2017年11月04日
佐藤春夫の遺徳しのぶ 筆供養に市民ら70人参列 新宮市
春夫の写真の前に筆を供え、手を合わせる新宮高校の生徒たち=3日、新宮市役所前

 文化の日の3日、新宮市役所前で52回目の佐藤春夫「筆供養」が営まれた。市民ら約70人が参列し、使い古した筆を供養するとともに春夫の遺徳をしのんだ。

 公益財団法人佐藤春夫記念会(舩上光次代表理事)と新宮市教育委員会(楠本秀一教育長)が主催し、市民会館前の「筆塚」で営んでいたが、文化複合施設建設工事で一時撤去していることから、会場を変更している。

 式典では春夫作詞の市歌斉唱後、茶道裏千家淡交会南紀青年部の上宗景さん(お点前)と谷口宗尚さん(半東)が春夫の写真の前にお茶を供えた。県立新宮高校書道部1年生の岡本梨沙さん、福山芽生さん、小林茉由さんが筆を置いて手を合わせ、参列者が続いた。

 参列した田岡実千年市長は、台風21号の被災者にお見舞いの言葉を述べた後、市歌2番の一節『水にも火にも砕けざる金剛の都市新宮市』を紹介。「春夫先生からエールをいただいていると感じながら歌わせていただきました。これからも誰もが心豊かに暮らせる新宮市をつくっていきたいとあらためて思いました」

 辻本雄一・佐藤春夫記念館長は、台湾では春夫文学の講座が行われていることや、小説の舞台の保存運動が始まっていることを紹介。「春夫文学が見直されてきていることは大変ありがたいこと」とあいさつした。

 「筆塚」は1966(昭和41)年、新宮ライオンズクラブが建立。揮毫(きごう)は春夫の無二の親友だった堀口大學。佐藤千代夫人と堀口夫妻らが除幕した。塚の中には春夫愛用の毛筆と万年筆が納められている。

(2017年11月4日付紙面より)

[画像クリックで拡大します(再度クリックで非表示にします)

春夫の写真の前に筆を供え、手を合わせる新宮高校の生徒たち=3日、新宮市役所前