2021年12月11日
ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
【第44回】シニアの食育

 食育は子どものもの、と思われている方はとても多いです。確かに、私もずっと子どもの食に関することを調べてきましたし、食育が積極的に行われるのは、幼少期から小学生くらいが一般的ではあります。先日シニアの方向けの食育について、話す機会があったので、ご紹介しておこうと思います。

 60代以上の方は、30代から40代よりもさらに健康的な食生活を意識されている方がほとんどです。野菜を中心の食生活にしたり、肉より魚、洋食より和食という方も多いのではないでしょうか? そして、今のシニア世代は、昔に比べてうんと若くて、情報にも敏感ですよね。テレビや雑誌、インターネットなどで、「○○が体にいい」「○○食がブーム」なんて聞くと、試してみようと思われる方もたくさんいます。今のトレンドで言うと、「糖質オフ」や野菜中心の「ビーガンフード」「オートミール」なんかでしょうか?こういったトレンド食もいち早く取り入れるのは、実は50代以上だったりすることもあるんです。

 ただ、これらは50歳を過ぎると、むしろ取り入れることは危険な側面もあります。東京都健康長寿医療センター研究所によると、BMI(体格指数)の低い痩せ型が一番死亡リスクが高く、軽度や中度の肥満はリスクは変わらないそうです。つまり痩せ型の方は生きるための栄養が足りていない状況にあるのです。この低栄養こそ寿命を縮める原因です。栄養が十分にないと、免疫力も低下しますし、骨がもろくなったり、集中力や記憶力も低下します。手術や骨折の回復にも時間がかかります。しかも、この低栄養は女性に多いのです。65歳以上になると、22%の女性が低栄養といわれています。(平成28年国民健康・栄養調査結果)

 低栄養にならないためにも、1日3食しっかりと食べる!をまずは意識してください。野菜信仰を捨てて、お肉やお魚・お米などタンパク質や炭水化物を取ってほしいのです。コレステロール値でさえ高い人の方が低い人より長生きというデータがあるくらいです。

 私が一番伝えたいのは、シニアにも食を楽しんでほしいということです。孤立感や孤食から食事がおろそかになり、しっかり食べない人が増えているというのも事実です。これは子どももそうですが、シニアも、「楽しく食べること」で生活の質は大きく向上するのです。作るときに、気になるレシピを試してみてもいいし、作ったことのない料理にトライしてみるのもいいですよね。ぜひ趣味として、食事作りや食事を取ることを、何らかの形で楽しんでください。

 そして、トレンドに振り回されず、できるだけ多くの品目をバランスよく食べることを意識してほしいと思います。できる範囲で構いません。今は作り置きのレシピもたくさんあるので、まとめて作って、毎日少しづつ食べていくのもいいと思います。食を楽しめるシニアになれたら、きっと健康で楽しく長生きできると思います。

(2021年12月11日付紙面より)