2019年12月07日
ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
【第2回】「食卓のお手伝い」

 食事の準備や片付けを子どもに手伝わせていますか? 調理や配膳など、この「食卓のお手伝い」は実は、とても大切な食育なんです。今回は、この「食卓のお手伝い」についてお伝えしようと思います。毎日すごく忙しいから、子どもに手伝ってもらうより自分でやったほうが早い!と思われる方も多いでしょう。その気持ちもすごく分かります。でも、このお手伝い体験は、実は子どもたちの将来にとてもいい影響があるんです。

 お手伝いをすることの効果は本当にたくさんあります。一つ目は「偏食」。「親子で食事作りをする子どもは、偏食をしない傾向にある」という調査結果があります。(日本民族衛生学会「幼児の偏食と生活環境との関連」、2008年)しかもこの「偏食」と「お手伝い」が有意に関連するのは、3歳から6歳までとかなり幅が広いのです。偏食が始まるのは3歳ごろからだといわれているので、ぜひ取り入れたいですよね。うちの娘も自分で作ったサラダはよく食べてくれました!

 この頃のお手伝いは、人格形成にも影響します。京都と大阪の幼稚園児を対象にした調査で、食事にまつわる手伝いは、「善悪の判断や思いやり」「コミュニケーション能力」「自立性の獲得」と有意に関連する(食物学会誌「幼児期の食育における体験の重要性」、2014年)という結果があります。お手伝いが自立心を育むというのは納得ですが、思いやりやコミュニケーション能力に関係するというのは、意外ですよね。でも考えてみると、お手伝いには、先を読む力が必要です。「これがあるならこれが必要だな」とか、「これがあるからこれを準備しよう」とか。この先回りの思考力が、やがて思いやりにつながるのかもしれません。そして、お手伝いをすることは、家族のコミュニケーションも広げますね。「〇〇を取って!」とか「この味付けはどう?」とか。キッチンの周りに人が多いと、たくさんの言葉が飛び交うものです。

 小・中学生にも「お手伝い」はとても有効です。宮城県の小中学生を対象とした研究で、「食事手伝いをいつもする、時々すると回答した子は、朝起きた時の気分がすっきりしていたと回答する割合が、有意に高かった」(尚絅学院大学紀要「子どもの食事の準備や後片付けと関連する家庭内因子について」2013年)という結果があります。他にも、「お手伝いをしている子どもほど『スマホ熱中度』因子が低い」(国立青少年教育振興機構、2016年)という結果や、「肉や魚を焼いた経験がある子には自尊心の高い子が多い」(福岡大学児童心理学研究室、2002年)というものもあります。

 つまり、「食卓のお手伝い」は子どもたちの心も育むのです。日々のさりげないお手伝いの中で、子どもはさまざまなものを学び、身に付けてくれるのです。皆さんもぜひ、男女の区別なく「お手伝い」をさせてください。「お手伝い」はお金と手間をかけずにできる最高の食育なのです!

(2019年12月7日付紙面より)