誰でも一度は耳にしたことがあると思います。
スーパーなどで売られている食パンはカビない!というお話。確かにパン屋さんで買った食パンは2~3日しかもたないのに、大手メーカーのパンは賞味期限が長い。そのことが、怖いと感じる方も多いと思います。私も以前は、パンはパン屋さんで!と決めて、週末に買って冷凍していました。仕事をしていると、なかなか営業時間内に間に合わないからです。開いているパン屋さんを見つけたら喜々として飛び込んでいました。でも、実はこれも、そんなに怖がる話ではないんです。そもそも食パンには、保存料や防カビ剤は入っていません。保存料は、細菌やカビの生育を抑えますが、食パンには使いません(クリームパンなどの菓子パンには使われることがあります)。防カビ剤は、輸入される柑橘(かんきつ)類やバナナなどの果物には使われていますが、パンには使用できません。では、なぜスーパーの食パンが、パン屋さんのパンのようにカビないのか? 鈴鹿医療科学大学の長村洋一先生は「限りなく清潔な環境でパンを製造し、その清潔な状態を維持できるように包装することと、製造されたパンの環境をカビの生えにくい状況にすること、これらが大きな要素となってカビが生えない日持ちのするパンができる」(一般社団法人 日本食品安全協会ホームページより)と記しています。つまり、大手メーカーのパンがカビないのは、「ものすごく清潔な所で、人の手に触れず、無菌的な環境で製造されているから」なのです。
この食パンカビ論争は、古くから語られていますが、その際に必ず悪者として登場する添加物が、「臭素酸カリウム」です。この臭素酸カリウムは、小麦粉処理剤として日本では使用が認められています。小麦をふっくらと焼き上げるために使用するものですが、この臭素酸カリウムはラット実験で発がん性が認められ、EUは使用を禁止しています。ただ、これは「量」の問題なのです。日本ではパンに使用が認められていますが、それはパンが焼かれることでほとんど消滅してしまうからなのです。その残量は厚生労働省によって厳しく制限されています。だから使われていても怖がる必要はないのですが、今では臭素酸カリウムを使うメーカーは一社もありません。
私はこのカビない食パンの真実を学んでからは、スーパーの食パンを買うこともあります。パン屋さんの焼きたてのパンの方がおいしい!という気持ちには勝てないので、パン屋さんで買うこともあります。
食品添加物は、薬にも毒にもならない!というのが、私の結論です。あらゆる毒は量でその毒性が決まります。今はインターネットで簡単に情報が手に入りますが、その分その情報に惑わされる機会も多くなっているのです。バランス良く、程よく、気楽に。それが食卓の笑顔の法則だと私は信じています。
(2020年2月22日付紙面より)