2020年08月22日
ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
【第18回】夏のお酢パワー

 長い梅雨が明けて、うだるような暑さになりました。子どもたちが外で遊ぶのも、熱中症にならないか心配ですよね。こうも暑い日が続くと、食欲がなくなってきたお子さんもいらっしゃるのではないでしょうか? 今日はそんな夏バテにぴったりなお酢のお話をしようと思います。

 お酢はその歴史は古く紀元前5000年ほど前からあったといわれています。元々はお酒が原料の調味料です。日本食でも、おすしや酢の物に使われてきましたよね。お酢の「すっぱさ」は酢酸という成分です。これは殺菌作用もあるため、食中毒の原因となる菌の繁殖を抑えて食べ物を傷みにくくしてくれる成分です。夏は食中毒が怖い季節でもありますから、お酢とお魚などの組み合わせもオススメです。マヨネーズが保存料いらずなことも、このお酢の殺菌作用のおかげと言えます。またお酢の酸味は、味覚や嗅覚を刺激して、唾液や胃液の分泌を促すといわれています。これによって食欲増進につながるのです。さらに、お酢には代謝を活発にして、摂取した食べ物を効率よくエネルギーに変える力があります。つまり、疲労回復にも効果的ということです。スポーツの後などに、糖分を摂取するといいと言いますよね。これはグリコーゲンが疲労回復に効果的だからですが、そのグリコーゲンも、お酢と一緒に取ることでより効果的に補給できるといわれています。他にも、お酢には脂肪の蓄積を抑える効果や、腸内環境の改善、高血圧の抑制効果などたくさんの効果があることが分かっています。

 数あるお酢の効果の中で、私が一番注目しているのは「減塩効果」です。実は料理にお酢を使うことで、減塩できることが分かっています。お酢には塩が入っているわけではありませんが、酸味が物足りなさを補ってくれるんです。小学校低学年の子どもを対象にした味覚の研究にこんな記述があります。「塩を『酸っぱい』、酢を『しょっぱい』と表現する子供がいた」(三重大学教育学部研究紀要「小学校低学年を対象とした味覚授業の実践」、2016年)。「酸っぱい」と「しょっぱい」はとても似ているんですね。塩分の取り過ぎが健康を害することはさまざまな分野で証明されています。減塩のためにもぜひお酢を取り入れてみてください。

 さて、お酢の料理を番組で紹介するとき、打ち合わせで必ず質問に上がるのが「お酢の種類」です。家庭でよく使うのは穀物酢か米酢ですよね? 穀物酢は麦やトウモロコシ、米などから造られます。酸味が強いので、煮物などの加熱調理に使うのがオススメです。一方米酢は、米とアルコールで造られたお酢です。酸味がまろやかなので、おすしや酢の物など加熱しない調理によく合います。夏バテにも健康にも良いお酢。ぜひこの夏、食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか?

(2020年8月22日付紙面より)