中上健次、直筆の考察 (新宮市 )
新宮市名誉市民で芥川賞作家の中上健次(1946~92年)の直筆のメモ書きがこのほど、新たに見つかった。メモ書きは、かつて仕事場として使用していた那智勝浦町のマンションの書斎から発見。大江健三郎(1935~2023年)の著書「死者の奢り・飼育」(新潮社、1959年)の文庫本に挟まれており、本には直筆で傍線やメモも書き込まれている。
川端康成に次ぐ、日本人として2人目のノーベル賞作家・大江健三郎。3月3日、老衰のため逝去した。中上の初期の作品は大江作品の影響を色濃く受けており、大江に対する愛憎半ばする思いは、エッセー「ジン=イーヨーの変容―大江健三郎論ノート」にも顕著に表れている。生前には対談「多様化する現代文学」も行われており、「新潮」80年1月号にその内容が掲載されている。
このたび見つかったメモは、第39回芥川賞作品「飼育」についてのもので、大江のシュルレアリスム(超現実主義)や隠喩表現などに言及。89年8月に東京都千代田区有楽町で行われた講演「初期の大江健三郎―『飼育』を中心に」のために書き込まれたものと考えられる。
講演会では中上が同様に影響を受けたウィリアム・フォークナー(1897~1962年)との類似性や、実験的試みの効果などに触れ「実に信頼できる、現代文学の敵に立ち向かう強力な同僚である」とまとめている(「中上健次発言集成6」より)。
なお、大江の逝去を受け、市立図書館では現在追悼コーナーを設けるとともに、中上健次コーナーでメモ書き(コピー)の展示を行っている。
(2023年3月30日付紙面より)
新入学児らにランドセルカバー贈呈 (交通安全協会新宮支部 )
和歌山県交通安全協会新宮支部の田中肇支部長らは28日、新宮市役所を訪れ、速水盛康教育長に新入学児童194人(小学校5校187人、支援学校1校7人)分の交通安全ランドセルカバーを、福本良英・健康福祉部長に市内11の幼稚園や保育所、保育園などの新入園児193人分の巾着袋を贈った。
毎年、春の全国交通安全運動期間を前に行われている事業で、新生活を迎える児童・園児や保護者、ドライバーの交通安全意識の高揚を図るとともに、子どもたちの健やかな成長を願って贈呈している。なお、購入費は、同協会に入会している会員の交通安全協会費などを活用している。
田中支部長は「今年も贈呈できて喜んでいる。このランドセルカバーをまちで見かけたら登校に慣れていない新入生だと意識して、より一層の安全運転を心がけてほしい」。
速水教育長と福本部長は、贈呈に感謝を示し「命につながる車の暴走事故もニュースで報じられている。(ランドセルカバーは)ドライバーへの一つの啓発になるとともに、社会全体で子どもを守っていく意識の高揚にもつながる」。「子どもたちが笑顔でランドセルカバーを身に着けている姿を見て、交通安全を意識していただければ」とそれぞれ語った。
なお、今後は那智勝浦町や太地町、田辺市本宮町、北山村、古座川町、串本町への贈呈も予定している。
(2023年3月30日付紙面より)
水害耐えたソメイヨシノ開花 (新宮市熊野川町 )
熊野地方を中心に甚大な被害を及ぼした「紀伊半島大水害」(2011年)から今年で12年。濁流により傷つきながらも当時の水害に耐えた熊野川町相須のソメイヨシノが、今年も花の盛りを迎えている。
12年前の8月25日、マリアナ諸島の西の海上で発生した大型の台風12号は、紀伊半島を中心に記録的な豪雨を降らせた。熊野川の氾濫で多くの家屋が浸水。幹線道路が寸断され、山間部で多くの土砂災害が発生した。
50年以上前に桜の木を植えたのは平岩明さん(85)。同地区では、水害によりほとんどの家が浸水した。平岩さんの家も被害に遭った。裏手から山へと逃げ、以降8カ月にわたり仮設住宅での生活を余儀なくされた。現在は取り壊した自宅跡地をかさ上げし、新しい家を建てて暮らしている。
桜の木の幹には、濁流にのみ込まれた時に付いた痛々しい傷跡が残る。しかし、水害を生き抜き、毎年たくましく花を付ける一本桜を、平岩さんは「平岩桜」と名付けた。
28日現在、桜は満開。「見事なもんや。花見酒したら最高やろね」と平岩さん。「今年も立派に咲いてくれた。もう思い残すことはないよ」。そう言って笑顔を見せた。
(2023年3月30日付紙面より)
教育環境整備審議会が答申 (串本町 )
串本町教育環境整備審議会(山本誠士会長、委員10人)が27日、教育委員会の諮問「串本町立小中学校の統合再編について」に対する答申を潮﨑伸彦教育長へ伝達した。
旧串本町と旧古座町の合併から17年が経過し、教委は合併翌年の2006年11月に受け、統合再編の指針としてきた「串本町教育環境整備について」の答申内容を時代相応に更新するために各小中学校区などから委員を人選して同審議会を立ち上げ。昨年9月30日付で前述した諮問を行い、同審議会は月1回の頻度で会議や書面審査を重ね、これまでの統合再編の経過や町立小中学校の現況、将来の児童生徒数の推計や文部科学省の統合再編の指針などを情報共有した上で意見を交わし合い、結論を目指してきた。
諮問をするに当たり教委は、教育力の適正な水準を維持し格差のない教育を求めて小中学校の統合再編について答申してほしいと希望。同審議会は、小学校は旧串本町域2校・旧古座町域1校、中学校は現串本町域で1校とすることが望ましいが、早期の統合再編を求めるものではないと結論を固めた。その具体的検討に当たっては▽児童生徒や保護者の意見を尊重し地域の合意形成に努めること▽通学による児童生徒の身体的負担を軽減する施策を講じること▽中学校においては成長期における新たな出会いや気付きによる社会性・人間性の向上を目指すことに重点を置くべき▽古座中について古座川町教育委員会と十分な協議を行う必要がある―といった意見も付して答申書をまとめ、伝達するに至った。
答申を受けた教委は今月28日付で、諮問書と答申書の原文を町公式ホームページ上で公開。濵地弘貴教育次長によると、委員はそれぞれに意見を持って会議などに臨んだがその中で主体の児童生徒にとって何が最良かを考えて今回の答申の内容に至ったという。
(2023年3月30日付紙面より)
軟式野球部「第8回大会」 (那智勝浦町体育協会 )
三輪崎剣道クラブが体験会 (新宮市 )
サッカー「フレッシュマンリーグ」
新宮市の近畿大学附属新宮中学校(池上博基校長)で24日、第30回修了式が開かれた。義務教育課程を修了した中高一貫コースの3年生39人が証書を受け取り、保護者や在校生、教職員から祝福を受けた。
式では、池上校長が修了生一人一人に証書を授与。式辞では、高等教育の段階に入る生徒たちに「自分で学び、自分が向かうという主体的な学問スタイルに変化する」ことを求めた。哲学者カントの言葉から「自分らしく生きるための心眼を身に付けるという決意を胸に、今後の学校生活を送って。リーダーシップを発揮し、学校をけん引する柱となるよう期待している」と結んだ。
修了生を代表して中学校生徒会の速水救会長が、さまざまな制約の中で前向きに進み続けた中学校生活を振り返り「一つ一つの行事に対して全力を出し尽くし、みんなで楽しめるこの学年を、本当にすごいと思うし、尊敬している。本当にありがとう」。保護者や教職員らにも感謝の言葉を伝えた。
(2023年3月25日付紙面より)
先輩委員迎えて研修会 (紀宝町民児協 )
紀宝町民生委員児童委員協議会(西村喜久男会長)は、定例会を同町鵜殿の町福祉センターで開いた。委員約30人が出席し、5期15年務めた山田十司さん(井田)から長年の活動への姿勢を学んだ。
定例会と研修会は毎月開催し、委員、町、町社会福祉協議会と情報共有をしている。研修会の講師として迎えた山田さんは定年退職後の60歳から75歳まで委員として活動し、このうち3期9年は会長を務めた。
委員を委嘱された1年目の心境について「自分にできるかと不安だったが、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を見た時にこれが民生委員だと思った」と振り返り、「地域を良くしようとする公認のおせっかい屋さん」と例えた。
新任の委員に向けて、「これまでの仕事と全く違うと思っているかもしれないが、そうではない。これまでの仕事の一歩先、延長線上にある。無理することはない」と励ました。
2011年の紀伊半島大水害では、町役場、町社会福祉協議会、民生委員の三者が一体となって取り組んだことを振り返り、民生委員としてどのように動いたのかを説明。被災前に災害ボランティアセンターを運営する災害ボランティアコーディネーターを養成していた経緯を紹介し、迅速なボランティア派遣につながったことを伝えた。
(2023年3月25日付紙面より)
タイプ木ライトアップ (古座川町 )
古座川町池野山にあるクマノザクラタイプ標本木(以下タイプ木)のライトアップが18、19日の2日間にわたってあった。
このライトアップは、観光協会の振興事業「桜フェア」の一環。三尾川(みとがわ)にある古傳山光泉寺のイチョウを照らすために導入した光源装置(LED照明4基とポータブル電源2基)を活用した初の取り組みで、鶴川公園のカワヅザクラに続く実施となる。
初日のタイプ木は開花が早かった枝の花が17日から18日にかけての雨に打たれてほぼ散ってしまったが、大半の枝は散り進むことなく花盛りを保った状態。投光中は途絶えることなく見物客の姿があり、初のライトアップを捉えようと写真撮影愛好家らも思い思いの場所から様子を見守った。
協会職員の上田柊大郎さんによると、2日間計の見物客数は約80人。うち3分の1ほどは地元以外で、タイプ木は日中も多くの見物客が訪れていて、今回のライトアップは大きな混雑もなく初の夜桜を鑑賞してもらえたという。
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次は相瀬にある一枚岩前のソメイヨシノを対象にして25日(土)、26日(日)、4月1日(土)、2日(日)に実施予定で、開花の進み具合を見て実施日を決めるという。実施日は道の駅一枚岩monolithが夜間営業で連動するため、実施時間帯に変更はなし。小雨決行、荒天中止。中止する場合は事前に公式ホームページなどで伝えるので、直前に確かめた上で見物の可否を判断してもらえればとしている。
他方、町内随一のソメイヨシノの名所として知られる佐田地内で24日午後に佐田区と桜まつり実行委員会が協力して恒例となっているちょうちんを設置し、散り終わりまで午後6時~9時に点灯する(タイマー制御となっていて期間中は毎日点灯)。桜まつりは今年も感染症予防のため中止となっているが、どんどろの森駐車場の芝生広場で開花時期の出店はあるという。
ライトアップの問い合わせは同協会(電話0735・70・1275)、佐田のちょうちんなどの問い合わせは町地域振興課(電話0735・67・7901)まで。
(2023年3月25日付紙面より)
新型コロナウイルス感染対策の一つ「マスク着用」が13日(月)から個人の判断に委ねるとする政府の方針を受け、本紙が独自に調査した結果によると約6割の人が「できるだけ着ける」と回答した。すでに着用が習慣になっていることが主な理由として挙がった。
アンケートは7、8日に実施。御浜町~串本町に住む20~80代の100人から回答を得た。マスクの着用は13日から屋内、屋外を問わず個人の判断に任される。調査では「できるだけ着ける」が57人で最も多く、「状況による」が38人、「できるだけ外す」は5人にとどまった。
着用を続ける理由としては「マスクの方が落ち着く」「3年もマスク生活をしていると外すと恥ずかしい」「なるべく顔を出したくない」「マスクなしで人と接する自信がない」などの回答が目立ち、長期化するコロナ禍において、マスク着用が習慣化している人が多かった。
また「基礎疾患がある」「感染防止のため。家族にもうつしたくない」「日本がコロナ感染者ゼロになるまで外さない」といった、基本的な感染対策として着用を続ける声も多かったが、一方で「アウトドアや運動のときは外す」「現実問題、不特定多数が出入りする場所へ行く場合以外しか外せないのでは」「当分着けるけど夏場は無理かも」などの意見もあった。
「状況による」を選択した人からは「ひとまず花粉シーズンが終わるまでは着ける」「花粉シーズンが終わったら屋外では外す」「近しい友人と会うときは外す。コンビニなどは周囲の雰囲気や様子を見る」「屋外や友人宅など、ケース・バイ・ケースで外す」など、感染症以外の予防や周囲の様子をうかがうといった声が多かった。
個人に加え、各業界団体でも脱マスクに向けた指針改定を急いでおり、全国的には大手のスーパーやコンビニなどでも利用客に着用を求めない方針を示している。
なお、新宮市では政府の方針を受け、職員などのマスクの着用については個人の判断に委ねるとするが、窓口などの対応時や家庭訪問時など、高齢者や妊婦など重症化リスクの高い人と接する場面を想定し、マスク着用を推奨していく構え。また、パーティションについては、当面の間設置を継続する計画としている。
那智勝浦町では、重症化リスクの高い人の来庁を想定し、また感染拡大防止継続の観点から、職員の勤務時間中のマスク着用を継続。パーティションの設置も続けるが、勤務時間外の着用については個々の意思に任せるとしている。
(2023年3月11日付紙面より)
橋杭小でキッズシェフ体験 (県調理師会新宮支部 )
串本町立橋杭小学校(溝内聡子校長)で9日、県調理師会主催のキッズシェフ体験があり5、6年生24人が包丁の扱い方やだしの取り方と味の整え方をじかに教わるなどした。
この体験は、子どもたちに調理の楽しさを伝えるため会員が学校へ赴く形で実施。この日は支部の新宮調理師会から平見一雄さんと平見輝行さん〈ともにたぬき屋〉、里中陽互さんと里中佑吉さん〈ともに徐福寿司〉、中畑光史さん〈葵鮨〉の5人がアジのつみれ汁の材料を準備して橋杭小へ赴いた。
感染症予防対策の一環で、児童は全員手袋を使用。まず会員が魚のさばき方を実演紹介し、児童は6班に分かれ5人の直接指導を受けながら同じように挑戦した。
さばいて皮を取った後はたたきにし、刻んだネギとつなぎの卵黄を加えてこねてつみれに。この調理過程で切る、たたく、時にはヘラの代わりにするなど包丁の幅広い扱い方を経験した。他方で昆布とかつお節でだしを取り、しょうゆや砂糖、塩などを加えて汁作り。味見をして足りないと感じた調味料を少しずつ加え、好みの味に近づける経験もした。
つみれを団子の大きさで汁に入れ、最初は沈んでいたつみれが浮かんでからさらに一煮立ちさせて調理終了。試食をしてプロの技術で整えた味わいを確かめた。併せて平見さん親子からSDGsの観点でだしを取った後の昆布やかつお節をつくだ煮(通称・ごはんのお供)にして無駄にしない実演紹介もあった。
人見茉奈さん(5年)は「魚をさばくのが難しかったけれど(会員の)教え方がとても分かりやすくて何とかできた。まだ一人で作る自信は無いけれど、家でまたやってみたい」とコメント。
今回の体験を主導した中畑さんは「橋杭小の皆さんはじっとすることなく積極的に調理を楽しんでくれて、教える自分たちが逆に楽しませてもらえたという気分。包丁を使うなど真剣さが必要なところは真剣に教えたが、終始緊張していてもいいものは作れない。今日はこの体験の本来の目的がうまく伝わったと思う」と手応えを語った。
(2023年3月11日付紙面より)
南紀勝浦温泉が2位 (温泉総選挙2022 )
国民参加型の地方活性化プロジェクト「温泉総選挙2022」でこのほど、本紙エリアの「南紀勝浦温泉(以降、同温泉)」が歴史・文化部門において2位に輝いた。昨年の1位から順位を落とすこととなったが、同温泉はこれまでも常に上位入賞を続けている。
温泉総選挙は好きな温泉地への応援投票を通じて、さまざまな情報に触れ、各温泉地の利用促進を図ることで、地域活性化につなげることが目的。
投票方法は「ウェブ投票」「リアル投票」「SNS投票」の3種類で、「リアル投票」と「SNS投票」は希望温泉地のみの投票方法となる。同温泉は全ての投票方法での参加となった。
九つの部門があり、全国各地の温泉地が毎年、エントリーを行っており、今回の総投票数は19万5263票に上った。歴史・文化部門は歴史上の出来事や人物にゆかりのある温泉地や独自の文化を残している温泉地がエントリーしている。
同温泉はこれまでに、「総選挙2018」で総務大臣賞を、「総選挙2019」では歴史・文化部門で1位、「総選挙2020」では同部門で3位、「総選挙2021」で1位を受賞している。
エントリーの際の紹介文では、177カ所の源泉と水揚げ量日本一を誇る生マグロが楽しめる宿泊施設や世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に指定されている熊野那智大社や那智山青岸渡寺、那智の滝など、「マグロと温泉と世界遺産のまち」をアピールした。
南紀勝浦温泉旅館組合の清水貞吾組合長は「本年も皆さまの応援のおかげをもちまして、2位に入賞することができました。当温泉地に投票してくださいました皆さまに心より感謝申し上げます。また、来年も1位に返り咲けるよう、今後も南紀勝浦温泉の知名度向上のため、宣伝を頑張ってまいりますので、これからも南紀勝浦温泉の応援をどうぞよろしくお願いいたします」。
一般社団法人那智勝浦観光機構(NACKT)の理事長も務める清水組合長は「機構の理事長としてになるが、18日から26日まで『温泉』を盛り上げるべく、『南紀勝浦温泉・南紀湯川温泉 温泉ウィーク2023』を開催します。観光のお客さまのみならず、地元の皆さまにも当温泉地の魅力を改めて実感していただく機会となればと思っております」と話していた。
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観光機構は18日(土)~26日(日)までの間、町内の各温泉で「南紀勝浦温泉 南紀湯川温泉 温泉ウィーク2023」を初開催する。和歌山県一の源泉数を誇る町内の温泉巡りが楽しめるイベントで、費用は「温泉めぐり札」の代金500円。1500個限定。
温泉めぐり札は、JR勝浦駅前の町観光案内所や大門坂観光案内所、南紀勝浦温泉旅館組合、道の駅なちで購入できる。
購入後は、日帰りおよび宿泊温泉施設の入浴が半額になる入浴券が3枚もらえるほか、温泉施設周遊バスが無料乗車できる。また、その他の特典もある。
問い合わせは観光機構(電話0735・52・6153)まで。
(2023年3月11日付紙面より)
3市町で計169人が参加 (GG作戦 )
七里御浜松林を守る協議会(会長・西田健紀宝町長)は4日、熊野市、御浜町、紀宝町の七里御浜国有林内で3年ぶりに「七里御浜防風林GG(グリーングロー)作戦」を実施。3会場で80本の抵抗性クロマツを植樹した。
七里御浜海岸の海岸林を守ることを目的に、1993(平成5)年度から植樹、林内清掃を続けてきた。新型コロナウイルスの影響で中止が続いたが、再開した今年は熊野市18人、御浜町50人、紀宝町101人の参加があった。
紀宝町では井田地区で開催し、町民をはじめ町議会、町商工会、道の駅「ウミガメ公園」、ウミガメ保護監視員、NPO法人環境ファースト連合会、三重くまの森林組合、紀宝みどりの少年隊、町、県、国の各関係団体も参加した。
西田町長は「松林は地域に住む皆さんを守っている。今日は皆さんと一緒に植樹したい」、協議会副会長で七里御浜国有林を管理する三重森林管理署の石上公彦署長は「植樹した松をしっかりと守っていきたい」とあいさつ。参加者は国有林でクロマツを植樹し、発泡スチロール、ペットボトル、缶、瓶など周辺のごみも拾い集めた。
七里御浜国有林内は3市町の海岸林に位置し、海からの強風、塩分を含んだ潮風から人々の生活、農作物を守るため、海岸防風林として重要な役目を果たしているという。
(2023年3月11日付紙面より)
地域見守る伊勢平柿の分身 (補陀洛山寺 )
「なちかつ古道を守る会」(地庵晋司会長)は8日、那智勝浦町の補陀洛山寺(髙木智英住職)の境内にある伊勢平柿の分身である柿の木の前に手作りの看板を設置・奉納した。由緒ある柿の木は、3月を迎えた現在もその実を枝に蓄えている。
この伊勢平柿は接ぎ木で植えられたもので、元の木は同町川関の熊野古道沿いにある「ふだらく霊園」内の推定樹齢800年以上と伝わる古木だ。鎌倉時代に源頼朝(1147~99年)の死後植えられたと伝わっており、町の天然記念物にも指定されている。
かつての巨木が長年の風雨などの影響で、樹勢が衰えた姿を目の当たりにした故・苅屋茂登恵さんや故・池本泰三さん、西わさ子さんら町民有志が2002年、「貴重な柿の木を未来へ残そう」と立ち上がる。
樹木医などの協力を得て枝を取り、紀の川市の和歌山県果樹試験場かき・もも研究所で育成してもらい04年に植樹。那智山青岸渡寺など町内各所に5本植えたが、無事に育ったのは同寺の木のみだったという。
木が境内の奥にあって目立ちにくいことや参拝者・町民にも広く知ってもらえるようにと、守る会が同寺や町教育委員会に相談。手続きを経て今回の設置に至った。看板はヒノキ製で「伊勢平柿 樹齢八百年の古木から接ぎ木 命を受けついだ」と彫られている。
看板の制作者で、守る会の小松隆幸さんは「材料から考え、2日ほどで仕上がった。小さな接ぎ木から命がつながっていることが大切。地域の皆さまに知ってほしい」。
地庵会長は「ふだらく霊園の北条政子にまつわる柿の木から接ぎ木した由緒ある柿。この機会に広く知っていただけたら」と話した。
過去に同会の会員でもあった西さんは「苅屋さんも、池本さんもきっと喜んでいるはず。私もとてもうれしいです」と笑顔を浮かべた。
参拝者に木の存在を知ってもらおうと、木を紹介した新聞記事や案内を促す矢印を壁に張り出した同寺の管理人・南善文さんは「本当にありがたいこと。柿を多くの方々に知っていただけたら幸いです」と述べた。
髙木住職は「由緒があり、多くの風雨にも実を落とさないこの木は寺にとってもシンボル。看板をご用意いただき、感謝しています。お寺は住職一人ではやっていけない。地域の皆さまに守っていただいているからこそ。この先もこの寺に何百年と根付いて、地域を見守ってほしい」と語った。
(2023年3月10日付紙面より)
東牟婁老人クラブ指導者研修会 (那智勝浦町 )
東牟婁郡老人クラブ連合会(奥根公平会長)は8日、「東牟婁地方単位老人クラブ指導者研修会」を那智勝浦町体育文化会館で開いた。那智勝浦町、太地町、古座川町、串本町、北山村の老人クラブから54人が参加。相続などや人権に関する各研修を受け、学びを深めた。
同研修会は単位老人クラブ指導者(会長・副会長クラス)の研修会を行うことで、指導者の資質向上とクラブ活動の充実、発展を目的に実施している。
奥根会長は講師や那智勝浦町、和歌山県の尽力に感謝を述べ「コロナ禍で多くの行事が、延期や開催ができなかった。本日の研修会、盛大に開催できることをうれしく思う」とあいさつ。
東牟婁振興局健康福祉部の杉本善和部長が「皆さまの力でより元気な地域にしていただければ」と祝辞を述べた。
新宮公証役場の三橋豊さんが講師を務め「相続・遺言・後見等について」を講演。相続や財産について▽相続は死亡により、所有していた財産などが引き継がれること。遺言と遺産分割がある▽遺言は、生前の意思で死亡後の財産などの引き継ぎ先をを指定する。相続は相続人以外も可能▽遺産分割は死亡後に、法律で決められた相続人が話し合い、財産などの引き継ぎ先を決める。相続は相続人に限定▽財産はその者が有していた物や権利。不動産や預貯金などの積極財産や借金、連帯債務といった消極財産も含まれる―と紹介した。
相続財産の把握や相続人間での協議など、遺産分割協議の詳細も説明。遺言の種類では、自ら手書きで作る自筆証書遺言や公証役場で公証人と相談しながら作成する公正証書遺言があるとした。
「財産争いを未然に防止する」などの遺言のメリットを解説。公正証書遺言のメリットとして「適法な内容で安心、確実」などを挙げ「手間や手数料がかかる」などのデメリットも伝えた。
遺言でないと相続できないケースや自ら行使できない事務をサポートする後見などの制度や権利擁護の手段にも触れた。三橋さんは「財産の多い少ないは関係ない。自分が築いたものを次の世代に残すことで、本人の思いはつながっていく。遠慮なく、ご相談ください」と呼びかけた。
人権研修では東牟婁振興局の人権主幹・濱口美都子さんが「高齢者の人権―認知症を学ぶ―」を講演。認知症の症状について、記憶障害や理解・判断力の障害、実行機能障害などを挙げた。
元気がなく、引っ込み思案になることがあるなどの行動・心理症状にも触れ、環境や介護者などの周囲の援助方法により改善される可能性もあるとした。認知症者への支援や接する際の心構え、認知症者を介護している家族の気持ちを理解すること、認知症の予防なども解説した。
最後は同連合会の更家正也副会長があいさつし、研修会を締めくくった。
(2023年3月10日付紙面より)
読書活動優秀実践校表彰 (古座川町 )
古座川町立明神小学校(濵地久夫校長、児童11人)がこのほど、県教育委員会が実施するきのくに読書活動優秀実践校表彰の対象校に選ばれた。8日に臨時集会を開いて表彰状などの伝達を受け、日頃の読書活動に対する評価をみんなで喜んだ。
この表彰は、県内の公立小学校や義務教育学校〈前期課程〉、特別支援学校〈小学部〉における読書活動の活性化と児童の読書の質的・料的充実を目的として前年度から年1回の頻度で実施。例年2月実施の学校図書館教育に係る調査から1人当たりの読書冊数を抽出し、その数値が多い未表彰校20校を選考し3月1日付けで表彰している。
同町教育委員会は、子ども教育15年プラン〈改定版〉において重点項目の一つに位置付けている読書活動推進を達成するために同推進員を起用。学校図書室の環境を児童に分かりやすい形へと整え、ブックトークや読み聞かせなどの演示を通して読書の啓発に努めている。濵地校長によると、明神小はこの状況を生かして週2回の始業前活動「学びタイム〈読書〉」を実施。週1回の頻度で読書集会を開いて木本陽子・同推進員の演示を受け、それを手本にして児童もブックトークや学期ごとに1回の頻度で高学年が低学年に読み聞かせをするなどしている。
さらに図書委員を立てて児童主体の読書活動推進にも力を入れ、本年度の同委員は週1回の学校図書室からの貸し出しの仕事をこなしつつ、校内放送による読書の呼びかけや読書週間期間中にはみんなで花の形をした紙に読んだ本のタイトルと名前を書いて幹を描いたポスターに貼る行事「読書の木キャンペーン」をするなどみんなで読書を楽しむ雰囲気つくりに頑張ってきたという。
その成果の一端として、同調査では1人当たりの読書冊数は94・64冊(4~1月の平均値)と報告。この実績により県内20校中の1校に選ばれ、表彰されるに至った。この日は県教委の指導主事2人が来校し、明神小を代表して図書委員の山本玲志君(5年)が表彰状、谷口紬さん(同)が副賞(図書カード5万円分)の伝達を受けた。濵地校長は同推進員が来てくれるからこその成果だと感謝しつつ、その先にある児童の頑張りに対する高評価を喜んだ。
来校した指導主事2人によると本年度、東牟婁地方では明神小と那智勝浦町立太田小学校の2校が選ばれているという。
(2023年3月10日付紙面より)
生徒有志が新宮城跡で (近大新宮 )
新宮市の近畿大学附属新宮高校・中学校(池上博基校長)の生徒会(梅崎光会長・速水救会長)は8日、全校生徒にボランティアを呼びかけ、新宮(丹鶴)城跡とJR新宮駅で清掃活動を行った。有志の約130人が参加、散乱するごみを拾い集めた。
生徒のボランティア活動意識の向上と、社会に積極的に参加する姿勢の育成のため実施。コロナ禍前は年3回、王子ヶ浜や徐福公園、市田川などさまざまな場所で行っていたが、感染拡大を受けて一時期、中断していた。新宮城跡とJR新宮駅での実施は、昨年の5月以来となる。
高校1年生と中学生が新宮城跡を、高校2年生がJR新宮駅を清掃した。新宮城跡では、中学3年の速水会長があいさつ。「ここは新宮市の歴史ある素晴らしい城跡。花見シーズンも近づいている。花見に訪れる人にきれいと思ってもらえるよう、頑張りましょう」と呼びかけた。
この後、清掃を実施。火ばさみやごみ袋を持ち、落ちたごみを探した。近年の美化意識の高まりからか、ごみはほとんど落ちておらず、生徒らは協力して落ち葉を集め、ごみ袋に入れていた。高校1年生の小沼佑斗さんは「ボランティアには積極的に参加しようと思って来た。来たときよりも美しくなるよう、磨きに磨きをかけて頑張りたい」と意気込んだ。
なお今年は4年ぶりに、新宮市による新宮城跡での夜桜ライトアップが予定されており、すでに多くのちょうちんが下がっていた。期間は18日(土)から4月28日(金)までを予定、点灯時間は午後6時から午後11時までとなっている。
(2023年3月10日付紙面より)
社会参加促進へ、マップ発行 (那智勝浦町 )
那智勝浦町役場福祉課高齢者支援係が3月、「通いの場マップ」を発行した。日常的に高齢者をはじめとする地域住民が集まって活動・交流している場を“見える化”することで社会参加を促し、生きがいづくりや仲間づくり、健康長寿の実現につなげることが狙いだ。
「通いの場」は地域住民が主体となって月1回以上開き、介護予防に資する取り組みなどを行う場とされる。定期的に活動・交流の場を持つことで支え合いの輪を広げるとともに、認知機能低下や低栄養による衰弱を予防し、運動機能や口腔機能の向上につなげることができる活動として、近年、厚生労働省なども推進している。
マップには、いきいきサロンをはじめ、ゆうゆう体操やいきいき百歳体操、茶話会、グラウンドゴルフ、カラオケ、ガーデニング、畑仕事、ヨガ、彫刻など多種多様な活動の場所や日時をまとめて掲載している。
福祉課の桝本佳貴主査は「通いの場は地域の宝です。特別養護老人ホームやグループホームなど、高齢者を支える制度やサービスは整ってきているが、介護保険などの個別支援は高齢者の孤立につながることも。『介護の専門職に任せておけば大丈夫』ではなく、人と人がつながり、気にかけ合うような地域づくりが重要」と話す。
マップは町役場福祉課や町福祉健康センターで配布している他、町のホームページでも公開している。福祉課高齢者支援係(電話0735・29・7039)では通いの場への参加や立ち上げ、町社会福祉協議会(電話0735・52・5252)ではいきいきサロンに関する問い合わせをそれぞれ受け付けている。
(2023年3月9日付紙面より)
三重県知事が西田町長と対話 (紀宝町 )
一見勝之知事が県内各市町の首長らと対談する「知事と市町長の円卓対話」が7日、紀宝町で開かれた。工事が進む熊野川河口大橋、町が事業化を要望した一般県道小船紀宝線浅里バイパスの現場を視察した一見知事は「浅里バイパスは来年度から新規事業着手する。事業説明会、用地買収があり、皆さまにご協力いただきたい」と述べた。
対話は浅里地区の飛雪の滝キャンプ場で実施し、地元住民、藤根正典県議、町議らが傍聴。西田健町長が求めたバイパス整備に応える形で新規事業化が実現した。
地域の諸課題に対する共通認識の醸成を目指し、知事が地域に出向いて市町長らから意見を聞き、県政に役立てるもの。知事就任以降開催しており、紀宝町では初めてとなった。
西田町長は、災害対策のためにも高規格道路が必要とし「一日も早く紀勢線が全線開通するよう整備促進を」と求めた。一見知事は高速道路早期完成の重要性を示した。
医療費助成、給食無償化、移住新生活応援事業、固定資産税の減免、空き家バンク制度の充実など町の人口減少対策を把握した上で、さらなる支援要望を受けた一見知事は、子どもの医療費無償化、移住・Uターン促進の重要性を伝え、県の子ども支援予算の増額、移住対策コーディネーターの設置などを紹介した。
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視察後、一見知事と西田町長は紀宝はぐくみの森に移動し、ママサークル「さくらんぼ」(舛屋秀美代表)のメンバー6人と対談した。
県民から地域課題を聞く「知事と県民の円卓対話」で、15回目となった。一見知事は「今まで以上に子育て支援に力を入れ、市町を応援する。これからも子どもに優しい三重県を続けたい」と語った。
さくらんぼは、子育ての孤立をなくし、前向きに元気にできるよう、2012年から始まり、毎月1回、イベントを開いている。舛屋さんは「親も子も楽しめる会なので、みんなが笑顔で元気になり、家庭での楽しい会話タイムができています」と活動の様子を伝えた。
メンバーは、ファミリーサポートセンターや子育て支援センター、歯磨き指導、乳幼児健診、医療費、子育て相談など子育ての面から町の魅力を紹介。「子育てするなら紀宝町。年々、町が好きになっている」「医療費助成、ファミサポがあり、子育てしやすい」「ファミサポの存在が安心につながっている」などと語った上で、延長保育、遊具の設置、公園整備などを要望した。
西田町長は「16年前、子育て支援センターとファミサポを公約に掲げた。『子育てするなら紀宝町』と言っていただき、うれしく思う。皆さんのご意見を子育て支援の参考にしたい」と話した。
(2023年3月9日付紙面より)
中央公民館で人権講演会 (古座川町 )
令和4年度古座川町人権講演会が4日に中央公民館であり、約100人が聴講して人権意識を高める一助とした。
この講演会は町と町教育委員会と町人権尊重推進委員会が主催、町教育会と町連合PTAが共催。新型コロナウイルスの情勢により4年ぶりの実施となった今回は、戦場カメラマンとして30年来活動するフォトジャーナリスト・渡部陽一さんを講師に迎える内容を手話通訳付きで準備し、定員120人で事前申し込みを受け付けた。
当日は主催者を代表して中道悟教育長が「戦争は人権侵害の最たるもの。今まさにウクライナでも戦争が行われていて、教育委員会として何かできることはないかと考え昨年12月のおとなのためのピアノ教室発表会をウクライナ支援チャリティーコンサートとして開かせていただいた。世界中にはまだまだ戦争があり、今日はその現実のお話を頂き平和や人権を振り返って考えるきっかけにしていただければ」と述べて参加を歓迎した。渡部さんは「戦場からのメッセージをあなたに~ファインダー越しにみた命の現場~」と題して登壇し、戦場カメラマンとなった経緯や30年来撮影を続けて伝えようとしている事柄を紹介。戦渦に巻き込まれて将来のために学ぶ機会を失い、その境遇に悲しみ泣く子どもたちが世界のどこかに常にいることを写真で知らせ続けるのが自身の活動だと伝えて、その現実や当事者である子どもたちの思いを訴えかけた。
ウクライナ戦争の経緯も戦場カメラマンとしての目線で解説し、数々の戦場を見てきた自分は現状でこの戦争は終結しない(長期化する)と直感していると主張。戦争の終結に結び付く世界の大きな動きが生まれることを願いつつ、自身は今後も戦禍に直面する子どもたちがいることを伝え続ける意思を掲げた。時間が許す限り質問にも答えて理解を後押しした。
(2023年3月9日付紙面より)
田辺市本宮町の熊野本宮大社(九鬼家隆宮司)と同大社旧社地・大斎原(おおゆのはら)で6日、「時宗総本山・藤澤山無量光院清浄光寺(神奈川県藤沢市、通称「遊行寺」)、他阿一浄上人就任奉告法要」が営まれた。大社や同寺の関係者ら約50人が参列。法主に就任した遊行七十五代他阿一浄上人が、本殿や一遍上人名号碑前で登位および法灯相続を奉告した。
鎌倉時代中期から室町時代にかけて日本全土に広まった浄土系仏教・時宗の開祖・一遍上人(1239~89年)。同大社には、布教の在り方について苦悩した智真(後の一遍上人)が同大社証誠殿の御前で祈り続け、悟りを開いた逸話が残っている。
大斎原には、1971年に熊野権現の霊告を受け、独一念仏を開顕した開眼供養の碑「一遍上人神勅名号碑」が建立され、1289年8月23日に入寂した一遍をしのび毎月23日に一遍上人月例祭が斎行されている。
他阿は1278年、一遍に師事して以来、一遍の諸国遊行に従い、一遍が亡くなった後にいったん解散した時衆を再結成して集団組織化し、遊行を続けた。1304年に遊行を3世の量阿に譲り、相模国に草庵(後の当麻道場金光院無量光寺)を建立して独住し、83歳で示寂。一遍と並び「二祖上人」と通称されている。
遊行四代呑海上人の開山以来、遊行上人が住まう寺として「遊行寺」の名で親しまれている清浄光寺。他阿一浄上人は、遊行七十四代他阿真円上人の遷化に伴い、昨年1月6日に登位。同大社本殿前において仏国祭、大斎原において法楽が執り行われた。祭事後には賦算が行われ、一浄上人が参列者らに念仏札を配った。
九鬼宮司は、一遍上人を通した時宗と同大社との縁について話し「熊野は神仏が一体となって世界の平和を祈る場所。今日は他阿一浄上人の姿を目に焼き付けていただき、熊野が神仏一体に、心を一つにして平和・平穏を祈る場所であることを改めて感じていただければ」。
一浄上人は「このような儀を執り行っていただけたことは感激の極み」と参列者らに感謝を伝え「同大社でお参りをしながら、熊野のこの地であったからこそ、そのご神勅にありつけたのだろうと改めて感銘した。皆さまのご加護がなければ到底務まる職ではないが、この世の中が平穏であることを一心に願いながら自分の誠をささげてまいりたい」と思いを語った。
(2023年3月9日付紙面より)