2020年08月30日
事案想定し海保が訓練
追い込み漁前に部内連携強化
太地町
各事案を想定した訓練の様子=28日、太地町の太地漁港

 9月から始まる小型鯨類追い込み漁を前に第五管区海上保安本部は28日、太地漁港周辺で反捕鯨団体による違法行為を想定した事案対処訓練を実施した。田辺海上保安部、串本海上保安署、関西空港海上保安航空基地が加わり、海上保安官、太地町漁業協同組合など計約40人が参加。官民一体となり連携を深めながら海上訓練に取り組んだ。

 同町へは2010年以降、過激な環境保護団体などが多く訪れ、港の無許可撮影などの嫌がらせ行為を続けてきた。昨年は目立った違法行為は確認されていないという。

 訓練は▽基本訓練(ゴムボートによる高機動訓練)▽想定訓練(カヤック乗艇者の転覆救助事案対応訓練)▽想定訓練(違法行為者の海上追跡捕捉事案対応訓練)―などの対処を行うもの。この日は巡視船きい、巡視艇むろづきのほか、ゴムボート3艇、警備救難艇1艇、カヤック1艇、太地町漁協の漁船1隻、ヘリコプター1機を用いた。

 想定訓練では鯨類を搬送中の漁船に対し、抗議を行う反捕鯨活動家たちが駆け付けた海保のゴムボードに発煙筒を投げつけて妨害し逃走。ゴムボートとヘリコプターが追跡し逮捕した。

 田辺海上保安部の上野春一郎部長は「訓練は追い込み漁に対し海上における違法行為や人命財産の保護を目的としたもの。今回は部内の連携強化と個人のスキルアップに重点を置いた」。新型コロナウイルスの影響で反捕鯨団体の入国については不明としながらも「会員制交流サイト(SNS)を通じての活動を呼び掛けたりと予断を許さない状況であるため、和歌山県警と連携し取り組んでいきたい」とあいさつ。

 海上保安庁警備救難部警備課の小野雄介さんは「太地町の追い込み網漁の安全を守りきるという強い意志を持って取り組んでいることが感じられた。粘り強い警備をやり遂げていただきたい」と訓示した。

 来月1日(火)から追い込み漁を控える太地いさな組合の田中清仁組合長は、今回の訓練や漁に向けて「ご協力いただける皆さまのおかげで安心安全の操業ができる。鯨類を追い込んだ際も海保の皆さまが警備してくれるので心強い。初日からバンドウイルカやゴンドウクジラを狙っていきたい」と語った。

(2020年8月30日付紙面より)

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各事案を想定した訓練の様子=28日、太地町の太地漁港
海保が連携し取り組んだ