10月に入り、一気に涼しくなりましたね。いよいよ食欲の秋がやってきました。秋は食べ物がおいしい季節です。そして、気候も良くなるこの季節は、スポーツの秋ともいわれますよね。体を動かして、おなかがすいて、おいしいものを食べる!これこそが秋の醍醐味(だいごみ)かもしれません。
実は体を動かして、空腹になるというのは、食にとても大きく影響します。「空腹に勝る調味料はない」などといわれますが、おなかがすいていると、どんな食べ物もおいしく感じますよね。実はマウスを使った研究でも、味の感じ方が、空腹時には普段と異なることが分かっています。空腹時のマウスに甘味溶液をなめさせると、通常飼育時のマウスよりなめる回数が増えます。これはなんとなく想像できますよね。でも、通常飼育時のマウスでも、なめる回数が大きく低下する苦味溶液でも、空腹時のマウスはなめる回数が高いことが分かりました。これは神経のネットワークによる作用だそうで、甘味に関する感度は維持されたまま、苦味に関する感度は低下したということなんです。つまり、空腹時には「好きな味は好きなまま、苦手な味はあまり苦手ではなくなる」ということが分かったんです。(Hypothalamic neuronal circuits regulating hunger-induced taste modification/Nature Communications 2019年10月8日)
これは子どもの味覚にも同じことがいえます。普段食べないような苦手な食材やお料理も、空腹時だと食べられるようになる可能性が高いのです。「空腹が偏食を改善する」ということは、実はすでに多くの研究でいわれていることでもあります。ご飯を食べるタイミングで、空腹にするように調整するということは、素晴らしい食育になるということですね。ただ、今は、昔のように外遊びばかりすることがなくなってしまいましたよね。家の中でゲームをしたり、動画を見たりする時間が長く、なかなか空腹にできないというご家庭も多いのではないかと思います。でも、ほんの少しの工夫で、この空腹を味方に付けることはできそうです。
そのポイントを三つお伝えしようと思います。一つ目は夕食後は何も食べないでたっぷり寝ること。朝起きた時おなかがすくように、夕食後は食べるのを控えましょう。デザートを食べるなら夕食後すぐがお勧めです。
二つ目、おやつは「おなかがすいた!」と言われたときに少しだけにすること。おやつから夕食までの時間で調整するのがお勧めですが、ここはあくまで空腹を紛らわせる程度がいいと思います。おやつを食べすぎると、夕食時に空腹感を感じないまま食べることになってしまいます。
三つ目は、水分は水かお茶に限定すること。水分補給は大切ですが、ジュースなどを飲ませてしまうと、果汁100%であってもカロリーがあるので、なかなか空腹にならないことがあります。お子さんの体調や活動量に合わせて、空腹をうまく利用して食事をさせてあげてください。普段気付かなかった「おいしい!」に気付いてくれるかもしれません。
(2023年10月21日付紙面より)