速玉大社前に到着する予定だ。
ダムと山の荒廃によって流れが細くなってしまった「川の参詣道」を復活させることを願い始まった取り組みで、今年で8回目。1日目は休憩を挟みながら約20人が交代で、約7時間かけて行政局まで下った。
プロジェクトを指導している探検家の石川仁さん(50)=長崎市在住=は、サハラ砂漠をラクダで横断、南米ジャングルの丸木舟川下り、イヌイットとの捕鯨などを体験している人物。2019年には葦舟での太平洋横断を計画している。「順調に進んでいます。ゴールよりも安全に笑顔で終わることが一番です」と話していた。
(2017年8月6日付紙面より)
防災列車「鉃學」を体験 (串本古座高 )
県立串本古座高校(愛須貴志校長)の1年生107人が7月31日、JRきのくに線の串本―新宮間で鉄道防災教育・地域学習列車「鉃學」に乗車した。緊急停車した列車からの避難を体験するとともに地域の歴史や南紀熊野ジオパークを学んだ。
「鉃學」は和歌山大学クロスカル教育機構生涯学習部門西川一弘研究室がJR西日本の協力で実施している取り組みで、今回3回目。鉄道からの津波避難協力者を拡大することなどが目的で、将来的には修学旅行やツアー商品化を目指している。
訓練は列車が走行中に震度7の地震が発生したと想定。緊急地震速報を受け、市内で緊急停車した車両から生徒たちは飛び降り、車掌らの誘導で約200㍍先の高台まで走って逃げた。
生徒たちは緊急停車するまでの間、鉄道会社初の緊急用降車台を見学したほか、避難はしごの使い方を学習。案内に従って九龍島(くろしま)などのジオサイトを車内から見学した。
訓練を終え、西川准教授(38)は「電車をよく利用する高校生たちに率先避難者になってもらうことが一番の狙い。いかに生徒たちに解説を聞いてもらいやすくするかが課題です」。
浅野瑠花さん(15)は「はしごの使い方がためになりました。たまに電車を活用するので、いざいう時に役に立てば」と話していた。
(2017年8月2日付紙面より)
8月16日の柱松本番に向け (新宮市 )
新宮市の佐野柱松実行委員会(瀬古尊夫会長)は7月30日、「佐野柱松」の周知のためののぼり旗立てとポスター貼りをした。
佐野柱松は、害虫駆除や五穀豊穣(ほうじょう)を願い行われてきた伝統の祭り。戦時中に一時中断し、1948年に佐野青年会が復活させたが58年夏の開催以降再び中断。93年に同実行委員会が復活させた。
当日は同市佐野の新宮港緑地公園で、サニーサイドジャズオーケストラ、紀宝楽の演奏、くろしお児童館児童らの踊りやアイスカービングとバルーンアートのステージ、花火などを予定している。
30日の活動には会員約20人が参加。協力してのぼり旗を用意し旗3班、ポスター2班に分かれて地域内を回った。
職場の上司に誘われて今年入会した森岡久貴さん(19)は「とにかく頑張りたい」。加藤誠人さん(36)は「地域内に勤めており、今までこういうことに参加したことがなく手伝いたいと入会しました。初めて柱松を見たのは小学生の頃で、25年間通して開催していることがすごいと感じています。運営サイドの勉強もさせていただき、末永く続くよう頑張りたい」。上本大輔さん(31)は「誘われて、少しでも地域の役に立てればと参加しました。最後の打ち上げもすごく盛り上がっているという印象。子どもが2人いるので、子どもが楽しんでくれるよう、佐野区に人が来てくれるよう頑張っていきたい」と話していた。
(2017年8月2日付紙面より)
福竜丸建造70年展始まる (串本町 )
串本町役場古座分庁舎1階ロビーで1日、「第5福竜丸=第7事代丸建造70年歴史展」が始まった。期間は6日(日)までで、開場時間は午前8時30分~午後5時、入場無料。5日(土)と6日はイベントも計画されている。
第五福竜丸は1954(昭和29)年3月、マーシャル諸島ビキニ環礁で行われた水爆実験に伴う放射性降下物(通称・死の灰)を浴びて被曝した遠洋マグロ漁船。その前身は1947(昭和22)年3月に現在の串本町中湊の字中洲にあった古座造船所から進水したカツオ漁船第7事代(ことしろ)丸で、今年は建造70年にあたる。
その節目に合わせて計画した今回の展示は、建造の地「字中洲」や古座造船所の歴史、第五福竜丸被曝当時の汚染マグロ被害や核兵器廃絶の世界情勢を、写真や図面、解説パネルやジオラマで伝える内容。ジオラマは同実行委員会の手作りで、現在は自然回帰している字中洲が建造当時どのような状態(今より若干中湊寄り)にあり、どのように活用されていたかを見て取れる形に仕上がっている。
関連のイベントとして5日午前10時、午後1時、午後3時の3回、映画「放射線を浴びたX年後」を上映。6日午後1時30分から、第五福竜丸記念館の市田真理学芸員を迎えて講演「第5福竜丸の航海はつづく」や福竜丸建造の語り部・姫鹿尾菜(ひめひじき)さんとの対談が行われる。いずれも入場無料。
同展を主に監修した仲江孝丸実行委員(59)によると、字中洲の成立から今年7月7日の国連核兵器禁止条約制定に向けた交渉会議による同条約採択までの経緯を一筋の流れとしてまとめたそうで、「核兵器そのものはあかんと誰しも言うが、一方では核の傘といい正当化する動きもある。福竜丸建造の地で暮らす者としては、核兵器の愚かさや廃止の展望を伝えて一緒に考えてほしいという思い。建造70年を機に字中洲の成立から核兵器禁止条約まで一連の歴史を一筋にして示し、過去の誤った認識の是正も含めて皆さんに伝えていきたい」とコメント。その思いの象徴として、同展冊子「語り継ごう 第5福竜丸=第7事代丸建造70年の歴史」500部を作成し、関係各所への配布後の残部400部を来場者にも配り託す。
問い合わせは同実行委員会事務局(電話0735・62・0006、役場教育課内)まで。
(2017年8月2日付紙面より)
熊野芸術文化セミナーに71人
「2017熊野芸術文化セミナー~伊作の心にふれる、創る~」(新宮市など主催)が7月29、30の両日、同市高田の高田グリーンランドであった。文化学院や熊野美術協会講師の下、今年は「色彩構成にドローイングを体験しよう」をテーマに水彩鉛筆絵画に挑戦した。
日本の近代建築と自由主義教育の先駆者で名誉市民の西村伊作(1884~1963年)が創設した文化学院(東京都)と提携して毎年開催されているセミナーで、今年16回目。今回は新宮市を中心に遠くは名古屋市などから10代から80代までの参加があった。
参加者たちは小さく長方形に切った和紙に色を付け、裏返してパネルに並べ、水を染み込ませた筆で色を写した。その上から思い思いの絵を描いて仕上げ、額装も作った。
2回目の参加の佐藤真由美さん(31)=新宮市佐野=は「思い通りに色が付かず、ゴールがどんどん変わりましたが、知らない世界に迷い込んだようで楽しかったです」。
第1回から講師を務めている文化学院総合芸術学科常勤講師の上野秀一さん(61)は「参加者の期待に応えようと毎年違うものに挑戦していますが、参加者が減らないことに驚いています。新宮の人は自分なりにどんどん制作を進めていく人が多く、芸術に向いていると思います」。
同セミナー実行委員長の清水雅昭さん(61)は「独特な表現を体感してもらうことが目的でしたので、狙い通りになりました。参加者の6~7割がリピーター。芸術を通して参加者同士のつながりができるのもこのセミナーの良いところです」と話していた。
開講式で田岡実千年市長は「リピーターが多く、新宮市の文化行事として、なくてはならない行事になっています」とあいさつした。
(2017年8月2日付紙面より)
平野杯空友会国際親善交流空手道大会