「朝食は学力に影響する」という話を皆さんも耳にしたことがあると思います。これは、食育という言葉が生まれて以来、よくいわれている定説です。今では小学校でも、この統計が授業で取り上げられるという話も聞いたことがあります。確かに、文部科学省の資料にも「毎日朝食を食べる子供ほど、学力調査の平均正答率が高い傾向にある」(全国学力・学習状況調査、2015)とありますし、こういうデータを見ると「朝ごはんを食べると、成績が上がる」ような印象を受けます。
でも、私はこの説には少し疑問を感じています。
このデータは、テストを受けた子どもたちの、朝食摂取状況とテスト結果を照らし合わせて、「朝食を毎日食べている子は、そうでない子に比べて学力が高い」という結論になっています。しかし、これはあくまで「朝食を毎日食べているか」というアンケートと、「テストの結果」を照らし合わせた結論で、因果関係ではないわけです。
アンケートには、「毎日どれくらい学習していたか」「家の人は学習に協力的だったか」「塾には通っているか」など、学力に直接影響しそうな要因は、全く含まれていません。もしも全く同じ環境で育った子どもたちを集めて、長期にわたって「朝食を毎日取るグループ」と「取らないグループ」に分けて、その後に成績を調査したなら因果関係を示せるかもしれません。でもこの結果では、朝食を食べることが、学力に影響するとは言い切れません。
朝食をきちんと取れる環境にある子どもたちが、学習環境においても恵まれているだけなのかもしれないのです。何が学力に直結しているかは判断できません。実際に、東洋大学の生活支援学科の鈴木佐喜子先生はこう述べています。「生活に余裕があり教育熱心な高収入家庭の子供は、毎日朝食を食べ成績もいいが、困難を抱えた低収入家庭の子供は毎日朝食を食べる割合が低く、成績も低いことを明らかにしたと考えられる」(「朝食」を食べない子は成績が悪い?「ちいさいなかま」2007年6月号・草土文化)
つまり朝食そのものが、学力に直結しているわけではないのです。
ただ、これはあくまでも学力のお話。私は朝食を食べさせる必要がない!と言いたいわけではありません。
事実、全く別の要因で判断すると、「朝食を食べること」はおすすめできる食育です。朝食をきちんと食べることは、子どもたちにとっていいことがたくさんあるんです! 次回はその朝食の力について、お伝えしたいと思います。
(2020年1月11日付紙面より)