2019年11月23日
ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
【第1回】「いただきます」と「ごちそうさま」

 初めまして、吾妻聖子です。私は那智勝浦町出身のプロデューサーです。東京で、テレビのお料理番組のプロデューサーをやりながら、食や食育のプロデューサーもやっています。

 皆さん「食育」と聞くと、どうしても堅いイメージがありますよね。「学校でやるものでしょ!」と思われる方も多いかもしれません。しかし、私は「食育」は家庭でこそ実践されるべきだと思っています。でも、お母さんはみんな忙しい!! 私がお料理コーナーを担当している番組でも、視聴率を取るのは決まって、「パパッとできる」「材料が少ない」「手間がかからない」ものばかりです。それだけ、世のお母さんたちはみんなお料理に疲れています(笑)。分かります! 私もそうだからです!! だから、私は「疲れない家庭での食育」をオススメしたいと思います。

 では、「家庭での食育」というキーワードから皆さんが発想するのはどんなことですか? 「野菜」「一汁三菜」「伝統食」「無添加」…いろいろ思い浮かびますよね。でも、私の勧める食育はそんなに頑張る必要はありません。

 では第1回の今回は、とっても簡単だけど、意外と大切なことを一つお伝えします。それは「いただきます」「ごちそうさま」のあいさつです。ものすごく当たり前のように感じますが、食卓で家族で、声を合わせて「いただきます」と言うことは、実はとっても大切なんです。

 「いただきます」は食べる命に感謝する言葉。そして、「ごちそうさま」は馳走、つまり走り回って食材を集めてくれる方への感謝の言葉です。食べるものや、そこにまつわる方たちの働きに感謝をするというのが、とっても大事!というのはもちろんですが、「いただきます」と「ごちそうさま」の力はそれだけにとどまりません。

 この習慣がある人は、偏食になりにくいのです。子どもの頃に食事の前と後にあいさつ習慣がある人の偏食率は低い、という研究結果があります(東海女子短期大学「偏食を生み出す要因に関する研究」、2000年)。さらに「いただきます」を言う人は自己肯定感が高くなるという研究結果もあるのです(福岡県立大学看護学部「大学生における自己肯定感と生活習慣との関連に関する研究」、2003年)。

 「いただきます」のあいさつは、子どもの好き嫌いをなくし、自信を持たせる作用もあるということです。なんの手間もかけず、子どものためにできる食育として、まずは「あいさつをする」というのをやってみてください。何気ない習慣が、子どもたちの未来の光を育むはずです。

 頑張らなくていい、時間に追われる日々の中、できることから「食育」を意識していただければと思います。

(2019年11月23日付紙面より)