2018年03月16日
十分な栄養で老化抑制
高齢期の食生活講演会
串本町保健センター
高齢期の食の在り方を説く妻谷勝弘さん=14日、串本町串本

 串本町地域保健福祉センターで14日、高齢期の食生活と健康に関係する講演会があり25人が十分な栄養摂取による健康の維持増進の大切さを考えるなどした。

 この講演会は、同町保健センターが過去に開いた講演会時のアンケートで高齢期の食生活に関係する内容を希望する声が多かったことを受けて計画。講師を探す中でキューピー株式会社が出前講座「キューピー講演会」を無償で行っているのを知り、依頼したところ講師を派遣してもらえることになり実施に至ったという。

 この日は同社研究開発本部の妻谷勝弘さんが登壇。還暦以降のさまざまな祝い事を振り返り、そのいくつかを経験できるほど長寿化した高齢期のイメージを膨らませた上で本題に移った。

 戦後の長寿化は▽乳幼児期の死亡率減少▽結核や脳卒中の激減▽食生活の改善―によりもたらされ、平成24年度の平均寿命は女性87・14歳、男性80・98歳に達した。他方、健康寿命も意識されるようになり、両寿命の差を小さくするための運動や脳トレーニング、食生活が昨今注目されている。

 妻谷さんは数ある栄養のうち、タンパク質と脂質(コレステロール)、カルシウムに注目して解説した。タンパク質は70歳以上の4人に1人が欠乏しているとされ、体内に蓄えた栄養が年々減少する高齢期に、健康にいいと信じて粗食を心掛けてしまう意識に課題があると示唆。高齢期の病気の多くがメタボではなく老化で起こっている点も踏まえ、タンパク質をしっかり摂取して老化を遅らせる食生活を推奨した。コレステロールも高齢期にあっては高めの方がいいという研究結果もあり、医師の指示を受けている人以外は積極的にいろいろなものを食べた方が良いとした。

 成人のタンパク質摂取目安は一日当たり50㌘(女性)~60㌘(男性)で、食材に換算すると、肉70㌘弱、魚80㌘弱、卵約50㌘、牛乳200㍉㍑といったバランス。タンパク質は体を形作る栄養素なので、摂取目安は日々の活動量に関係なく青年~老年に共通する。コレステロール値を高める卵は、高齢者にとっては秀でた栄養源。妻谷さんは栄養改善による老化抑制を図る上で役立つ10食品群チェックシートを配り、栄養失調の危険がある3食品以下を避け日々9食品以上を目標にして食生活を計画する(いろいろなものを少しずつ食べて10食品群のバランスを図る)よう促した。

 カルシウムは和食では十分な量を摂取しにくいため、骨粗しょう症になりやすい女性は特に乳製品でしっかりと補うよう推奨した。十分な栄養を摂取するための工夫として、口の運動「パタカラ体操」(食材を飲み込むまでの動作を鍛える運動)や、テレビの番人になるより家族や地域と活発に交流した方が食欲は増すといった統計データも紹介。盛りだくさんの話題の中から何か一つでも利用してもらえればと期待して講演を締めくくった。

(2018年3月16日付紙面より)

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高齢期の食の在り方を説く妻谷勝弘さん=14日、串本町串本