2020年06月13日
ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
【第14回】ハム・ソーセージは危険なの?

 ハムやソーセージなどの加工肉は、添加物がたくさん入っているから子どもに食べさせてはいけない!というようなお話を聞いたことはありませんか? 最近スーパーに行くと「無塩せき」と書かれたものも並んでいますよね。このお話の根元になっている添加物は「亜硝酸ナトリウム」という化学物質です(亜硝酸塩と表記されることもあります)。「亜硝酸ナトリウム」は、防腐剤や発色剤として、ハムやソーセージなどの加工肉に多く使われています。この添加物は、40年ほど前に、「動物性タンパク質のジメチルアミンと反応して、ジメチルニトロソアミンという発がん性物質を生成するから危険だ」と発表されました。確かにこんな話を聞くと、「ハムやソーセージを食べると、がんになるのでは?」と思ってしまいますよね。でも、そんなに怖がることはありません。

 そもそも、「亜硝酸ナトリウム」はなぜハムやソーセージに使われているんでしょうか? それはボツリヌス菌による食中毒を防ぐためです。「亜硝酸ナトリウム」ができる前、ボツリヌス菌は地球上最強の毒と恐れられていたそうです。サリンの数千倍ともいわれていました。その猛毒を100%抑えることができた防腐剤が「亜硝酸ナトリウム」だったのです(芳川充著「食品の迷信」ポプラ社参照)。

 また食卓で、私たちが日常的に摂取する「亜硝酸ナトリウム」は、そのほとんどが野菜からです。ホウレン草やゴボウ、白菜にも、「亜硝酸ナトリウム」が含まれています。ハムやソーセージから摂取する量は、ごくわずかで、私たちは知らないうちにその何倍もの「亜硝酸ナトリウム」を摂取していることになります。化学物質というと、なんとなく怖いと思ってしまいますが、全ての食品は化学物質で作られています。イチゴに含まれる化学物質は200種類以上とされているんです。では野菜は危険だ!と思いますか? 野菜には、それ以外のとっても有益な栄養がたくさん含まれていますよね。「無塩せき」と書かれた加工肉には、野菜を利用した天然由来の「亜硝酸ナトリウム」が用いられている場合がほとんどです。それは添加物としての「亜硝酸ナトリウム」となんら変わりがありません。

 そして、亜硝酸ナトリウムの発がん性物質の生成は、特定の物質があれば阻害されることがわかっています。昭和54年の論文に、こんな記載があります。「亜硝酸ナトリウムは、反応初期にLアスコルビン酸により還元分解をうけ速やかに減少消失する」(「Lアスコルビン酸と亜硝酸塩との反応について」日本家政学会誌、1979年)。だから、食品メーカーは、ハムやソーセージなどにアスコルビン酸であるビタミンCなどを必ず加えているんです。

 これは以前にも書きましたが、全ての毒性は量で決まります。ハムやソーセージをむやみに怖がる必要はありませんが、必要以上に取るのはお勧めしません。バランスよく、いろんな味の「おいしい」を、家族で笑顔で楽しむことが、子どもたちの心身の健康につながると確信しています。

(2020年6月13日付紙面より)