前回は、「朝食と学力は直接関係しない」というお話をしました。でも、朝食をしっかり食べることは、子どもたちの心と体にとってとても大切です。
農林水産省が発表した子どもの朝食の欠食率は、2015年度は4・4%だったのに対し、18年度は5・5%に増加しています(農林水産省 平成30年度食育白書)。中高生など年齢が上がるにつれ、さらに増加傾向で、朝食欠食の理由の多くは「食べる時間がない」「食欲がない」といったものです。
朝食を食べない子どもたちはアンケート調査によると、その半数以上が「身体のだるさや疲れやすさを感じる」「何もやる気が起こらない」「イライラする」ことが、時々あると答えています(独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成22年度児童生徒の食事状況等調査報告書」)。つまり朝食を食べないことは、子どもたちの心の状態に影響するということなんです。
では、なぜ朝食を食べないとダメなのでしょうか?
私は「朝しっかりご飯を食べること」そのものよりも、「朝しっかりご飯を食べられる体であること」が大切なんだと考えています。
朝ご飯を必ず毎日食べる子は、就寝時間が早いというデータがあります。「就寝時間、夕食時間はいずれも、朝食をほとんど食べない者が、朝食を毎日食べる者より有意に遅い」(生活科学研究誌「大阪府内小学生の朝食摂取頻度と食行動・生活習慣との関連」、2014年)。つまり、夕食時間が遅かったり、寝る時間が遅いと、眠くて朝起きられず、朝食を食べる食欲がなくなるということなんです。
大人もよくありますよね? 遅くまでの会食や飲み会の翌日は、朝食を食べる気持ちにはなれません。子どもだって同じです。寝る直前に夕飯を食べると、眠気が残った状態で朝食を食べる気持ちにはなれないんです。
最初に紹介したアンケート調査では他にも、朝食を必ず毎日食べる子は「給食を全部食べる」割合が高く、5割の子がジュースの飲み過ぎやお菓子の食べ過ぎに気を付けているという結果もあります。逆に朝食を食べない子ほど、給食を残して、間食を取ってしまうのです。朝食をしっかり食べると、きちんと給食前に空腹を感じて完食し、間食を控えることができて、夕食もしっかり食べられるというわけです。朝食は、一日の体のリズムを整える食事であり、リズムが整っているかの指標になるとも言えるわけです。
規則正しい生活というと、聞き飽きた表現ですが、生活リズムの崩れは、子どもたちの精神状態に顕著に影響します。もしも、食欲がなくて朝食を食べないお子さんがいたら、睡眠時間や夕食時間を見直してみてください。朝食をモリモリ食べて、元気で前向きになってくれるかもしれません! 子どもたちの心にも影響する、朝食のチカラ。これを味方にしない手はありません!
(2020年1月25日付紙面より)