県産農産物利用拡大に向け (太地町 )
学校給食へ地場産食材を供給する取り組みが太地町(太地町学校給食推進協議会)でスタートした。17日には町立太地小・中学校で、新宮市産の小松菜などが給食の献立に登場。児童・生徒らは地元産の野菜や魚に舌鼓を打った。
和歌山県では、学校給食献立の早期作成や入札方式導入の働き掛けにより「必ず作ります・売ります・買いますシステム」を確立することで県産野菜などの利用拡大を推進。市町村協議会で学校給食関係者が「購入希望リスト」、生産者が「供給可能リスト」を作成し需要と供給のマッチングを図る。
取り組みは2019(令和元)年に広川町でスタートし、すさみ町、新宮市に続いて県内4地域目。新宮広域圏公設地方卸売市場を核として実施する新宮・東牟婁地域では2地域目となる。
取り組みを進めるに当たり、太地町では1月に町教育委員会、太地小・中学校、新宮周辺地場産青果物対策協議会、県東牟婁振興局農業水産振興課で構成する「太地町学校給食推進協議会」を立ち上げた。太地小・中学校では今後、年に3回ほど地元農水産物を使用した給食が提供される見通しだ。
この日、給食に登場したのは新宮市産小松菜を使った三色ごまあえをはじめ、那智勝浦町太田産の米で炊いたご飯、県産サバのカレー焼き、けんちん煮、牛乳。
太地小学校(宮本礼子校長)では、教諭から「今日の給食には和歌山県の食材がたくさん使われています」と説明を受けた児童たちが、大きな口を開けて地元の味を堪能。長尾彩羽さん(2年)は「野菜も魚もおいしい」と笑顔で話した。
公設市場の出前授業で学びを深めるほか、実際に小松菜や大根を植えて収穫するなどして、普段から野菜に触れる機会を設けている同小学校。取り組みを通して野菜に抵抗がなくなった児童も多いという。
宮本校長は「今日の給食は、いつも以上に食が進んでいるように思います」と話し、児童の給食を見守っていた。
(2021年2月19日付紙面より)
三輪崎小3年生が学習
新宮市立三輪崎小学校(嶋田雅昭校長、児童371人)で16日、熊野学研究委員会や市文化財保護審議会の委員を務める中瀬古友夫さんによる講話があり、3年生60人が昔の市内の風景や人々の暮らしを学んだ。
3年生の社会科では通年で地域学習に取り組んでいるが、教科書の例として紹介されている都市が他府県のため、児童が自身の住む市についてより具体的にイメージできるようにと講話を依頼した。
中瀬古さんは、市の昔と現在の写真を並べ、そこに写った人々の生活を解説。佐野駅近くの踏切を蒸気機関車が走る様子や、三輪崎にある久嶋(孔島)近くに停泊した客船から小舟で運ばれた乗客たちが背負われながら浜に上がる様子を語った。
三輪崎小学校について、「オーストラリアに出稼ぎに行った潜水夫らの寄付によって、和歌山県で初の鉄筋コンクリート校舎として1927(昭和2)年に建設された」と話し、校舎の完成記念として開かれた運動会の写真も見せた。
児童は「全然違う」「山の形は一緒だから同じ場所なのかな」と話しながら写真を見比べ、普段何気なく見ている場所に秘められた歴史に興味を引かれた様子だった。
(2021年2月19日付紙面より)
熊野那智大社で「祈年祭」 ( )
那智勝浦町の熊野那智大社(男成洋三宮司)で17日、「祈年祭」が営まれた。同大社責任役員の塩﨑巍朗(たかお)さんや献穀講員らが参列し、実りへの感謝と五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。
「としごいのまつり」ともいい、古くから定められた国家祭祀(さいし)が起源。旧暦2月4日に行われていたが1873(明治6)年の改暦後は17日となった。
11月の新嘗祭(にいなめさい)と対になる祭りで、日本列島各地で神々に食べ物やささげ物を奉り、豊かな実りに感謝し人々の幸せを祈る祭祀・儀礼が行われている。
同大社では、男成宮司が神饌(しんせん)が供えられた拝殿で祝詞を奏上。新型コロナウイルスの早期終息も祈願した。巫女(みこ)が神楽「浦安の舞」を奉納し、参列者らが玉串をささげ、春の訪れや農作物の豊かな実りに感謝した。
神事を終え、男成宮司は「那智勝浦町では幸いにも新型コロナは拡大していないが、地域経済は厳しい状況にある」と現状に触れ、同日から医療従事者を対象に始まったワクチン接種に対して「大きな期待をしている」と述べあいさつとした。
その後、別宮「飛瀧(ひろう)神社」でも同様に神事が斎行された。
(2021年2月19日付紙面より)
海ノ民話のまちプロジェクト実行委員会が18日、稲村(とうそん)亭の民話を原作としたアニメーション作品「お屋敷になったクジラ」の完成を串本町へ報告した。
同実行委員会は、次代を担う子どもへ海を語り継ぐ日本財団「海と日本プロジェクト」の一環で2018(平成30)年度に発足。以降毎年「海ノ民話のまち」を認定していて、本年度は同町など7自治体を選定し、同町には昨年7月実施の認定証贈呈時に民話アニメの制作と関係フィールドワークへの協力を求めていた。
「お屋敷になったクジラ」は町内にある古民家・稲村亭に伝わる民話の一つ「恩返しの家」を原作とした上映時間5分強の短編作品。同実行委の沼田心之介認定委員長が取締役を務める制作会社「株式会社トマソン」が同町・海ノ民話のまち実行委員会事務局の吉川公一さん(テレビ和歌山東京支社長)の仲介を得ながら制作を進めた。
収束しない新型コロナウイルス感染症の情勢を考慮し、東京を拠点とする同プロジェクト実行委員会と同町をウェブ会議システム「ZOOM(ズーム)」でつないで完成報告の場を整えた。東京からは同実行委員会の沼田委員長と柴田英知さんや吉川支社長、同町からは田嶋勝正町長や稲村亭を預かる株式会社一樹の蔭の博多敏希代表取締役、制作を支援した南紀串本観光協会の宇井晋介事務局長が出席。作品を鑑賞して、串本儀平が作品に登場するクジラと巨木をモチーフにした和菓子の取り扱いを目指し、同協会が作品視聴QRコード付きPRシールを作成配布するなど、今後の利活用を話し合った。
フィールドワーク(上映会込み)は26日(金)に串本西小学校4~6年生を対象に実施する予定。報告を受けた田嶋町長は「本を読む機会が少ない中、5分間にまとめたアニメを見るのはいいことだと思う。串本は捕鯨で栄えたまちで、地震や飢饉(ききん)もうたわれたこの民話から歴史を知り、次の世代へ受け継いでくれれば」と展望を期待した。
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■「お屋敷になったクジラ」視聴方法
作品「お屋敷になったクジラ」は先行して同協会の公式動画チャンネル「くしもと珍魚ちゃんねる」で同日午後1時から公開を開始。同チャンネルは同協会公式ホームページにあるリンクや前述したコードを使って開くこともできる。
同プロジェクト実行委員会と同町の架け橋となっている株式会社テレビ和歌山は、一連の様子も含めて番組を制作し作品と合わせて3月中の放送を目指すほか、最寄りの道の駅へも上映の相談をする予定という。
(2021年2月19日付紙面より)
全国勝浦ネットワーク会議 (那智勝浦町 )
全国勝浦ネットワークは9日、オンライン会議を実施した。那智勝浦町の堀順一郎町長、千葉県勝浦市の土屋元(はじめ)市長、徳島県勝浦町の野上武典町長の3人が各市町からインターネット上で会議が行える「Zoom(ズーム)」を使用して意見交換や情報共有を行った。
同ネットワークは「勝浦」と地名が付く3自治体が互いの地域の発展を目指すことを目的に集まり、2003(平成15)年に友好都市盟約を取り交わした。
従来は3人の首長が集まって会議を実施しているが、今年度は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止となり今回のオンライン会議に至ったという。
会議の進行は勝浦市が行い、3人の首長はそれぞれの地域のコロナの状況や感染防止対策、経済対策などを発表した。
勝浦市ではマスクや応援券(商品券)の全戸配布、水道料金や小中学生の給食費を半額にしたことを説明。勝浦町では小中学校休校時に給食センターの職員に依頼してマスクを作成し配布したことや老人福祉施設への衛生用品、商品券の配布、水道料金を負担したことなどを紹介した。
堀町長は県内の発生状況や観光の町である那智勝浦町がコロナによって受けた打撃や影響を説明。取り組みとして▽紀伊半島大水害の際に寄付されたマスクを消毒し再利用▽運転席と患者室の間仕切りやオゾン発生装置などを完備した高規格救急車などの導入▽災害発生時、避難所での密を防止するため町内宿泊施設との連携▽まちなか商品券の配布▽非接触型決済の導入推進―などを報告した。
土屋市長は「今後も情報共有し、この会議を有効的に活用していきたい」。野上町長は「両市町の目線の変えた取り組みを参考にして、職員一丸となって考えていきたい」とそれぞれ話した。
堀町長は「コロナ終息後はそれぞれの地域に出向いて、より密な情報共有や交流をしたい」と締めくくった。
(2021年2月11日付紙面より)
和深発で駅拠点ウオーク (「大辺路」活性協議会 )
串本町にあるJR和深駅~田並駅間で8日と9日、「世界遺産熊野古道大辺路 駅からウオーク」があり、両日計37人が熊野古道大辺路刈り開き隊(上野一夫隊長)とともに両駅間の大辺路沿いの見どころを巡り歩いた。
那智勝浦町と串本町の観光関係諸機関・団体で結成する世界遺産・熊野古道「大辺路」活性協議会が、観光庁「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業の適用を受けて展開する取り組みの一環。
同協議会は鉄道駅を拠点にしたウオークに親しむ環境整備を進め、両町内にある各駅を拠点化するツールとして▽駅からアクセス・ルートマップ(駅拠点で歩くためのコース図)▽あがらの○○駅お散歩マップ(各駅周辺の見どころ紹介図)―などを作成。その成果を生かす実証として同ウオークを考え参加を募った。
初日は22人、2日目は15人が参加。その多くが趣旨に沿い、普通列車を利用して参加、解散する手段を取った。
ガイドは串本町域の大辺路を再興し保全する同隊が担当。2日目は上野隊長ら隊員4人で感染症予防のため四つの小グループに分かれた参加者を誘導し、新田平見道や富山平見道はもとよりメタルアートギャラリーやおおな魚(=イシナギ)伝説が宿る大師堂、旧赤瀬小学校など道中の見どころの数々をガイディングレシーバー越しで紹介するなどした。
今回は各自昼食を持参とし、無料で実施。参加者には駅からアクセス・ルートマップを事前送付し、お散歩まっぷはカラー版が完成次第送付するという。同機構の齋藤滋さんは、事業終了後も引き続き実動が伴いJRきのくに線活用の一助にもなる今後を思い描いて同ウオークを主導していた。
翌10日と11日は湯川駅~那智駅間でも同様のウオークを実施。別系統で「JR14駅で大辺路コンシェルジュがお出迎え」と題して12日(金)から14日(日)までの午前7時~午後4時、宇久井を除く対象各駅に管理人が常駐し地図を配るなどして送り出す実証も行う。
問い合わせは南紀串本観光協会(電話0735・62・3171)か那智勝浦町観光案内所(電話0735・52・5311)まで。
(2021年2月11日付紙面より)
図書館・子育て支援セの内覧会 (紀宝町 )
紀宝町神内の旧町保健センターを改修した「紀宝町立図書館・子育て支援センター複合施設」の内覧会が9日にあり、西田健町長、町議会議員らが施設内を見学した。
改修は昨年6月24日から始まり、1月29日に完成。1階に図書館、2階には子育て支援センター室、活性化ホールなどを配置した。今後は複合施設の愛称を今月中に決定し、同センター室などの整理や準備、鵜殿図書館から図書の引っ越しなどを行い、4月に開館する予定だという。
施設は誰もが利用できるようエレベーターと多目的トイレを設置。新たなフリースペースでは飲食が可能なほか、キッチンを活用した簡易な料理教室を開くことができる。
図書館は、旧保健センター事務室や診察室などの壁を撤去し、一つのフロアに改修。木の温かみと落ち着きが感じられるスペースとなった。蔵書は約5万冊となる見込みで、児童コーナーには絵本を中心に配置する。
支援センターでは、図書館と連携した事業を展開し、新たな子育て支援のサービスを提供する。活性化ホールは壁や床を改修し、スクリーンを新設し、出入り口にスロープ、窓に転落防止用の手すりを設置した。
視察した西田町長は「木材をふんだんに配置し、温かみのある施設になった。4月の開館後は多くの方に利用していただきたい」と話していた。
(2021年2月11日付紙面より)
ブック・ブックが県教育委員会功労賞 (新宮市 )
新宮市のボランティアグループ「ブック・ブック」(濱野小夜子代表)が、和歌山県教育委員会の「県教育委員会功労賞」を受賞した。先月14日、和歌山市内の「ホテルアバローム紀の国」で開催された「和歌山県教育表彰式」で表彰を受けた。
県の教育の発展に功績があった個人や団体をたたえる同表彰は4分野で構成されており、「知事感謝状・県教育功労者」「知事感謝状・優秀教職員」「教育委員会功労賞」「きのくに教育賞・きのくに教育の匠」がある。同グループは地域の読書文化の振興と向上に大きく貢献した功績が認められこのたびの受賞に至った。
2000(平成12)年度に発足した「新宮市立図書館百周年記念事業実行委員会」を母体とし、02(平成14)年度に設立。
4カ月検診時に母親と幼児に絵本を読み聞かせ、絵本をプレゼントする「ブックスタート」、市立図書館や小学校での「おはなし会」、書架整理、本の修繕、グリーンカーテンの設置や庭の手入れなど、読書環境の整備や子どもの読書を推進する事業を中心に活動している。14(平成26)年に市政功労者表彰、15(平成27)年に第48回優良読書グループに選ばれている。
「本が好き」「子どもが好き」な人が集まり、現在メンバーは25人。新型コロナウイルスの影響を受けながらも、本を通じたふれあいの時間や子どもたちの笑顔を活力に日々、ボランティア活動にいそしむ。
このたびの受賞を受け、濱野代表は「みんな自分の好きなことをしているだけ。大それたことはしていない。うれしいというより驚きです」と謙遜しながらも、読書の輪のさらなる広がりに期待を寄せる。
代表して表彰式に参列した江川大二郎副代表は「率直にうれしい。これからも本を通して『知る』ことを楽しんでくれる子どもたちのお手伝いができれば」と話していた。
(2021年2月11日付紙面より)
森の再生を考える会が植樹 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の住民団体「森の再生を考える会」(新垣有慶会長)は7日、同町湯川の熊野古道沿いで植樹会を開き、ヤマザクラなど26本を植樹した。和歌山県の「令和2年度未来を彩る花の郷づくり事業」を活用した。
同会は熊野古道の一部であるゆかし潟周辺の昔の景観を再現し、古道を散策する来町者に楽しんでもらうことを目的に活動している。昨年には緑の募金事業を活用し、同町湯川のゆかし潟北側側道沿いにヤマザクラ21本の植樹を行った。
この日は▽なちかつ古道を守る会▽南紀くろしお商工会▽南紀くろしお商工会西部支部▽町観光企画課▽二河公民館▽虹の会▽東牟婁振興局▽くまの里山▽NPO三つの森▽ふるさと共会▽住民▽山下造園―など約50人が参加した。
堀順一郎町長は「当町は自然環境に優しい取り組みを行うため、町民の皆さまに生活を見直していただくきっかけになればと思い、ゼロカーボンシティ宣言をした。ぜひ皆さまとたくさんの桜を植えていきたい」。
濵﨑信雅湯川区長は「今日植樹する苗木が桜の名所となって、熊野古道を散策する皆さまの楽しみになればうれしい」とあいさつした。
参加者は3班に分かれ、それぞれの植樹場所へ移動。スコップなどで穴を掘り、肥料を入れるなどして苗を植えた。獣害対策ネットや倒木防止用の杭を打ち込むなど協力しながら作業に汗を流した。
数年前から同会に参加し助言なども行う熊野自然保護連絡協議会の瀧野秀二副会長は「山桜は常緑樹に負けてしまう恐れもあり、ダニを運ぶシカなどの食害もあるので注意が必要。手を掛けていくことで将来は多くのきれいな花が咲き、子どもたちが楽しめる場所になるはず」と話した。
新垣会長は「元々この周辺は桜があったが、朽ちてしまった。熊野古道周辺に再度、桜を植えることで景観を美しくしたい。先では桜を楽しむための会も作ることができれば」と語った。
(2021年2月10日付紙面より)
西向の成就寺で防火訓練 (串本町 )
串本町西向にある薬王山成就寺(大崎實宗住職)で8日、防火訓練があり串本町消防本部古座消防署とともに出火時の初動の在り方を実践しながら確かめるなどした。
第67回文化財防火デーの趣旨に基づく取り組み。旧古座町域は同寺と古座にある佛光山善照寺が隔年で同訓練をしていて、西暦奇数年は成就寺の巡りに当たる。
同寺には国指定重要文化財「成就寺の芦雪(ろせつ)画(方丈障壁画45面)」を所蔵しているが、44面は県立博物館へ寄託済み。昨年7月に残る1面を修復のため搬出し後に県立博物館へ寄託するため同文化財は堂内に残っていないが、守るべきは同文化財を含む寺宝全般であり、これらを火災から守るため同訓練に臨むこととした。
この日は同寺の大崎住職や檀家らと同署の職員、合わせて20人が参加。庫裏から出火し初期消火に失敗したという想定で同訓練を始め、大崎住職は人命最優先の観点で堂内に火事を伝え参拝者が急ぎ寺門そばまで避難した。119番通報をして消防の到着を待つ間、駆け付けた総代らが手分けして本堂の寺宝(同日はその模擬品を使用)を寺門の外へ持ち出し。到着した職員は境内へホースを引き込み、本堂屋根に放水するところまで実践した。
ホースは延長途中で二股分岐をはさみ、今回は実践を省略したが残る一口からも放水できる状態とした。同署による講評後、総代から守るべき文化財がもうない点で訓練実施の意図を確かめる質問があり、大崎住職は数ある寺宝の中でも本尊と過去帳は絶対に守らなければならないという思いを伝えて引き続きの協力を求めた。
(2021年2月10日付紙面より)
新宮高校の教育現場で
和歌山県教育委員会は現在、県内全ての全日制および定時制県立高校に1万9239台のタブレット型パソコン(PC)端末「Surface Go 2」の導入を進めている。新宮市の県立新宮高校(前田成穂校長、生徒547人)にも既にPC端末や高速大容量ネットワーク環境(校内LAN)が整備され、積極的に情報通信技術(ICT)を活用した授業づくりが行われている。
政府は現在、義務教育を受ける全ての小・中学生に1人1台の学習用タブレットPCと校内LANを整備する「GIGAスクール構想」を推進している。高校生は対象外だが、低所得世帯の生徒には端末貸与などの支援を行う方針で、必要な費用を本年度の第3次補正予算案に計上した。一方、和歌山県を含む全国11県は、独自に公立高校の1人1台の端末整備を進めており、本年度内にも整備を終える見通しだ。
新宮高校では、昨年12月中旬から生徒にPC端末を配布した。インターネット接続や機器の不具合はおおむね1週間で終息。当初はPCを使う授業の時間のみ端末保管室から持ち出す形を取っていたが、現在では科目数の増加により一日中端末を貸し出すこともあるという。
コミュニケーション英語の岡野恵子教諭は「もともとパワーポイントで授業をしていたこともあり、現在では黒板に板書をすることはほとんどない」と語り、「PC端末の強みはリスニング。教壇にオーディオを置いて音声を流すのではなく、自分の聞きたいところで巻き戻したり、繰り返したりできる」と話す。
体育の創作ダンスでは、グループごとにはやりのK―POPミュージックなどを流し、動画を見ながら練習をしている。丹羽泰一郎教諭は「動画のスロー再生など、生徒から新しい機能を教えてもらうこともある。球技のシュートやランニングフォームを動画で見せることで、生徒の理解も深まるのでは」。
地理の授業では、ルワンダ内戦やチェチェン共和国問題、北アイルランド紛争といった世界の民族紛争の調べ学習に端末を使用。雨郡義和教諭は「自分で調べた内容を共有したり、発表用のスライドで使う画像を探したりするときには便利だが、差別や偏見を含む情報へのリテラシーも必要になる」と課題を述べた。
大きな抵抗感なくPC端末を使った授業スタイルが定着する一方、有害情報への対応や、いかに生徒の学力向上へつなげていくかが課題として浮かび上がる。今後も各校の取り組みに注視が必要だ。
(2021年2月10日付紙面より)
ワクチン事業盛り込んだ補正予算を可決 (新宮市議会 )
新宮市議会(久保智敬議長、15人)は9日、臨時会を開き、新型コロナウイルスワクチン接種推進事業に係る予算を盛り込んだ「令和2年度新宮市一般会計補正予算(第9号)」を審議。全会一致で可決した。
既存システム改修費用、クーポン券印刷および郵送料、ワクチン接種委託料などワクチン接種に関する予算補正を行い、歳入歳出予算の総額に1355万円を追加し、歳入歳出予算の総額を236億3411万6000円とするもの。
審議に当たり、田岡実千年市長が「10都府県で緊急事態宣言が延長となるなどまだまだ収束の兆しは見えてこないが、間もなく開始されるワクチン接種に大きく期待している」とあいさつ。
国の指示の下、市町村において実施するワクチン接種事業に対して「最優先事項であると考え、迅速かつ的確に実施するため先月に新型コロナワクチン接種推進室を設置した。さらに関係課長などで構成する『新宮市コロナワクチン接種推進連絡会』を設置し、全力で進めていきたい」と決意を新たにした。
県が主体となり3月から医療従事者などに優先接種される新型コロナワクチン。ワクチンを保存する超低温冷凍庫は基本型接種施設である市医療センターに設置され、現在のところは市医療センターや連携型接種施設である新宮病院と岩崎病院、県立なぎ看護学校体育館などでの接種を予定している。
対象者は市医療センターや市内医療機関の従事者や消防の救急隊員など約1000人。接種は任意で、新宮保健所は対象者のうち7割程度の接種を見込んでいるという。
高齢者や高齢者施設などの従事者、基礎疾患を有する人、それ以外の市民への接種については、国から3、4、6月に1台ずつ超低温冷凍庫が提供される予定。
接種には自治体が発送するクーポンを受け取り電話などで予約する必要がある。当局は3月中旬から下旬にかけてクーポンと案内を送り、4月から集団接種を先行して進めていく見通しであるとした。
(2021年2月10日付紙面より)
立春の日が3日に移ったことから、124年ぶりに節分が2月2日となったこの日、新宮市の熊野速玉大社、那智勝浦町の熊野那智大社、田辺市本宮町の熊野本宮大社で節分行事が営まれた。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、各大社とも規模を縮小して斎行する中、境内には疫病退散を願い「鬼は外」の声が響いた。
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熊野速玉大社(上野顯宮司)では、鬼を払う「追儺式(ついなしき)」と正月に飾ったしめ縄などを燃やす「お焚(た)き上げ(どんど焼き)」があった。3密を避けるため、鬼の登場や福豆・お菓子まきを取りやめるなどの対応を講じた。
追儺式では、神職や神社関係者らが「鬼は外」と言いながら豆をまき境内を練り歩いた。お焚き上げでは境内に掘られた穴に参拝者らがしめ縄などを御神火がついたたいまつと一緒に投げ入れた。
今年は、新型コロナの状況を鑑み「吉兆(きっちょう)」などの縁起物の郵送を希望する人が例年以上に多く、吉兆は当初予定より200本多く追加で制作したものの、同日午前10時ごろには完売したという。
上野宮司は「無事に節分祭を終えることができ、この熊野地方にも春がやってくる。規模は縮小となったが伝統ある神事が斎行できて良かった。来年はコロナが終息し、盛大に豆まきができることを願っています」と話していた。
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熊野那智大社(男成洋三宮司)では節分祭と鬼追い追儺式があった。式には町立市野々小学校の児童を含む大檀那(だんな)=特別崇敬者=約50人が間隔を空けて参列し内庭で神事を営んだ。
鬼の面を着けた役人役が福升の豆をまき、社殿鈴門の基礎石を鬼やらい用具で打ち、「家内安全、延命息災、家運隆昌(りゅうしょう)」と唱えた。
境内では花薗龍人権禰宜(ごんねぎ)が、15㍍先の「鬼」と記した約1・5㍍の的を矢で射抜いた。豆まきでは男成宮司や大檀那らが感染症対策として、声を発さず神職の掛け声に合わせて豆まきを行った。
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熊野本宮大社(九鬼家隆宮司)では、神職や神社関係者らが参加し、節分祭と追儺式を執り行った。神事を縮小し、ビニール袋に入れた豆をまくなどの感染防止対策を講じた。
追儺式では、神職と巫女(みこ)が豆をまきながら拝殿の回廊を3周。その後全員で「福は内、鬼は外、コロナ撲滅」と声をそろえて豆をまき、最後に九鬼宮司が疫病退散を願い白・赤・金色の3本の矢を空に向けて放ち鬼を追い払った。
同大社ではコロナの撲滅や厄よけ開運のため、今月限定で鬼の面を形取った牛王(ごおう)宝印を授与している(初穂料2000円)。
(2021年2月4日付紙面より)
高池小の3~6年生一丸で (古座川町 )
古座川町立高池小学校(大畑眞校長)の3~6年生が2日、クマノザクラタイプ標本木から得た実生苗の植え替えに取り組んだ。
この植え替えは、同町観光協会(須川陽介会長)と連携して展開するふるさと学習の一環。おととしの10月、同校と明神小の3年生(現4年生)が卒業記念植樹用にクマノザクラのタイプ標本木から得た種子から実生苗を育てる挑戦を始め、高池小はさらに4~6年生が赤玉土、腐葉土、培養土の各苗床に種子をまき、どの苗床がよく芽吹くかという実験を兼ねて3年生の実生苗作りに協力した。
全てが順調に発芽しなかったものの、高池小は計23本の実生苗を得ることに成功。しかしその後の育苗も難しく、結果的に5本が1年目の成長を終えて残り、次の春を待つように休眠する状況にある。
すでに苗床からポット、植木鉢へと2回の鉢上げをし、この日は3回目の植え替え作業。この学習の外部講師で長追在住の樹木医・矢倉寛之さんから植木鉢の仕立て方を教わり、以降は学年ごとに実生苗1本(実際に植樹する4年生は2本)を引き受け一回り大きな素焼きの植木鉢に植え替えた。
最初の植木鉢は防虫ネットを敷いて培養土を入れたが、新しい植木鉢は防虫ネットの次に赤玉土を敷いて排水性をよくしてから実生苗を入れ周りに新しい培養土を詰め込んだ。4年生は風に揺れるほどか細い幹とは対照的に旺盛に伸びた根を大畑校長と一緒にじっくりと観察。限られた鉢の中で行き場を失い縦横無尽に伸びた根も一回り大きな鉢に移せばまたのびのびと広がり幹を大きくしてくれると植え替える意味を教わりつつ励んだ。
矢倉さんは樹木医でもクマノザクラの育苗はまだ難しいことなどを伝えつつ、5本の実生苗を育てる児童を励ました。大畑校長はこれら実生苗を校内や学校から目につく場所に植樹する将来を思い描きつつ、今後はその時のためにみんなで大きく元気に育てることを児童に呼び掛けた。
5本の実生苗は4年生の卒業記念植樹用。この日は植え替えに先立って3年生が同標本木前でクマノザクラ学習に取り組み、矢倉さんと一緒に赤玉土・腐葉土・培養土の各苗床に種子50粒をまいて自分たち用の実生苗を育てる第一歩を踏み出した。
(2021年2月4日付紙面より)
日本郵便と包括連携協定締結 (那智勝浦町 )
那智勝浦町は2日、同町役場で日本郵便株式会社との「包括的連携に関する協定」を締結した。町と同社が人的・物的資源を有効活用することで住民サービス向上や地域の活性化などを目的とする協定で、和歌山県内では先月の太地町に続き、同町が8番目の締結となる。
締結式には同社から吉田仁久紀南地区統括局長(椿郵便局長)、坂本雄哉那智部会長(太田郵便局長)、奥田隆昭紀伊勝浦郵便局長が、町からは堀順一郎町長、塩﨑圭祐総務課長が出席した。
同社によると、協定は両者が業務に支障のない範囲で取り組むもので、他市町村との連携も進めているという。
同町との連携事項は▽安心・安全な暮らしの実現▽未来を担う子どもの育成▽地域経済活性化▽地域住民の利便性向上―の4項目となっている。
堀町長と同社を代表し、坂本部会長が署名を行い締結式は締めくくられた。
吉田統括局長は「この地域は過疎化が続いていており、郵便局も何ができるかさまざまな模索を重ねている。この締結を皮切りに、互いに知恵を出し合って紀南地方の発展に尽くしたい」。
坂本部会長は国が進める新型コロナウイルスのワクチン接種事業に触れ、「広報の関係などでもご協力できるならばしていきたい」と意欲を示した。
堀町長は昨年のコロナ関連緊急経済対策事業の「那智勝浦まちなか商品券」の引き換え時の同社の協力に感謝を述べ、「本町は六つの町が合併してできた町なので行政区間が広い。住民サービスの向上のためにも郵便局さまにはご協力いただき、町を挙げて活性化を図り、共に発展していきたい」と話した。
(2021年2月4日付紙面より)
東仙寺で節分星祭 (新宮市 )
新宮市新宮の丹鶴山東仙寺(鶴田隆寛住職)で2日、「節分星祭」が営まれた。厄年の男女たちが集まる中、鶴田住職がご本尊・弘法大師の前で護摩供養を行い、信者たちの身体健康や家内安全などを一心に祈った。
同寺は「東海白寿三十三観音霊場」の一番札所。星祭は、人がそれぞれ生まれた年によって持っている「本命星」の巡りが悪い人たちの災いが少しでも和らぐようにと祈る祭りで「星供養」とも呼ばれている。午後5時からは地域住民らが境内に掘られた穴で正月のしめ縄や松飾りなどを焼く「どんど焼き」が行われた。
鶴田住職は「昨年に比べて、新型コロナウイルスの実態が少しずつ明らかになってきたかと思います。今年の干支(えと)である『丑(うし)』のように辛抱強く進んでいかなければならない。ストレスを抱えている方もいるとは思いますが、私たちの先祖が大正時代に流行したスペイン風邪を乗り越えたように、希望を持って毎日を過ごしていただければ」と話していた。
(2021年2月4日付紙面より)