2020年07月11日
ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
【第16回】キャラ弁は作るべきか?

 いつの頃からか、「キャラ弁」という言葉が定着しました。ご飯やおかずを使って、キャラクターをかたどったお弁当です。私の娘が保育園に行き始めた頃、ブームはすでに盛り上がっていたので、「キャラ弁」が広まって10年近くがたとうとしています。今では、お母さんの負担や、クラスの中でのお弁当格差を考慮して「キャラ弁禁止」という園や学校もあると聞きます。かく言う私も「キャラ弁」作りに奮闘した一人です。アニメのキャラクターを、ハムやチーズをカットして作ったものです。「日頃、仕事ばかりしてるんだから遠足の時くらい…」となぜか「キャラ弁」作りが罪滅ぼしのような感覚に陥っていました。今となっては、なぜあんな気持ちになっていたのかと思いますが、子どもは私の作る「キャラ弁」をとても喜んでくれていたのは確かです。

 さて、この「キャラ弁」について研究した論文があります。研究対象は、幼稚園や保育園に通う幼児637名とその保護者です。子どもが普通のお弁当と、「キャラ弁」のどちらを好むかをアンケート調査したところ「キャラクター有りを選択したのは291人で有効回答数の64・0%、キャラクター無しを選択したのは127人で有効回答数の27・9%であった」(こども教育宝仙大学「子どもはキャラ弁が好きか?」、2020年)とあります。6割以上の子どもが「キャラ弁」を好んでいます。これは、保護者の就業形態や料理をする回数とは、特に関連がなかったとも書かれています。もう一つ注目したい結果があります。「キャラ弁」は食育になると思うか?という質問です。その結果はこうなっています。「作成群は食育になると考える傾向が強く見られ、非作成群は食育にならないと考える傾向にあった」。つまり、キャラ弁を作るお母さんは「食育になる!」と考え、キャラ弁を作らないお母さんは「食育にならない!」と考えているわけです。また、栄養的な話では、キャラ弁は脂質が高く、塩分が多いので良くないとも書かれています。

 皆さんはどう感じましたか?私はこの論文を読んで、「キャラ弁」も一つの食育なんだなと感じました。なぜなら、幼児期の子どもにとって最も大切な食育は、「食事は楽しい!」と思ってもらうことだと考えているからです。子どもが喜ぶなら、栄養バランスなんて、朝食や夕食でバランスを取れば済むことです。ただ残念ながら「キャラ弁」の威力はそう長くは続きません。この論文にも、3歳児は好むが、5歳児になるとあまり好まないという結果が出ています。

 「キャラ弁」は「食を楽しむ」という入り口としては有効だと私は思います。ただそれは、おうちで楽しく食事を取れていれば、それと何ら変わりはないのです。お母さんが作るお弁当は、「キャラ弁」でもそうでなくても、子どもは楽しみに食べてくれます。お母さんの、ゆとりを削って疲弊してまで作るほどの効力はありません。子どもたちにとって、お弁当の見栄えよりも、家に帰ったときのお母さんの笑顔の方がうれしいに違いないのです。罪滅ぼしで作っていた昔の自分にも、「やらなくていいよ」と言ってあげたいくらいです(笑)。

(2020年7月11日付紙面より)