スーパーやコンビニでよく見かけるカット野菜。すでにカットされているからとっても便利ですよね。でも、買うのに抵抗があるというお話もよく聞きます。「カット野菜の栄養はほとんどない!」という説や、「カット野菜は薬品で洗浄されているから危険だ!」という説を信じて使わない方も多いのではないでしょうか。また、「母親の手作り」ではなくなるというイメージ的な手抜き感に抵抗のある方もいらっしゃると思います。ほとんどのお料理は、野菜や肉をカットするところから始まりますよね。私は料理番組を担当していますが、番組では野菜や肉はそのほとんどがカットされているところから始まるので、料理時間がとても短縮されます。番組を見て、作ってくださる方の中には、番組で見るよりも時間がかかったとおっしゃる方が多いですが、それは野菜や肉をカットする時間が含まれていないからです。フードコーディネーターさんがカットしてくれるのですが、フードさんの間でも「カットに時間がかかる」というのは周知の事実になっていて、撮影で余ったカット野菜はみんなで取り合いになるほどです。
スーパーで売られているカット野菜は、カットした後に次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄・殺菌が行われています。この洗浄の時間はおよそ10分といわれていて、家庭での洗浄に比べるとかなり念入りに行われているのが分かりますね。では栄養も一緒に洗浄されてしまうのでしょうか? カットレタスの洗浄で、その栄養の変化を実験した論文があります。カットレタスを次亜塩素酸ナトリウムと水道水で洗浄した後の栄養の違いを調べたものです。それによると「有意な差は確認されなかった。以上の結果より、洗浄方法の違いによってカットレタスのビタミンC及びミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)に有意な損失はないことが示唆された」(日本調理科学会「カットレタスの洗浄方法の違いが栄養成分に及ぼす影響について」、2009年)とあります。つまり水道水で短い時間洗浄しても、工場で10分間殺菌洗浄しても栄養はほとんど変わらないということです。ただ、カットしてある野菜は、カットする前のものより傷みやすいのは事実です。カット野菜を購入したら、できるだけ早く食べる方がいいと思います。気温が上がると傷みやすいので、これから暑くなる季節は特に注意してほしいところではあります。
毎日忙しいお父さんやお母さんが、カット野菜を使うことに罪悪感を感じる必要はありません。ただ、カット野菜といえども、それだけでは栄養満点というわけにはいきません。タンパク質を含む魚や肉、豆類、卵を一緒に食べたり、ミネラル豊富な海藻などを組み合わせることによって、栄養満点なおかずやサラダになります! 個人的にはさば缶をトッピングするのがオススメです。カット野菜を上手に活用して、少しでも楽になりましょう。笑顔で一緒に食べること! それが子どもたちには最高の食育です。
(2020年6月27日付紙面より)