2022年03月19日
ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
【第47回】食事で性格が変わる!?

 「食べ物で性格が変わりますか?」これもよく聞かれる質問です。確かに、雑誌の記事や本などでも、「食べ物で性格が変わる!」といった内容のものがありますよね。私がいろいろな論文を読んで、思う結論は「影響がないとは言い切れないけど、大きい影響ではない」ということです。

 食事内容や食習慣についての研究というのは、環境を無視したものが多いんです。何を食べているか、という調査と、調べたい事柄のアンケート結果を結び付けているものがほとんどです。研究のデータ結果が全て食に原因があるとは思えません。なので、研究結果をむやみに信じてしまうのも危険だなと思っています。

 例えば、食と性格に関してのこんな研究があります。全国13県の小中学生、1県当たり1200人の子どもを対象にしたもので、野菜摂取量と糖分摂取量と性格や体質のデータを分析したものです。その論文によると、糖分摂取量が少ない子には「やる気が多い」「優しい」子どもが多く、糖分摂取量が多い子には「飽きっぽい」「自分勝手」「イライラする」子が多いとあります。

 また、野菜摂取量が少ない子には「わがまま」「けんかっ早い」「飽きっぽい」子が多く、野菜摂取量が多い子には「我慢強い」「努力家」が多いとあります。これだけ見ると、食べ物は制限しないと性格に大きく影響がある!と捉えてしまいますよね。でも、さらに読み進めるとこんな記述もあります。「(糖分摂取大・野菜摂取大)と(糖分摂取小・野菜摂取大)が同じ傾向を示し、しかも(糖分摂取大・野菜摂取小)だけが悪い影響を示す傾向にある」(「食品及び食習慣の子供の健康に及ぼす影響に関する調査」2002年)。これを見るといかがでしょうか? 糖分を取っても、その分野菜も十分取れていれば問題ないということですね。

 私は、子どもの性格に最も大きく影響するのは、やはり環境だと考えています。毎回同じ話になってしまいますが、「何を食べるか」よりも「誰とどんな雰囲気で食べるか」の方が、よっぽど子どもの性格に影響すると思っています。どれだけ栄養バランスが整った食事でも、楽しい雰囲気で食べられなければ、その子のメンタルには確実に悪影響だと思うのです。どんな食品も、どんな栄養素も、過剰摂取は体に良くありません。偏った食事を続ければ、どんな健康な人でも不健康になります。子どもを健やかに、前向きに、育てたいという願いであれば、何を食べさせるかということより、どう接するかを考えることをおすすめします。

 今回ご紹介した論文の通り、食べ物と性格は全く関係ないとは言い切れません。ですが性格は、食べる物だけで形成される訳ではないですし、その影響は大きくはないと思います。性格や学力への影響という視点で、食べ物を考えるのはナンセンスだと私は考えています。

(2022年3月19日付紙面より)